慶應ワグネルソサイエティオーケストラ:マーラー9番2017/03/10 23:59

2017.03.10 みなとみらいホール (横浜)
大河内雅彦 / 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ
1. シューベルト: 劇音楽「ロザムンデ」序曲
2. ワーグナー: 歌劇「リエンツィ」序曲
3. マーラー: 交響曲第9番ニ長調

今年に入ってアマオケばかりですが、慶應ワグネルを聴くのはちょうど3年ぶり。前回もマーラー(7番)でしたが、今回は9番。頻度高いのではと思い過去の演奏履歴を見てみると、例えば京大オケがマーラーを取り上げるのが5年に1度くらいに対して、ワグネルは2年に1度くらいで、確かに多いです。

さすがは慶應というか、出演者も客層も、ナチュラルな富裕層感がそこかしこに漂っています。オケの方は、3年前とほぼ同じ感想ばかりなのですが、前座の序曲とメインでメンバーがガラっと入れ替わっても演奏レベルが極端に変わらないので、自己責任の放任主義ではではなく、コストをかけてきちんとトレーニングされている感じがします。特に弦は全体的にハイレベルだったのですが、第二ヴァイオリンとヴィオラがしっかりしているので安心して聴いていられます。アマオケとは思えない終楽章の重層感は感動的でした。管ではトランペットがアタックもまろやかで、丁寧な仕事がたいへん良かったです。

みなとみらいホールも平日夜ならこうやってふらっと聴きに行けるのになあ、と思って年間スケジュールをチェックしましたが、ここもミューザ川崎と同様、平日は基本的に演奏会やってないんですね。残念。

三井住友海上管弦楽団2017/02/12 23:59

2017.02.12 東京芸術劇場コンサートホール (東京)
水戸博之 / 三井住友海上管弦楽団
1. メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」
2. ビゼー: 「カルメン」第1・第2組曲
3. ブラームス: 交響曲第3番へ長調

今年の序盤はアマオケが続きます。友人が所属している社会人オケを初めて聴きに行ってみました。その名の通り三井住友海上火災保険(株)の本部、支店、関連会社の社員を中心に結成されているようです。賛助会の正副会長には本体の会長、社長が顔を並べ、このホールでほぼ満員の集客力を見ても、会社あげての盤石のバックアップ体制。また、立派な印刷のチラシ、チケット、パンフを見るに、資金力もある相当恵まれた団体のようです。

アマチュアオケに対して細かいことを言うのも野暮で、自分も経験者だから、「そうだよな、ホルンってまともに音が出るだけで奇跡だったよな」というようなことを懐かしく思い出したりして、それよりも何よりも大事なのは、音楽をやるパッション。1曲目の「フィンガルの洞窟」はえらくゆっくりとしたテンポで手探りのように弱々しく進む展開に、ちょっとハラハラしたものを感じましたが、2曲目以降はオケもよく鳴っていて、良かったのではないでしょうか。

カルメンでソロフルートを吹いていた女性が特筆もので、濁りなく透明でありながら、力強くしっかりとした音色がプロ並みに素晴らしかったです。指揮者はまだ若いというか、左手で大きく空をえぐるようなまぎらわしい動きがいちいち気になりました。それにしても、やっぱりブラ3は難敵ですな。1番や2番のように勢いで押し切れない難しさがあります。


京都大学交響楽団100周年記念公演:マーラー「復活」2017/01/22 23:59

2017.01.22 サントリーホール (東京)
京都大学交響楽団創立100周年記念特別公演
十束尚宏 / 京都大学交響楽団
井岡潤子 (soprano-2), 児玉祐子 (alto-2)
京都大学交響楽団第200回定期演奏会記念『復活』合唱団
1. ブラームス: 大学祝典序曲ハ短調 作品80
2. マーラー: 交響曲第2番ハ短調『復活』

前回京大オケを聴いたのは1997年の東京公演@オーチャードホールだから、実に20年ぶり。京大オケが初めて「復活」を演奏した1981年の演奏会を聴いて以降、マーラーの音楽の破壊力と浸透力にすっかり虜になってしまった私としては、いろんな意味で感慨深い演奏会です。

1曲目は記念演奏会に相応しい「大学祝典序曲」。自分の記憶にある30数年前と比べたらもちろんのこと、奏者の女性比率がえらい高くて、あと誤解を恐れずに言うと、京大生も時代は変わったというか、イマドキの可愛らしい女の子ばかり。まあ、若い人がとにかく可愛く見える、単なるおじさん現象かもしれません。この曲と「マイスタージンガー前奏曲」は大学オケなら何かにつけて演奏しているだろうから、世代を問わないおハコかもしれませんが、若手中心と思われるメンバーにして予想以上にしっかりとした演奏に驚いたと同時に、非常に懐かしくもありました。このハイクオリティこそ京大オケ。今はどうだか知りませんが、かつての京大オケは学外からも参加可能の上、年齢制限もなく、留年してでも音楽に命をかけていたような「ヤバい人」が多かったので、そりゃー演奏レベルはハンパなく、京響、大フィルといった関西の軟弱プロオケよりもむしろ上では、とすら時折思ったものです。

メインの「復活」は京大オケとして3回目だそう。さすがにこの大曲は難物で、特に金管は苦しさがストレートに出ており、前半は全体的に浮き足立った感が否めませんでした。3日前の京都公演が実質上のクライマックスで、東京公演は5年に一度のおまけみたいなものだから、ちょっと集中力を切らしてしまったのかもしれません。そうは言ってもやっぱり並の大学オケのレベルじゃありません。良かったのはコンミス嬢のプロ顔負けに艶やかなソロと、全般的に安定していたオーボエとフルート、それに音圧凄まじい打楽器陣。アマチュアならではのパッションはこの曲には絶対にプラスに働き、コーダの盛り上がりは近年聴いた在京プロオケにも勝るものでした。36年前の感動が蘇った瞬間を家族とともに体験できた感慨もあり、ちょっとウルっときてしまいました。京大オケ、東京だと5年に1度しか聴けないのが何とも残念です。

バレンボイム/ベルリン国立歌劇場管:ブルックナー4番、モーツァルト20番2016/02/01 23:59

2016.02.01 サントリーホール (東京)
第35回 東芝グランドコンサート2016
Daniel Barenboim / Staatskapelle Berlin
1. モーツァルト: ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
2. ブルックナー: 交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』 WAB104

帰国以来、海外オケの生演奏はこの東芝グラコン以外結局行けてませんので、私にとっては東芝様様です。その東芝グラコン、今年は35周年を記念してバレンボイム/ベルリン国立歌劇場管によるブルックナー連続演奏会という、近年ではすこぶるゴージャスではあるけれども、企業のプロモーションとしてはマニアック過ぎやしないかと思ってしまう微妙な企画。ましてや東芝さんの昨今の状況を考えると風当たりが心配です…。グラコンは来年以降も続けてくれることを願ってやみませんが。

例によって過去の備忘録を探ると(本当に、記録をつけてなかったら自分事とは言えほとんどが忘却の彼方でしょうね)、バレンボイムの指揮は2012年BBCプロムスの「第九」以来、ピアノは2005年のブダペスト春祭(先日亡くなったブーレーズ/シカゴ響との協演でした…)以来です。シュターツカペレ・ベルリンを聴くのは初めてて、ドレスデンと並んで「まだ見ぬ強豪」の双璧だったので、重ね重ね、東芝様様です。

今日の選曲はどうするのだろうと思っていたら、さすがに、最も一般ウケする第4番を持ってきました。チクルスでの第4番は2月13日だけですので、先んじて聴けるのはちょい幸運。その前に、モーツァルト最初の短調曲、ピアコン第20番ですが、これはちょっと私的には違和感を覚える演奏でした。シュターツカペレ・ベルリンは軽やかな曲が性に合っていないのか、音楽は淀みなく流れるのだけれども、重心の低いどっしりとしたモーツァルト。バレンボイムはその対極に、コロコロした音色で、滑らかに上滑りするような、オーセンティックなモーツァルト。一見異質なもの同士の協奏によって縦に厚みのある音楽が構築されていると見れば、実は良い相性なのかもしれませんが、この取り合わせのCDを私は買おうとは思いませんでした。

メインの「ロマンティック」。バレンボイムはいつものごとくブルックナーでも完全暗譜は凄いです。低い身長を少しでも大きく見せるためとは言え、73歳にしてしゃんと伸びた背筋は、全く衰えを感じさせません。加えて、ミニマムな編成で、全体的に腹八分目くらいで抑えていながらも、要所では圧倒的な馬力で迫ってくる外タレオケの余裕綽々ぶりに、久々の快感を覚えました。特にこの曲で重要な役割のホルントップは、華奢な身体なのに非常にパワフル。全般的に管の音は、もっとマイルドで燻んだものを想像していたら、結構モダンでとげとげしい音色でした。弦も負けじと力強い音圧を感じさせ、特にヴィオラの中音域がしっかりしているので、音の厚みが普段聴いている在京オケとは格段に違いました。第2楽章の焦らないモノローグ的な語り口が特に圧巻。後半2楽章も、パワーを見せつけながらも単に鳴らすだけではないメリハリの効いた演奏に、ブルックナーは正直あまり好まない私も、こういうブルックナーなら毎月(毎日とは言いませんが)でも聴きたいものだと思ってしまいました。でも、チクルス全部を買う勇気はないかなあ…。

ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル国立管/アヴデーエワ(p):ショパンとシェヘラザード2015/03/03 23:59

2015.03.03 サントリーホール (東京)
第34回 東芝グランドコンサート2015
Tugan Sokhiev / Orchestre National du Capitole de Toulouse
Yulianna Avdeeva (piano-1)
1. ショパン: ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11(ナショナル・エディション)
2. リムスキー=コルサコフ: 交響組曲『シェヘラザード』Op.35

今年も幸いなことにチケットを譲っていただき、久々の「外タレ」コンサートです。今回はトゥガン・ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管、ソリストは2010年のショパンコンクール優勝者、ユリアンナ・アヴデーエワ。どの人も実演を聴くのは初めてです(トゥールーズ管はプラッソン指揮のオネゲルのCDを持ってました)。日程を見ると今年も強行軍で、2週間足らずのうちに大阪→東京→広島→福岡→金沢(ここまでルノー・カプソンを帯同したAプロ)→名古屋→仙台→川崎→東京と全国を休みなく飛び回っており、オケの疲労が心配です。

今年は司会者も三枝成彰の解説もなく、定刻になったらさくっと演奏が始まりました。客入りはほぼ満杯ながら、客筋が普段より少しノイジーではあります。花粉症の季節に加え、立派なプログラム冊子を入れたプラスチックの袋、これがカサコソ音を立てて、いけない。さてピアノのソロ演奏会にはまず行かない(友人関係を除くと多分皆無)私にとって、ショパンは永遠の「守備範囲外」。このコンチェルト第1番も過去に何度も聴いていますが、正直、起きているのが辛い曲です。ショパンコンクールではアルゲリッチ以来45年ぶりの女性優勝者として話題になったアヴデーエワは、今年30歳のまだ若手。「アルゲリッチ以来」という触れ込みとその個性的なお顔立ちから、何となく豪傑肉食系をイメージしていたら、見かけは華奢だし、実は繊細系のピアノだったので、やはりイメージで勝手な思い込みをしてはいかんと反省しました。さすがに技術は確かというか、この難曲に対しても極めて安定度の高いピアノが最後まで一貫してました。玄人向き、大人向きと言いましょうか。最後まで眠くならずに聴き入ってしまいました。一方で、席がもっと近かったら印象が違うのかもしれませんが、ピアノがオケと溶け合いすぎ、迫るものがありません。ぐいぐい押すタイプではないにせよ、どこか際立つ瞬間を演出できないと、優等生的で終わってしまわないかなあと。フィジカルな演奏技術ということではもちろん最高レベルにあると思いますが、同じレベルに属するピアニストはすでに世界中に相当数いるでしょうから、私の趣味としては、もっと音が暴れているピアノが好みです。アンコールは何かのワルツ(多分ショパンでしょうけど)を弾きました。

メインの「シェヘラザード」は、記録を見るとちょうど3年ぶり。あまり繰り返し聴いている曲ではありません。このオケの特長は弦がしっかりと厚いこと。女性コンマスのソロも安定感がありました。一方管楽器は総じて線が細めで、アメリカやロンドンのオケみたいな圧巻の馬力はありません。そこはフランスのオケというべきか。ホルンは特に、足を引っ張ってました。一方で、フランスのオケは手抜きするとよく揶揄されますが、今日を聴く限りそんな態度は一切なし。今日の選曲だとそんなに馬力は必要ないし、オケの色とあっていたのではないかと。ソヒエフはワシリー・ペトレンコ(昨年の東芝グラコン)やハーディングと同じ「アラフォー」世代の成長株。ロンドンではフィルハーモニア管などを振りに来てたので名前はメジャーでしたが、聴く機会を逃していました。しなやかでキメの細かい棒振り(といっても指揮棒は使ってませんでしたが)は見栄えが良く、オケには好かれそうな器用さを持っていると思いました。総じて表情が濃く重層的な響きに徹しており、こういう奥行きの深さは日本のオケではあまり聴けません。ソヒエフの目指しているところはフランスよりもドイツのオケのほうが共鳴しやすいんじゃないでしょうか。などと考えごとをしながら聴いていたら、第3、第4楽章では各々の木管ソロを際限なく自由に吹かせてみたり、仏製テイストを引き出そうとも工夫している様子。

アンコールはスラヴ舞曲第1番と、「カルメン」第3幕への間奏曲、さらに第1幕への前奏曲。最後は聴衆の手拍子を誘うはしゃぎっぷりで、ご機嫌でツアー終了。第一線級とは言えないまでもしっかり地に足がついたオケと、ノッてる旬の若手指揮者(この世界で30代は若造です)の取り合わせは、昨年のグラコンに劣らず、良いものを聴かせていただきました。

オスロフィル/V.ペトレンコ/諏訪内(vn):これが青春だ!の「巨人」2014/03/19 23:59


2014.03.19 サントリーホール (東京)
第33回 東芝グランドコンサート2014
Vasily Petrenko / Oslo Philharmonic Orchestra
諏訪内晶子 (vn-2)
1. モーツァルト: 歌劇『フィガロの結婚』序曲 K.492
2. メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64
3. マーラー: 交響曲第1番ニ長調「巨人」

オスロフィルも、ワシリーのほうのペトレンコも、生は初めて聴きます。この1週間で3回目のサントリーホールですが、行けなくなった人からチケットを譲ってもらい、予期せず久々に「欧州の息吹き」に触れることができてラッキーでした。

今日は東芝グラコンですからゲストも豪華、開演前に突如三枝成彰が出てきて長々と曲目解説してました。モーツァルトの説明では演目と全然関係ない「レクイエム」発注の逸話を持ち出して、「今話題のゴーストライターだったんですね」などと茶化してましたが、この人、佐村河内守の交響曲第1番「HIROSHIMA」を、著名作曲家つまりスペシャリストの立場からいち早く絶賛していた、ある意味「共犯」だったのでは?

さてそのモーツァルト、軽いジャブで、ヨーロッパクオリティとしては至って普通なんでしょうが、さっそくその雰囲気に呑まれました。2曲目のメンデルスゾーンでは深紅の衣装の諏訪内晶子登場。諏訪内さんは3年前ロンドンで聴いて以来です。さすがにこの曲は弾き慣れていらっしゃるようで、テクニックは盤石で素晴らしい。2階席にもよく届く響きのいいヴァイオリンですなー。ある意味ドライで、音符の処理はたいへん上手いんだけれども、ソリストが伝えたいものがよくわからないというか、心が伝わって来ない演奏ではありました。アンコールはバッハの無伴奏パルティータの確か「ルーレ」でしたが、これはちょっと…。ツアーの疲れが出たかような揺らぎでピリッとしませんでした。

メインの「巨人」でやっとオケと指揮者の力量が測れます。おっ、第1楽章のリピートは省略か、今どき珍しい。どうも管楽器に名手はいなさそうです。木管は音に濁りがあるし、ホルンもちと弱いな。ヤンソンス統治の伝統か、弦はそれなりに厚いです。ワシリー君はそのイケメンぶりに似合って、なかなか格好のいいバトンさばきで、テンポ良くぐいぐいと進めます。ユダヤの血がどーのこーのは一切排除した、スタイリッシュで粘らないマーラー。その是非はともかく、ちょっと急ぎ過ぎで音の処理が雑に思える箇所が散在しました。まあしかし、「巨人」であれば十分に「アリ」なスタイルです。第2楽章も主題の1回目だけアゴーギグをかけて、あとはサラリとしたもの。第3楽章はさらに磨きがかかり、冒頭のコントラバスソロがこれだけ澄んだ音色で演奏されるのを初めて聴きました。終楽章も翳りなくあっけらかんとした、後腐れのない「これが青春だ」のマーラー「巨人」でした。最後の金管パワーは圧巻で、さすがヨーロッパのオケは基礎体力が違います。ツアーの日程見ると12日からほぼ毎日全国を飛び回っており、時差ボケもあってだいぶお疲れのはずなんですが、最後まで息切れしないのはたいしたものです。まだ一流とは言い難いところはいろいろあれど、こんだけの芸を見せられる日本人の指揮者と日本の楽団は、正直いませんよね、残念ながら。

アンコールはハンガリー舞曲の第6番。極端にアゴーギグをかませるそのスタイル、どこかで聴いたことがあるぞと思ったら、あっ、コバケンだった。そういえば今回の来日プログラムはショスタコ5番とマーラー1番だったのですが、この組み合わせは1979年のバーンスタイン/NYP来日公演を思い起こさせます(私は聴けなかったけど)。あるいは、「巨人」の後のアンコールでハンガリー舞曲第6番というのは、ヤンソンス/コンセルトヘボウの得意技でしたね。ワシリー君もちょっとずつ、いろんな先人巨匠の影響下にあるのかもしれません。

ワセオケ/山下一史:早慶戦「7番」勝負2014/03/13 23:59

2014.03.13 サントリーホール (東京)
山下 一史 / 早稲田大学交響楽団
1. R.シュトラウス: 交響詩「ドン・ファン」
2. R.シュトラウス: 楽劇「サロメ」より「7つのヴェールの踊り」
3. ブルックナー: 交響曲第7番ホ長調 (ノヴァーク版)

先月の慶應ワグネルに続き、今月はワセオケです。曲も慶應がマーラー7番だったのに対し、早稲田はブルックナー7番、対極の大曲でがっぷり四つの対局となりました(まー、まさか選曲は対向して決めているわけじゃないから偶然でしょうけど)。

さて、例によって天気は暴風雨の荒れ模様、最近こんなのばっかですが、そのせいかどうか、満員御礼だったはずなのに客席は空席がちらほら。ワグネル同様、学生オケは曲によってメンツがガラリと変わります。1曲目の「ドン・ファン」は多分下級生の若い団員中心だったと思うんですが、いっぱいいっぱいを超えていて、ちょっとキツかった。これは選曲が背伸びし過ぎでしょう。上級生があたり前にやっているからと言って、「ドン・ファン」をなめちゃダメですな。次は管楽器奏者を総入れ替えしての「7つのヴェールの踊り」。弦は同じメンツなのでまだキツめでしたが、木管の個人技が光り、多少大人の落ち着きになってきました。

メインで出てきたのがワセオケの「一軍」なんだと思いますが、無駄なメンバーがいなくて、さすがに休憩前とはレベルが違いました。今日は実は、初めて聴く山下一史の指揮も楽しみにしていたんですが、やけに淡々としていて、お仕事モードという感じ。そのせいもあって、オケもアマチュアらしい熱気が感じられなくて、上手いのだけど小さくまとまってしまったのが残念。どちらかというと私はこの曲が苦手というか、人気曲なのにその良さがイマイチよくわからないんですが、今日もその考えが変わることはなく、ちょっと退屈しました。

アンコールは「都の西北〜」の早稲田校歌。うーむ、そういう会だったのね。どうりでアウェイ感が拭いきれなかったわけだ…。

慶應ワグネル:大雪のあと、若者の「ど根性」マーラーを堪能2014/02/15 23:59

2014.02.15 サントリーホール (東京)
大河内雅彦 / 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ
1. ベートーヴェン: レオノーレ序曲第3番
2. ワーグナー: 歌劇『さまよえるオランダ人』序曲
3. マーラー: 交響曲7番ホ短調『夜の歌』

しばらくぶり、今年初の演奏会。慶應ワグネルは昨年10月の公演を聴く予定が、台風来襲のため行くのを断念したので、これが初鑑賞になります。よほど天候に嫌われているのか、今回も大雪の影響で交通ダイヤは乱れておりましたが、幸い大きな問題もなく会場には行けました。しかし、満員御礼だったはずが、やはり来るのを止めた人は多かったみたいで、空席がちらほら目立ちました。

さて初めて聴く慶應ワグネルは学生オケですから曲によってステージに上る奏者が変わります。最初のほうの曲は年次の若い人が多く、初々しい感じですが、こっちがすっかり年を取ってしまったもので、メインの曲でも皆さん十分に若々しい。総じて感じたのは、メンツが入れ替わっても極端にレベルの違いはなく、思ったよりずっと上手かったということ。まあ人海戦術のおかげもあるんでしょうが、そのへんのヘタレプロオケよりもむしろ馬力があり、最後までヘコたれない根性がありました。弦楽器のボウイングも統率取れているし、ずるく逃げると言うと語弊がありますが、破綻しないすべを心得ている。トレーナーがよほどしっかりしているんでしょう。上級生になればさすがにソリストに達者な人が多く、ヴィオラ、トランペット、フルート、ティンパニは特に印象に残りました。久々に聴いたマーラー7番、心地良く堪能できました。ロンドン、ブダペストでも学生オケをいくつか見てきてその比較で一つ苦言を言うならば、ワグネルはもっと笑顔が欲しいです。皆、顔が真面目過ぎ。

このオケは4年に1回ヨーロッパ演奏旅行をしていて、今年もプラハ、ミュンヘン、ウィーン、ブダペストに行くようです。日本のプロオケはめったに海外に行かないので、日本で最も頻繁に海外公演をしている楽団じゃないかと思ったら、早稲田のオケは何と3年に1回ペースで演奏旅行しているようです。いやはや、さすが早慶、こんなところでも競い合ってますな。個人的にはドイツ、オーストリアばかりの早稲田より、プラハとかブダペストにも行ってくれる慶應に好感が持てますが。

最近仕事が立て込んでいて余裕がなく、演奏会もさっぱりご無沙汰しておりますが、3月からは心を入れ替え、できるだけ週一くらいのペースで出かけるのを目標にしております。

パリ管/佐渡/ベレゾフスキー(p):サル・プレイエルへのリベンジ2013/06/05 23:59


2013.06.05 Salle Pleyel (Paris)
Yutaka Sado / Orchestre de Paris
Boris Berezovsky (piano-2)
Chœur de l'Orchestre de Paris (choir-4,5,7,8,9,11,12)
1. Ibert: Divertissement
2. Rachmaninov: Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43
3. Verdi: Luisa Miller, ouverture
4. Verdi: I Lombardi alla Prima Crociata, "Gerusalem !"
5. Verdi: I Lombardi alla Prima Crociata, "O Signore, dal tetto natio"
6. Verdi: Macbeth, Prélude
7. Verdi: Macbeth, "Patria oppressa"
8. Verdi: Ernani, "Esultiamo"
9. Verdi: Il Trovatore, "Le fosche notturne spoglie"
10. Verdi: Nabucco, Ouverture
11. Verdi: Nabucco, "Gli arredi festivi"
12. Verdi: Nabucco, "Va, pensiero, sull'ali dorate"

このホールは10数年前、改装の前に一度来たきりです。その時はその日の昼間にスリ被害にあったばかりで、せっかくのドホナーニ/パリ管だったのに、正直演奏会を無心で聴ける状況ではありませんでした。それ以来、パリ管はブダペストで再び聴いているものの、このサル・プレイエルは厄払いと露払いのためにも絶対に再訪しなければならない、と長年思い続けていましたが、やっと機会が巡ってきました。

私の記憶も相当おぼろげで怪しいのですが、クロークの辺りは昔と変わってなさそうです。ホールに入ると、舞台が打ちっぱなしの壁でやけに殺風景。むき出しの照明が天井から直接ぶら下がっており、ホールというよりはスタジオ。コンサートホールの品格がなくなっていたのでがっかりしました。私の記憶では昔はバービカンのように木目調の壁だったと思うんですが。また、座席のピッチが狭いのは相変わらず。


1曲目のイベールは室内オケのための洒落た曲で、家にあった佐渡/ラムルー管のイベール管弦楽曲集CDにも入ってましたが、パリ管に取っては新レパートリーだそう。パリ管は技巧で鳴らすオケではないと思いますが、トップ奏者だけの合奏はさすがに惚れ惚れするくらい上手かったです。皆涼しい笑みをうかべながらリラックスして演奏している中、佐渡氏一人だけ汗飛び散らかしての大熱演。前にパリ管で聴いたときは、長いフランス生活でずいぶんと垢抜けた演奏をするようになったものだ、と感心したのですが、ベルリンに拠点を移して、またかつての「汗臭さ」が戻ってきたような気もします。

続くラフマニノフ。ベレゾフスキーは2005年にブダペストで聴いて以来。その時は全く興味のないショパンのコンチェルトだったのでほとんど印象は憶えておらず。8年のうちにお腹がでっぷり出てずいぶん恰幅よくなった気がします。今日の演目は元々はラロのピアノ協奏曲という珍しい選曲だったのですが、直前になってソリストの意向により変更になりました。超メジャー曲だし、もちろんオハコなんでしょう、ベレゾフスキーは余裕の弾きっぷり。この人は機械のように正確無比なピアノが売りですが、見かけに合わずアタックの柔らかいソフトタッチで、力任せに叩き込むキャラクターではありません。ちょっと即物的なラフマニノフかなと思いつつ聴いていたら、アダージョではやっと佐渡節全開で、コブシのきいた浪花節をたっぷりと聴かせてもらいました。

メインは生誕200年のヴェルディを記念し、代表的オペラから合唱曲を抜き出し並べたもの。今一つ、何故に佐渡?という疑問は結局理由がわからず。パリ管ではそういう「便利屋」系ポジションになっているのではないかと。ここでもオケのアンサンブルはきっちりと整っていて、その器用さが新鮮な驚きだったりするのですが、曲も後半になり熱気を帯びてくるに従い縦の線が甘くなっていくのが微笑ましいです。合唱は美しく、オケも上手い上質のナブッコ。これはそんじょそこらのオペラ座(特にロイヤルオペラ)では味わえません。最後の「金色の翼に乗って」は一番の有名曲ですが、しみじみ終わるのでコンサートのラストには合わないなあと思っていたら、やはりアンコールがあり、トランペットも登場しての「アイーダ」の凱旋の場面。佐渡裕はオペラをもっとやればよいのになと思いました。


奏者の写真がないので、おまけで新凱旋門を。でかかった。

ロイヤルフィル/ズーカーマン(vn)/ズーカーマン(ms):わびさびのモーツァルトに、父娘共演のマーラー2013/05/29 23:59

2013.05.29 Royal Festival Hall (London)
Pinchas Zukerman (violin-1) / Royal Philharmonic Orchestra
Arianna Zukerman (soprano-2)
1. Mozart: Violin Concerto No. 3 in G major, K.216
2. Mahler: Symphony No. 4

何とこの3年10ヶ月のロンドン生活で、ロイヤルフィルは今日が2回目です。避けていたつもりはないのですが、ROH、LSO、PO、BBCSO、LPOという花形が目白押しのロンドンで、スケジューリングの優先順位が低かったのは間違いない…。

ピンカス・ズーカーマンは私がクラシックを聴き始めたころすでに巨匠でしたが、今になってこうやって目の前で実演を聴く機会があろうとは。しかし、CDを実は1枚も持っていなかったのです。ほとんど初めて聴くズーカーマンは、音が別世界のヴァイオリニスト。現役バリバリの若い人と違うのは(まあ、ズーカーマンもまだ現役ですが)、ガツガツ、ギラギラという擬態語が一切似合わない、あくまで地に足をつけた自然体の音楽で、わびさびの世界に通じる境地を垣間見ました。モーツァルトらしくオケは少人数に絞り込み、力の抜けた心地良いアンサンブル。弾き振りで指揮のみのパートではけっこう軽快にテンポを揺らし、自由気ままに引っ張った「オレのモーツァルト」系演奏でした。

メインのマーラーが聴きたくてこのチケットを買ったようなものですが、ユダヤ人ズーカーマンが導くのは粘り気がなくサラサラした淡白なマーラー。弦は14-12-10-10-8の構成で、もちろん一般的には十二分ですが、昨今のマーラー演奏にしてはちょっと小さめというかミニマムの編成でした。ロイヤルフィルはなかなかがんばっており演奏のキズは少なかったのですが、明るく無邪気でありながらもデリカシーに欠けるマーラー、というのが全体的な感想です。どういうことかと言うと、フレーズの繋ぎにことさら無関心で、まとめ処理を間違ったな、あるいは最初からやらなかったな、という箇所がいくつもあり、音楽がブツ切れになっていました。ズーカーマンは指揮者のキャリアも長いようですが、こういうのを聴いてしまうと、やっぱりこの人にとって指揮は副業か、と見えてしまいます。この曲の命である終楽章を歌うのはズーカーマンの娘、アリアンナでしたが、声も歌唱も正直イマイチ。この短い楽曲で楽譜を見ながら歌っていたので、いかにも慣れてないのがありあり。結局七光りか、とお客に思わせてしまってはイケマセン。



なかなか恰幅のよい娘さんでした。パパさんはとっても嬉しそう。