OAE/ラトル:モーツァルトの「ラスト3」シンフォニー ― 2013/01/29 23:59
2013.01.29 Royal Festival Hall (London)
Sir Simon Rattle / Orchestra of the Age of Enlightenment
1. Mozart: Symphony No. 39 in E-flat major, K. 543
2. Mozart: Symphony No. 40 in G minor, K. 550
3. Mozart: Symphony No. 41 in C major, K. 551 (Jupiter)
モーツァルトの三大シンフォニーにサイモン・ラトル指揮とくれば、人気が出ないわけがありません。実際フェスティヴァルホールは満員御礼で、立見席も売れていました。モーツァルトは守備範囲ではないので、有名な「ラスト3」も実演ではほとんど聴いた記憶がありません。特に39番は、音源は持っていましたけれど、今日あらためて聴いてみて、ほとんど初めて聴く曲だということに気付きました。そんな状態ですので、一くくりに「ラスト3」と言っても各々楽器編成が微妙に違うことを今更のように発見し、「へぇ」と喜んでいました。39番は珍しくオーボエを欠く編成で(こういう場合、チューニングはクラリネットから始まるんですね)、40番ではオーボエが入ってきた代わりにトランペットとティンパニが退場、41番はトランペットとティンパニが戻り、晴れて勢揃いかと思いきや、今度はクラリネットが退場してしまいました。
前半戦は39番と40番。強調した低音にノンビブラートのドライな弦が乗っかる、やはりこう来るかというストレートな音色。ティンパニが硬質過ぎて、余計に乾いた印象を与えます。雄弁でモノローグ的な第2楽章は決してさらさらとは進まず徹底して作りこんであり、ここに重点を置く戦術であったかと納得しました。一見流れを遮るかのような「ため」が効果的で、適当な例えかはわかりませんが、内田光子さんのピアノを聴いているような感覚をおぼえました。40番でも同様に、第2楽章だけやたらとニュアンス豊か。やっぱりラトルはただの古典、ただの古楽器では終わらせない「いじくり」を仕掛けてきます。
休憩後の後半戦は41番「ジュピター」。これは第1楽章冒頭から変態モード全開で、テンポを揺さぶる独特の語り口が意表をつきます。音は前半より低音を引っ込め、予想外に軽くなっていましたが、ティンパニは相変わらず超硬質に叩き込みます。私自身そんなにいろいろと聴いたわけでもないですが、これは相当に個性的なジュピター、個性的なモーツァルトと思いました。前半とは違って41番の山場は第1楽章だったようで、第2楽章以降はわりと素直にインテンポのまま盛り上げていました。古楽器を使って、なおかつ新しいアイデアをどんどん試していこうとするラトルの姿勢は、毎回ファンの期待を裏切らず(あるいは「裏切って」と言うべきか)楽しませてくれますね。
今回はラトルを抱えたOAEの欧州ツアーの一環で、同一プログラムでケルン、フランクフルト、ザルツブルク、ウィーン、ブダペストと渡ってきて、最終日がこのロンドンだったようです。道理で、多忙なラトルにも関わらず、やけに完成された仕上がりだったわけだ。個人的には前週の寒いドイツ出張で風邪を引いてしまい、体調が劣悪だったのですが、何とか最後まで聴けて良かったです。
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