ロサンジェルスフィル/ドゥダメル:至高のオケの「火の鳥」 ― 2013/03/17 23:59
2013.03.17 Barbican Hall (London)
Gustavo Dudamel / Los Angeles Philharmonic
1. Vivier: Zipangu
2. Debussy: La mer
3. Stravinsky: Firebird (complete)
2年ぶりのロスフィルです。さすがのドゥダメル人気に加え、今回のシリーズでクラシカルな演目はこの日しかなかったので早々にソールドアウト。リターンでポコっと1枚出てきた最上位席を、すかさず清水の舞台から急降下してゲットしました。プログラムのコンセプトは、エポックメイキングなフランスもの、といったところでしょうか。
1曲目「ジパング」の作曲者クロード・ヴィヴィエを私は名前すら知らなかったのですが、シュトックハウゼンに師事したカナダの現代音楽作曲家で、1983年に34歳の若さで会ったばかりの「男娼」に刺し殺されるというスキャンダラスな非業の死でもよく知られている人だそうです。小編成の弦楽合奏のための「ジパング」はもちろん日本を意識した曲。のっけから弦をわざと軋ませる特殊奏法を駆使した、ちょっと音の濁った笙を思わせる響きで始まり、最初はペンタトニックな民謡調の旋律で進むのかと思いきや、すぐにトーンクラスター的になったり、ヘテロフォニー的であったり、盛りだくさんに怪しげな展開を見せます。雅楽を意識したような作りはまるで日本人作曲家の現代音楽みたいな感覚ですが、違うのはリズム。この人工的な拍子感は東洋よりも西洋のものです。まあ、よくわからないながらも面白い曲でした。
続くクロード・ドビュッシーの「海」は、好んで聴きに行くわけではないのに聴く機会の多い曲で、ちょい食傷気味です。ドゥダメルの指揮は、切絵の紙芝居でも見ているような、分かりやすい演出。場面場面の展開がはっきりしており、カット割りの多い映画のようでした。たゆたうと流れる水の動きなど、全体の起伏は犠牲になっていたものの、その分細部に磨きをかける戦略。とにかく各奏者、ソリストがいちいち上手過ぎで、金管など余裕しゃくしゃく。オケの高度な演奏能力に感心することしきりでした。
メインの「火の鳥」も、スーパーオケのまさに至高のサウンドに脱帽、参りました。アンサンブルもソロも非の打ち所無し。特にホルンの完璧度が印象に残りましたが、木管もトランペットも、コンマスも、とにかく皆さん達者過ぎ。2年前に初めて聴いた時も、予想外に(と言ったら失礼ですが)上手いオケで驚いたのですが、今回はさらに衝撃的でした。ドゥダメルの導くサウンドは引き続きビジュアルに訴えるもので、バレエの場面がいちいち鮮やかに目に浮かびます。この演奏をそっくりそのままロイヤルオペラハウスに持ち込んで、ロイヤルバレエのプリンシパル達の踊りと融合させれば究極の「火の鳥」が完成するだろうに、などとつい妄想を膨らませてしまいました。一つのクライマックスである「魔王カスチェイの凶悪な踊り」では、本来は1919年の組曲版で初めて追加されたトロンボーンのグリッサンドをこの原典版で吹かせていたので、さらに驚きました。確かに、こういう「サービス」を誰かやってもよさそうなのに、とは以前から思っていましたが、実際にやってしまった演奏を聴くのは初めてでした。
久々に心の底から素晴らしかったと言える演奏会で、このところいつ体調を崩してもおかしくない中、休まずに行けて良かったです。それにしてもドゥダメル君は良い「楽器」を手に入れたものです。このまま長期政権を維持するなら、解釈の傾向といい、21世紀に蘇った「オーマンディと華麗なるフィラデルフィアサウンド」と言っても過言ではないかも。
Gustavo Dudamel / Los Angeles Philharmonic
1. Vivier: Zipangu
2. Debussy: La mer
3. Stravinsky: Firebird (complete)
2年ぶりのロスフィルです。さすがのドゥダメル人気に加え、今回のシリーズでクラシカルな演目はこの日しかなかったので早々にソールドアウト。リターンでポコっと1枚出てきた最上位席を、すかさず清水の舞台から急降下してゲットしました。プログラムのコンセプトは、エポックメイキングなフランスもの、といったところでしょうか。
1曲目「ジパング」の作曲者クロード・ヴィヴィエを私は名前すら知らなかったのですが、シュトックハウゼンに師事したカナダの現代音楽作曲家で、1983年に34歳の若さで会ったばかりの「男娼」に刺し殺されるというスキャンダラスな非業の死でもよく知られている人だそうです。小編成の弦楽合奏のための「ジパング」はもちろん日本を意識した曲。のっけから弦をわざと軋ませる特殊奏法を駆使した、ちょっと音の濁った笙を思わせる響きで始まり、最初はペンタトニックな民謡調の旋律で進むのかと思いきや、すぐにトーンクラスター的になったり、ヘテロフォニー的であったり、盛りだくさんに怪しげな展開を見せます。雅楽を意識したような作りはまるで日本人作曲家の現代音楽みたいな感覚ですが、違うのはリズム。この人工的な拍子感は東洋よりも西洋のものです。まあ、よくわからないながらも面白い曲でした。
続くクロード・ドビュッシーの「海」は、好んで聴きに行くわけではないのに聴く機会の多い曲で、ちょい食傷気味です。ドゥダメルの指揮は、切絵の紙芝居でも見ているような、分かりやすい演出。場面場面の展開がはっきりしており、カット割りの多い映画のようでした。たゆたうと流れる水の動きなど、全体の起伏は犠牲になっていたものの、その分細部に磨きをかける戦略。とにかく各奏者、ソリストがいちいち上手過ぎで、金管など余裕しゃくしゃく。オケの高度な演奏能力に感心することしきりでした。
メインの「火の鳥」も、スーパーオケのまさに至高のサウンドに脱帽、参りました。アンサンブルもソロも非の打ち所無し。特にホルンの完璧度が印象に残りましたが、木管もトランペットも、コンマスも、とにかく皆さん達者過ぎ。2年前に初めて聴いた時も、予想外に(と言ったら失礼ですが)上手いオケで驚いたのですが、今回はさらに衝撃的でした。ドゥダメルの導くサウンドは引き続きビジュアルに訴えるもので、バレエの場面がいちいち鮮やかに目に浮かびます。この演奏をそっくりそのままロイヤルオペラハウスに持ち込んで、ロイヤルバレエのプリンシパル達の踊りと融合させれば究極の「火の鳥」が完成するだろうに、などとつい妄想を膨らませてしまいました。一つのクライマックスである「魔王カスチェイの凶悪な踊り」では、本来は1919年の組曲版で初めて追加されたトロンボーンのグリッサンドをこの原典版で吹かせていたので、さらに驚きました。確かに、こういう「サービス」を誰かやってもよさそうなのに、とは以前から思っていましたが、実際にやってしまった演奏を聴くのは初めてでした。
久々に心の底から素晴らしかったと言える演奏会で、このところいつ体調を崩してもおかしくない中、休まずに行けて良かったです。それにしてもドゥダメル君は良い「楽器」を手に入れたものです。このまま長期政権を維持するなら、解釈の傾向といい、21世紀に蘇った「オーマンディと華麗なるフィラデルフィアサウンド」と言っても過言ではないかも。
相変わらず態度は控え目なドゥダメル。
めちゃ上手かったホルンのトップ、アンドリュー・ベイン。
ロイヤルバレエ:トリプルビル(火の鳥/イン・ザ・ナイト/ライモンダ第3幕) ― 2012/12/29 23:59
2012.12.29 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: The Firebird / In the Night / Raymonda Act III
今年最後のコンサートはロイヤルバレエのトリプルビル。お目当ては昨年もマリインスキー劇場の来英公演で見たフォーキン版「火の鳥」ですが、他もなかなかクラシカルな取り合わせです。
1. Stravinsky: The Firebird
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Mikhail Fokine (choreography)
Itziar Mendizabal (The Firebird), Bennet Gartside (Ivan Tsarevich)
Tara Bhavnani (The Beautiful Tsarevna), Gary Avis (The Immortal Kostcheï)
火の鳥は当初カスバートソンがクレジットされていましたが、怪我のため降板。代役のメンディザバルはスペイン生まれの31歳、ライプツィヒ・バレエでプリンシパルに上り詰めた後ロイヤルバレエに移籍、現在ファーストソリストです。昨年末の「眠れる森の美女」、今年は「パゴダの王子」と「誕生日の贈り物」でも見ているのでこれで4回目になりますが、私の苦手とする面長オバサン顔の上、固い感じの踊りが面白みに欠け、全然好みではありません。ただ今日は、終始カッと目を見開いた恐い顔が異形の者の存在感をよく表現できていました。踊りはかっちりしていて上手いんだけどやっぱりどこか杓子定規で小さくまとまっていて、物足りません。王子に掴まれてもがくところは、例えば別の日にキャスティングされているマルケスならもっと悲壮感漂わせてジタバタ暴れる様子を上手く踊りきることでしょう。全体的には、同じフォーキン版とは言え昨年来英していたマリインスキー劇場バレエの上演とはだいぶ振付けが変わっていて、群舞のダイナミクスは優れていた一方、プリミティブな迫力には欠けました。後ろのアンサンブルには高田あかね、金子扶生のお顔も見えたような。オケは期待してなかったのですが、意外とピリっとした好演。去年のマリインスキーよりは100倍ましでした。肝心の魔王カスチェイの踊りで金管がもうちょっと踏ん張ってくれていれば、言うことはなかったのですが。
Royal Ballet: The Firebird / In the Night / Raymonda Act III
今年最後のコンサートはロイヤルバレエのトリプルビル。お目当ては昨年もマリインスキー劇場の来英公演で見たフォーキン版「火の鳥」ですが、他もなかなかクラシカルな取り合わせです。
1. Stravinsky: The Firebird
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Mikhail Fokine (choreography)
Itziar Mendizabal (The Firebird), Bennet Gartside (Ivan Tsarevich)
Tara Bhavnani (The Beautiful Tsarevna), Gary Avis (The Immortal Kostcheï)
火の鳥は当初カスバートソンがクレジットされていましたが、怪我のため降板。代役のメンディザバルはスペイン生まれの31歳、ライプツィヒ・バレエでプリンシパルに上り詰めた後ロイヤルバレエに移籍、現在ファーストソリストです。昨年末の「眠れる森の美女」、今年は「パゴダの王子」と「誕生日の贈り物」でも見ているのでこれで4回目になりますが、私の苦手とする面長オバサン顔の上、固い感じの踊りが面白みに欠け、全然好みではありません。ただ今日は、終始カッと目を見開いた恐い顔が異形の者の存在感をよく表現できていました。踊りはかっちりしていて上手いんだけどやっぱりどこか杓子定規で小さくまとまっていて、物足りません。王子に掴まれてもがくところは、例えば別の日にキャスティングされているマルケスならもっと悲壮感漂わせてジタバタ暴れる様子を上手く踊りきることでしょう。全体的には、同じフォーキン版とは言え昨年来英していたマリインスキー劇場バレエの上演とはだいぶ振付けが変わっていて、群舞のダイナミクスは優れていた一方、プリミティブな迫力には欠けました。後ろのアンサンブルには高田あかね、金子扶生のお顔も見えたような。オケは期待してなかったのですが、意外とピリっとした好演。去年のマリインスキーよりは100倍ましでした。肝心の魔王カスチェイの踊りで金管がもうちょっと踏ん張ってくれていれば、言うことはなかったのですが。
2. Chopin: In The Night (Nocturnes)
1) Nocturne in C-sharp minor, Op. 27-1 (Nocturne No. 7)
2) Nocturnes in F minor, Op. 55-1 (Nocturne No. 15)
3) Nocturnes in E-flat major, Op. 55-2 (Nocturne No. 16)
4) Nocturne in E-flat major, Op. 9-2 (Nocturne No. 2)
Jerome Robbins (choreography)
Robert Clark (solo piano)
Sarah Lamb, Hikaru Kobayashi, Alina Cojocaru
Federico Bonelli, Rupert Pennefather, Johan Kobborg
アメリカの振付師ジェローム・ロビンスによる、ショパンの夜想曲に乗せた小品。オケはなく、ソロピアノだけの伴奏です。ロビンスと言えば、私的には「ウエストサイド物語」の振付けでインプットされているので、もっとモダンなものを想像していたら、非常にクラシカルなバレエでした。最初の夜想曲第7番をラムとボネッリ、次の第15番を小林ひかる(怪我で急きょ降板したヌニェスの代役)とペネファーザー、第16番をコジョカル、コボー、最後に有名な第2番を全員で踊るという構成です。タイトルの通り、星空の下、パーティー会場から抜け出してきたかのように着飾った男女が、落ち着いた大人のデュエットを繰り広げます。何だか弘兼憲史の漫画に出てきそうな一場面ですが、幼さを残しながらじゃれ合う第1組、複雑な心のうちを秘めつつ相手を探り合う第2組、激しく愛憎を爆発させる第3組と、各々キャラクターが違うのが面白い。最後のコジョカル・コボー・ペアはさすがに息もぴったりで、人気はピカイチでした。プリンシパルに囲まれた代役の小林ひかるさんは、一番難しそうな役所だったし、ちょいと割りを食ってしまった感じですか。個人的には最初のラム・ボネッリ・ペアの初々しさが良かったです。
3. Glazunov: Raymonda - Act III
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Rudolf Nureyev (choreography)
Alina Cojocaru (Raymonda), Steven McRae (Jean de Brienne)
Helen Crawford, Ricardo Cervera (Hungarian dance)
Melissa Hamilton, Emma Maguire, Claire Calvert, Claudia Dean
(variations solo dancers)
トリはヌレエフ振付けの「ライモンダ」第3幕。大元はグラズノフ作曲、プティパの台本と振付けによる全3幕のバレエで、美女ライモンダの婚約者ジャンが十字軍に出征している間、サラセン王子がライモンダに熱烈に求愛するが、帰還したジャンが決闘で勝利し、ライモンダと無事結婚してめでたしめでたし、というあらすじです。第3幕はその「めでたしめでたし」の部分だけなのでストーリーはなく、ここだけ切り出しての上演が可能なゆえんです。ハンガリー王アンドラーシュ二世の立ち会いの下結婚式を挙げるので、最初のチャルダーシュ(ハンガリーの踊り)を皮切りに、バリエーションのダンスが次々と繰り広げられるという定番の進行になってます。ベージュと金で統一されたロシア正教会風のエキゾチックな衣装が美しい。振付けはこれまた至ってクラシカルで、マクレーの片腕リフト連続技が見物でした(無理して身体壊しませんように…)。グラン・パとパ・ド・トロワでマクレー夫人のエリザベス・ハロッドが出ていましたが、ご主人との絡みはなく。ソロよりも群舞のほうがダイナミクスに広がりがあって面白く、そういう意味では主役のコジョカル、マクレーの影は薄めでしたが、これもクラシックバレエの醍醐味と思える、なかなか見応えのある演目でした。









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