フィルハーモニア管/サロネン/ツィマーマン(p):ルトスワフスキと「ダフニスとクロエ」2013/01/30 23:59



2013.01.30 Royal Festival Hall (London)
Esa-Pekka Salonen / The Philharmonia Orchestra
Krystian Zimerman (piano-2)
Philharmonia Voices
1. Lutosławski: Musique funèbre
2. Lutosławski: Piano Concerto
3. Ravel: Daphnis et Chloé (complete)

ポーランドを代表する作曲家ルトスワフスキは、今年生誕100年、来年没後20年と記念イヤーが続くので、演奏される機会が当分増えてくるでしょう。記念イヤーに目がない?フィルハーモニア管は今シーズン早速「Woven Words」と名打ったチクルスを組んでいます。しかし私、実はルトスワフスキをほとんど聴いたことがありません。今日のピアノ協奏曲も以前LSOで一度聴いているのですが、意識を失っていたためどんな曲だったかほとんど覚えていませんでした。

最初の「弦楽のための葬送音楽」は、東日本大震災の後、ベルリンフィルが追悼の意を込めて定期演奏会で演奏したことでも近年注目されました。実際聴くのは初めてだったのですが、バルトークをもっと無調にしたような音楽で、つまりは音列技法的な仕掛けがよりはっきりと現れています。けっして聴衆を突き放した音楽ではなく、素朴な民謡的風土が根底を貫いていることを感じさせ、ある意味心地良い音楽です。

続くピアノ協奏曲のソリストはこの曲の初演者でもあるクリスチャン・ツィマーマン。私がクラシックを聴き始めのころ、ハンガリー三羽烏(ラーンキ・コチシュ・シフ)を追い落とす超テクの若手としてちょうどブイブイいわしてたところでしたが、ようやく生で聴ける機会となりました。まだ60歳よりは全然手前のはずですが、すっかり白髪の枯れた風貌になってしまって、でも個人的には若いころよりちょっとかっこ良くなったと思います。曲のほうは切れ目無しに演奏される4楽章構成で、これもまた無調が基調の曲ですが、いろんな要素が凝縮している、一言では表現できない不思議な曲です。聴きやすいかどうかと言えば、耳に素直に入ってくるのでセンスの良い曲と思います。ツィマーマンは初演者だけに、全く自分のレパートリーとして弾きこなしています。テクニシャンらしい切れ味鋭い打鍵、色彩感豊かなアルペジオ、繊細なタッチ、どこをとっても非の打ちようがない、パーフェクト系のピアニストですね。そういえばこの人はピアニストとしては珍しく、自分の楽器を持ち歩くのでも有名でしたか。今年の予定を見ると、記念イヤーだけあってパリ管やベルリンフィルなどいろんなオケとこの曲を共演するもようです。

メインの「ダフニスとクロエ」全曲版は、20年以上前にここロイヤルフェスティヴァルホールを初めて訪れたとき聴いた曲ですので、思い出深いものがあります。しかし正直言うとこの曲、私はちょっと苦手。第2組曲ならまだ聴けるんですが、全曲版となると音楽は冗長だし、バレエ付きで観たいものだと思います。一つ良い点はコーラスが入っていることで、これは演奏会用の組曲ではめったに聴けないシロモノです。今日のフィルハーモニア管は「当たり」の日だったようで、フルートを筆頭に、管楽器のソロが抜群に素晴らしい。ホルントップのケイティ嬢もすっかり貫禄のプリンシパルです。サロネンもまた期待に応え、オケをこれでもかとガンガンに鳴らす鳴らす。このダイナミックレンジは久々に堪能しました。フィオナ嬢は定位置、第2ヴァイオリンの二番手。半年ぶりのフィルハーモニアだというのに、今日はいつになくドアガールのお姉ちゃんが写真撮ってる人をいちいち注意していたので、冒頭の以外、あまり写真が撮れませんでした(泣)。新手ではコントラバスパートに、楽器に似つかわしくない小柄な若い女の子(Ana Cordovaという名のようです)がいて目を引きました。

この演奏会の後、彼らはすぐに日本に行きツアーをやるそうですね。今日の演奏を聴く限り指揮者、オケ双方ともバイオリズムは上昇機運のようですので、日本の皆様は是非期待してください。