看板に偽りあり、角川映画音楽祭@オーチャードホール ― 2026/08/09 23:59



2026.08.09 Bunkamuraオーチャードホール (東京)
角川映画音楽祭 ~テーマ曲・挿入歌コンサート~
こがけん (MC), 南佳孝 (vocal, guitar), 小室哲哉 (vocal, piano), 松村とおる (vocal), マリーン (vocal), クミコ (vocal), 藤井空 (trumpet), 野村宏伸 (vocal), 松本隆/佐野史郎 (talk guests)
石黒彰 (keyboards), 渡辺格 (guitar), ハピネス徳永 (bass), 力石理江 (keyboards), 阿部薫 (drums), 鍬田修一(sax), 阿部美緒(violin), 丸山明子 (violin), 保科由貴 (viola), 大沼深雪 (cello)

いろいろ恨み節がありまして、半分以上は逆恨みであることは承知のうえで、思うところを正直に書いております。あくまで超私的な個人の感想にすぎませんが、私は口が悪いので、気分を害しそうな予感がする方はこの先読まれないほうがよいです。

1976年公開の角川映画第一弾「犬神家の一族」から、今年は50周年の記念イヤーになります。「犬神家」「人間の証明」「野性の証明」といった初期の角川映画に心奪われたのち、薬師丸ひろ子、荻野目慶子、原田知世のファンでもだった私は、角川の月刊誌「バラエティ」を毎号欠かさず買って熟読したものです。ちょうど5年前の45周年記念にも角川映画祭があり、4Kリストアの「犬神家」「人間の証明」を超久々にスクリーンで鑑賞しました。50周年にはさらに大規模な映画祭が行われるだろうから、2018年に行きそびれてしまった「角川映画シネマ・コンサート」を再現してくれないかなと密かに期待していたのですが、音楽関係だと今回は「角川映画音楽祭」なるコンサートが開催されることに。幸い、夏休みでちょうど帰国している時期であり、イギリスからがんばってチケットをゲットしました(ちなみに、チケットぴあは国外からの購入だとVPNを噛ませても携帯電話認証が突破できず、だいぶ試行錯誤しました)。

この音楽祭の情報は3月に開催が発表され、5月に予定出演者と予定演目の公表およびチケット発売開始だったのですが、初期三部作に素晴らしい音楽を提供し、角川映画スタートダッシュへの功績が絶大だったことは間違いない大野雄二大先生が5月4日に老衰のため亡くなります。「犬神家の一族」のテーマ曲「愛のバラード」は特に自分にとって特別な存在です。初めて出会った時に一瞬で恋に落ち、その後絶えることなくずっと愛し続けている曲で、そのような曲は他にはありません。他にも好きな曲、好きなアーティストは山ほどありますが、必ずどこかで飽きて心が離れる時期が来るのが普通ですが、大野雄二は例外的に別格でした。私個人の事情はそれとしても、「角川映画音楽祭」の名にかけて、当然のごとく大野雄二追悼企画は追加で盛り込まれるであろうと信じて伺わなかったのですが、その後のイベントニュースを追っかけていても、MCとしてピン芸人のこがけん参加決定が後から発表されたくらいで、演奏予定曲(下のセットリストと同じ)の下に思わせぶりに記された「and more…」の文字は、ずっとそのまま。このセットリストだけで「角川映画の音楽」を語るとしたらあまりにも消化不良ですが、結局その後も情報が更新される気配がまるでなく、告知動画でもクローズアップされるのは小室哲哉や野村宏伸ばかりで、大野雄二は完全スルー。日が近づくにつれ、すっかり諦めモードに陥っていました。

そうやって個人的関心が薄れつつあった中、演奏会当日を迎えましたがここでさらなる問題が。今回の電子チケットはMOALAというサービスを経由した受け取りになっていたのですが、こいつがイベント当日の開場時間ギリギリにならないと電子チケットにアクセスできないクソ仕様になっており、苛立ちました。私は元より心配性なので、普段なら演奏会やイベントのチケットを事前に何度も見直し、場所と時間、交通ルートを入念に確認するのですが、チケットがそもそも手元にない状態が直前まで続いたため、事前確認をつい怠っていました。なぜだかわかりませんが、開演時間を夜7時半だとずっと思い込んでいた私は、余裕で間に合うはずの時間にオーチャードホール近くのスタバで涼を取っていたところ、やっとスマホに表示されるようになったチケットを見て、開演時間が「7時30分」ではなく「17時30分」であることに気づき、愕然としました。あわててコーヒーを飲み干し、会場に向かったものの、音楽祭はすでに中盤に差し掛かっており、前半部分を聴き逃してしまいました。はい、開演時間を間違えるという初歩的なミスで、全くもって自己責任以外の何物でもありません。しかし、19時30分開演はイギリスでは普通なので疑うマインドが起こりにくかったし、他の電子チケットだと極めて一般的な、遅くともイベントの前日にはチケットが配布される仕様であればこのようなミスをやらかすことはなかったと断言できるので、MOALAには恨み節をぶつけます。ぴあも何でこんなとこを使っているんだろう(ネットで調べると総合的に見てもユーザの評判が非常に悪いサービスのようで…)。

というわけで、前半を聴き逃したのが痛恨ですが、気を取り直して、後半のトップバッターは南佳孝。ただし、「スローなブギにしてくれ」と「メイン・テーマ」(薬師丸ひろ子への提供曲を自身が後にセルフカバーした男性目線のバージョンではなくあえて女性目線の歌詞のままで歌った)、ともによく知っている曲ながら、どちらかというと苦手な部類の歌です。かつてはもっと艶やかな声とセクシーな歌い方だったように思いますが、76歳の今となってはすっかり枯れ切った味わいの歌唱でした。まあファンの人には元気で歌っている姿が見られたのは良かったんでしょうけど…。

続いて登場した野村宏伸は、「メイン・テーマ」の薬師丸ひろ子の相手役オーディションで2万3千人の中から選ばれたシンデレラボーイでしたが、元々役者をやりたかったわけではなく純粋に賞金が欲しくて応募したとトークで語っていました。実際、経済的にだいぶ苦労した少年期を過ごしたようです。その後俳優の道を進む決断をするも、初主演作「キャバレー」では監督の角川春樹に人格否定されまくりのパワハラを受け、その恨みが言葉の端々に滲み出ていました。今でもテレビドラマやバラエティでたまに見ることがありますが、実際に生で見る野村宏伸はかつてのシュッとしたイケメンの面影はなく、ルーズなジーンズ姿も相まって、くたびれたオジサン感が隠せません。トークゲストだけかと思いきや、自身が声優として主演したアニメ映画「ボビーに首ったけ」の主題歌「ボビーにRock 'n Roll」(この曲も作詞松本隆、作曲南佳孝ですね)を40年ぶりに歌うとのこと。嫌な予感はしましたが、やはりというか、はっきり言って人前で歌うレベルではない準備不足の拙い歌唱でした。

次がいよいよ今日のイベントの真打ちであろう、小室哲哉の登場です。客席のそこかしこから「てっちゃ〜ん」という黄色い歓声が止みません。小室哲哉は確かに「ぼくらの七日間戦争」と「天と地と」それぞれの劇伴音楽と主題歌(前者はTM NETWORK名義)を担当してはいるものの、角川映画の歴史を語る上でそんなにキーマンなのかなあと疑問に思っていたのですが、なるほど、これは角川映画音楽の名を借りた、内実は小室哲哉のファンイベントみたいなもので、自分のほうが「よそ者」だったのだとようやく理解しました。野村宏伸を交えたトークでは「あの方(=角川春樹)の名前はタブーじゃなかったでしたっけ?」などとボケをかましながらも、二人で「天と地と」および角川春樹との思い出話をひとしきりやった後、ステージ中央に置かれたグランドピアノに座って、まずは自身がボーカルを取った主題歌「天と地と〜HEAVEN AND EARTH〜」を弾き語りで披露。続いて実質的なメインテーマといえる「炎」をバンドおよびストリングスメンバーと一緒に照明効果付きで演奏。もちろん、いろいろあったとはいえ、真に一世を風靡したスターミュージシャンである小室哲哉を生で見れる機会は貴重でしたが、特にファンというわけでもない私から見て、歌は正直いただけないレベルの弱さでした。

セットリストでまだやってない曲があるような気がしましたが、ここでひとまずエンドクレジットが流れ、小休止ののち、アンコールではマリーンが(再)登場し、「汚れた英雄」の主題歌「Riding High」(元の歌手はローズマリー・バトラー)を熱唱。マリーンもいい歳ですが声は衰えず、やっとプロの歌唱が聴けたと安堵したのも束の間、トリは今日の出演者がわらわらと出てきて、「ぼくらの七日間戦争」主題歌「SEVEN DAYS WAR」を全員でがやがやと斉唱。うーん、思い入れないし、カラオケにもならない雑な「みんなで歌いましょう!」なんかどうでもいい。出演者からしてやる気なしで、松本隆などはマイクを持たされてはいたものの歌うそぶりはみじんも見せなかったです。最後に、客席をバックに出演者全員で記念撮影をしてお開きとなりました。

こがけんの司会は、まあがんばっていたと思いますが、世代的に言って、どこまで角川映画という切り口に共感を覚えているのか。当事者感はなく、お仕事感でいっぱいでした。返す返すも、前半の「野獣死すべし」やマリーンの「You Are Love」「Left Alone」を聴き損ねたのは痛かったです。しかしこのイベント、音楽祭にしてはトークの部分が長すぎで、出演者の本気度も大いに疑問に思いました。企画自体がぬる過ぎて、まあこんなもんでいいっしょ、というやっつけ仕事感が満載。「角川映画の音楽」に対するリスペクトは残念ながらほとんど感じられなかったです。これで全席同一料金(席の選択もできない)の15,000円ですから、自分としてはコスパの悪いコンサートでがっかりでした。そしてこれは、もし仮に最初からちゃんと聴けていたとしても、評価は変わらなかっただろうと思います。角川映画を語る上で絶対欠かせない大野雄二の楽曲が一切なかったのは残念を通り越して暴挙ですし、ましてやタイミング的に追悼という二度とないきっかけを掴めたはずなので、なかった理由が逆にさっぱりわかりません。さらに言うと、角川映画が産んだ大スターである薬師丸ひろ子と原田知世、さらにはまだ存命であろう角川春樹本人まで引っ張り出してくれたら、真の意味で50周年記念に相応しい「角川映画音楽祭」になったのになあ、という思いがひとしおです。全席一律のこの価格設定で、いったいどこにお金を使ったのやら。どうせならチケットさらに高くなってもいいから、本当の功労者をもっと呼んで欲しかったですねえ。

セットリスト(公式ページより)
『復活の日』より 「You are love」 歌唱:マリーン
『キャバレー』より 「Left Alone」 歌唱:マリーン
『野獣死すべし』より 「野獣死すべしのテーマ」 演奏:藤井空
『Wの悲劇』より 「Woman “Wの悲劇”より」 歌唱:クミコ
『戦国自衛隊』より 「戦国自衛隊のテーマ」 歌唱:松村とおる
『スローなブギにしてくれ』より 「スローなブギにしてくれ」 歌唱:南佳孝
『メイン・テーマ』より 「メイン・テーマ」 歌唱:南佳孝
『ボビーに首ったけ』より 「ボビーにRock'n Roll」 歌唱:野村宏伸
『天と地と』より 「天と地と〜HEAVEN AND EARTH〜」 歌唱・演奏:小室哲哉
『天と地と』より 「炎」 演奏:小室哲哉
『汚れた英雄』より 「汚れた英雄 -Riding High-」 歌唱:マリーン
『ぼくらの七日間戦争』より 「SEVEN DAYS WAR」 演奏:小室哲哉

最高!新しい学校のリーダーズ:ロンドン降臨@ラウンドハウス ― 2026/07/19 23:59



2026.07.19 The Roundhouse (London)
Atarashii Gakko! (新しい学校のリーダーズ): “LONDON 降臨” AG! 11th Anniversary Show

クラシックの2025/2026シーズンがほぼ終了し、BBCプロムスが始まるまでの束の間の休息であるここ1ヶ月は、スティーブ・スミス、デフ・レパード、パット・メセニーときて、今日の新しい学校のリーダーズまでのこの流れは、我ながら節操ない雑食だなと思いました。

本日の会場Roundhouseは、地下鉄Northern LineのChalk FarmからCamden Townへ少し戻ったところに位置し、文字通り機関車の扇形庫だった施設をコンサート、演劇、映画等に使うため改装したものです。このクラスの会場では入口が一箇所のため入場に時間がかかり、行ってみたら案の定長蛇の列で、並んでから入るまで1時間近くかかりました。客層は若者中心で、原宿カワイイ系、ゴスロリ系、スーサイドスクワッド系など個性的なコスプレの人々が多数。中年、老年の人もそこそこおり、腕にびっしりと刺青している兄ちゃん姉ちゃんがセーラー服を着ているのはシュールながらどこか微笑ましいです。

中は円形のホールの一方にステージがあり、残りはオールスタンディング。着席の座席は上階になりますが、数はそんなに多くなく、結局全体でキャパは約3000人とのこと。上階の席は10列ほどしかなく、どこで見てもステージが結構近いのがこのホールの利点と思いました。元からあったと思われる柱が邪魔と言えば邪魔ですが、見通しは良かったです。

新しい学校のリーダーズはSUZUKA、KANON、MIZYU、RINの女性4人から成るダンスボーカルユニットで、全員20代後半の若い人々ですが、メンバー交代もなくすでに11年のキャリアがあります。自分のバンドのレパートリー探しで新しめのJ-POPを常々追いかけている中で、「オトナブルー」が流行った2023年ごろからウォッチはしていましたが、ライブを見るのはもちろん初めて。そのルックス、キャラ設定、音楽性から、海外志向があるとはとても思えなかったのですが、実のところ2020年から米国のレーベルと契約して、「Atarashii Gakko!(通称AG!)」の名称で積極的に海外展開しているのが非常に意外でした。しかも主戦場は中国・アジアではなく、欧州、北米、南米の西洋文化圏。日本独特のセーラー服仕様の女子制服に、全て日本語歌詞で五音階スケールを多用した楽曲、ガニ股で腰を折り重心を低くしたコミカルな振付など、どこにも外国に媚びた様子が見当たらないそのスタイルは、実は一周回って正解だったのかと思いました。

満員御礼のスタンディング客から「AG!」コールが湧き上がる中、日本人にはお馴染みの学校のチャイム音(この音階のオリジナルはビッグ・ベンの時鐘だそうですね)が鳴り、4人がすっと登場。生バンドはなく音源を使うパフォーマンスで、クラブイベントの様相でした。狭いステージも4人だけなら十分な広さがあります。ステージ後方のスクリーンはプリメイドの映像を流すのみで、ライブ中継の投影はありません ただ、ステージが近いのでスタンドから肉眼でも十分見えたし、オペラグラスだと表情までくっきりと見えたので良かったです。

キャラ設定が全く異なる4人ですが、11年もやってるからダンス・パフォーマンスは完成されていてたいへん上手く、息もぴったり。知らない曲がほとんどでしたが、激しいダンスナンバーありーの、アイドルチックな曲もありーの、韓流ともAKB・坂道系とも違う独自の個性が存分に発揮された、とても面白いライブでした。全部日本語の歌詞なのに、イギリスの若者はノリノリで歌います。一方のAGメンバーのMCは、さすがに原稿丸暗記の英語でしたが、時々飛んでたのが微笑ましい。「Our English is not good enough」と言い訳をして笑いを取ってました。「Tokyo Calling」では、ライブの定番だそうですが、SUZUKAがオールスタンディングの客を突っ切って反対側まで行き、フェンスのヘリに立って歌った後に、クラウドサーフでお客に持ち上げられながらステージに戻ってきました。もちろんずっとガードの人は付いていましたが、危なっかしくて見ていてハラハラしました。ウェーブの途中で方向がずれ、なかなか戻れないSUZUKAは「プリーズ」と叫びながら軌道修正し、無事時間内でステージに戻ってこれたので一安心。

アンコールではSUZUKAとRINが黒、KANONとMIZYUが白の「ロンドン降臨」限定のライブTシャツに着替えて、リリース間近の新曲と、SAIKO!で盛り上がる「One Heart」で締め。前座もなく全部で1時間20分という単独としては短めのライブでしたが、自分的にはちょうどいい長さで、十分満足しました。

2026/07/19 set list:
Go Wild
Toryanse
Chanka Chanka
Otona Blue
Arigato
TTTTOKYO
Catch That Train (Kanon solo)
Kore de E (Mizyu solo)
Waiting for Good Time (Rin solo)
Dance Dance
Oi AG!
Fantastico
Forever Sisters
UTAGE HIKARU
Pineapple Kryptonite (remix)
Fly High
Tokyo Calling
Encore:
Take Me with You
One Heart




SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026 in LONDON ― 2026/03/31 23:59



2026.03.31 O2 Academy Brixton (London)
City Pop Waves: SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026
高中正義 (guitar)
斉藤ノヴ (percussion)
岡沢章 (bass)
宮崎まさひろ (drums)
井上薫 (keyboard)
髙本りな (keyboard)
大滝裕子, 斉藤久美 (chorus)

高中は自分の世代的には「虹伝説」リリース時にずいぶん熱心に聴き込んだことと、その後バンドでいくつか著名曲を演奏したこともあり、もちろん生で見たかったアーティストの一人だったのですが、基本的に武道館とか野外フェスなどの巨大な箱でしかやらない人という先入観があり、足が遠のいていました。このライブに気づいたとき、せっかくロンドンに来るというのでこれは是非見たいと思ったのですが、チケットはすでにソールドアウト。オフィシャル販売サイトであるTicketmasterにリターンが出てないかを日々ウォッチしつつ、リセールサイトのTwicketでもアラート登録をして待ち構えていたのですが、ライブの一ヶ月前になろうとする時期になっても一向に出てこないので、痺れを切らせて別のリセールサイトviagogoを探すといくつか出ているのを発見。ここは手数料が高く、トータルでけっこうな値段になってしまうのですが、毎日ヤキモキするのも疲れるのでここらで諦めて手を打ち、もうストールで立ち見する年齢でもないので、Limited Viewですがサークル席のチケットを無事ゲットしました。

いろいろネットを調べていると、このライブは最初、同じO2でもShepherd's Bush Empireのほうで開催の予定だったのが、チケットの売れ行きが想像以上だったため、急きょ場所がO2 Academyに変更になり、さらに追加公演も発表されたという経緯のようです。例えば2025年に藤井風が行ったロンドン公演はO2 Shepherd’s Bush Empire(収容約2千人)で二日間ソールドアウトだったのに対し、今回の高中はO2 Academy(収容約5千人)で同じく二日間ソールドアウト、動員力はざっと藤井風の2.5倍あったということになります。キャリアもジャンルもファン層も違うので比較はあまり意味がないかもしれませんが(私は両方大好きなのですが)、これが日本だったら藤井風のライブチケットは高中の100倍は入手困難でしょうから、ロンドンで高中の人気がこれほどまでに高いというのがまず素直に驚きでした。

18時開場、20時開演ですが、着席だからあまり早く行っても時間を持て余すと思い、それでもちょっと早めに結局18時半ごろ会場に着いてみれば、入場を待つ人々が2ブロック先まで続く長蛇の列を成しており、あらためてビックリ。大人しく並んで、やっと入口まで辿り着いたかと思ったら、行列は何とさらに建物を一周巻いて続いており、さらにぐるっと回らされてやっと入場できました。雨に降られなくて本当に良かったです。客層を見ると、人種はいろいろですが、概ねイギリス人の若者ばかり。日本人らしき人は一人も見かけませんでした。列に並んでいる際も、すぐ後ろにいた白人の若者集団(多分20代前半)はまだ肌寒い気候の中Tシャツ一枚でワインを瓶からラッパ飲みしつつ大騒ぎしており、時折り「Brasilian Skies」や「Seven Goblins」を鼻歌で歌ったりしてたので、行列を間違えていないなという確認にはなったのですが、日本の高中のライブでは多分まず見ることがないであろう客層です。そのうちの一人は「自分は高中ファンだけどカシオペアのほうが好きなんだ」などと声をかけてきて、何でそんな古いジャパニーズフュージョンがイギリスで人気なのか聞きたかったのですが、彼らは楽器をやるわけではなく、ただ日本のフュージョンシーンはとても特別で、イギリスでも好んで聴く人は多い、というところで、入場の列がストールとサークルで分かれてしまい話途中までしか聞けず。

O2 Academy Brixtonは初めて来たのですが、元々Brixton Academyと呼ばれていた老舗のライブシアターで(例えばBrian May Bandのライブアルバム)、建物も内装もトイレも、かなり伝統と歴史を感じさせる古臭さです。サークルから下を見下ろすと、立ち見のストールは盛り上がる気満々の人々ですでに寿司詰め状態。


特に前座アーティストもなく、8時ジャストにライブがスタート。バンドメンバーに続いて、「TAKA!」コールに後押しされ、定番の真っ赤なスーツで登場した高中は、年齢を感じさせず元気いっぱいの様子。1曲目はオリジナルアレンジの「Blue Lagoon」、早速場内大盛り上がり。こっちの若者のライブの楽しみ方は、とにかく歌う歌う。高中の曲は基本的にインストなので、ウォーウォーワーワーとスキャットでメロディラインを歌いつつ、歌詞のある曲ではもちろん、「Tokyo Reggie」のような日本語の歌詞でも皆さん歌いまくるのは感心しました。高中の曲はインプロヴィゼーション重視のモロジャズとは違い、メロディアスなギターテーマと決めソロ中心のシティポップ・フュージョンですから、完全に歌モノとして捉えられているようです。また、ストールはオールスタンディングですが、サークルでもみんな立って歌うのかなと思っていたら、昨今の聴衆はみんなスマホで動画撮影するので、周囲に遠慮してむしろ基本は大人しく座ったままだったのが意外でした(一方で演奏中でも頻繁にビールを買いに行ったりトイレに立ったりする人は後を絶ちませんでしたが)。

セットリストは文末の通りで、おそらく日本でやるライブでもほぼ同じようなラインナップでしょう。「Blue Lagoon」からサンタナの「哀愁のヨーロッパ」カバーまでは70年代の曲が続き、その後は80年代の人気曲を中心に、最後はサディティック・ミカ・バンドの「黒船」まで一気に年代を遡ってしっとりと終わりますが、もちろんアンコールではお約束のサーフボードギターを披露し、シメは超定番「虹伝説」からのシングルカット曲「You Can Never Come To This Place」。潔いほどのオール懐メロプログラムでした。私の大好きな小林泉美の「Palm Street」を筆頭に、聴きたかった曲はだいたい全部やってくれたので、大満足です。

バンドの中心メンバーは長年大きな変化はなく、斉藤ノブと岡沢章が75歳、宮崎まさひろが71歳、高中がその中間の73歳、セクシーなコーラスお姉様方のアマゾンズ(今回は吉川さんを欠く二人構成でしたが)もすでに還暦越え。皆さん年齢を全く感じさせない溌剌としつつも、年輪を重ねた安定感抜群のパフォーマンスで、こちらもその恩恵で力をもらった気分になれます。一方でこのバンドのキーボードはだいたいいつも比較的若い人が常に2名サポートする編成になっていますが、近年の常連メンバー井上薫に加えて、もう一人は今年のツアーから高本りなが新たに加入。見目麗しい外見からは想定外のパワフルでリズムキレキレのピアノが非常に良かったです。まあ、ホールの音響はどう見てもジャズ向きではないので、本来ならいろいろ細かい技を持っている宮崎まさひろや斉藤ノブのプレイがもっと解像度良く近くで聴けたら、とは無い物ねだりでしょうか。

今日の客層から言うと、自分らはおろか両親すらまだ生まれていないかもしれない年代の曲を、祖父母世代の極東ミュージシャンがはるばる海を越えてきて演奏するのを若い音楽ファンがこれだけ熱狂して楽しめるのというのは、シンプルに凄いことだと感服しました。日本のオールドミュージシャンとイギリスの若い音楽ファンに脱帽するしかありません。

セットリスト:
01. BLUE LAGOON (1979)
02. RADIO RIO (1979)
03. BLUE CURACAO (1978)
04. BRASILIAN SKIES (1978)
05. OH! TENGO SUERTE (1976)
06. Tokyo Reggie (1976)
07. Europa (Earth's Cry, Heaven's Smile) (Santana cover) (1976)
08. JUNGLE JANE (1986)
09. SHAKE IT (1986)
10. Nagisa Moderato (1985)
11. SAUDADE (1982)
12. PALM STREET (1980)
13. Taj Mahal (Jorge Ben Jor cover) (1972)
14. THUNDER STORM (1981)
15. READY TO FLY (1977)
16. Kurofune (Kaei 6-nen 6-gatsu 4-ka) (Sadistic Mika Band song) (1974)
アンコール:
17. JUMPING TAKE OFF (with surfboard guitar) (1983)
18. YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE (with rainbow guitar) (1981)






古内東子/Reunion @コットンクラブ ― 2024/09/27 23:59

2024.09.27 コットンクラブ (東京)
TOKO FURUUCHI "Reunion" [2nd show]
古内東子 (vo)
佐野康夫 (ds)
石成正人 (g)
小松秀行 (b)
中西康晴 (p)
草間信一 (key)

コットンクラブに来るのは2021年12月の南野陽子以来、3年ぶり。前回ここで古内東子を聴いたのは2013年11月ですから、もう11年も前の話になりました。月日の経つのは早いものです…。

その11年前の備忘録で、「古内東子と言えば血の通ったソウルフルなバンドサウンドも聴きたいもの。」と書いていた私にとって、今回の「Reunion」はまさに長年待ち望んでいた特別なライブです。古内東子さんはほぼ毎年のようにコットンクラブでライブをされていますが、デュオかトリオの弾き語りばかりだったので、もうフルバンドはやらないのかと残念に思っていましたが、デビュー31周年という半端な年に、突然の垂涎の企画。この小さい箱(失礼)で、しかも一夜限りはいかにももったいないけれど、ともかく激しいチケット争奪戦になるのは必至なので、気合いを入れて何とかチケット勝ち取りました。

今回は端的に言うと1997年発表の6枚目アルバム「恋」のレコーディングメンバーが27年ぶりに再集結するという企画で、セットリストを見ても、「恋」からの選曲が7曲、5枚目「Hourglass」から5曲、7枚目「魔法の手」から2曲の合計14曲という、セールス的にも一番成功していたその時期のリスナー世代をピンポイントで狙っていました。特に、小松秀行という(当時は)若くて才に溢れたベーシストが、オリジナル・ラヴを経て、サウンドプロデューサーとして全面的に支援したこれら古内東子のアルバムでその創作能力を一気に開花させていくプロセスは、同じくオリジナル・ラヴからやってきた佐野康夫をはじめとするバックミュージシャンたちの勢いあるプレイも相まって、その時代のその人たちだからこそ成し得た奇跡のように思います。MCで東子さん本人も、小松さんがいなかったら今の私はありません、と感謝を述べていました。

やはり小松・佐野のリズム隊が揃うからか、前の弾き語りライブのときより客層の男性率が高いように見えました。業界人っぽい集団、YouTubeで見たことある人などもちらほらと。まあしかし、今日の目当ては何と言っても念願の佐野康夫の生ドラム。正面でよく見える席だったのでラッキーでした。ドラムセットはワンタム、ワンフロアのシンプルな構成で、シンバルもクラッシュ2、ライド1のミニマムでしたが、ライドを多彩に活用したジャズっぽいプレイスタイルでした。また、元々ソウル系リズムの曲が多いから当然そうなるのですが、片手16ハイハットが延々と続く、ドラマーにとっては修行のような曲が続きます。90年代は金髪でキレキレ、やんちゃっぽい雰囲気だった佐野さんも、今や燻銀の渋さ。「星空」などバラード系ではスティックとブラシを両手で持ち、途中で左右入れ替えたり、レギュラーとマッチドの両グリップを使い分けたり、細かいところでテクニシャンぶりを発揮してました。落ち着いたドラミングが要求される曲が多かったところ、アンコールの超高速「宝物」と、やはり締めはこれしかない「いつかきっと」では手数全開グルーヴ満点のノリノリドラムで本領を見せつけました。

コットンクラブのサイズだとドラムの生音が大きめで、相対的に歌がちょっと聴こえにくかったのですが、どのみちほぼずっとドラムを凝視していたので気になりませんでした。MCで東子さんも言ってましたが、もちろん全然違うようにも演奏できる優れたミュージシャンたちですが、今回はあえて、これらアルバムを愛してくれた人々と想いを共有するために、当時のアレンジをほぼ再現する形で、満足度マックス、夢のようなステージを提供してくれました。古内東子とReunionバンドの人々には本当に感謝です。

セットリスト:
01. 悲しいうわさ/恋
02. 大丈夫/恋
03. ルール/Hourglass
04. 余計につらくなるよ/恋
05. そして二人は恋をした/恋
06. ブレーキ/恋
07. 星空/Hourglass
08. 月明かり/恋
09. 淡い花色/魔法の手
10. 誰より好きなのに/Hourglass
11. 心にしまいましょう/魔法の手
12. あの日のふたり/Hourglass
13. 宝物/恋(アンコール)
14. いつかきっと/Hourglass(アンコール)

南野陽子@コットンクラブ ― 2021/12/11 23:59



2021.12.11 コットンクラブ (東京)
To Love Again 〜SNOWFLAKES〜 YOKO MINAMINO
南野陽子 (vo)
エルトン永田 (p), 加藤JOE (vln), 角田順 (g)
長岡道夫 (b), 島村英二 (ds), 田代修二 (key)
増渕東 (manipulator), 萩田光雄 (sound producer)

コットンクラブに来るのは4年半ぶりです。南野陽子さんはバリバリの現役アイドル時代に特に追っかけていたわけではないものの、10年ほど前にきっかけは忘れましたがYouTubeで新旧の動画を探しては観るのが突如マイブームになってしまい、40代(当時)になっても驚異的な美貌とアイドル時代から変わらぬ愛嬌にすっかり魅せられてしまいました。しかしながら、ライブのコンサートはほとんどやってないようなので、実物を見れる機会が来ようとは夢にも思いませんでした。というわけで、10月に広告を見て、こいつだけは逃すまいと、発売日は出先にも関わらず気合を入れて何とかチケットをゲット。まあ取れたから良かったものの、コットンクラブはただでさえ座席数が少ないうえに、コロナ対策で間隔を開けた配席になっているので、12時からの販売開始で5分後には4公演全席完売という予想通りの超激戦でした。同じコットンクラブで5年前の原田知世のコンサートが、同じく瞬殺でチケット取れずだいぶ落胆したのですが、今回はリベンジです。

以前と違い、コロナ対策でフロアテーブル席も全席指定になっているので開場前に早くから並ぶ必要はなくなりました。チケットを取る際は通信環境のせいで売り切れギリギリの攻防だったので、最終的な配席が心配だったのですが、非常に至近距離の席だったのでラッキーです。待ちに待った生ナンノは、エレガントなロングドレスに身を包み、54歳になってもアイドルの瞳がキラキラ光ってます!さすがに40代のころからはイメチェンして、「半沢直樹」シーズン2のIT会社副社長(悪役)のごとく歳相応の貫禄がついたのが(スタイルは変わらず完璧なプロポーションでしたが)、目の前のリアルでした。初日なので見るからに緊張している様子で、声が上ずるなどちょっと失敗した後に見せる苦笑いがむしろ愛嬌だったりするわけですが、1曲目から早速歌詞を飛ばす事故で「ごめんなさ〜い」。MCで本人も「この後も多分何度もやらかします」と予告していた通り、自分の持ち歌でも何回も歌詞を飛ばし、それでも温かく見守ってもらえる天性の愛嬌は、まさに昭和アイドルのオーラでした。

前半の曲は「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「幸せの黄色いリボン」「真珠の首飾り」といった幼少期に慣れ親しんだというスタンダードナンバー中心。本人が歌いたいものを歌う趣旨で全くかまわないのですが、正直なところ歌唱力はアイドル時代からあまり変わってないので、この路線で最後まで行くのはちとつらいかなと思っていたら、後半には16年ぶりのオリジナル新曲「大切な人」と、「秋のIndication」「メリー・クリスマス」「楽園のDoor」(ボサノバ風アレンジがとっても良かった)といったバリバリアイドル時代のナンバーを披露し、観衆は皆ほっとした様子でした。アンコールでは超速で自身のプリントTシャツとジーンズに着替え、もう1曲の新曲「空を見上げて」に続いて最後は「はいからさんが通る」で大いに盛り上がりました。個人的には「話しかけたかった」で髪をはねたり、「吐息でネット」でくるりと回るのも見たかったところですが、多分コロナ対策もあり、合いの手系やサビ歌わせ系の曲は意図的に外したんだろうと思いました。

サウンドプロデューサー萩田光雄が集めてきたバックバンドは、皆さん70代のベテランを超えたレジェンドのスタジオミュージシャンばかりで安定感は抜群。MCでは「サンタのおじいさんたち」と茶化されてましたが。1万円のチケットはちょっと高めではありましたが、たいへん贅沢なコンサートでした。


今月新発売の、新曲2曲を含むコンピレーションCDのチラシ。各席に置いてありました。

古内東子の弾き語りライブ ― 2013/11/20 23:59

2013.11.20 コットンクラブ (東京)
古内東子 -秘密の調べ-
古内東子 (vocal, piano), 草間信一 (keyboard)

丸の内のコットン・クラブで古内東子のライブがあるというチラシをたまたま見つけ、こんな近場でやってるなら是非見たいものだと、ふらっと行ってみました。古内東子は小松秀行がプロデュースをしていた全盛期のころまではよく聴いていましたが、1998年だから、もう全盛期ならぬ前世紀の話なんですねえ…。

古内東子と中原めいこと松任谷由実にはいろいろと語り尽くせない思い出がまとわりついていて、客観的な評価はなかなかできないのですが、古内東子についてはずっと思っているのが、オーラが全く感じられないこと。デビューのころのビジュアルは拗ねた女子大生風だし、売れたころも、そのへんにいつも歩いていそうなOL風の域を出ない。決して美人とは言えないし、歌が飛び抜けて上手いわけでもない(個性的ではありますが)。ひとえに楽曲の良さで売れてきた人でしょう。前世紀末に恋愛教祖としてブレークしたのは、本人のカリスマ性のなさがかえって好まれたのかとも思っています。

コットンクラブは初めて来ましたが、2005年開業だから日本にいなかったので、知らなくてあたり前か。ブルーノート東京より一回り小さい、アダルトな雰囲気の洒落た箱です。こんな空間が、こんな近くにあったとは。早めに行ったので運良くかぶりつきのテーブルに座れました。念のため持ってきたオペラグラスを使うまでもなくよく見えましたが、そういえばジャズクラブでオペラグラスを使ってる人は、見たことないな…。

公式HPなんかで見る最近のプロモ写真が昔とずいぶん違うので(笑)、もしやお顔がすっかり「変身」してしまったのかと思っていましたら、登場した古内東子はかつての人がそのまま普通に年を召したような、全くの想定内だったので安心しました。相変わらず、オーラはない。昼間は丸の内でOLやってます、と言っても違和感ありません。ステージは、ピアノ弾き語りにキーボードのサポートを付けた、1時間強のこじんまりとしたものでした。アンコールの「ピーチ・メルバ」を除き、バラード中心のまったりとした構成。長い間追っかけてなかったので半分くらい知らない曲でしたが、私のカラオケレパートリーである「逢いたいから」や「うそつき」をモノホンで聴けたのは感動しました。カバー曲コーナーでは、ちょうど来日中のポール・マッカートニー「My Love」なんかも歌っていました。最近はこういう弾き語りのスタイルが多いそうですが、古内東子と言えば血の通ったソウルフルなバンドサウンドも聴きたいもの。今年2月にブルーノート東京でやったデビュー20周年記念ライブでは佐野康夫がドラムを叩いていたようで、帰国前だったから無い物ねだりとは言え、これは見たかったです。ということで、次にフルバンドでやるのはいつの日かと、公式ページのNEWSを追いかける毎日なのでした。