プラハ響/コウト/ミュラー=ショット(vc):プラハの初夏 ― 2011/06/15 23:59
2011.06.15 Smetana Hall, Municipal House (Prague)
Jiří Kout / Prague Symphony Orchestra
Daniel Müller-Schott (Vc-2)
1. Wagner: Tristan und Isolde, "Isoldes Liebestod"
2. Shostakovich: Concerto for Cello and Orchestra No. 2 in G major, Op. 126
3. Brahms: Symphony No. 1 in C minor, Op. 68
出張のおりに当日券で聴いてきました。プラハは観光中心がコンパクトにまとまっている町で、著名な演奏会場であるスメタナホールもドヴォルザークホールも、めっちゃ中心地にあるのでアクセスが便利です。プラハ市民会館内にあるスメタナホールは、箱形で天井が高く、アール・ヌーヴォー調の装飾がちりばめられた、少しひなびたホールです。天窓から日の光が射し、演奏会専用ではなく講演会やパーティーにも使うことを想定された多目的な会場に見えました。椅子の形といい固さといい、ブダペストのリスト音楽院ホールを思い出させます。この椅子の固さでは、マーラーやブルックナーの長丁場はちょっとご勘弁願いたいです。
イルジー・コウトはよくN響に客演してたりするので名前のみ記憶にありましたが、1曲目の冒頭から、あーこの人は「ゆるキャラ」じゃないな、とわかりました。タイトな音作りで手堅くまとまった演奏です。イルジーつながりというわけでもないのでしょうが、ビエロフラーヴェク同様に職人肌の指揮者と見えました。チェコのオケは5年前にブダペストでチェコフィルを1度聴いたくらいですが、そのときは強烈に感じた「土臭さ」は今日のプラハ響になく、音自体はずいぶんとモダンな響きのオケでした。しかし、じれったく上昇下降する音楽を聴いているうちに、早朝起床で長距離ドライブもあった出張の疲れから、ついウトウトと…。
次のコンチェルトはイケメンチェリストのダニエル・ミュラー=ショット、今年のLPOでも聴いたばかりですが(余談ですがこのときもメインはブラ1でしたなー)そのときはムターとの競演でしたので影が薄かったのは否めません。ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番は全く初めて聴く曲で、つかみどころがわかりにくい大曲でしたが、調性感のない中に時おり出てくるロマンティックな旋律と、何やら意味深なエンディングが印象的でした。それにしてもミュラー=ショットは、上手い!音がちょっと軽いので深みに欠けると思わせてしまうかもしれませんが、テクニック的には文句のつけようがなく、全くキズの見当たらない達者な演奏でした。
メインのブラームスは、冒頭からオルガンのようにフラットな厚みのある音塊が迫ってきました。ここまで聴いていると、このホールの音響特性があまり自分の好みでないということに気付きます。まず天井が高いせいで残響が長く、輪郭をぼやかしています。コウトの導く音はいつまでもタイトですが、引き締まった演奏に長い残響という摩訶不思議な空間が生まれていました。また、これも天井とステージの作りがあるのでしょうが、弦楽器に対して舞台後方に位置する菅楽器群の音が素直に前方に響いて来ないアンバランスさを感じました。舞台の真ん中に透明なスクリーンが1枚下がっているようなイメージです。結果的に時々中音域が落ち気味のドンシャリ系の音になっており、だいぶクセのあるホールだなと思いました。
変わったことをやるでもなく、どの楽章もスピーディにサクサクと進んで行ったブラ1ですが、終楽章の有名な主題部ではむしろさらにサクサク度を増していました。パートバランスは常にほどよく整えられ、流れに澱みもありません。面白みはないかもしれませんが、スコアに内在される音楽の力は過不足なく発露された、全く模範的なブラ1です。コウトのように、地味だけど厳格な指揮をして、経験豊富でオケの統率力に優れた指揮者に、日本の楽団を是非鍛えて欲しいものだ、と思いました。
スメタナホールの内装写真を少し。
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