K.ヤルヴィ/MDR響@念願のゲヴァントハウス2017/06/11 23:59


2017.06.11 Gewandhaus zu Leipzig, Großer Saal (Leipzig)
Kristjan Järvi / MDR Sinfonieorchester
1. J. S. Bach: 'Chaconne' from Partita No. 2 for Violin BWV 1004 (arr. by Arman Tigranyan)
2. Max Richter: Exiles (German premiere)
3. Rachmaninov: Symphony No. 2 in E minor Op. 27

ライプツィヒは13年前に訪れて以来の2回目ですが、前回は幼児連れでとても演奏会どころではなかったところ、今回はタイミングよく念願のゲヴァントハウスで演奏会を聴くことができました。オケはやはりゲヴァントハウス管を聴きたかったところですが、あいにくこの日はMDR響(旧ライプツィヒ放送響)。まあでも、ゲヴァントハウス管はロンドンで何度か聴いているし、その昔ケーゲルとの録音がマニアに高評価だったライプツィヒ放送響を生で聴けるとあらば、全く文句はございません。

ライプツィヒの旧市街は本当にこじんまりとしていて、隅から隅まで回っても半日で足りそうです。その一角にあるゲヴァントハウス、外観は13年前と全く変わっていません。正面右隣にあった旧共産圏の匂いをプンプンさせていた建物は、建て替えられてすっかりモダンになっていましたが。コンパクトなホール内は平土間がなく、どの席からもステージがよく見えて、しかも音場が近そうな、まさに私好みのホール。ここに通えるのならこの街に住んでみたい、と思ってしまいました。


さて、日曜マチネの公演の客層はシニア層が大半を占めていました(危惧した通り、補聴器のハウリングが当たり前のように起こっていましたが…)。1曲目は地元最大の著名人、JSバッハの「シャコンヌ」管弦楽版。編曲は1979年生まれのロシア人(ですが見るからにスラヴ系ではなく南方スタン系の人)、ティグラニアン。2管のフルオーケストラを駆使した、奇をてらわない正統派の作りで、金管打楽器もふんだんに使い、派手な演出です。ストコフスキーのバッハ編曲を連想させました。ある意味映画音楽みたいで、作家性はあまりないものの、よい仕事をしていると思います。演奏後、編曲者が登場、挨拶させられてました。

続いて、マックス・リヒターの新作「Exiles」はドイツ初演とのこと。世界初演も今年ハーグで行われており、こちらはパーヴォ兄ちゃんの指揮だったそうです。弦楽器、打楽器、ピアノ、ハープという編成で、全部で30分ほどのスローなミニマルミュージックでした。最初ピアノから始まり、同じメロディを繰り返しながら徐々に徐々に楽器が増えていく、言うなれば現代の「ボレロ」。ミニマル系なので聴きやすい曲ですが、打楽器なぞ25分ごろからやっと登場し、とにかく長い。同じミニマル系でもグラスとかライヒと比べて展開に意外性もなく、先が読める産業音楽に思えました。こちらは作曲家は出て来ず。

メインのラフマニノフ2番は好んで実演を聴きに行く曲の一つですが、昨年は機会がなかったので約2年ぶり。また、ロンドンで何度か聴き「イロモノ系指揮者」(失礼!)との認識を持っていたクリスティアン・ヤルヴィで、まともな交響曲を聴くのは多分初めてです。全体を通しての印象は、自身も指揮台の上で飛び跳ね、踊りつつ、ノリと歌を大切にする音楽作りだなあと思いました。冒頭からねちっこく歌うようなフレージングにもかかわらず、早めのテンポが功を奏し、甘ったるくなる寸でのところで理性を保っています。第1楽章の最後はティンパニの一撃あり。第2楽章の第2主題は逆に、ポルタメントなんかかけなくても十分歌えるわい、と言わんばかりにさらっと流して、決して無理やり作り込むのではなく、奏者をうまく乗せて、自発的に出てくる歌謡性を拾い上げるような感じでした。実際、第3楽章のクラリネットソロはほぼ奏者の自由に吹かせていました。

クリスティアン・ヤルヴィが個性的で良い指揮者なのは実体験済みでしたが、MDR響もさすがは旧東独の名門放送オケでした。オケは常によく鳴っていながらも、弦も管もバランスがよく、どのパートもたいへんしっかりしていて、安心して聴いていられます。アンコールはベートーヴェンの「カヴァティーナ」、心地よい余韻でした。

おまけ。風格漂うクルト・マズアの肖像画がナイスでした。


9月なのに「オクトーバーフェスト」in 日比谷2014/09/26 23:59

4月にお台場からスタートして、全国を廻り、9月末にまたお台場まで戻って来る、何故か10月を待たずして終わる、日本の不思議な「オクトーバーフェスト」。先日、会社帰りに日比谷公園噴水広場の会場に足を運んでみました。
※実は、ミュンヘンの本家本元には、結局行けずじまいでした。



当然ながら会社帰りの酔っぱらいサラリーマン&ウーマンでいっぱい。バンド演奏もやかましく、にぎやかでリラックスした雰囲気でした。

Becks、Paulaner、Erdinger、Frankenheim Altなど、懐かしい銘柄が目に飛び込み、頬が緩まずにはおれません。500ccのビールが1400〜1600円と、都心のパブと比べても値段設定は正直高いけど、普段お目にかかれないドラフトビアなので、仕方がない。レバーケーゼも久々に食べれたし、つかの間の「ドイツの想い出」を堪能しました。

デュッセルドルフの匠・二代目豚骨2013/06/10 23:59

昨年末にオープンしたデュッセルドルフ「匠」の二号店・豚骨。なかなか行く機会がなく、先日ようやくふらっと行けました。開店当初は混んでいたそうですが、半年も経つとさすがにオフピークは空いていました。



食べたのは黒麻油をきかせた「黒丸」。本家の匠もスープのベースはとんこつ(+鶏ガラ)系ですが、二代目はわざわざ「豚骨」と名打つ通り、九州系の白濁濃厚とんこつが売りです。置いておくとすぐに油膜が張ってくる、本物のとんこつスープが、めちゃ嬉しいです。

麺 は細麺ですが、博多ラーメンとは違います。本店と同じくこちらも西山製麺とのこと。博多のストレート麺じゃないのはちょっとがっかりしましたが、細麺でも しっかりとした腰があり、これはこれで美味です。ロンドンの麺はホントにこれを見習って欲しい。よく考えれば豚骨とは名付けても「九州」とは一言も言って ないので、「匠オリジナル豚骨」と思えばよいのでしょう。ゴマすりが添えてあるのも、とってもナイスのひとこと。


これは一口餃子。ロンドンのどの店の餃子よりも美味しい。

それにしても、同じ並びにある老舗の「なにわ」は、相変わらず待ち行列ができていました。「なにわ」に「匠」の2店舗が加わり、デュッセルドルフのラーメン好事情は依然としてうらやましい限り。

デュッセルドルフのラーメン「なにわ」2012/03/28 23:59

先月も行ったばかりですが、今月もデュッセルドルフへ出張。デュッセルと言えば、ラーメンのために出張していると言っても過言ではありません(おいおい)。それは冗談としても、今回ちょっと当てが外れて空き時間がいっぱいできてしまったので、ここぞとばかりにレッツゴーです。

いつもの「」は当然行くとして、今回は久しぶりに老舗の「なにわ」にも足を伸ばしてみました。過去に一度だけ行ったことがあり、そのときは「ローカライズが進んでいる」という印象があったので、それ以降どちらかというと「匠」をひいきにしていました。また、私は何故かデュッセルの出張は火曜日に行くことが多く、生憎なにわは火曜が定休日なのでなかなか行く機会がなかったというのが足が遠のいていた本当の理由です。

なにわはいつも混んでいます。外のベンチシートに順序よく座って待っているのが、ヨーロッパでは新鮮です。ここはラーメン屋というよりは「日本の中華食堂」といったほうが店のイメージを掴みやすいです。定食や丼ものが豊富にあり、運ばれてる皿を見たところどれも美味しそう。しかし私のターゲットはラーメン。ここは涙を飲んでラーメンを注文。


普通の醤油ラーメンに味玉、ワカメのトッピングです。見た目は正直イマイチなんですが、スープが匠とはまた系統の違う美味しさで、絶品。麺は中太のストレートで、しっかり腰があってこれまたポイント高。この麺、日本でも食べたことがある気がするんですが、どこだか思い出せません。何にせよロンドンでは望めるべくもないホンモノのラーメンに、降参するしかありませんでした。


別の日に特選醤油ラーメンも試してみました。何が特選かというと、メンマの代わりに白菜豚バラ炒めが乗っているわけですが、これなら普通のラーメンで十分かなと。あと、この日は味が薄めだったので、日によってスープのバラツキがけっこう大きいのかもしれません。

日本人ももちろん多いですが、ローカルのドイツ人もカウンターに座って黙々とラーメンを食べていて、地域にすっかり定着しているのがわかります。定食、一品ものが充実していて、ラーメンは塩・醤油・味噌以外にも担々麺とか「タイカレーラーメン」とか「マーボーラーメン」などの変化球も多数メニューに載せていることが、ある意味ラーメン屋としての「格」を落としめている気がしてならないですが、ここはいわゆる「ラーメン屋」というカテゴリーとは違うのかもしれませんね。

味の系統が全然違うので、その日の気分によって「匠」か「なにわ」か選べるこの環境は、掛け値なしにうらやましいです。加えて匠は餃子も美味しいですし、なにわは定食、丼が充実している。もし単身赴任だったら毎日でも通いそう。


デュッセルの一日のシメは、いつものごとくシューマッハーのアルトビアで。気を抜くとどんどんおかわりを持ってくるので、油断なりません。前に小銭が足りなかったとき、負けてもらった借りがあるので、ここに来るとつい飲み過ぎてしまいますが…。

Pfannkuchenstube Hilden(ドイツ料理)2012/02/08 23:59


デュッセルドルフの郊外ヒルデンにある面白いドイツレストランです。元シェフのオーナー(上写真、通称「クマさん」)がほとんど自分の趣味だけでやってるようなお店。へんぴな場所にあり、観光客がフラッと行けるところではありませんが、英語メニューもあり、オーナーも英語をしゃべります。


扉を開けてまず目に飛び込んでくるのが、ピアノを弾くマネキン人形。


階段の壁にはびっしりと写真。スーツケースからはみ出た手とか、怪しさ満載です。


ダイニングルームも壁といい天井といい、オーナーのコレクションが所狭しと飾ってあります。その多趣味度合いには感服するばかりです。






このレストラン、隣りに乗馬の練習場があって、ガラス越しに調教を見ながら食事ができるようになっています。窓はきっちりシールされているので馬の匂いがやってくることはありません。


本日のスペシャル、子牛レバーのソテー、マッシュポテトと焼きリンゴ添え。


スペアリブ・バーベキューソース。見た目は凄いボリュームですが、ほとんど骨なので意外と食べれます。


スペシャルデザート三点盛り。

料理はどれも美味しく、オーナーの目が行き届いています。機嫌が良いと取って置きのスピリットを振る舞ってくれたりします。気さくながら圧倒的に存在感のある名物オーナーです。もし自分がデュッセルに住んでいたら、多分通ってしまうなあ。

Pfannkuchenstube Hilden Am Stadtwald
Im Loch 6-8, D-40724 Hilden, Germany
+49 2103 47222
http://www.pfannkuchenstube.de/

ブレーメンとハンブルク2012/02/07 23:59

今週ドイツに出張に行ってました。今回初めて行ったのはブレーメンとハンブルク。



町の中心、マルクト広場の市庁舎とローラント像は世界遺産に登録されています。お昼どき、天気は快晴だったのですが、気温は−8℃、さっぶー。ロンドンと同じスーツにコートで来た私は、とても長時間外を歩いていられませんでした。しかし雪はなく、空気がとっても乾燥しているので肌はガサガサになるわ、静電気はバチバチ飛ぶわで大変でした。


ブレーメンというと、合い言葉のように出てくるのが「音楽隊」。グリム童話に基づいた銅像が、市庁舎の脇に地味〜に立っていました。


行くまで知らなかったのですが、ブレーメンで他に有名なのは、BECK'Sのビールと、Hachezのチョコレート。特にHachezは妻の大好物で、ドイツ出張で時間があれば必ずスーパーに寄ってお土産に買っていたのですが、ラベルに堂々とBremenと書いてあるのに今まで気付きませんでした。


ドイツ最古のワイン蔵という市庁舎地下のBremer Ratskellerで地元名物料理のBremer Braunkohlを食べてみました。青汁の原料ケールを刻んで煮込んだものの上に、豚バラのボイル、ハム、茹でソーセージ2種が乗っています。こういうの、けっこう好きです。くすんだ茶色のソーセージはPinkelといってひきわり麦と牛の腎臓が入っており、けっこうクセがあって、ブレーメンの人以外はあまり食べないそうです。

仕事の後、ハンブルクに移動したのですが、もうとっぷり夜で、町の中心部でもなかったので、写真は撮れませんでした。気温はさらに下がって−16℃、ホテルからちょっと夕食で外に出るのにも堪え難い寒さで、特に耳が死にました。

団地街を歩いている最中、何と野良のウサギの群れに遭遇。ブダペストやロンドンでもキツネとリスはよく見ましたが、ウサギが道路を渡っているのは初めて見ました。


一番トロかったヤツを何とかパチリ。

この後デュッセルドルフに移動、依然として−8℃と厳しい寒さに耐えかねて、デパートに駆け込み、ついにイヤーウォーマーと革手袋を買いました。ロンドンではまず使わないんだがなあ。

ミュンヘン2011/12/26 23:59


今年のクリスマスは定番中の定番、ミュンヘンのクリスマスマーケットを見に行って来ました。さすが本場ドイツでも最大級だけあって、ものごっつい数の観光客で賑わっていました。



フラウエン教会の前には、それを模した屋台が。

出店はさすがにドイツのクリスマス市らしく、クリッペというキリスト生誕の模型パーツ(けっこう高い)の店が多かったです。他に目を引いたのは、下のように幻想的なペーパークラフト・ライティングを売っているお店でした。



日も暮れると、カールス広場のデパートやスケートリンクもカラフルにライトアップされてました。



夕食は、美味そうに焼けてる骨付き肉に引き寄せられて、Haxnbauerへ。



豚と仔牛のすね肉ローストが名物なので、両方味わえるミックスプレートを注文。うーん、ボリューム感溢れる肉塊は、これぞドイツ、これぞバイエルン。私もかつては「ドイツ料理など二日で飽きる、この世から無くなっても一番困らない料理だ」とまで考えていたのですが、ハンガリー生活ですっかり肉食人種になってなってしまってから、こういった「がっつり肉料理」はしばらく食べないと禁断症状のように、無性に食べたくなります。日本人の生活習慣には根本的に合わないので、困ったもんだ。

賑わったクリスマスマーケットも24日の午前中までで、午後2時ごろにはもう完全に撤収モードです。その後は25日にかけて屋台もショップもレストランもぱたっと閉まってしまい、行く当てのない観光客がとぼとぼと歩くばかりで、すっかり淋しいものでした。


美術館も全て閉まった中、イノシシとナマズのオブジェが印象的な狩猟博物館だけは25日も果敢にオープンしていました。



今回ミュンヘンに行ったもう一つの目的は「Donislの白ソーセージが食べたい!」というのもあったのですが、初日はホテルにチェックインした後直行で行ったのですが、2時半ではさすがにもう「売り切れです」。翌日は早く行くつもりが買い物に手間取って、1時前に入ったらまたしても「too late」。それならばと25日は朝の10時半に出かけ、三度目の正直でようやく念願の白ソーセージにありつけました。


3人分6本のソーセージ。朝っぱらから白ビールなど飲みながら味わいました。ここのは皮がしっかりと固く、中はふわっと溶けるように柔らかく、パセリも非常にフレッシュな味わいで、今回他でも食べましたが、やっぱりここのが一番美味しかったです。


25日はまだ閉まっているレストランも多かったのですが、オペラのあとは劇場近くのZum Franziskanerというビアホールが開いていたので、がっつりと夕食。ドイツのクリスマスらしくガチョウのローストを注文しました。でかい!ですが食べるところは意外と少なくペロッとイケます。前菜で頼んだコンソメスープもたいへん美味しかったです。気楽に食べるには、ここはオススメ。


最終日、フライトは午後だったので午前中にドイツ博物館に行きました。前回来たのは2003年ですから8年ぶりです。盗品、略奪品ばかりの大英博物館と比べてこのドイツ博物館は、ドイツ人の手により生み出された科学技術がこれでもかと陳列されています。展示はありとあらゆる技術分野におよび、「全ての科学技術はドイツ発祥である」とでも言わんばかりです。どう見ても日本製のカメラや、NASAの宇宙船模型なんかが展示してあるのはご愛嬌ですが。


理系男子にとっては何時間いても飽きない場所ですが、妻と娘の琴線にはあまり触れなかったもよう。最初に地下の巨大でめちゃリアルな炭坑ジオラマなんか見せたのがいけなかったか。フライトの時間もあり、全体の10分の1も見れないままに、後ろ髪引かれつつ空港に向かいました。

バイエルン州立歌劇場:ヘンゼルとグレーテル2011/12/25 23:59


2011.12.25 Nationaltheater, Bayerisches Staatsoper (Munich)
Asher Fisch / Bayerisches Staatsorchester
Kinderchor der Bayerischen Staatsoper
Herbert List (Director)
Martin Gantner (Peter, broom-maker), Irmgard Vilsmaier (Gertrud)
Okka von der Damerau (Hänsel), Laura Tatulescu (Gretel)
Heike Grötzinger (Gingerbread Witch), Silvia Hauer (Sleep Fairy)
Iulia Maria Dan (Dew Fairy)
1. Humperdinck: Hänsel und Gretel

初見参のバイエルン州立歌劇場です。クリスマスに「ヘンゼルとグレーテル」という演目で、マチネとは言えないものの午後4時という早めの開始だったので会場は子供が多かったです。ヨーロッパ最高峰の一つなのでもっとゴージャスな内装を想像していたのですが、意外と質素。カフェやクロークは機能重視のモダンなものでした。ボックス席は舞台すぐ横以外にはなく、上のほうの階はどの席でも鑑賞しやすく設計されているように見えました。


まず感じたのは、この劇場の音響の素晴らしさです。今回はストール最前列左端で、反対側からトランペットがまっすぐこちらを向いているような席だったのですが、さしづめロイヤルオペラハウスなら汚い生音が直接差し込んで来るところ、非常にまろやかに響いて来て、至近距離だったホルンも、弦楽器も、どの楽器もワンクッション置いて角の取れた音で耳に届き、たいへん心地が良い。また、音響の助けがなくともオケの集中力は高く、特にこれぞビロードの肌触りと思える弦は久々に聴きました。これはオケだけでも一流です。対する歌手陣も、スターはいないもののドイツ人歌手を中心に劇場レギュラーの実力者揃いで、音楽的には非の打ち所のない好演でした。

難があったのは演出。モダンで過激な演出ばかりのドイツの歌劇場でも「ヘンゼルとグレーテル」だけは伝統的なスタイルを守るという話を聞いたことはあるのですが、オーソドックスと工夫がないのとは違います。おそらく100年前の舞台はこうであったろう、おとぎ話そのものの大道具、衣装に、歌を邪魔しない最小限の動き。今の感覚では全体的にヌルく、イケてません。もちろん、楽しい劇ではあるのですが。第1幕から第2幕は連続ではなく、珍しくいったん休止を入れたので「あれっ」と思ったのですが、後でスコアを確認すると、演出によってどちらでもかまわないんですね。第2幕以降は舞台にずっと半透明のスクリーンがかかっていて、第2幕だけなら夕暮れの森の中のもやがかかった情景を演出したいのかと解釈できるのですが、第3幕の最後まで引きずるのは意味不明で、はっきり言って余計でした。工夫が全くなかったわけではなくて、眠りの精や魔女はワイヤで空を飛ぶし、第2幕最後には天使が多数出て来て癒し系の踊りを踊り、魔女のオーブンからは本物の火が出ますが、緩和な雰囲気は最後まで拭えず、緊張感も目を引く特異性も何もありませんでした。子供向けと言ってもあれでは退屈するのではないでしょうか?

この劇場で一番新鮮だったのは、ピットの中にも観客席側壁沿いに一列分ベンチシートの席があったことでした。見ると子供とその保護者ばかりでしたので、この演目に限って特別に子供にだけ解放しているのでしょうか。これはしかし、指揮者の真横、奏者の目の前まで子供が座って視線を送っているということで、これだと奏者も張り切らざるを得ませんね。あとは、休憩時間になると聴衆は全員いったん外に出され、次の開演ギリギリまで入れないのも初めての体験でした。どうしてそんなシステムになっているのか、ロビーにそんなに広いスペースがあるわけではないので混み合って、これはいただけませんでした。


ピット内の客席。これは楽団にはプレッシャーでしょう。木のベンチシートで座り心地は悪そうです。ワーグナーだと死にそうですね。

さらに、劇場に置いてあったシーズンプログラムを見ていて凄いと思ったのは、そのレパートリーのとっても保守的なこと。今シーズンの演目を列挙すると、ボエーム、カルメン、ホフマン物語(新演出)、コシ・ファン・トゥッテ、愛の妙薬、子供と魔法/こびと、フィデリオ、こうもり、ヘンゼルとグレーテル、ばらの騎士、トスカ、トゥーランドット(新演出)、魔笛、セビリアの理髪師、ドン・カルロ、後宮からの逃走、エフゲニ・オネーギン、さまよえるオランダ人、マクベス、蝶々夫人、オテロ、ラインの黄金(新演出)、ロベルト・デヴリュー、椿姫、ワルキューレ(新演出)、カプレーティとモンテッキ、チェネレントラ、ルイザ・ミラー、フィガロの結婚、パルジファル、ジークフリート(新演出)、ヴォツェック、利口な牝狐の物語(新演出)、神々の黄昏(新演出)、先斗の王ミトリダーテ、と、書き写していてため息が出るくらいに超定番アイテムのオンパレード。これらをワンシーズンにやるのだから驚きです。ちょっと集客に苦労しそうな「ロベルト・デヴリュー」はグルベローヴァ、「カプレーティとモンテッキ」はカサロヴァとネトレプコを配置する布陣ですから、穴のない鉄壁のプログラムです。時々旅行に行くのなら、何時行ってもメジャーな演目が見れてよいですが、もしミュンヘンに住んで通うとなると数年で飽きて、刺激に飢えるようになる気がします。新プロダクションが多数あるのが救いですが、こうやってドイツの歌劇場はますます過激な読み替えに走って行くんですかね。

ハノーファー2011/05/03 23:59

先月出張でちょっとだけ行ってました。2回目のハノーファー。


中央駅前のアウグスト像。ハノーファー公国の初代君主です。この人の息子ゲオルク1世は、ジョージ1世としてイギリス国王も兼務することになります。


中央駅のすぐ近くにあるオペラ座。美しいオペラハウスとして有名だそうですが、残念ながら中に入るチャンスはありませんでした。


街のシンボル、マルクト教会。入り口両脇のエグい像が目を引きました。いくつになっても子供のように、こういった妖怪・骸骨系の造形に心奪われてしまいますね。



以上、オチがなくてすんません。

ケルン大聖堂2011/04/27 23:59


白アスパラに次いで今回の目的だったケルン大聖堂。さすがにでかいです。観光客もいっぱい。

左側の塔の上、とんがり帽子の根元くらいのところに展望台がありますが、エレベーターはなく、500段ほどの螺旋階段をえんえんと登って行かねばなりません。初めて行く町ではできるだけ高いところにまず登ってみるのが信条の私としては、登らない手はありません。気温が高かったので大汗をかきながら、娘と一緒に何とか上まで登りました。


展望台は落下防止の金網で覆われていて、眺めはもう一つでした。ケルンの町並み自体が、中世風に統一された奇麗な屋根が立ち並ぶわけでもなく、モダンなビルばかりです。

階段を下りている最中からちょっとやばいかもと思っていたのですが、案の定、翌日両ふくらはぎが筋肉痛で動けず。まるまる2日間筋肉が張りっぱなしで難儀しました。いままで高台に階段で上るというのはほうぼうでやってましたが、こんなにピンポイントで痛んだのは初めて。もう若くはないということですかのー。

写真は撮りませんでしたが、聖堂内のステンドグラスも、非常に大掛かりで芸術性の高いものでした。