プラハの拷問博物館と蝋人形館2013/03/04 23:59

前から通るたびに気になっていた、プラハ旧市街の拷問博物館と蝋人形館。出張中に夕方時間ができたので、思い立って行ってみました。


この二つのアトラクションはディスカウント共通チケットがあります。まずは拷問博物館から。


火あぶりにされる女の人。


宙づりのかごの中で白骨になるまで放置される人々。

とまあ、いろいろありましたが、ほとんど写真を撮る気にならないようなものばかり。エグい、恐い、のではなくて、全くしょーもない。マダムタッソーかロンドンダンジョンのようなものを想像していましたが、 期待ハズレでした。


次は同じ並びのすぐ近くにある、蝋人形館。


こちらも、人気(ひとけ)がない分、不気味ではありました。チェコ歴史上のロイヤルファミリーのようです。


当時の道化の衣装。本当かな、という気がします。ちょっと眉唾。


魔法使いと土の巨人。チェコではこれも歴史なの?


古代エジプトの棺桶のようですが、そのわりには女性はモダンだ…。


チェコの著名人シリーズでは、画家・デザイナーのアルフォンス・ムハ(ミュシャ)。


ドヴォルザークとスメタナ。


カフカ。


血塗られたコミュニスト系独裁者たち。


かの有名な独裁者は、一人暗闇のケースの中で叫んでいました。


無邪気にブランコに乗るアインシュタイン。


芸能シリーズで、シュワちゃん。このあたりになると、テレビで実物をよく見知った人がモデルなので、その「ビミョー感」が気になって仕方がありません。


チェコの著名スポーツ選手。右のナブラチロワはわかるぞ。あとはさっぱりですが。


ミュージシャンシリーズ。なんだか哀愁が漂ってます。

うーむ、ここも一回見たら、もう十分でしょう。久しぶりにロンドンのマダムタッソーに行きたくなりました。


おまけ。カレル橋の途中にある、聖ヤン・ネポムツキーの遺体が川に投げ落とされた場所だというオブジェ。「愛の南京錠」がいっぱいかけられてました。まあ、ヨーロッパではよくある風景ですが。


市庁舎の塔に初めて上り、旧市街広場を見下ろす。 絶景かな。

チェコフィル/ビエロフラーヴェク/マルティニーク(Bs):ペトルーシュカ組曲、聖書の歌2012/10/18 23:59


2012.10.18 Dvořák Hall (Prague)
Jiří Bělohlávek / Czech Philharmonic Orchestra
Jan Martiník (Bs-2)
1. Janacek: The Excursions of Mr. Broucek, suite from the opera (arr. J. Smolka)
2. Dvorak: Biblical Songs
3. Stravinsky: Petrushka, suite from the ballet

今年の1月以来、2度目のドヴォルザーク・ホールです。プラハにはしょっちゅう出張で来ているのに、なかなかタイミングは合わないものです。

チェコフィルは今シーズンからビエロフラーヴェクが20年ぶりに首席指揮者の座に返り咲きました。BBC響の首席を今期限りで退くことが決まっているビエロフラーヴェクは、私もロンドンで初めて実演を聴くまで正直地味な指揮者とナメていましたが、バランスよいオケのコントロールとスコアへのリスペクトに加え、熟練の成せる技で音楽を自在に広げられるスケール感に感服いたしました。

1曲目のヤナーチェク「ブロウチェク氏の旅」は全く初めて聴く曲です。そもそもこのオペラの名前すら知りませんでしたが、あらすじを読む限り、月に行ったり、15世紀にタイムスリップしたりと、家族で楽しめそうなファンタジーでありながらも相当にぶっ飛んだストーリー。今回の6曲(導入〜夕暮れ、月のワルツ、夜明け前、夢と現実の狭間、フス派の合唱曲、勝者の凱旋)から成る管弦楽版組曲を聴いても音楽は円熟していてたいへん親しみやすいので、これは是非オペラの公演を見てみたいものだと思いました。

続くドヴォルザーク「聖書の歌」は全10曲で構成される歌曲集。チェコ語の旧約聖書の詩編から歌詞を取った宗教音楽でありながら畏まった雰囲気はなく、ボヘミア民謡牧歌集と呼んでも違和感のない素朴な曲調でした。最後の曲などは「雪やこんこ」のメロディにしか聴こえません。バスの若者ヤン・マルティニークは、そのパヴァロッティのような巨体から、実に良い声を深く響かせていました。歌はまだ未熟なところがあるかもしれませんが、とにかく声が素晴らしい。一瞬でとりこになってしまうような声は天賦のもの、会場総立ちの大拍手も納得です。是非世界の大舞台でどんどん経験を積んでもらいたい(ビエロフラーヴェクがBBC響とチェコのオペラを上演するときにもロンドンまで呼んでいたみたいです)。

メインのペトルーシュカは1947年の版でしたが(1911年版とは管・打楽器の編成が異なり、ティンパニの3連装飾音等に特徴があります)、第4部のクライマックス、ペトルーシュカとムーア人が決闘する場面で唐突に終ったのでガクンと肩透かし。全曲版ではなく、珍しい組曲版だったのでした。当然ラストのトランペットの掛け合いもありません。盛り上がるところでブツっと切ってしまうのは、「中国の不思議な役人」の組曲版と同じですね。ビエロフラーヴェクは淡々とオケを引っ張りますが、変拍子の箇所では聴いていてヒヤヒヤするくらいぎこちがなく、この人変拍子が実は苦手かも、と思ってしまいました。チェコフィルもちょっと後乗りというか反応の重いオケに見えるので、まるで風呂場のように残響の豊かなホールと相まって、分離が悪く切れ味にはいまいち欠ける演奏でした。肝心のピアノもよく聴こえなかったし。ただしチェコフィルの各ソロパートの名人芸は素晴らしいものがあり、特にホルンの力強いことと言ったら。

世界的に名を馳せたチェコ人マエストロの凱旋ですから当然ですが、ビエロフラーヴェクに対する聴衆の高揚度は相当なものでした。終始にこやかで楽団員とも良い雰囲気そうだし、機会がある限りまた聴きに行きたいと思います。

チェコフィル/インバル/ヤムニーク(vc):森そのものの「幻想交響曲」2012/01/28 09:00



2012.01.27 Dvořák Hall (Prague)
Eliahu Inbal / Czech Philharmonic Orchestra
Tomáš Jamník (Vc-1)
Schumann: Concerto for cello and orchestra in A minor Op. 129
Berlioz: Symphonie Fantastique Op. 14

プラハには何度も行ってるのですが、なかなかタイミングが合わなくて、今回ようやく念願かない、本拠地ドヴォルザーク・ホールでチェコフィルを聴くことができました。スメタナ・ホールがアール・ヌーヴォー様式なのに対し、こちらはネオ・ルネサンス様式なんだそうで、私はそのへんの見識はさっぱりですが、ホールの内装は確かに古代の神殿を思わせるゴージャスなものでした。ヨーロッパ最古のコンサートホールの一つだそうで、ウィーン楽友協会と同じく天井の高い箱型をしていますが奥行きはずっと狭く、舞台の頭上にも袖にも反響板らしきものは一切ありません。音響の良いホールとして知られており、確かに良い音はするのですが、私的にはちょっと残響長過ぎ。客席は傾斜のついたストール席と、結構高い位置にあるバルコニー席から成り、どこからも舞台が見やすそうでした。ステージのサイズや客席数から言って、ロンドンだとカドガン・ホールのクラスでしょう。




1曲目はシューマンのチェロ協奏曲。よくドヴォルザークとカップリングになっているチェロ協奏曲の名作ですが、何でか音源を持っておらず、ちゃんと聴くのは今日がほとんど初めて。ということで良し悪しや特徴はあまり語れません。トマーシュ・ヤムニークは1985年生まれの若手チェリストで、幼少からチェコ国内のコンクールを総なめにした後、カラヤン・アカデミーの奨学生に合格し、現在ベルリンフィルの一員として演奏すると同時に、ソリストとしてもヨーロッパや日本で活動中の若手有望株だそうです(プログラムより)。見たところ全然アーティストっぽくない、そのへんにいそうな普通のにいちゃんです。しかし一聴して思ったのは、この人はオケ奏者というよりも全くソリストの素質だな、ということ。超絶技巧をひけらかしたり、完璧さを売りにするキャラではなく、音程を外す場面もまま見られたのですが、その代わりにチェロのよく歌うことといったら!アンコールで弾いたトロイメライも歌心があり、良いものを持っているミュージシャンです。まだ若いから、ベルリンフィルで半分ソリストみたいな人達に囲まれてアンサンブルの修行を積むのは良い経験だと思います。

幻想交響曲はつい数日前にロンドン響で聴いたばかりですが、やはりというか、MTTとはだいぶ個性が違いました。ベルリオーズのスペシャリストとして認知されているインバルのアプローチは、「細かいことはしない」。シューマンでは終始スコアに目を落としつつ振っていたインバルも、得意の「幻想」では当然のごとく譜面台なしです。速めのテンポで開始し、作為的な表情付けなど一切なく、自信を持ってスコアの音を過不足なく再現していきます。第1楽章や第4楽章で主題のリピートを省略したのは、CD時代になってからそんな人がめっきりいなくなってしまったので、かえって新鮮でした(私は「幻想」の反復は冗長に感じる派であり、この判断を支持します)。チェコフィルは、以前聴いたときもそう思ったんですが、低音の響きが本拠地で聴いてもやっぱりイマイチ、腹に来るものがありません。しかし弦アンサンブルの渋い音色と一糸乱れぬ完成度、素朴ながらも深みのある木管の音は相変わらず至高の素晴らしさで、加えて金管は音圧十分なのに実に柔らかい響きを奏で、モダンなロンドンのオケではなかなか真似のできない独特のサウンドを楽しめました。極上のオケを使って堂々とした建造物を目の前に見せ付ける、正に横綱相撲の「幻想交響曲」。その建造物はしかしよく見るとゴシック調のグロテスクな装飾が施され、下手に凝った演出をしなくとも必要十分なだけの躍動感、高揚感、躁鬱感が自ずと湧き出てくるようにできている、これは本当に名曲だなあ、という思いをあらたにしました。なお、終楽章のコル・レーニョはLSOと同様、チェコフィルもちゃんとやってませんでした。最近の解釈ではこれが主流なんですかね?それとも、一流のオケは使っている楽器も高価だから、奏者が嫌がってるんでしょうか。

余談ですが、今日はどちらの曲も、最後の音の残響がある程度引いてから遠慮がちに拍手が始まっていました。演奏中も咳する人が比較的少なくて静かだし、良いマナーです。終演後、写真を撮る人がいなかったので自分も撮りませんでしたが(実は、開演前に場内の写真を撮っていただけで注意されました)、演奏中でも平気で水を飲み(実は、ペットボトルの水を持って入場しようとしたらダメですと注意されました)、場内ではアイスクリームを食べ、冬場は演奏中の咳が絶えず、ブラヴォーはフライング気味で、終演後はフラッシュの嵐、というロンドンの常識に毒されていると、本来のグッドマナーをややもすると忘れがちになりますね。自戒しなければ。

Pivovarský Dům2011/06/19 23:59

先週また出張でプラハへ。プラハで大のお気に入りのビアレストランを紹介します。Pivovarský Důmの意味はまさに「ビール醸造所」。ここの無濾過・低温殺菌の地ビールは絶品です。ブダペスト駐在時代に家族旅行で泊まったNovotel Wenceslas Squareの人から教えてもらったのがきっかけでしたが、それ以降、チャンスがあればできるだけ訪れるようにしています。


店の外観はこのように看板や飾り気の一つもなく、知らなければレストランとは思えません。ロケーションも中心地からちょっと外れたローカルな場所にあるので、初めての人が行くにはちょっと勇気がいるかも知れません。

知る人ぞ知るマイナー店だと思っていたのですが、こないだFinnairに乗って雑誌を読んでいたら、プラハの特集記事があって、「本物のチェコビールを飲みたいならここ」ということでこの店が紹介してあったので、びっくり。


内装はこんな感じです。奥にも席があり、店内はわりと広いです。


レストランにある醸造タンクは、まあ飾りでしょう。


無濾過・低温殺菌の自家製ビールはピルスナー、ダーク、ミックスがありますが、オススメはダーク。もちろん好みはあるので、黒ビール系が苦手な人にもコーヒービール、バナナビール等のいろんな種類のビールがあり(私は試したことがありませんが8種のテイスティングセットもあります)、ビールのシュナップスもあって、酒飲みにはたまりません。なお、手前の料理は「ボヘミアンプレート」といって、ローストポーク、スモークポーク、クネドリーキ(チェコの蒸しパン)、ザワークラウトの盛り合わせの軽食です。

Pivovarský dům, s.r.o.
Ječná/Lípová 15, 120 44 Praha 2
Tel.: 296 216 666
http://www.gastroinfo.cz/pivodum/

プラハ響/コウト/ミュラー=ショット(vc):プラハの初夏2011/06/15 23:59


2011.06.15 Smetana Hall, Municipal House (Prague)
Jiří Kout / Prague Symphony Orchestra
Daniel Müller-Schott (Vc-2)
1. Wagner: Tristan und Isolde, "Isoldes Liebestod"
2. Shostakovich: Concerto for Cello and Orchestra No. 2 in G major, Op. 126
3. Brahms: Symphony No. 1 in C minor, Op. 68

出張のおりに当日券で聴いてきました。プラハは観光中心がコンパクトにまとまっている町で、著名な演奏会場であるスメタナホールもドヴォルザークホールも、めっちゃ中心地にあるのでアクセスが便利です。プラハ市民会館内にあるスメタナホールは、箱形で天井が高く、アール・ヌーヴォー調の装飾がちりばめられた、少しひなびたホールです。天窓から日の光が射し、演奏会専用ではなく講演会やパーティーにも使うことを想定された多目的な会場に見えました。椅子の形といい固さといい、ブダペストのリスト音楽院ホールを思い出させます。この椅子の固さでは、マーラーやブルックナーの長丁場はちょっとご勘弁願いたいです。

イルジー・コウトはよくN響に客演してたりするので名前のみ記憶にありましたが、1曲目の冒頭から、あーこの人は「ゆるキャラ」じゃないな、とわかりました。タイトな音作りで手堅くまとまった演奏です。イルジーつながりというわけでもないのでしょうが、ビエロフラーヴェク同様に職人肌の指揮者と見えました。チェコのオケは5年前にブダペストでチェコフィルを1度聴いたくらいですが、そのときは強烈に感じた「土臭さ」は今日のプラハ響になく、音自体はずいぶんとモダンな響きのオケでした。しかし、じれったく上昇下降する音楽を聴いているうちに、早朝起床で長距離ドライブもあった出張の疲れから、ついウトウトと…。

次のコンチェルトはイケメンチェリストのダニエル・ミュラー=ショット、今年のLPOでも聴いたばかりですが(余談ですがこのときもメインはブラ1でしたなー)そのときはムターとの競演でしたので影が薄かったのは否めません。ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番は全く初めて聴く曲で、つかみどころがわかりにくい大曲でしたが、調性感のない中に時おり出てくるロマンティックな旋律と、何やら意味深なエンディングが印象的でした。それにしてもミュラー=ショットは、上手い!音がちょっと軽いので深みに欠けると思わせてしまうかもしれませんが、テクニック的には文句のつけようがなく、全くキズの見当たらない達者な演奏でした。

メインのブラームスは、冒頭からオルガンのようにフラットな厚みのある音塊が迫ってきました。ここまで聴いていると、このホールの音響特性があまり自分の好みでないということに気付きます。まず天井が高いせいで残響が長く、輪郭をぼやかしています。コウトの導く音はいつまでもタイトですが、引き締まった演奏に長い残響という摩訶不思議な空間が生まれていました。また、これも天井とステージの作りがあるのでしょうが、弦楽器に対して舞台後方に位置する菅楽器群の音が素直に前方に響いて来ないアンバランスさを感じました。舞台の真ん中に透明なスクリーンが1枚下がっているようなイメージです。結果的に時々中音域が落ち気味のドンシャリ系の音になっており、だいぶクセのあるホールだなと思いました。

変わったことをやるでもなく、どの楽章もスピーディにサクサクと進んで行ったブラ1ですが、終楽章の有名な主題部ではむしろさらにサクサク度を増していました。パートバランスは常にほどよく整えられ、流れに澱みもありません。面白みはないかもしれませんが、スコアに内在される音楽の力は過不足なく発露された、全く模範的なブラ1です。コウトのように、地味だけど厳格な指揮をして、経験豊富でオケの統率力に優れた指揮者に、日本の楽団を是非鍛えて欲しいものだ、と思いました。

スメタナホールの内装写真を少し。



ピルゼン2010/11/21 03:13

こないだチェコのピルゼン(プルゼニュ)に行って来たので写真を少し。ピルゼンは何度も行ってますが、市街地を歩いたのは初めてでした。こじんまりとして良い感じの旧市街です。


町の中心、共和国広場にそびえ立つバルトロミェイ教会。クリスマスにはまだ早いですが、広場ではマーケットが立っていました。


懐かしい、生馬のメリーゴーランドも出ていました。ブダペストに住んでいたころ、夏場にウィーンに出かけたら、必ずプラター遊園地に立ち寄り、これと同じ生馬メリーゴーランドで娘を遊ばせていました。娘は何度もしつこく乗るお得意様だったので、お兄ちゃんも必ず一回分はサービスしてくれました。


共和国広場に面した市庁舎。よく見ると壁には非常に細かい装飾がなされています。


ちょっと離れたところにはなかなか美しいシナゴーグもありました。


さて、私はビールの中では大のチェコビール贔屓でして、中でもPilsner Urquellがお気に入り、ブダペストでは毎週末ケースで買って(私が行くスーパーでは缶はなく瓶だけでしたので)飲んでおりました。せっかくピルゼンに来たのだから是非飲みたかったところですが、あいにく運転しなければならなかったので、パス。代わりにビール博物館で我慢しました。

次回行くときは何とかピルゼンに宿泊して、ビール工場も見学して、たっぷりビール漬けになりたいと思います。

プラハ2010/10/23 17:29

出張で1年ぶりにプラハへ。旧市街広場は相変わらず観光客でいっぱいでした。

praha

10月下旬にして、プラハはすでに雪景色。


ということはなく、人工雪を降らせて広告か何かの撮影をやっていました。

smetanahall

スメタナホール。残念ながら今回は聴きに行くチャンスがなく、まだ中には一度も入っていません。