ブダペスト祝祭管/フィッシャー/カピュソン(vn):ヴァイオリン三昧の夕べ2012/03/04 23:59


2012.03.04 Royal Festival Hall (London)
Iván Fischer / Budapest Festival Orchestra
Renaud Capuçon (Vn-2)
1. Brahms: Tragic Overture
2. Lalo: Symphonie espagnole
3. Rimsky-Korsakov: Sheherazade

昨年1月と9月のプロムスにもロンドンに来ているブダペスト祝祭管。来年4月にもRFHでコンサートが予定されており、欧州内ツアーを精力的に行っている様子です。昨年1月のRFHはハンガリーの大統領が聴きに来ていたり、地元のハンガリー人コミュニティによるボランティアが多数動員されていたりで、ハンガリー語がそこかしこで聞かれ、たいへん盛況だったのですが、それに比べると今年はせいぜい6〜7割程度の客入りで、ちょっと寂しいものでした。チケットも大幅に値上げしましたし、何もやらなかったらこんなものなんでしょうか。来年は気合を入れて集客しないといけませんね。

奏者のほうはそんなことお構いなしで、いつものように気合の入った濃密な演奏でした。指揮者が登場し(さらに頭が薄くなったかな?)、おもむろに始まった「悲劇的序曲」は、統率のよく取れたオケをフィッシャー色でぐいぐいと引っ張る、期待通りのクオリティの演奏。このオケの音はやっぱりロンドンのオケとは全然違って、何とも言えない滋味で統一感が取れています。今日のフィッシャーさんは一段とエグいドライブで、最後のほうでは「うがー」と大きなうなり声を上げながらラストスパートを畳み掛けていました。極めて真面目に取り組んでいながらも非常に個性的な、面白い演奏でした。

続くスペイン交響曲は一昨年テツラフのソロで聴いて以来です。カピュソンを聴くのは初めてでしたが、テツラフも凄かったけどこの人も天然でマジ上手いので、一時も目が放せませんでした。濃いアゴーギグを入れたり歌にコブシが入ったりするようなことはほとんどなく、まるで普通に息をするように、難しいパッセージをいともさらっと弾きこなしています。アクがないのは物足りないにせよ、透明感と気品を備えたたいへん良質のヴァイオリン。テツラフを超えるものはそうそうないだろうとあまり期待してなかったのですが、あにはからんや、全く別世界で至高の演奏を聴かせてもらい、お気に入りのヴァイオリニストがまた一人増えました。これだから演奏会通いは止められませんね。バックのオケも別段スペイン色を協調せず、ヴァイオリンに合わせた清涼感でソリストを上手に際立たせていました。

メインの「シェヘラザード」は、何故このオケのロンドン公演でこの選曲、という疑問もないではありませんが、相変わらず丁寧に作り込み、積み上げられた演奏。実はこの曲、私には鬼門で、毎回どうしても夢心地の世界に誘い込まれてしまいます。今日も途中から所々意識が飛んでいるのですが、それは差し引いても、コンマスのソロ、木管、ホルンがどれも音程が合わずピリッとしない場面が見られました。どんなコンマス(女性なのでコンミス)でもカピュソンの後でソロを弾かねばならないのは、ちと気の毒でしょう。聞けば前々日にベルギーのブルージュで演奏会、前日の昼までブルージュに留まりリハーサル、夕方ロンドンに移動して、日曜日の昼はまたリハーサルというけっこう詰まったスケジュールだったそうで、ツアーの疲れが出たんでしょうか。フィッシャーの加速にオケがついていけてない箇所もありました。本日の仕掛けはハープを指揮者の真横に置いたことくらいでしたが、ヴァイオリンとのバランスが良くてこれはなかなか効果的。アンコールはエルンスト・フォン・ドホナーニ(クリストフのじいちゃん)の小曲で軽く締めました。


手前がハープのポローニ・アーグネシュさん。


左はコンミスのエッカルト・ヴィオレッタさん。