ベルリンフィル/ペトレンコ/G.カピュソン:引き締まった至高のアンサンブル2026/05/02 23:59



2026.05.02 Musikverein, Grosser Saal (Vienna)
Kirill Petrenko / Berliner Philharmoniker
Gautier Capuçon (cello-2)
1. Stravinsky: Pulcinella Suite
2. Tchaikovsky: Variations on a Rococo Theme
3.  Beethoven: Symphony No. 2 in D major, op. 36

同じ日にウィーンフィルとベルリンフィルを連続して、しかも楽友協会で聴くという究極のダブルヘッダー。マチネのマーラー3番がウィーンフィル渾身のパワープレイだとすれば、こちらは引き締まった編成と機能性で聴かせるプログラム。ベルリンフィルは前日の5月1日にエステルハージ宮(アイゼンシュタット)のハイドン・ホールで恒例のヨーロッパ・コンサートを行っており、その勢いのままウィーンへ乗り込んできた形になります。何より、ようやくペトレンコ指揮の新生ベルリンフィルを生で聴けるのが嬉しい。

1曲目「プルチネッラ」組曲は、好きな曲ですが実演で聴ける機会が珍しく、2年前のパシフィックフィル東京でようやく聴けて以来ですが、まさかベルリンフィルで聴けることになるとは夢にも思わず。オーボエ、フルート、ファゴット、ホルンが各2、トランペットとトロンボーンが各1にヴァイオリン3プルトの弦五部というミニマムな2管編成は、アンサンブルの精度は言うまでもなく、磨き抜かれたベルリンフィルの上澄みだけを掬い取ったような極上シルキーの響き。管楽器のソロは一つ一つが驚くほど巧く、フレーズの仕舞い方、音の立ち上がり、ちょっとしたニュアンスまでいちいち神経が行き届いており、小編成だからこそ個々の技量が際立っていました。ただ、トップ奏者の上澄みだけで勝負するなら他の一流オケもそこそこ負けていない気はするので、この段階ではまだ「ペトレンコの仕事」がどこにあるのかは掴みきれず。

続く「ロココ変奏曲」ではヴァイオリンが4プルトに少し増えました。チェロ独奏のゴーティエ・カピュソンは、著名なヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニスト、ルノー・カピュソンの6歳下の弟。ルノーは2012年にロンドンで一度聴いていますが、ゴーティエは初めてです。見るからに伊達男然としたイケメンですが、外見だけではもちろん終わりません。チェロの音色が素晴らしいうえに、舞台後方のバルコニー席にも驚くほどよく届きました。繊細に歌う瞬間から、芯の強いフレーズを大きく描く場面まで、変幻自在の表現力。最前列にいた母子連れが、幸福そうな笑みを浮かべながら食い入るように見つめていたのが印象的でした。まさに色気ダダ漏れの「女殺し」チェロ。


アンコールではベルリンフィルのチェリスト4人を従え、祈りを思わせる静かな小品を演奏。スマホの翻訳機能を使ってたどたどしくドイツ語で曲の説明をしていたのですが、もちろん聞き取れず。前日のヨーロッパ・コンサートと同じだとすれば、カタルーニャ民謡「エル・カント・デル・オセルス」をパブロ・カザルスがチェロ合奏用に編曲したバージョンのようです。なおアンコールの最中にパルテレ席で倒れた人が出て、6人がかりほどで運び出される騒ぎがあってちょっと騒然としました。

後半のベートーヴェンではヴァイオリンが5プルトと、編成が徐々に増えました。以前一度だけ本拠地のフィルハーモニーでベルリンフィルを聴いた際の演目が同じ交響曲第2番で、不思議と縁があります。演奏は実にキビキビとして質実剛健。高速テンポでも全く乱れないベルリン・フィルの弦の強さを堪能しました。ピリオド奏法寄りではないものの、贅肉を徹底的に削ぎ落としたスマートなベートーヴェン。この曲でようやくティンパニが登場。若い奏者が手巻き式の楽器を硬いウッドのバチで鋭く叩き込む、その音が実に痛快でした。

見る限り、ペトレンコは終始にこやかな表情で指揮をしているのですが、そこから出てくる音楽は極めてストイック。どこか鬼軍曹のような緊張感があり、オーケストラを一切緩ませない凄みを感じました。今年の1月には、今日のプログラムとは対極とも言えるマーラー「千人の交響曲」を取り上げていて、一体どんな演奏だったのだろうかと非常に気になっております…。夏にはBBCプロムスに出演するので、ロンドンでまた聴ける機会を楽しみにしております。



コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
スパム対策で「クイズ認証」導入してます。Tokyoを漢字で入力してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://miklos.asablo.jp/blog/2026/05/02/9856592/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。