英国ナショナルユース管/ウィルソン:爆演系「海の間奏曲」「惑星」2013/01/06 23:59

2013.01.06 Barbican Hall (London)
John Wilson / National Youth Orchestra of Great Britain
CBSO Youth Chorus
1. John Adams: Guide to Strange Places
2. Britten: Four Sea Interludes
3. Holst: The Planets

2013年最初の演奏会は、昨年末にクイーンメダルを受賞した英国ナショナルユースオーケストラ。13〜19歳の若き音楽学徒が毎年秋のオーディションで選抜され、定員は165名と規定されているみたいです。弦だけでも90人いる大所帯であり、繊細な味わいは求めるべくもありませんが、勢いで押し切る人海戦術は若いアマチュアならではのもの。それとこのオケは、いつも難曲ばかりやっているという印象です。以前聴いたときはヴァレーズでしたし、私は聴いてませんが昨年のプロムスではトゥーランガリラ交響曲をやってました。普通はとてもユースがやる曲じゃないですね。音楽を志す人とはいえ、年齢を考えたら驚異的な技術力です。

最初はジョン・アダムズの「奇妙な場所への案内人」という初めて聴く曲。作曲文法は全くミニマルミュージックの範疇ですが、構成が複雑でめちゃめちゃ難しそう。25分くらいの曲ですが、最後は繰り返しがしつこく、終わりそうでなかなか終わらないなーと半ばうんざりしていたら、ブツリと唐突に終焉。まさに奇妙場所で放り出されたような後味の曲でした。オケはやはり若さ故か各楽器のソロが弱く、それに管楽器の音程が悪いのが気になりましたが、全体的にはしっかり練習を重ねて最後は力技で押し切るという感じでした。続く「4つの海の間奏曲」も簡単な曲ではありませんが、メジャーなレパートリーだけに、先の曲よりはよっぽどこなれた感があり、よくまとまっていました。メインの「惑星」は、「火星」「木星」「天王星」あたりでは人海戦術が期待通り功を奏し、ド迫力の爆演。一方の「金星」「土星」といった緩除楽章のほうが、間が持たなくて苦しそうでした。こんなときは、コンマス、金管、木管の名人芸があればまだ助かるんでしょうけどねえ。「海王星」の女性コーラスを担当したのはバーミンガム市響のユースコーラス。こちらはさらに若く、9〜13歳の女の子だそうです。途中で音が取れなくなる危ない箇所がありましたが、まあ細かいことを言うのはちょっと酷でしょうか。

聴衆は多分ほとんどがメンバーの家族や関係者ばかりだと思いますが、満員御礼の超人気で、ぴーぴーと盛り上がっていました。もちろん一流プロと肩を並べるレベルではないものの、こういった勢いのある若いアマチュアの演奏は、こちらも熱いものが身体に沸き起こるのを感じ、なかなか心打たれるものです。

指揮者のジョン・ウィルソンは自分のオーケストラを持ち、プロムスでよくミュージカルナンバーをやってるクロスオーヴァーの人ですが、このような本格的クラシックコンサートもきっちり振れるんですね。キレのある指揮ぶりとパッションある音楽作りは好感が持てました。今月フィルハーモニア管の定演にも立つようで、活動に注目したいと思います。