ロイヤルバレエ/マルケス/マクレー:リーズの結婚 ― 2012/05/16 23:59
2012.05.16 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: La Fille mal gardée
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Frederick Ashton (Choreography)
Steven McRae (Colas), Roberta Marquez (Lise)
Philip Mosley (Widow), Ludovic Ondiviela (Alain)
Gary Avis (Thomas), Alastair Marriott (Village Notary)
Michael Stojko (Cockerel, Notary's Clerk)
1. Ferdinand Hérold: La Fille mal gardée (orch. arr. by John Lanchbery)
アシュトン振付の「リーズの結婚」は本当に楽しいプログラムなので、妻も娘もこの日を心待ちにしていました。ちょうど2年ぶりですが、例によってマクレー様の踊る日を選んだので、群舞の人々を除いて2年前と全く同じキャストで見ることに。私はどちらかというとコジョカルとか、見たかったんですが…。
最終日だった今日はオン・シネマの生中継があったので、ストールにテレビカメラが6台も入っていました。周辺の人は迷惑だったことでしょう。映像が残るということはDVDソフト化の可能性もあるわけで、妻は今からキャーキャー言って勝手に盛り上がっております。また、今回の「リーズ」の広告ポスターもマクレー&マルケスのカッコいいキメポーズ写真が使ってあり、駅などからはすでに撤去されているようですが、オペラハウスのショップで売り出されていないかと丹念に探しておった妻でした。
冒頭のほのぼのとしたスクリーンから、ラストの赤い傘を見つけたアランの無邪気な笑顔まで、終始見ているこちらの顔も緩みっぱなしの、無心に楽しめるプロダクションです。マルケスは、無垢で華奢で可憐なリーズが本当にはまり役。オペラグラスで見ていると、最初から汗びっしょりで、ちょっと調子が悪かったかもしれません。しかし素人目に何かケチをつけるほどのものではなく、マクレーとのコンビネーションも相変わらず見事。そのマクレー様はいつものごとく、ブレないステップ、滞空時間の長いジャンプ、ビシッと決まったポーズの美しさはどれもこれも素晴らしい。世界に向けて生中継する価値の十分あるプリンシパルたちでした。
未亡人のお母さんは、木靴の踊りが2年前に思ったのと同じく、バラバラとしていてイマイチでした。ふと思ったのは、タップダンスの得意なマクレーさん、将来年齢を重ねて第一線から退いた後は、この未亡人役でヤケにキレキレの木靴の踊りを嬉々として披露していたりするのかな、という妄想です。そういえば、マクレー夫人のエリザベス・ハロッドはニワトリ役で出演していたようですが、何せ着ぐるみなので、どの人か分からず…。ちょっと淋しい夫婦共演ですね。
特筆すべきは、今日のオーケストラがいつものバレエではあり得ないほどに冴えていて、素晴らしかったこと。パッパーノが振るとき以外でこのオケがこんなにしっかりしているのって、今まで聴いたことがないです。現金なものですが、これも生中継の威力でしょうか。しかし、やればできるんだな!じゃあ何故普段からこれをやらんのじゃ!と怒りもちょっと覚えました。
Royal Ballet: La Fille mal gardée
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Frederick Ashton (Choreography)
Steven McRae (Colas), Roberta Marquez (Lise)
Philip Mosley (Widow), Ludovic Ondiviela (Alain)
Gary Avis (Thomas), Alastair Marriott (Village Notary)
Michael Stojko (Cockerel, Notary's Clerk)
1. Ferdinand Hérold: La Fille mal gardée (orch. arr. by John Lanchbery)
アシュトン振付の「リーズの結婚」は本当に楽しいプログラムなので、妻も娘もこの日を心待ちにしていました。ちょうど2年ぶりですが、例によってマクレー様の踊る日を選んだので、群舞の人々を除いて2年前と全く同じキャストで見ることに。私はどちらかというとコジョカルとか、見たかったんですが…。
最終日だった今日はオン・シネマの生中継があったので、ストールにテレビカメラが6台も入っていました。周辺の人は迷惑だったことでしょう。映像が残るということはDVDソフト化の可能性もあるわけで、妻は今からキャーキャー言って勝手に盛り上がっております。また、今回の「リーズ」の広告ポスターもマクレー&マルケスのカッコいいキメポーズ写真が使ってあり、駅などからはすでに撤去されているようですが、オペラハウスのショップで売り出されていないかと丹念に探しておった妻でした。
冒頭のほのぼのとしたスクリーンから、ラストの赤い傘を見つけたアランの無邪気な笑顔まで、終始見ているこちらの顔も緩みっぱなしの、無心に楽しめるプロダクションです。マルケスは、無垢で華奢で可憐なリーズが本当にはまり役。オペラグラスで見ていると、最初から汗びっしょりで、ちょっと調子が悪かったかもしれません。しかし素人目に何かケチをつけるほどのものではなく、マクレーとのコンビネーションも相変わらず見事。そのマクレー様はいつものごとく、ブレないステップ、滞空時間の長いジャンプ、ビシッと決まったポーズの美しさはどれもこれも素晴らしい。世界に向けて生中継する価値の十分あるプリンシパルたちでした。
未亡人のお母さんは、木靴の踊りが2年前に思ったのと同じく、バラバラとしていてイマイチでした。ふと思ったのは、タップダンスの得意なマクレーさん、将来年齢を重ねて第一線から退いた後は、この未亡人役でヤケにキレキレの木靴の踊りを嬉々として披露していたりするのかな、という妄想です。そういえば、マクレー夫人のエリザベス・ハロッドはニワトリ役で出演していたようですが、何せ着ぐるみなので、どの人か分からず…。ちょっと淋しい夫婦共演ですね。
特筆すべきは、今日のオーケストラがいつものバレエではあり得ないほどに冴えていて、素晴らしかったこと。パッパーノが振るとき以外でこのオケがこんなにしっかりしているのって、今まで聴いたことがないです。現金なものですが、これも生中継の威力でしょうか。しかし、やればできるんだな!じゃあ何故普段からこれをやらんのじゃ!と怒りもちょっと覚えました。
LSO室内楽アンサンブル/ゲルギエフ:狐/兵士の物語 ― 2012/05/13 23:59
2012.05.13 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / LSO Chamber Ensemble
Alexander Timchenko (T-1), Dmitry Voropaev (T-1)
Andrey Serov (Bs-1), Ilya Bannik (Bs-1)
Simon Callow (Narrator-2)
1. Stravinsky: Renard
2. Stravinsky: The Soldier’s Tale
3日連続、今週4回目のバービカン。今日はLSOの室内楽アンサンブルで曲目も渋かったためか、サークル、バルコニーは閉鎖されていましたが、それでもストールにも空席が目立ちました。
今日の驚きは、すでにROHの人気者となったヴィットリオ・グリゴーロ君が聴きに来ていたことです。LSOとあまり接点がなさそうなので、意外でした。派手な顔立ちの女性、老紳士と連れ立ってE列に座っていましたが、どうも「狐」に出演した歌手の一人がお友達のご様子。休憩後には消えていたので先に帰ったのかと思いきや、終演後、お連れの人と一緒に駐車場で車に乗り込むところを見たので、別室でお友達と盛り上がっていたんでしょうか。
Valery Gergiev / LSO Chamber Ensemble
Alexander Timchenko (T-1), Dmitry Voropaev (T-1)
Andrey Serov (Bs-1), Ilya Bannik (Bs-1)
Simon Callow (Narrator-2)
1. Stravinsky: Renard
2. Stravinsky: The Soldier’s Tale
3日連続、今週4回目のバービカン。今日はLSOの室内楽アンサンブルで曲目も渋かったためか、サークル、バルコニーは閉鎖されていましたが、それでもストールにも空席が目立ちました。
今日の驚きは、すでにROHの人気者となったヴィットリオ・グリゴーロ君が聴きに来ていたことです。LSOとあまり接点がなさそうなので、意外でした。派手な顔立ちの女性、老紳士と連れ立ってE列に座っていましたが、どうも「狐」に出演した歌手の一人がお友達のご様子。休憩後には消えていたので先に帰ったのかと思いきや、終演後、お連れの人と一緒に駐車場で車に乗り込むところを見たので、別室でお友達と盛り上がっていたんでしょうか。
1曲目の「狐」は男声4人とツィンバロンを含む15人の小管弦楽による、一種のバレエ作品。15分くらいの短い曲です。今日は演奏会形式なので踊りは無し。ストーリーは、鶏が狐に襲われて食べられそうになるが、猫と山羊に助けを求めて狐を撃退する、という単純な話です。男声4人は各々登場キャラクターの鶏、狐、猫、山羊に割り当てられており、そういう先入観で見ると、歌手の皆さんの風貌がまさに各々のキャラクターそっくりに見えてきて、可笑しかったです。ほとんど始めて聴いたのですが(それがこの演奏会に来た理由でもあります)、聴きやすくて楽しい曲です。是非バレエでも見てみたいです。
左から鶏、狐、猫、山羊です。特に右端のバンニクは、まさに山羊(笑)。
メインは「兵士の物語」。ストラヴィンスキーの代表作でかなり有名かと思いますが、こちらも実は聴いたことがありませんでした。7名の奏者とナレーターによる、朗読・演劇・バレエを融合した舞台作品、とのことで、様式的にはごった煮ながらも、わかりやすくて極めて魅力的な音楽です。ブレーク無しで1時間の長丁場を全く飽きることなく楽しめました。ストーリーは、兵役から故郷に帰る途中のヴァイオリン弾きジョゼフが悪魔に騙されて楽器と本を交換し、道草を食っている間に故郷の婚約者は別の男と結婚、当てもなく旅に出たジョゼフは病床のお姫様を悪魔から取り返したヴァイオリンで癒し、手に手を取って城から出て行くが、国境を越えたとたんに悪魔の手に落ち地獄行き、というお話(朗読は早くて途中着いていけなかったので、あらすじは後で調べました)。サイモン・キャロウ(映画「アマデウス」でシカネーダー役の人)の熱演もさることながら、LSOのトップ奏者が集った七重奏は、まさに粒が際立った至高のアンサンブル。ヴァイオリンのシモヴィッチはいつものごとく音楽に全く身を委ね、本当に楽しそうに弾いているのが、見ているこちらも幸せな気分になってきます。トランペットのコッブは対照的にクールに澄ました顔で、難しいフレーズも一点のキズなく吹きこなしてました。めちゃめちゃ贅沢な「兵士の物語」だったんではないでしょうか。
メインは「兵士の物語」。ストラヴィンスキーの代表作でかなり有名かと思いますが、こちらも実は聴いたことがありませんでした。7名の奏者とナレーターによる、朗読・演劇・バレエを融合した舞台作品、とのことで、様式的にはごった煮ながらも、わかりやすくて極めて魅力的な音楽です。ブレーク無しで1時間の長丁場を全く飽きることなく楽しめました。ストーリーは、兵役から故郷に帰る途中のヴァイオリン弾きジョゼフが悪魔に騙されて楽器と本を交換し、道草を食っている間に故郷の婚約者は別の男と結婚、当てもなく旅に出たジョゼフは病床のお姫様を悪魔から取り返したヴァイオリンで癒し、手に手を取って城から出て行くが、国境を越えたとたんに悪魔の手に落ち地獄行き、というお話(朗読は早くて途中着いていけなかったので、あらすじは後で調べました)。サイモン・キャロウ(映画「アマデウス」でシカネーダー役の人)の熱演もさることながら、LSOのトップ奏者が集った七重奏は、まさに粒が際立った至高のアンサンブル。ヴァイオリンのシモヴィッチはいつものごとく音楽に全く身を委ね、本当に楽しそうに弾いているのが、見ているこちらも幸せな気分になってきます。トランペットのコッブは対照的にクールに澄ました顔で、難しいフレーズも一点のキズなく吹きこなしてました。めちゃめちゃ贅沢な「兵士の物語」だったんではないでしょうか。
ゲルギーさん、いつものように爪楊枝を掴んで繊細なんだか無骨なんだかよくわからない指揮をしていました。今日はさすがに最後の拍手の際も、自分は脇に立って終始奏者を称えていました。
トランペットのフィリップ・コッブを称えるゲルギーさん。
トランペットのフィリップ・コッブを称えるゲルギーさん。
コンセルトヘボウ管/ヤンソンス:華麗なるシュトラウス ― 2012/05/12 23:59
2012.05.12 Barbican Hall (London)
Mariss Jansons / Royal Concertgebouw Orchestra, Amsterdam
1. R. Strauss: Also sprach Zarathustra
2. R. Strauss: Metamorphosen
3. R. Strauss: Der Rosenkavalier - Suite
先月に次ぎ、RCOチクルス第2弾は首席指揮者ヤンソンスの登場です。客席は盛況な入りで、日本人も多数見かけました。
前回がベートーヴェン1曲のみだったのに対し、今日はオール・リヒャルト・シュトラウスでけっこう軽めのプログラムです。1曲目「ツァラ」は先週ウィーンで聴いたばかりですが、比較するのはかわいそうとは言え、さすがにRCOは上手い。磐石のアンサンブルで手堅く聴かせます。冒頭から小気味のよいテンポですいすいと進んで行き、私の好みとしてはもうちょっと重厚にやってくれてもいいのになと感じてふと思い出したのは、ヤンソンスってどちらかというと軽めの曲でも大真面目に仰々しく響かせる人だったのでは、ということ。ちょっとさらさらとしすぎている気がして少し違和感を感じました。なお、最後のほうに出てくる鐘はチューブラーベルではなく、鉄板に切り込みを入れ、やすりで削って調律したサンダーシートの一種でした。
Mariss Jansons / Royal Concertgebouw Orchestra, Amsterdam
1. R. Strauss: Also sprach Zarathustra
2. R. Strauss: Metamorphosen
3. R. Strauss: Der Rosenkavalier - Suite
先月に次ぎ、RCOチクルス第2弾は首席指揮者ヤンソンスの登場です。客席は盛況な入りで、日本人も多数見かけました。
前回がベートーヴェン1曲のみだったのに対し、今日はオール・リヒャルト・シュトラウスでけっこう軽めのプログラムです。1曲目「ツァラ」は先週ウィーンで聴いたばかりですが、比較するのはかわいそうとは言え、さすがにRCOは上手い。磐石のアンサンブルで手堅く聴かせます。冒頭から小気味のよいテンポですいすいと進んで行き、私の好みとしてはもうちょっと重厚にやってくれてもいいのになと感じてふと思い出したのは、ヤンソンスってどちらかというと軽めの曲でも大真面目に仰々しく響かせる人だったのでは、ということ。ちょっとさらさらとしすぎている気がして少し違和感を感じました。なお、最後のほうに出てくる鐘はチューブラーベルではなく、鉄板に切り込みを入れ、やすりで削って調律したサンダーシートの一種でした。
休憩時間に知人と「今日のヤンソンスは調子が悪いのではないか」というような会話をして、私はクオリティの低さは感じなかったけど、確かに前のヤンソンスとは違う感覚もあって、しかしそれは席が遠いせいだろうと思っていました。次のメタモルフォーゼン、CDはありますがほとんど聴かない曲です。なかなか指揮者が出てこないと思ったら、何とコンマスが弓を振り、指揮者なしで演奏を始めました。少人数の弦楽合奏のみですが、指揮者なしでは絶対厳しそうな複雑な曲です。よく知らない曲なので出来栄えの程はよくわかりませんが、コンマスは自分の演奏よりもアンサンブルの統率に腐心している様子でした。RCOの弦はいつも骨太で密度の濃いサウンドを聴かせてくれるのですが、その秘密は充実したヴィオラパートが寸分の隙間なく中音域を支えていることにあるのだなと感じました。
最後は再びヤンソンスが登場し、「ばらの騎士」組曲。最後のワルツはアンコールでよくやってくれますし、見るからに得意曲。ご機嫌な表情でオケをノリノリにドライブしていました。肩肘張らず気楽に聴ける極上の音楽は、贅沢の極みですね。またオペラのほうも見たくなってきます。ヤンソンス、やっぱり体調悪かったのか、終演後は息が上がって、肩で息をしてしていました。そのせいか、今日はアンコールはなし。後で教えてもらった情報によると、ヤンソンスはやはり風邪で体調不良だったそうで、翌日のマスタークラスはキャンセルしたそうです。妻の知人はキャンセルを知らずに出かけていって無駄足を踏んだそうで、嘆きのメールが飛んできていました…。
PROMS 2012 ブッキング ― 2012/05/12 10:00

今年は今日の朝9時からブッキング開始でした。例年通りProms Plannerで先にリストアップしておき、サイトに繋がったら一気に購入します。今年は9時6分ごろやっとWaiting Roomに入ることができ、すでに1450人待ち。昨年は820人待ちだったから、今年はちょいと出遅れました。それでも9時40分にはサイトに入れて、ピックアップした9演奏会のチケットをほぼ希望通りにゲットし、53分に無事脱出。ほっ。
PROMSも立見じゃなければけっこう安くなくて、家族で出かける分もあるので、今年は目玉の演奏会がそんなになかったはずなのに、気付けば去年よりもだいぶ多く出費してしまいました。ともあれ、運が良ければ皆様また会場でお会いしましょう。
PROMSも立見じゃなければけっこう安くなくて、家族で出かける分もあるので、今年は目玉の演奏会がそんなになかったはずなのに、気付けば去年よりもだいぶ多く出費してしまいました。ともあれ、運が良ければ皆様また会場でお会いしましょう。

LSO/ゲルギエフ/カヴァコス(vn):ストラヴィンスキー、開幕 ― 2012/05/11 23:59
2012.05.11 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
London Symphony Chorus
Maud Millar (S-1), Chloë Treharne (Ms-1)
Allessandro Fisher (T-1), Sandy Martin (T-1)
Oskar Palmbald (Bs-1)
Leonidas Kavakos (Vn-2)
1. Stravinsky: Mass
2. Stravinsky: Violin Concerto in D major
3. Stravinsky: The Firebird – complete ballet
ゲルギエフとLSOが今シーズン取り組むテーマの一つ、ストラヴィンスキーのシリーズが今日から始まります。まず1曲目、初めて聴く「ミサ曲」は、10名のウインド・アンサンブルとコーラスという特異な編成ながら、キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイという基本要素はきっちり押さえた、たいへんコンパクトなミサ曲です。作風区分で言うと新古典主義時代の最後のほうで、伴奏は多少おどけた雰囲気も出てないことはないですが、全般的に端正にハーモニーが整えられた、いたって厳かで真面目な曲でした。
先日と同じくロンドンシンフォニーコーラスは勉強熱心、出番が終わっても「コーラス席」にそのまま座って次の曲を聴いていました。次のヴァイオリン協奏曲もバリバリ新古典主義時代の作品で、けっこうお気に入りの曲なのでよく聴いているんですが、CDはムローヴァのしか持ってなく、唯一実演で聴いたのもムローヴァだったので、他の人が弾くとどうなるのか興味津々でした。去年のプロムスで容貌の変わりぶりに驚いてしまったカヴァコスは、どうも長髪が気に入ったようで、今や無精髭ぼーぼーの完全なヲタクルック。漂う不潔感ではゲルギエフに負けていません(笑)。しかしヴァイオリンとなると話は別、やっぱりこの人は超盤石なテクニックでどんな曲でも余力を持って弾き切ります。特にこういった軽めの曲では、肩の力の入らなさが実にニクらしい。大らかであり男勝りにガツガツ弾くムローヴァとはひと味違った、男の余裕の美学が感じられて面白かったです。
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
London Symphony Chorus
Maud Millar (S-1), Chloë Treharne (Ms-1)
Allessandro Fisher (T-1), Sandy Martin (T-1)
Oskar Palmbald (Bs-1)
Leonidas Kavakos (Vn-2)
1. Stravinsky: Mass
2. Stravinsky: Violin Concerto in D major
3. Stravinsky: The Firebird – complete ballet
ゲルギエフとLSOが今シーズン取り組むテーマの一つ、ストラヴィンスキーのシリーズが今日から始まります。まず1曲目、初めて聴く「ミサ曲」は、10名のウインド・アンサンブルとコーラスという特異な編成ながら、キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイという基本要素はきっちり押さえた、たいへんコンパクトなミサ曲です。作風区分で言うと新古典主義時代の最後のほうで、伴奏は多少おどけた雰囲気も出てないことはないですが、全般的に端正にハーモニーが整えられた、いたって厳かで真面目な曲でした。
先日と同じくロンドンシンフォニーコーラスは勉強熱心、出番が終わっても「コーラス席」にそのまま座って次の曲を聴いていました。次のヴァイオリン協奏曲もバリバリ新古典主義時代の作品で、けっこうお気に入りの曲なのでよく聴いているんですが、CDはムローヴァのしか持ってなく、唯一実演で聴いたのもムローヴァだったので、他の人が弾くとどうなるのか興味津々でした。去年のプロムスで容貌の変わりぶりに驚いてしまったカヴァコスは、どうも長髪が気に入ったようで、今や無精髭ぼーぼーの完全なヲタクルック。漂う不潔感ではゲルギエフに負けていません(笑)。しかしヴァイオリンとなると話は別、やっぱりこの人は超盤石なテクニックでどんな曲でも余力を持って弾き切ります。特にこういった軽めの曲では、肩の力の入らなさが実にニクらしい。大らかであり男勝りにガツガツ弾くムローヴァとはひと味違った、男の余裕の美学が感じられて面白かったです。
ところでカヴァコスはこのところ3年連続でプロムスで見ていて、ブダペストのころも何度か見ているのですが、容貌の変容が面白いです。上の髪を伸ばしたヲタクルックは昨年のプロムスからです。


メインの「火の鳥」はゲルギーさんの得意中の得意、これがまた腰を抜かさんばかりの豪演に痺れました。躍動という言葉を忘れてしまったかのような先日のバルトークから一転、終始ヴィジュアルを喚起するダイナミックな演奏。「良いLSO」と「悪いLSO」があるとすれば、今日は全く「良いLSO」が全面に出ていました。デリケートな弦の弱音から強烈な大太鼓のアクセントまで、どのパートも集中力を切らさず最後まで緊張感を持続し、キズなし完璧というわけではなかったものの、是非とも録音していて欲しかった演奏でした(マイクがなかったのでしてないと思いますが)。クライマックスの「魔王カスチェイの凶悪な踊り」では最後にあまりに無茶な加速をして、それに応えるLSOの凄さよ。「火の鳥」は来シーズンのロイヤルバレエのプログラムに入っていますが、このオケと指揮者をこのままそっくりオペラハウスのオケピットに持って行きたい、と思ってしまいました。
かんとくさんのアイドル、チェロのミナ嬢は、入場のときにちらっと姿は見えたものの、後ろのほうだったので演奏中は全く見えず、残念…。理想のポジショニングはなかなか難しいです。
かんとくさんのアイドル、チェロのミナ嬢は、入場のときにちらっと姿は見えたものの、後ろのほうだったので演奏中は全く見えず、残念…。理想のポジショニングはなかなか難しいです。
リンツ・ブルックナー管/D.R.デイヴィス@ウィーン楽友協会 ― 2012/05/05 23:59
2012.05.05 Musikverein, Grosser Saal (Vienna)
Dennis Russell Davies / Bruckner Orchester Linz
1. Mozart: Maurerische Trauermusik, KV 477
2. R. Strauss: Also sprach Zarathustra, Op. 30
3. Haydn: Symphony No. 86 in D major
バンクホリデー休暇のウィーン小旅行中に何か演奏会はないかと探したところ、オペラ座はすでに席なしだったけど、楽友協会で「ツァラ」を発見。デニス・ラッセル・デイヴィスとリンツ・ブルックナー管はまだ聴いたことがないし、チケットも安めだったのでこれに決定。聴衆はほとんど観光客という感じで、ゴールデンウィークということもあってか日本人も多数来ていました。
Dennis Russell Davies / Bruckner Orchester Linz
1. Mozart: Maurerische Trauermusik, KV 477
2. R. Strauss: Also sprach Zarathustra, Op. 30
3. Haydn: Symphony No. 86 in D major
バンクホリデー休暇のウィーン小旅行中に何か演奏会はないかと探したところ、オペラ座はすでに席なしだったけど、楽友協会で「ツァラ」を発見。デニス・ラッセル・デイヴィスとリンツ・ブルックナー管はまだ聴いたことがないし、チケットも安めだったのでこれに決定。聴衆はほとんど観光客という感じで、ゴールデンウィークということもあってか日本人も多数来ていました。
楽友協会大ホールのきらびやかさはやっぱり別格で、ここにまた来れた喜びも相まって、思わずため息が出ます。ただ、ウィーンの聴衆マナーは相変わらずで、演奏中の咳がうるさいこと。演奏中にバシャバシャとシャッター切る人もたくさんいましたが、極めつけは音楽が始まってもまだ高々とiPadを担ぎ上げ、内蔵カメラで写真を撮ってたヤツ。羞恥心はないのだろうか。もし自分が後ろの席だったらブチキレてますなー。
写真で見たデイヴィスはエッシェンバッハそっくりの風貌ですが、眼鏡をかけた実物はもっと温和な雰囲気でした。1曲目の「フリーメイソンのための葬送音楽」は非常にソフトなタッチの弦で開始し、ちょっとピリオド系が入った軽いビブラートでなかなか統率の取れた合奏を聴かせました。そのまま切れ目なく「ツァラトゥストラかく語りき」に突入。トランペットは一昨年のLSOのように豪快に外すことなく持ちこたえていましたが、ティンパニは派手な動作にしてはロールとシングルの繋ぎがどうもぎこちない。ここのホールのオルガンを聴くのは初めての気がするので、イントロはまあまあ感動的でした。その後はちょっと流れの悪い展開で、ソフトタッチなのはいいけれど、どうにもドライブ感がありません。普段ブルックナーを得意とするオケにしては、管楽器と低弦はパワー不足だなあと思いました。前半の最後、冒頭のド・ソ・ドをフル編成で総奏してブレイクする箇所で、指揮者がちょっと長めのパウゼを入れたので、今日の客ならここで拍手が起こらないかとヒヤヒヤしましたが、幸いそんなことはなく速やかに後半に突入。後半の鬼門、トランペットのオクターヴ跳躍は無難に切り抜けていました。と思ったら、その後のヴァイオリンソロは外しまくりでちょっといただけなかった。コンマスさんがこのレベルでは、オケ全体のレベルも疑われてしまいます。全体的にフォーカスが定まらない演奏で、「ツァラ」をやるにはちょっとオケが迫力不足、ホールの音響とオルガンに何とか助けられたという感じです。
うーむと思いつつ、気を取り直して後半のハイドンへ。これは小気味のよい好演でした。デイヴィスは元々は現代音楽寄りの人だったようですが、ブルックナー全集のほか、ハイドンの交響曲全集というなかなか敢行できる人が少ない仕事も成し遂げていて、面目躍如の本領発揮という感じでした。楽器はモダンですが軽めのビブラートをかけた準ピリオドスタイルの演奏は、昨今ではどこでもそんな感じなので差別化が難しく、個性はよくわからなかったものの、前半のシュトラウスよりはずっとハマっていました。アンコールではネタがなかったのか、終楽章の後半部分をもう一度演奏しました。しかし、このコンビがもしロンドンにやってきても、あえて再び聴きに行くことは、多分ないかも。
今年もウィーン ― 2012/05/04 23:59
今年の5月のバンクホリデーは、昨年と同じく白アスパラを食べにウィーンにまで行ってきました。まずは今年見て珍しかったものを。
ブダペストから通っていたころはほぼ定宿になっていたMercure Secessionに、今回久々に泊まりました。名のごとくSecession(ウィーン分離派会館)の近くにあります。今やってる企画展にからんで、入り口横の亀に支えられた瓶には緑緑としたスイカのオブジェが置かれており、かなり違和感がありました。
ちなみに上は7年前に撮った写真ですが、このときは植木が植えられていました。普段は何も入っていないはずです。
週末の繁華街ケルントナー通りには大道芸人が多く出ていますが、今回目を引いたのは「空中に浮くオジサンたち」。
棒に片手片足でくっついて中に浮いています。どの角度から見ても透明な椅子があったり、ピアノ線でつり上げていたりといった仕掛けがわかりません。女の子からツーショットの写真をひっきりなしにお願いされ、この日随一の人気者でした。
別の場所には宙に腰掛けるオジサンが。
さらには、完全に宙に浮いてしまっているブロンズおじさんもいました。この人も、やっぱり足の下には何もありそうになく、とすると、あと可能性としては、非常に丈夫な素材でできたフレームの上に乗ったり座ったりしているだけなのかなと。
さて、ホテル近くには「パパゲーノ通り」という名前の道があって、この先には何があるんだろうと行ってみると。
モーツァルトではなくベートーヴェンの名前をつけたホテルがありました。
どん詰まりにはアン・デア・ウィーン劇場がありました。「フィデリオ」や「英雄」「運命」「田園」の初演をやった場所で、やはりベートーヴェンとゆかりが深いとはいえ、この劇場を作ったシカネーダーはモーツァルト「魔笛」の台本を手がけ、初演でパパゲーノを歌ったことで有名です。ということで、話は上手くパパゲーノに着陸しました。
おまけ。ホテルのロビーの壁には所狭しとオペラ歌手のサイン入り写真が飾ってありました。元のオーナーの趣味なんでしょうか。
よく見ると下の段にアーダーム・フィッシャーのすごく若い頃の写真が。髪ふさふさ〜。何度もここに泊まりながら、今まで気付かなかったなあ。
とりとめがなくすいません。次回に続く。
ロンドン響/エトヴェシュ/テツラフ(vn):7時半だョ!全員集合 ― 2012/04/29 23:59
2012.04.29 Barbican Hall (London)
Peter Eötvös / London Symphony Orchestra
Ladies of the London Symphony Chorus
Christian Tetzlaff (Vn-2)
1. Debussy: Three Nocturnes
2. Szymanowski: Violin Concerto No. 1
3. Scriabin: Symphony No. 4 (‘Poem of Ecstasy’)
元々はブーレーズが振るはずだったこの演奏会、代役がエトヴェシュと聴いてがっかりしてしまったのは前に書いた通りです。やはりブログ仲間でもブーレーズ目当てでチケットを買った人は多く、dognorahさん、かんとくさん、Voyage2Artさん、feliz2さんと、演奏会志向の人々は全員集合状態でした。お目にはかかりませんでしたが、つるびねったさんも絶対いらしたに違いない。
本日の選曲コンセプトは多分「極彩色」。フランス、ポーランド、ロシアと国際色豊かに、色彩感豊かな派手な曲が並びます。feliz2さんは「大人向けの夜の音楽特集」とおっしゃってましたが、確かに言われてみるとその通りですね。それにしても、「目が悪い」という理由でキャンセルしたブーレーズ、この選曲なら目を瞑ってても指揮できるだろうに、何とか出てきて欲しかったですなー、と、しつこく愚痴ります。
1曲目「3つの夜想曲」は、第1曲こそ縦の線が思いっきりズレ気味であれっと思ったのですが、さすがLSOですからすぐに持ち直し、第2曲以降は圧巻のカラフルサウンドがこれでもかと響き渡ってました。元々エトヴェシュはどの楽器もくっきりと鳴らして曲の仕組みを浮き彫りにするタイプの人で、その一方で繊細な弱音にはあまり執着がないのですが、今日の演奏もそんな感じでした。ただ、第3曲の女性コーラスは雑でイマイチ。ここはもうちょっと細やかなコントロールが欲しいところでした。しかし今日の新発見は、ハンガリー時代から何度か聴いてきたエトヴェシュが、意外と「熱い」演奏をやるんだなーということ。大編成のオケをガンガン鳴らしていても、現代作曲家らしくもっとクールに徹した印象がありましたが、それはひとえに自作自演の演奏ばかり聴いてきたからかもしれない。今回のブーレーズの代役ではフランス遠征も一緒に引き受けていますので、ちょっと気合が入ってるのもあるかもしれません。
次のシマノフスキは、何と言ってもテツラフの凄さに尽きました。この人は相変わらず上手過ぎです。先日見たヴェンゲーロフとは相当違い、全身を無駄なく使って、息をするように、歌うように、踊るように、あるいは歩くように、食事をするように、本当に楽器と身体が一体となって、音楽が澱みなく自然と湧き出てきます。低音から高音まで一点の曇りもなく音が澄み切っており、それでいて至高の純米大吟醸酒のごとく一本芯の通った力強い音。かすかに震える最弱音から、フル編成で鳴らし放題のLSOにも全然負けてない最強音まで、信じられないくらいに広いダイナミクス。ほとんど馴染みのないシマノフスキのコンチェルトを聴いてさえ、とてつもない吸引力に眠くなるヒマもなく圧倒されっぱなしでした。聴くたびにそんな超越レベルの演奏を聴かせてくれて、プロの中のプロとは正にこの人のことを指すのだな、と。
アンコールはバルトークの無伴奏ソナタから「メロディア」(と、後で教えてもらいました。無伴奏ソナタは2種類CDを持っているのに、あまり聴いてないのがバレバレ…)。アンコールでやるには長い曲ですが、超々弱音から瞑想的に始まり、途中弱音器を付け外したりの小技はあるものの、名人芸的なパッセージなど一つもないのに、素人が息を呑み続ける極度の緊張感と圧迫感。この人だからこそ達し得た高みの演奏に心を洗われ、今日はかぶりつき席を買っておいて本当に良かったと、しみじみ。テツラフはバリバリ現役ヴァイオリニストの中でも、最も聴きにいく価値がある奏者の間違いなく筆頭でしょう。今後も、チャンスがある限り逃さず聴きたいです。
休憩後の「法悦の詩」は有名曲ですが、20分程度なのでメインとしてちょっと短いような。実演で聴くのは学生時代以来ですから相当久しぶり。前聴いたときのシチュエーションはよく覚えていますが(ええ、デートでした、ええ、上手く行きませんでしたとも)、それは本題ではないとして。ここまで天下のLSOをよく鳴らしてきたエトヴェシュさん、最後はホルン8本、トランペット5本、打楽器盛り沢山の大編成オケをさらに惜しみなく鳴り響かせ、高揚感溢れる圧巻の「エクスタシー」を形作っていました。私、世間で言われるほどこの曲に「えっち」なものを感じることはできず、確かにエモーショナルではあるけど、もっと普遍的で根源的な芸術の高揚と理解しています。この曲で「えっち」な想像をする人は、ジュゴンを見てトップレスの人魚と錯覚するようなもんじゃないのかな。それとも、私の想像力が乏しいんでしょうか…。
と、話がシモのほうにちょっと下りてしまったところで、かんとくさんお気にのミナ嬢は今日はお休み。他に誰か(誰が?)いないかと見渡したところ、第1ヴァイオリンの末尾に座っていた二人の若い女性奏者のうち一方は、Erzsebet Raczというハンガリー人ですが、記憶のある名前だと思ったら、昨年10月に見た王立音楽大学のオケでコンミスやってた人ですね。LSOのExperience Schemeというトレーニングプログラムで今年からずっとエキストラ参加しているようですが、今日初めて気付きました。昨年聴いたときには天賦のソリストの音を持った人だと感じたので、経験を積んで是非ステップアップしていって欲しいですね。
Peter Eötvös / London Symphony Orchestra
Ladies of the London Symphony Chorus
Christian Tetzlaff (Vn-2)
1. Debussy: Three Nocturnes
2. Szymanowski: Violin Concerto No. 1
3. Scriabin: Symphony No. 4 (‘Poem of Ecstasy’)
元々はブーレーズが振るはずだったこの演奏会、代役がエトヴェシュと聴いてがっかりしてしまったのは前に書いた通りです。やはりブログ仲間でもブーレーズ目当てでチケットを買った人は多く、dognorahさん、かんとくさん、Voyage2Artさん、feliz2さんと、演奏会志向の人々は全員集合状態でした。お目にはかかりませんでしたが、つるびねったさんも絶対いらしたに違いない。
本日の選曲コンセプトは多分「極彩色」。フランス、ポーランド、ロシアと国際色豊かに、色彩感豊かな派手な曲が並びます。feliz2さんは「大人向けの夜の音楽特集」とおっしゃってましたが、確かに言われてみるとその通りですね。それにしても、「目が悪い」という理由でキャンセルしたブーレーズ、この選曲なら目を瞑ってても指揮できるだろうに、何とか出てきて欲しかったですなー、と、しつこく愚痴ります。
1曲目「3つの夜想曲」は、第1曲こそ縦の線が思いっきりズレ気味であれっと思ったのですが、さすがLSOですからすぐに持ち直し、第2曲以降は圧巻のカラフルサウンドがこれでもかと響き渡ってました。元々エトヴェシュはどの楽器もくっきりと鳴らして曲の仕組みを浮き彫りにするタイプの人で、その一方で繊細な弱音にはあまり執着がないのですが、今日の演奏もそんな感じでした。ただ、第3曲の女性コーラスは雑でイマイチ。ここはもうちょっと細やかなコントロールが欲しいところでした。しかし今日の新発見は、ハンガリー時代から何度か聴いてきたエトヴェシュが、意外と「熱い」演奏をやるんだなーということ。大編成のオケをガンガン鳴らしていても、現代作曲家らしくもっとクールに徹した印象がありましたが、それはひとえに自作自演の演奏ばかり聴いてきたからかもしれない。今回のブーレーズの代役ではフランス遠征も一緒に引き受けていますので、ちょっと気合が入ってるのもあるかもしれません。
次のシマノフスキは、何と言ってもテツラフの凄さに尽きました。この人は相変わらず上手過ぎです。先日見たヴェンゲーロフとは相当違い、全身を無駄なく使って、息をするように、歌うように、踊るように、あるいは歩くように、食事をするように、本当に楽器と身体が一体となって、音楽が澱みなく自然と湧き出てきます。低音から高音まで一点の曇りもなく音が澄み切っており、それでいて至高の純米大吟醸酒のごとく一本芯の通った力強い音。かすかに震える最弱音から、フル編成で鳴らし放題のLSOにも全然負けてない最強音まで、信じられないくらいに広いダイナミクス。ほとんど馴染みのないシマノフスキのコンチェルトを聴いてさえ、とてつもない吸引力に眠くなるヒマもなく圧倒されっぱなしでした。聴くたびにそんな超越レベルの演奏を聴かせてくれて、プロの中のプロとは正にこの人のことを指すのだな、と。
アンコールはバルトークの無伴奏ソナタから「メロディア」(と、後で教えてもらいました。無伴奏ソナタは2種類CDを持っているのに、あまり聴いてないのがバレバレ…)。アンコールでやるには長い曲ですが、超々弱音から瞑想的に始まり、途中弱音器を付け外したりの小技はあるものの、名人芸的なパッセージなど一つもないのに、素人が息を呑み続ける極度の緊張感と圧迫感。この人だからこそ達し得た高みの演奏に心を洗われ、今日はかぶりつき席を買っておいて本当に良かったと、しみじみ。テツラフはバリバリ現役ヴァイオリニストの中でも、最も聴きにいく価値がある奏者の間違いなく筆頭でしょう。今後も、チャンスがある限り逃さず聴きたいです。
休憩後の「法悦の詩」は有名曲ですが、20分程度なのでメインとしてちょっと短いような。実演で聴くのは学生時代以来ですから相当久しぶり。前聴いたときのシチュエーションはよく覚えていますが(ええ、デートでした、ええ、上手く行きませんでしたとも)、それは本題ではないとして。ここまで天下のLSOをよく鳴らしてきたエトヴェシュさん、最後はホルン8本、トランペット5本、打楽器盛り沢山の大編成オケをさらに惜しみなく鳴り響かせ、高揚感溢れる圧巻の「エクスタシー」を形作っていました。私、世間で言われるほどこの曲に「えっち」なものを感じることはできず、確かにエモーショナルではあるけど、もっと普遍的で根源的な芸術の高揚と理解しています。この曲で「えっち」な想像をする人は、ジュゴンを見てトップレスの人魚と錯覚するようなもんじゃないのかな。それとも、私の想像力が乏しいんでしょうか…。
と、話がシモのほうにちょっと下りてしまったところで、かんとくさんお気にのミナ嬢は今日はお休み。他に誰か(誰が?)いないかと見渡したところ、第1ヴァイオリンの末尾に座っていた二人の若い女性奏者のうち一方は、Erzsebet Raczというハンガリー人ですが、記憶のある名前だと思ったら、昨年10月に見た王立音楽大学のオケでコンミスやってた人ですね。LSOのExperience Schemeというトレーニングプログラムで今年からずっとエキストラ参加しているようですが、今日初めて気付きました。昨年聴いたときには天賦のソリストの音を持った人だと感じたので、経験を積んで是非ステップアップしていって欲しいですね。
We Will Rock You - The Musical by Queen and Ben Elton ― 2012/04/28 23:59
2012.04.28 Dominion Theatre (London)
We Will Rock You - The Musical by Queen and Ben Elton
Noel Sullivan (Galileo Figaro), Emma Hatton (Scaramouche)
Brenda Edwards (Killer Queen), Alasdair Harvey(Khashoggi)
Wayne Robinson (Brit), Rachel John (Meat)
David Gwyn (Rebel Leader), Dean Read (Pop)
今年10周年の人気ミュージカル。クイーンファンのはしくれとして、一度は見とかなくてはとずっと思いつつもなかなかチャンスがなく(時間がなかったというよりは、オケ、オペラ、バレエへの投資を優先していたからなんですが)、ようやく見に行けました。
会場はトテナム・コートロード駅を出て目の前のドミニオン・シアター。エントランスの上に巨大なフレディ像があるので非常に目立ちます。中に入ると結構古くさい劇場。コリーシアムよりもさらにくたびれてる感じです。席はストールの後方(WW列)だったのですが、上階席の天井が思いっきりかぶさっていて圧迫感があり、舞台の上のほうは一部見えないものの、鑑賞に支障があるほどのものではありません。実はチケットを取る際、ロンドンに来たてのころホールの席選びで大いに勉強になったTheatremonkey.comのコメントを今回も参考にさせてもらいました。そこにもあるように、このクラスのチケットでは一つ前のVV列のほうがベターでしょう。というのは、何故だかわかりませんがVV列のさらに前の3列分くらい、一人も座らずごそっと空いていて視界良好だったからです。多分高いチケットの最後尾なので売れないんでしょう。
We Will Rock You - The Musical by Queen and Ben Elton
Noel Sullivan (Galileo Figaro), Emma Hatton (Scaramouche)
Brenda Edwards (Killer Queen), Alasdair Harvey(Khashoggi)
Wayne Robinson (Brit), Rachel John (Meat)
David Gwyn (Rebel Leader), Dean Read (Pop)
今年10周年の人気ミュージカル。クイーンファンのはしくれとして、一度は見とかなくてはとずっと思いつつもなかなかチャンスがなく(時間がなかったというよりは、オケ、オペラ、バレエへの投資を優先していたからなんですが)、ようやく見に行けました。
会場はトテナム・コートロード駅を出て目の前のドミニオン・シアター。エントランスの上に巨大なフレディ像があるので非常に目立ちます。中に入ると結構古くさい劇場。コリーシアムよりもさらにくたびれてる感じです。席はストールの後方(WW列)だったのですが、上階席の天井が思いっきりかぶさっていて圧迫感があり、舞台の上のほうは一部見えないものの、鑑賞に支障があるほどのものではありません。実はチケットを取る際、ロンドンに来たてのころホールの席選びで大いに勉強になったTheatremonkey.comのコメントを今回も参考にさせてもらいました。そこにもあるように、このクラスのチケットでは一つ前のVV列のほうがベターでしょう。というのは、何故だかわかりませんがVV列のさらに前の3列分くらい、一人も座らずごそっと空いていて視界良好だったからです。多分高いチケットの最後尾なので売れないんでしょう。

ちなみに、WW列から見たステージはこんな感じです。
ミュージカルは当然クイーンの楽曲のみで構成されていて、休憩含めて3時間くらいと、結構長いです(でもオペラを思うと普通か)。あらすじは、
遠い未来、キラー・クイーン率いる巨大企業グローバル・ソフトに支配された地球で、ボヘミアンと名乗る反乱分子が地下活動(アジトは廃墟となったトテナム・コートロード地下鉄駅)を続けている最中、少年ガリレオと少女スカラムーシュが出会い、ボヘミアン達と共に伝説のロックバンド・クイーンが残した楽器を探す。ついに見つけた伝説の地で石の中から出現したブライアン・メイ・スペシャルモデルのギターを弾くとキラー・クイーンは倒れ、人々に自由が訪れた、めでたしめでたし、「伝説のチャンピオン」大合唱。ボヘミアン・ラプソディも聴きたいかい?
という、まあたわいもないもの。曲のセットリストは以下の通りです。
Act I:
1. Innuendo
2. Radio Ga Ga
3. I Want to Break Free
4. Somebody to Love
5. Killer Queen
6. Play the Game
7. Death on Two Legs (instrumental)
8. Under Pressure
9. A Kind of Magic
10. I Want It All
11. Headlong
12. No-One but You
13. Crazy Little Thing Called Love
14. Ogre Battle (instrumental)
Act II:
15. One Vision
16. Who Wants to Live Forever
17. Flash
18. Seven Seas of Rhye
19. Fat Bottomed Girls
20. Don't Stop Me Now
21. Another One Bites the Dust
22. Hammer to Fall
23. These Are the Days of Our Lives
24. Bicycle Race
25. Headlong (reprise)
26. Brighton Rock solo (instrumental)
27. Tie Your Mother Down (instrumental)
28. We Will Rock You
29. We Are the Champions
Encore:
30. We Will Rock You (fast version)
31. Bohemian Rhapsody
ぱっと見、後期の曲に偏ってるかも、と思ったのですが(まあどこからが「後期」かという議論はあるものの)、実際に初出のアルバムごとに集計すると以下のようなところでした(2回出てくるHeadlongは1回として数えてます)。
2 Queen II (1974)
2 Sheer Heart Attack (1974)
2 A Night at the Opera (1975)
2 A Day at the Races (1976)
2 News of the World (1977)
3 Jazz (1978)
1 Live Killers (1979)
3 The Game (1980)
1 Flash Gordon (1980)
1 Greatest Hits (1981) or Hot Space (1982)
3 The Works (1984)
3 A Kind of Magic (1986)
1 The Miracle (1989)
3 Innuendo (1991)
1 *Single (1997) or Greatest Hits III (1999)
これを見ると、一つのアルバムからの選曲は最大3曲に止め、ほぼ全てのアルバムから選出して、どの世代のファンからも支持されたい(逆に言うとソッポを向かれる世代がないように)という全方位的な気配り、別の言い方をするとマーケティング戦略が感じられます。ただ、ファーストの「Queen」と、ある意味ラストの「Made in Heaven」からの選曲が1つもないのは残念で、どうせなら"Keep Yourself Alive"とか"I was born to love you"も押し込んで欲しかった、とは思います。
ロックミュージカルなので音量はロックコンサートと同じと思ってください。普段クラシックのみを聴き慣れた耳になっている人には、音が大き過ぎて絶えられないかもしれません。ミュージシャンは、よく見えなかったのですが舞台左右の櫓の上で分かれて演奏していました。クイーンの楽曲がほぼ原曲そのまんまのアレンジで、ギターソロ含めクイーンサウンドを涙ぐましいくらい忠実に再現しているのが嬉しかったですが、これも当然ファンの涙をしぼる戦略なんでしょう。後であらためてパンフに書いてあったバンドメンバーを見てみると、キーボードにSpike Edney、ベースにNeil Murrayの名前が。何と!モノホンじゃないですか。スパイクは長年ツアーのサポートをやっててほとんどクイーンの準メンバーですし、大御所ニールもブライアン・メイ・バンドでクイーンの曲は相当演奏しています。この日の公演にその人達が実際ピットに入っていたかは確認できませんでしたが(彼らもそんなにヒマじゃない気がする)、このミュージカルがバックバンドの充実を重要視している姿勢はたいへんよくわかりました。
歌手は、もちろんフレディと比較してどうのこうのいうのは野暮として、皆さんさすがにちゃんと「歌える」人が揃ってました。そりゃそうだわな、でないとクイーンの楽曲でミュージカルを構成するというアイデア自体が成り立たないもの。中でもKiller Queen役の人は恰幅の良い黒人女性でしたが、腰の据わった声とコミカルな演技が特筆ものでした。出番が少ないわりに美味しい場面ばかりなのも、おトクな役柄だったでしょう。
クイーン好きなら、まあ一度はご覧になっといて損はないミュージカルです。私も、また見てみたいと思いました。もちろん、本当は本家のクイーンのライブを見れればなあ、という無い物ねだりなんですけどね…。ところでいつもオペラ座や演奏会に頻繁に連れて行ってるうちの娘も、このミュージカルはたいへん気に入ってしまって、「次から私はミュージカルがいい、オペラとかコンサートはもうヤダ」などと抜かしておるので、両親ピンチ、です…。
おまけ。スイスのモントルーにあるフレディの像。




























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