東京・春・音楽祭:何とか有終の美、「神々の黄昏」2017/04/01 23:59

2017.04.01 東京文化会館 大ホール (東京)
東京・春・音楽祭 ワーグナー・シリーズ Vol. 8
Marek Janowski / NHK交響楽団
Rainer Küchl (guest concertmaster)
Thomas Lausmann (music preparation), 田尾下哲 (video)
Arnold Bezuyen (Siegfried/tenor, Robert Dean Smithの代役)
Rebecca Teem (Brünnhilde/soprano, Christiane Liborの代役)
Markus Eiche (Gunther/bariton)
Ain Anger (Hagen/bass)
Tomasz Konieczny (Alberich/bass-bariton)
Regine Hangler (Gutrune/soprano)
Elisabeth Kulman (Waltraute/mezzo-soprano)
金子美香 (Erste Norn, Flosshilde/alto)
秋本悠希 (Zweite Norn, Wellgunde/mezzo-soprano)
藤谷佳奈枝 (Dritte Norn/soprano)
小川里美 (Woglinde/soprano)
東京オペラシンガーズ
1. ワーグナー: 舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第3日 《神々の黄昏》(演奏会形式・字幕映像付)

3月21日に東京の開花宣言が出たときは、エイプリルフールの頃には上野公園の桜もさぞ麗しかろうと思っていたのに、予想外の冷え込みのせいで開花はまださっぱりでした…。そんなこんなで迎えた東京春祭「リング」の最終年は、直前で主役級2人の降板という、それこそ「エイプリルフールでしょ?」と思いたくなるような波乱含みで、のっけから嫌な予感。「出演者変更のお知らせ」のチラシには、来日してリハーサルをやっていたが急な体調不良で、とわざわざ書いてあったので、まあダブルブッキングとかの理由ではないんでしょう。開演前のアナウンスでは、代役の二人は3月29日に来日したばかりなので、と最初から言い訳モード。これまで世界クラスの歌手陣で質の高い演奏を聴かせてくれたシリーズだっただけに、最後にこれはちと残念じゃのー、まあせいぜいおきばりやす、と期待薄で臨んだところ、ジークフリートを除いて概ね今年も満足度の高いパフォーマンスだったので、良かったです。

ブリュンヒルデのティームは、出だしこそ不安定さを見せたものの、すぐにエンジンがかかり、多少粗っぽくはあるものの、堂々とした迫力あふれる歌唱で、この日最大級のブラヴォーを浴びていました。もう一方のベズイエンは割りを食ったというか、気の毒なくらいに自信なさげで、声もオケに負け続けで、このパフォーマンスだけを聴く限り、ジークフリートとしてはあまりに力量不足。この人は最初の「ラインの黄金」でローゲを歌っていて、そのときは曲者ぶりがなかなか似合っていたのですが、ヘルデンテナーは元々キャラじゃないように思います。とは言え、調整不足と時差ぼけの中、この超長丁場を歌い切って、とにもかくにも舞台を成立させてくれたのだから、最後は聴衆の優しい拍手に迎えられてだいぶホッとした表情に見えました。予定通りロバート・ディーン・スミスが歌っていたら格段に良かったのかというと、それも微妙かなと思いますし。

他の歌手も、ほぼ穴がないのがこのシリーズの凄いところ。3年前「ラインの黄金」のファーゾルトを歌う予定がキャンセルし、今回初登場のアイン・アンガーが、やはりピカイチの歌いっぷり。重心の低い落ち着いた演技ながらも要所でしっかりと激情を見せる懐の深い歌唱力は圧巻でした。グンターのマルクス・アイヒェはインバル/都響の「青ひげ公の城」で聴いて以来ですが、鬱屈した役柄なので多少抑え気味ながらも、誰もが引き込まれる美声が素晴らしい。初めて聴くグートルーネのハングラーは、見かけによらずリリックな声質で、振り回される乙女の弱々しさを見事に好演。シーズン通してアルベリヒを歌っているコニエチヌイの安定感は、もはや風格が漂っています。もう一人の常連組、ヴァルトラウテのクールマンも短い出番ながら余裕の存在感。一方の日本人勢は、3人のノルンのハーモニーが悪すぎで、序幕はすっかり退屈してしまいました。終幕のラインの乙女たちはまだ持ち直していましたが。

繰り返すまでもなく、普段より一段も二段も集中力が高かったN響の演奏もこのシリーズの成功要因で、N響をもう一つ信用できない私としては、キュッヒル様様です。もちろん巨匠ヤノフスキのカリスマあってのこのクオリティだと思いますが、二人とも終演後に笑顔はなかったので、出来栄えとしては気に入らなかったのかもしれません。後方スクリーン映像の演出は、元々私は不要論者でしたが、4年目にもなるともはや気にならなくなっていました。ただし演出で言うと、奏者をいちいち袖から出してホルンやアイーダトランペットで角笛やファンファーレを吹かせていたのは、完璧な演奏でバッチリ決めるのが前提でしょうね。

「リング」チクルスも終わり、来年の春祭ワーグナーは「ローエングリン」だそうです。フォークト、ラング、アンガー、シリンスと、これまた充実した顔ぶれの歌手陣で、ワーグナーは疲れたのでちょっと一休みしようかと思ったのですが、秋にはまたチケット買ってしまいそう・・・。

東京・春・音楽祭:さらに進化した圧巻の「ジークフリート」2016/04/10 23:59

2016.04.10 東京文化会館 大ホール (東京)
東京・春・音楽祭 ワーグナー・シリーズ Vol. 7
Marek Janowski / NHK交響楽団
Rainer Küchl (guest concertmaster)
Thomas Lausmann (music preparation)
田尾下哲 (video)
Andreas Schager (Siegfried/tenor)
Erika Sunnegårdh (Brünnhilde/soprano)
Egils Silins (Wotan, wanderer/baritone)
Gerhard Siegel (Mime/tenor)
Tomasz Konieczny (Alberich/baritone)
In-sung Sim (Fafner/bass)
Wiebke Lehmkuhl (Erda/alto)
清水理恵 (woodbird/soprano)
1. ワーグナー:舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第2夜 《ジークフリート》(演奏会形式・字幕映像付)

東京春祭の「リング」サイクルもついに3年目で、念願の「ジークフリート」にたどり着きました。かつて、ブダペストのオペラ座では毎年年明けに「リング」連続上演をやるのが恒例でしたが、一年目は試しに「ラインの黄金」を見に行き、面白かったので翌年に残り3作品を連続して見る予定が、子供が急に熱を出したため「ジークフリート」だけは見に行けなかったのです。それ以降、ロンドンでも「リング」サイクルの機会はありましたが、都合が合わず行き損ねました…。

一昨年、昨年とハイレベルのパフォーマンスを聴かせてくれたこの東京春祭の「リング」、今年も非の打ちどころがないどころか、進化さえ感じられる圧巻の出来栄えで、満足度最高級の演奏会でした。今年もゲストコンマス、キュッヒルの鋭い視線が光る下、N響は最高度の集中力で演奏を維持し、虚飾のないヤノフスキの棒に直球で応えて行きます。初登場のシャーガーは、ヘルデンテナーらしからぬスマートな体型に、明るくシャープな声が持ち味。これだけ出ずっぱりでもヘタレないスタミナがあり、イノセントなジークフリートは正にはまり役でした。ミーメ役でやはり初参加のジーゲルは、記録を辿ると2006年にギーレン/南西ドイツ放送響のブダペスト公演「グレの歌」の道化クラウス役、および2010年にロイヤルオペラ「サロメ」のヘロデ王役で聴いていますが、備忘録で歌唱力は褒めているものの、正直あまり記憶がありません。今日も最初は(見かけによらずと言えば失礼か)ちょっと上品過ぎるミーメに聴こえましたが、だんだんと下卑た感じになっていく演技力が見事。まずはこのテナー二人の熱演で飽きることなく引き込まれて行きます。

そして、毎年出演のヴォータン役、シリンスは相変わらず堂に入った歌唱。一昨年もアルベリヒを歌っていたコニエチヌイは、明らかに対抗心むき出しの熱唱だったのがちょっと可笑しいですが、この人も歌唱力には定評があります。昨年フンディンクを歌っていた常連のシム・インスンは今年はファフナーに復帰。元々存在感のある重厚な低音に、洞窟の中から出す声はメガホンを使って変化を持たせていました。低音男声陣も各々素晴らしく、皆さん抜群の安定感と重量感でした。

女声陣の出番は少ないですが、まずはブリュンヒルデ役で初参加のズンネガルドは、ワーグナーソプラノではたいへん貴重な細身の身体で、迫力では昨年のフォスターに及ばないものの、どうしてどうして、見かけによらず余裕の声量で揺れ動く心理を感情たっぷりに歌い上げ、聴衆の心をがっちり掴んでいました。シャーガーもスリムだし、シュワルツェネッガーのようなジークフリートとマツコデラックスのようなブリュンヒルデが暑苦しく二重唱を歌う、という既成のビジュアルイメージ(?)を打ち砕く、画期的なヒーロー、ヒロイン像だったと思います。エルダ役のレームクール、森の鳥役の清水理恵も双方初登場でしたが、どちらも出番は短いながら、非の打ちどころのない歌唱。今回も総じてレベルの高い歌手陣で、毎年のことですが、これだけのメンバーを揃えた演奏も、世界中探してもなかなか他にないのでは、と思いました。これだけやったのだから、来年の最終夜ではここまでの集大成を聴かせてくれるに違いなく、とても楽しみです。

東京・春・音楽祭:期待を裏切らぬ「ワルキューレ」2015/04/04 23:59


2015.04.04 東京文化会館 大ホール (東京)
東京・春・音楽祭 ワーグナー・シリーズ Vol. 6
Marek Janowski / NHK交響楽団
Rainer Küchl (guest concertmaster)
Thomas Lausmann (music preparation), 田尾下哲 (video)
Robert Dean Smith (Siegmund/tenor)
Waltraud Meier (Sieglinde/soprano)
In-sung Sim (Hunding/bass)
Egils Silins (Wotan/baritone)
Catherine Foster (Brünnhilde/soprano)
Elisabeth Kulman (Fricka/mezzo-soprano)
佐藤路子 (Helmwige/soprano)
小川里美 (Gerhilde/soprano)
藤谷佳奈枝 (Ortlinde/soprano)
秋本悠希 (Waltraute/mezzo-soprano)
小林紗季子 (Siegrune/mezzo-soprano)
山下未紗 (Rossweisse/mezzo-soprano)
塩崎めぐみ (Grimgerde/alto)
金子美香 (Schwertleite/alto)
1. ワーグナー: 『ニーベルングの指環』第1夜《ワルキューレ》(演奏会形式・字幕映像付)

昨年の「ラインの黄金」に引き続き、東京春祭の「リング」サイクル第2弾です。昨年同様、演奏はヤノフスキ/N響に、ゲストコンマスとしてウィーンフィルからキュッヒルを招聘。昨年から引き続きの歌手陣は、ヴォータンのエギルス・シリンス、フンディングのシム・インスン(昨年はファフナー役)、フリッカのエリーザベト・クールマン(去年はエルダ役)。今回の新顔として、まずはジークリンデ役に大御所ワルトラウト・マイヤーを招聘。さらに、ブリュンヒルデ役のキャサリン・フォスターは、近年バイロイトで同役を歌っている正に現役バリバリのブリュンヒルデ。よくぞこの人達を連れて来れたものだと思います。フォスターは看護婦・助産婦として長年働いた後に音楽を志したという、異色の経歴を持つ英国人ですが、歌手としてのキャリアはほとんどドイツの歌劇場で培ったようです。マイヤーは記録を辿ると2002年のBBCプロムス、バレンボイム指揮の「第九」で歌っていたはずですが、ロイヤルアルバートホールの3階席では、「聴いた」というより「見た」ことに意義があったかと。ジークムント役の米国人ロバート・ディーン・スミスはブダペストで2回聴いていますが(2006年の「グレの歌」と2007年の「ナクソス島のアリアドネ」)、グレの歌のときは、何だか力のないテナーだなという印象を書き残してました。

私は元々長いオペラが苦手で、特に「ワルキューレ」は歌劇場で過去2回聴いて、途中どうしても「早く先に進んでくれないかな」とじれてしまう箇所がいくつかあります。今回も第1幕は、演奏会形式ということもあってよけいに変化に乏しく、華奢な身体から絞り出されるマイヤーの絶唱に感心しつつも、つい間延びしてぼんやりとしてしまいました。コンサート形式ですが、後ろの巨大スクリーンでゆるやかに場面転換を表現する演出は昨年同様でした。ただ今回は、第1幕冒頭で森を駆け抜け、フンディングの家にたどり着いて進む展開の背景が露骨に具象的で、これはもうちょっと象徴的にカッコよくできなかったもんかと思いました。

第2幕冒頭で登場したフォスターが鳥肌ものの見事な「ワルキューレの騎行」を聴かせると一気にテンションが上がり、続くクールマンも負けじと強烈な迫力のフリッカでヴォータンを圧倒、昨年影が薄かった分を取り返して余りある熱唱でした。そのヴォータンのシリンスも昨年同様堂々とした安定感で、ストーリーの主軸である彼の生き様(神様に対してそんな言い方していいのかわかりませんが)を、音楽的な核としてしっかり具現していました。総じて主要登場人物が減った分、歌手陣がいっそう粒ぞろいになり、昨年にも増して素晴らしいステージとなりました。ワルキューレの日本人女声陣のうち4名は昨年も出ていた人々で、賑やかに脇を固めていましたが、ただ立ち位置が舞台下手の深いところだったので、私の席からは影で見えず、声も届きづらかったのは残念でした。

オケの方も、キュッヒル効果は今年も健在で、N響はこの長丁場を高い集中力で最後まで弾き切りました。まあ、曲が「ワルキューレ」ですから金管にもうちょっと迫力があれば、とは思いましたが、歌劇場付きのオケは本場ヨーロッパでもけっこうショボいことが多いので、十分に上位の部類でしょう。この充実した歌手陣に、引き締まったオケ、かくしゃくとした巨匠、世界じゅう探してもこれだけのリングが聴けるところはそうそうないかと思います。東京春祭万歳。最後のフライング拍手はちょっといただけなかったけど。

おまけ:上野公園の桜。今年はいつにも増して外国人団体客の多いこと!

東京・春・音楽祭:最上品質の「ラインの黄金」2014/04/05 23:59


2014.04.05 東京文化会館 大ホール (東京)
東京・春・音楽祭 ワーグナー・シリーズ Vol. 5
Marek Janowski / NHK Symphony Orchestra
Rainer Küchl (guest concertmaster)
Jendrik Springer (music preparation)
田尾下哲 (video)
Egils Silins (Wotan/baritone)
Boaz Daniel (Donner/baritone)
Marius Vlad Budoiu (Froh/tenor)
Arnold Bezuyen (Loge/tenor)
Tomasz Konieczny (Alberich/baritone)
Wolfgang Ablinger-Sperrhacke (Mime/tenor)
Frank van Hove (Fasolt/bass) (Ain Angerの代役)
In-Sung Sim (Fafner/bass)
Claudia Mahnke (Fricka/mezzo-soprano)
Elisabeth Kulman (Erda/alto)
藤谷佳奈枝 (Freia/soprano)
小川里美 (Woglinde/soprano)
秋本悠希 (Wellgunde/mezzo-soprano)
金子美香 (Flosshilde/alto)
1. ワーグナー: 『ニーベルングの指環』序夜《ラインの黄金》(演奏会形式・字幕映像付)

東京春祭で結構高品質のワーグナーをやってると、前から噂では聞いてたので、今年からはリングのシリーズが始まるということで楽しみにしておりました。

まず、今日はN響には珍しく、外国人のゲストコンサートマスターが出てきたのが意表を突かれました。おそらくヤノフスキが手兵のオケから連れて来たであろうこのライナー・キュッヒルばりの禿頭のコンマスは、素晴らしく音の立ったソロに加えて、オケ全体にみなぎる緊張感が実際タダモノではなく、今まで聴いたN響の中でも間違いなくダントツ最良の演奏に「これは良い日に当たったものだ」と喜んでいたのですが、その段に至っても、このコンマスがまさかキュッヒル本人だったとは、演奏中は何故か全く想像だにしませんでした。いったいどういう経緯でN響のコンマスを?こんなサプライズがあるもんなんですねえ〜。

記録を調べてみるまでは記憶が曖昧だったのですが、今日の出演者の中で過去に聴いたことがあるのは以下の4人でした。ヴォータン役のシリンスは2011年にロイヤルオペラ「さまよえるオランダ人」のタイトルロールで(急病シュトルックマンの代役として)。アルベリヒ役のコニエチヌイは2010年のBBCプロムス開幕「千人の交響曲」と、2013年のハンガリー国立歌劇場「アラベラ」のマンドリーカ役で。フリッカ役のマーンケは2007年のフィッシャー/ブダペスト祝祭管「ナクソス島のアリアドネ」(終幕のみ、演奏会形式)のドリアーデ役で。そしてエルダ役のクールマンは2012年のアーノンクール/コンセルトヘボウのロンドン公演で「ミサ・ソレムニス」を聴いて以来です。 

私はワーグナー歌手に明るくないのですが、実際に聴いた限りで今日の歌手はともかく粒ぞろい、穴のない布陣でした。ヴォータン役のシリンスはソ連のスパイみたいなイカツい顔で、キャラクター付けがちょっと固過ぎる感じもしましたが、細身の身体に似つかない低重心の美声を振り絞って、堂々のヴォータンでした。それにも増して存在感を見せていたのはアルブレヒ役のコニエチヌイ。昨年の「アラベラ」でもその太い声ときめ細かいの表現力に感銘を受けたのですが、得意のワーグナーではさらに水が合い、八面六臂の歌唱はこの日の筆頭銘柄でした。ベズイエンのローゲ、アブリンガー=シュペルハッケのミーメはそれぞれ素晴らしく芸達者で、くせ者ぶりを存分に発揮してました。

一方、数の少ない女声陣は、フリッカ役のマーンケはバイロイトでも歌っているエース級。いかにもドイツのお母さんという風貌で、声に風格と勢いがありました。ごっつい白人達に混じって、フライア役の藤谷さんも声量で負けじと奮闘していました。ラインの川底の乙女達は声のか細さ(特に最後の三重唱)が気になりましたが、これも周囲があまりに立派だったおかげの相対的なものでしょう。演奏会形式では演技のない分、常に前を向き、歌に集中できるのも、総じて歌手が良かった要因でしょうね。

御年75歳のヤノフスキは、「青ひげ公の城」のCDを持ってるくらいで実演を聴くのは初めてでしたが、うそごまかしのないドイツ正統派の重鎮であり、オケの統率に秀でた実力者であることがよくわかりました。オケはキュッヒル効果で全編通してキリっと引き締まり、この長丁場でダレるところもなく、ヤノフスキのタクトにしっかりついて行ってました。こんなに最後まで手を抜かず音楽に集中するN響を、初めて見ました。トータルとして、今の日本で聴ける最上位クラスのワーグナーだったと思います。ただ一つ、スクリーンの画像は、この演奏には気が散って邪魔なだけ、不要でした。さて来年の「ワルキューレ」が俄然楽しみになってきましたが、皆さん元気で、どうかこのテンションが4年持続しますように。

東京・春・音楽祭:兵士の物語2014/03/16 23:59


2014.03.16 東京文化会館 小ホール (東京)
東京・春・音楽祭《兵士の物語》
長原幸太 (vn/元・大フィル首席CM)
吉田秀 (cb/N響首席)
金子平 (cl/読響首席)
吉田将 (fg/読響首席/SKO首席)
高橋敦 (tp/都響首席)
小田桐寛之 (tb/都響首席)
野本洋介 (perc/読響)
久保田昌一 (指揮)
國村隼 (語り)
1. ストラヴィンスキー: 兵士の物語

10年目を迎える東京ハルサイに行くのは初めてです。この10年ほとんど日本にいなかったので仕方がない。ワーグナーのオペラと室内楽がプログラムの中心なので、私的にはビミョーな音楽祭ですが、今回は「兵士の物語」を國村隼の日本語ナレーション付きでやるというので。

演奏はこの企画のための特別編成で、読響、都響、N響などから首席奏者が集った、日の丸精鋭アンサンブル。演奏は、個々の人は確かにそれなりにキズのない演奏をしているのだけれど、楽譜が追えたらOKの完全なお仕事モード。音を楽しみ、人を楽しませるという音楽の原点を忘れているというか。いかにも打ち解けてない感じの一体感のないアンサンブルだったし、バランスが悪くてナレーションをかき消してしまったり、果たしてやる気はどのくらいだったのか。一昨年聴いたLSOの首席陣による至高のアンサンブルとは、もちろん比べてもしょうがないのでしょうが、「プロ度」という観点では、日本のトップ達はまだまだこんなもんかと、ちょっとがっかりしました。

最近富みにテレビ・映画で見かける個性派俳優、國村隼のナレーションは出だしから飾り気なく朴訥で、淡々と進みます。後半で悪魔が激高するときに頂点を持ってきてメリハリをつけるという組み立てだったので、トータルの印象としてはテンションの低い時間が多い、眠たいものでした。この人の味は何といってもその「顔」であって声じゃないんだな、と、あらためて思いました。國村隼が声優とかラジオドラマとかDJとか、やっぱりピンと来ないもの。