読響/ヴァイグレ/テツラフ(vn):欧州ツアー直前、充実のブラームスとラフマニノフ ― 2024/10/09 23:59
2024.10.09 サントリーホール (東京)
Sebastian Weigle / 読売日本交響楽団
Christian Tetzlaff (violin-2)
1. 伊福部昭: 舞踊曲「サロメ」から「7つのヴェールの踊り」
2. ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
3. ラフマニノフ: 交響曲第2番 ホ短調
翌週からテツラフと藤田真央を引き連れてヨーロッパツアーに出かけるヴァイグレ/読響の壮行演奏会になります。客席は満員御礼。
1曲目の伊福部版「サロメ」は初めて聴く曲。欧州ツアー向きに何か日本物を1曲、ということでの選曲でしょうか。ツアーのプログラムを見ると他に武満の曲をやる日もあるようです。「7つのヴェールの踊り」と言えば、リヒャルト・シュトラウスの楽劇「サロメ」の劇中舞曲があまりにも有名ですが、同じ原作でありながら伊福部のバレエ音楽は全くテイストが異なるのが面白いです。旋律、リズム、構成どれをとっても全くの伊福部節で、純和風というよりは、東宝の怪獣映画音楽風。変拍子の複雑なリズムを低音をしっかり聴かせつつ小気味よく進めていったヴァイグレさん、曲への思い入れなどは特にないであろうに、劇場キャリアの職人技を垣間見ました。
続くブラームスのコンチェルトは、一昨日ソロリサイタルを聴いたばかりのテツラフがもちろん目当てです。曲自体は好んで聴く曲じゃないので、過去に実演を聴いたのが10年前のイザベル・ファウスト(オケはハーディング/新日本フィル)1回だけという体たらく。しかしテツラフは期待通りの孤高の演奏で、雑なワイルドタッチから、この上なく綺麗に響かせるメロディまで、表現の幅がえげつなく広く、かつ全てが自然に鳴り響き、まるで弓を動かさなくても音が湧き出てくるかのよう。ちょっとハンガリー舞曲を彷彿とさせる終楽章では、一昨日のソロとはまた全く違う情熱的なアプローチで挑み、全くこの人の懐の深さは格別です。アンコールは一昨日も聴いた、バッハのソナタ第3番から「ラルゴ」でやんやの喝采。最近は毎年来日してくれるので、日本での人気も定着している様子です。
東ベルリン出身のヴァイグレはロシアものも得意分野のようですが、メインのラフマニノフ2番は、ある意味それらしい、弱音欠如型のおおらかな演奏。オケはまるでブラームスのように分厚い音作りで、金管を筆頭によく鳴ってはいるものの、抑制が効いた柔らかな響きにしっかりコントロールされています。第1楽章の最後はティンパニの一撃ありバージョン。第2楽章第2主題のポルタメントは軽く効かせて節度ある甘さを演出。有名な第3楽章も焦らず、昂らずにじっくりと盛り上げていきます。最終楽章はここまで貯めたエネルギーを全てを解放するかのような爆演。全体的にツボを抑えた見事なリードで、これなら本場欧州と言えども、どこに出しても恥ずかしくないクオリティと言えるでしょう。個人的にはいろいろあってちょっと荒んだ心も癒される、良い演奏会でした。
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