ロンドン響/チャン:バルトークとラフマニノフでダンス・ダンス・ダンス2026/02/08 23:59

2026.02.08 Barbican Hall (London)
Elim Chan / London Symphony Orchestra
Olivier Stankiewicz (oboe-2)
1. Bartók: Dance Suite
2. Colin Matthews: Oboe Concerto (world premiere, LSO commission)
3. Rachmaninov: Symphonic Dances

バルトーク続きの連チャンとなってしまいましたが、週末だったので体力的にはまだ何とか維持できました。今日はしかし、真後ろに座った白人高齢男女集団のおかげで楽しみも半減でした。演奏開始のギリギリのタイミングで5、6人がどかどかと入場してきて、もう演奏が始まっているのにガサガサとコートを脱ぎ、ゴホゴホと咳をして、べちゃくちゃ話しながらバッグのファスナーをチーと開け閉めして飴を出す狼藉ぶり。見かねた他の客が「シーッ」と注意すると、「シャラップ!」と声を上げて逆ギレする始末。お前がシャラップじゃ!あまりの厚顔無恥に、こっちも思わず哀れみの目で睨んでしまいました。その後も演奏中に物を落としたり、持っていたドリンクの缶をペコっと鳴らしたり、幼児以下の邪魔なことこの上ない迷惑集団。コンサートホールまでわざわざ何をしにきたのかさっぱりわからない、老害の現場を久々に垣間見ました。

昨年夏のBBC Promsではラストナイトを任された香港出身のエリム・チャンは、今売り出し中の若手女性指揮者で、いろんなオケで名前を見るので一度聴きたいと思っていました。1曲目のバルトーク「舞踏組曲」は、著名な曲なわりに巡り合わせがなく、2011年の記念イヤーでサロネン/フィルハーモニア管で聴いて以来になります。あらためて聴くと、なかなかの難曲。チャンはいかにも一所懸命な若者の初々しさでキビキビとタクトを振るも、オケのウォーミングアップはイマイチ。若手の東洋人だからナメてるんでしょうか、LSOは時々これがあるので、ベルリンフィルやコンセルトヘボウと比べて、自身の品格を下げていると思います。そういえば今日のコンマスはいつものシモヴィッチさんではなく、最近コンマスになったアンドレイ・パワーという人でした。チャンは特に低音域の弦を強調したリードで、弦の厚みは半端なかったものの、全体的には破綻はないが舞踏に乗り切れていない腹六分目の演奏でした。

続く、もうすぐ80歳の誕生日を迎えるコリン・マシューズのオーボエ協奏曲はLSOの委嘱作品でここが世界初演。コリン・マシューズというと、自分の認識としては、まずはホルスト「惑星」の追加として「冥王星」を作曲した人であり、古くはマーラー交響曲10番のデリック・クック補筆完全版の完成に協力した一人であり、さらにはドビュッシーの前奏曲集のオーケストレーションを果敢に手がけた人であって、マシューズ自身の作品を聴いたことはありませんでした。備忘録を手繰ると、前奏曲集の管弦楽版の一部は2010年〜2012年にかけて3度も聴いています。このオーボエ協奏曲は本日のソリストであるLSOの首席奏者オリヴィエ・スタンキエーヴィチ(ポーランド系の名前ですがフランス出身)のために書かれた、出来立てほやほやの曲です。ソロ楽器の音量限界を考慮してかオケは小ぶりな小編成ですが、ティンパニを欠きながらもマリンバ、ヴィブラフォーン、スラップスティックといったオーケストラではあまり使われない打楽器がチョイスされており、独特の色彩感の源になっています。あと、やっぱりオーボエ協奏曲の伴奏にはオーボエはない代わりに、1本のコールアングレがソリストに絡みつく仕掛けになっていました。全体的な曲調は、無調ではあるが耳に優しい音楽で、オーボエという楽器の性質から、飛び跳ねたと思ったらしっとりと歌ってみたり、変幻自在な音楽だったという印象です。ただ、オケは少人数だったもののやはりオーボエのソロだけでオケに対抗して響かせるのは厳しいものがあり、ちょっと遠めの席だとソリストの音が満足に届いてこないのも仕方がない事実で、今後のLSOの定期で繰り返し取り上げる曲でもないんじゃないかなという気がします。演奏後、聴きに来ていたマシューズ本人が登壇し、拍手喝采を受けていました。

休憩後のメインは、ラフマニノフ最後の作品である「交響的舞曲」。最近は日本語でも「シンフォニック・ダンス」と呼んだほうが通りがよいのでしょうか。過去実演を聴いたのは2011年のBBC Promsでデュトワ/フィラデルフィア管の1回だけでした。ラフマニノフの実質的には交響曲系譜の最終地点(第4番)とも言われる傑作ですが、プログラムに乗せられる機会はそんなに多くないという印象で、理由を想像するに、メイン曲に相応しいボリュームと演奏時間でありながら、そのタイトルのせいで、メインに据えるにはちょっと軽く見られがちな曲なのではないでしょうか。LSOはここにきてやっと目が覚めたのか、そんな誤解など払拭するような、迫力満点本気の演奏でした。ホルンがちょっと弱かった他は文句なしの音圧と躍動感。ここでもチャンは大きな身振りでオケを一気に解放し、この上なく太い弦の厚みをこれでもかと強調、それに負けない金管の咆哮と暴力的なティンパニ。おそらく狙い通りの爆演で、やはり後腐れなく鳴らし切るのがこの曲の正解だと確信しました。


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