ロイヤルオペラ/アラーニャ/ゲオルギュー:ラブラブ20周年の「ラ・ボエーム」2012/06/23 23:59

2012.06.23 Royal Opera House (London)
Jacques Lacombe / Orchestra & Chorus of the Royal Opera House
John Copley (Director), Paul Higgins (Revival Director)
Angela Gheorghiu (Mimì), Roberto Alagna (Rodolfo)
Nuccia Focile (Musetta), George Petean (Marcello)
Yuri Vorobiev (Colline), Thomas Oliemans (Schaunard)
Jeremy White (Benoît), Donald Maxwell (Alcindoro)
Luke Price (Parpignol), Bryan Secombe (Sergeant)
Christopher Lackner (Customs Officer)
1. Puccini: La bohème

この「ラ・ボエーム」、シーズンプログラム発表当初ではアラーニャとフリットリがキャスティングされていて、どちらもまだ見てないので、これは「買い」かなと思っていたのですが、昨年9月の「ファウスト」上演の前後で突如ゲオルギューがフリットリを押しのけ、アラーニャと夫婦共演するという話になりました。私はこの二人はとっくに離婚したと思いこんでいたので、ヨリを戻しているのに驚いたのと、チケット争奪がますます大変になるなあという危機感、それに、どうせリハーサル中に大喧嘩して片方または両方共がドタキャンとか、いかにもありそうな不安な予感などなど、様々な感情が脳裏を過りました。今回の夫婦共演は2公演しかなく、初日を無事終えたという情報を聞いてさえ、今日は二人ともちゃんと出てくれるんだろうかという心配はありましたが、いの一番にプログラムで本日の出演者を確認、とりあえず心配は杞憂に終ってほっとしました。

さて「ラ・ボエーム」はブダペストで1回見たきりですので8年ぶりくらいです。甘い旋律にいちいちユニゾンの弦を重ねて盛り上げるというプッチーニ節が気分によっては胃もたれし、また、前半に比べて後半の間延びが私には退屈で、正直得意なオペラではありません。それでも、役者が揃ったこのプロダクションはROHならではの輝きで、一見の価値があるものでした。初めて聴くアラーニャは、並外れてよく通り色気たっぷりの声が吸引力抜群、こりゃー世のおばさん、いやいやレディー達が追っかけ回すのも納得です。ちょっと鼻声にも聴こえましたが普段の声を知らないのでそれがまた甘ったるくて人気の秘訣なのかも。最初のアリアのハイトーンがちょっと苦しかったりもしましたが、その後は余裕を取り戻し、達者な演技も相まって、光り輝く看板役者のロドルフォでした。対するゲオルギューは、オペラグラスでお顔をアップで見てしまうと可憐な小娘にはもう苦しいかなと思ってしまいますが(「ファウスト」のときは若作りに驚嘆したのに、何でだろー)、いかにも薄幸の演技と歌唱はベテランの風格で文句のつけようがなく、上手さに感嘆することしきり。この二人の発するオーラはまさにスターそのもの、ことさら際立っていました。

今日は久しぶりにプロンプタさんの活躍がありました。ゲオルギューの出るときは必ず出番がありますね。上のバルコニーボックスからはプロンプタがボーカルスコアを見ながら、絶えず手で何か指示を出しているのが見えました。もちろん歌詞も表示されているんでしょう。ただ今日不思議だったのは、第3幕でゲオルギューとアラーニャが舞台中央で足を止めてずっと抱き合っている間にも、プロンプタがまるで指揮をするようにずっと手を動かしていたことで、動作や動線を指示していたのではなさそうで、じゃあ一体何を教えていたのかと。指揮者とは別途に拍を振る必要もないわけで、歌詞のストリップを指差して「歌詞は今ここです!」なんて指示をだしていたのかしらん。謎だ。

今回はゲオルギュー、アラーニャがROHの「ラ・ボエーム」で初共演をしてから20年という記念の意味もありましたので、他のキャストは当然このスター二人の影になってまうのはいたしかたないところですが、なかなかどうして、ちゃんと歌えて役者もできる人が揃った、粒よりのキャスティングでした。ムゼッタのコミカルでコケティッシュな味付けもしっかり場を盛り上げ、マルチェロ他友人も皆プロの仕事を成し遂げました。指揮者は先月大好評だったビシュコフではなく、マウリツィオ・ベニーニの病気降板を受けての代役、ジャック・ラコンブという若いカナダ人でしたが、どのみち知らない人だったので先入観なしに聴くと、なかなか健闘したと言えるのではないでしょうか。ぽっと出の馬の骨ではなくしっかりとしたキャリアを持ち、物怖じすることなくプッチーニの音楽を自分の手中で転がしていました。

演出はもう何十年も続いている至ってオーセンティックなものでした。とりわけこの「ラ・ボエーム」に関しては、奇を衒ったモダンな演出はあまり見たくないと思いますね。うらぶれてはいるけどどこか気分をほっとさせる屋根裏部屋。いかにもという雰囲気のパリの居酒屋の裏路地が、ほとんどの席からは見えないであろう奥のほうまで細部にこだわって作りこんであり、手前の焼き栗屋がまた美味しそうなこと。第3幕の雪が降り積もる景色も美しく(馬車の中でコトの最中の警備員は、娘の教育上ちょっと困ったが)、どの幕も本当によく出来た舞台です。

終演後、隣りのボックスの人々がやおら大きな箱を取り出すと、中にはぎっしり花が。フラワーシャワーとはこうやるのかと、初めて見ました。うちの娘もいくつか投げさせてもらい、よい思いでになりました。



ロイヤルバレエ:プリンシパルのいない「パゴダの王子」2012/06/21 23:59

2012.06.21 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: The Prince of the Pagodas
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Kenneth MacMillan (Choreography), Colin Thubron after John Cranko (Scenario)
Beatriz Stix-Brunell (Princess Rose), Itziar Mendizabal (Princess Epine)
Ryoichi Hirano (The Prince), Gary Avis (The Emperor)
James Hay (The Fool), Thomas Whitehead (Emperor's Counsellor)
Andrej Uspenski (King of the North), Valeri Hristov (King of the East)
Jonathan Watkins (King of the West), Brian Maloney (King of the South)
1. Britten: The Prince of the Pagodas

ブリテン作曲のバレエ「パゴダの王子」は彼の作曲キャリアの中でちょうど折り返し点あたりに位置する曲ですが、これ以降に作曲した重要な作品と言えば「真夏の夜の夢」と「戦争レクイエム」くらいですので、成熟度ではまさにスタイル完成の境地にあると思います。来年のブリテン生誕100年を目前に、16年ぶりにロイヤルバレエでリバイバルされたプロダクションというくらいですからめったに見る機会はないバレエですが、うちにはDVDがあったりします。以前買った「マクミラン・3DVDパック」みたいなセットにロメジュリ、マノンと共に含まれていまして、てっきりマクミランの代表作の一つと思っておりましたら…。16年も上演されなかったのは故なきことではないのだなあと、実演を見てあらためて思いました。

まず言っとかなければならないのは、今日のキャストは相当二転三転しました。発表当初はカスバートソン、ヤノウスキー、ペネファーザーという取り合わせでしたが怪我のために結局全員降板、今年大抜擢でアリスを踊ったスティックス=ブリュネルがカスバートソンの代役とのことでしたが、5月末にラム、モレラ、ボネッリの組でキャストが落ち着いたのもつかの間、直前になってやっぱりスティックス=ブリュネル、メンディザバル、平野亮一の組に変更になりました。最後の変更は怪我のせいではないので、理由がよくわかりません。ともあれ、プリンシパルが一人もいないこのCキャストは(プリンシパルと名のつくのはキャラクターアーティストのエイヴィス唯一人)、ヌニェス・ロホ・キシュのAキャスト、ラム、モレラ、ボネッリのBキャストと比べてフレッシュではありますが、だいぶ格落ち感がしてしまうのは致し方ないところです。

このような事情のためどうしてもネガティブな先入観を持ちつつこのバレエを見ると、何とつまらない演目であることよ。あらすじは、こんな感じですか。とある国の王様が二人の娘に領土を分け与える際、妹ローズのほうを贔屓したのに姉エピーヌが怒って、妹の恋人である王子を呪いで山椒魚に変えてしまいます。姉は王様を隠居させて国を牛耳り、東西南北から四人の王をはべらせ、妹は従者(道化)と共に放浪の旅に出ます。妹は最果ての国で山椒魚になった王子と再会しますが、目隠しをしている間だけ王子は元の姿に戻ります。山椒魚と国に戻った妹は口づけで王子の呪いを解き、元の姿に戻った王子は道化の助けを借りつつ四人の王と姉を撃退し、国に平和がやってきてめでたしめでたし、皆で踊ってハッピーエンド、というお話です。

たわいもないストーリーはともかく、振付けが全体的にヌルい感じで、エキサイティングな踊りがさっぱりありません。四人の王の踊りはどこか醒めていてこのバレエに対して距離を置いているように見えてしまったし、プリンシパルがいないとこうもオーラがないものかと、ある意味興味深かったです。主役ローズ姫のベアトリスちゃんは昨年ロイヤルに来たばかりのまだ19歳。称号もまだ一番下の「アーティスト」だし、前回の「アリス」に続き飛び級でここまで抜擢されるその背景が、私にはよくわかりません。一つ一つの動作が固くて小さく、まだ若いんだなあという印象しかなかったです。幕を追うごとにほぐれては来ましたが。エピーヌ姫のメンディザバルも一昨年ライプツィヒバレエから移籍して来た人で、多分初めて見ますが、気の毒なくらいに存在感がない。四人の王はどれもタルい踊りで、しらけてしまいました。このメンバーの中では王子の平野さんが一人気を吐いてキレのある踊りを見せていましたが、いかんせん振付けが私には全然ユルユルとしか感じられず、こりゃー今日はダメだなと、集中力の維持が困難でした。

ちょっとよくわからなかったのですが、第1幕と第3幕で王子と山椒魚がノータイムで入れ替わる場面は、山椒魚は平野さんじゃなくて別の人が入れ替わってましたよね?第2幕で出てきた山椒魚は、着替える時間が30秒くらいありましたから、最初から平野さんでした。意味不明と言えば第2幕の前半。スキンヘッドになった四人の王が唐突に出てきてローズ姫をなぶりものにしますが、意味が分かりません。その後、最大のアクシデントが!気を失ったローズに道化が目隠しをすると、元の姿の王子が出てきて目隠ししたままのローズと踊る場面で、道化が袖から目隠しの布を引っ張り出そうとしても引っかかって出て来ず、相当手こずった後に結局諦めて目隠ししないまま、さーっと退場して行きました。ベアトリスちゃんも気を失っているわけだから、何が起こったのかよくわからなかったかもしれませんが、あるはずの目隠しがないのは事実。その後のパ・ドゥ・ドゥは、あたかも目隠しをしているかのように、決して目線を合わせないで踊っていたのは立派でした。もしかしたら主役の二人の適応能力を試すためにわざとやったんでは、ともちらっと思いました。

オケは残念ながら悪い日のほうのROHオケで、ヘロヘロ。そのおかげで音楽自体がつまらないという感想しか持ち得ず。何にせよ、これはクラシックバレエの音楽ではないよ。金属打楽器とマリンバを多用した東南アジアのテイストで、それもそもはず、バリ島の音楽(ガムラン)の影響を受けた曲なんだそうです。だから曲としては雄弁ではなく寡黙なほうで、理解するには時間がかかるかも。ただ、今日のこの公演を見ただけで言うなら、是非もう一度見たいとは決して思わないバレエです。家にあるDVDを見ると、踊りはもっと滑らかでいろんなものを表現していて、音楽にも緊張感があり、冗長なところはあるにせよ、決して最悪な演目ではありません。ヌニェスとロホのベテラン対決だったらさぞ凄かっただろうに、ラムとモレラでも存在感はもっとあったろうに、カスバートソン・ヤノウスキーだったら演技の濃さにやっぱ目が釘付けだったかなーなどと思うと、結論は次のチャンスまで保留にしときます。



ロイヤルオペラハウス:来シーズンブッキング2012/06/13 23:59


昨日と今日はロイヤルオペラハウスの平Friend向けブッキング開始日でした(12がバレエ、13がオペラ)。Webサイトが全面リニューアルになってから最初のブッキングオープンで、ブッキングページの仕様も変わり、さてどうなることやらと不安も大きかったのですが、ふたを開けてみたら、全く問題なし、どころか、待ち時間ゼロで非常に快適!どちらも実質5分くらいで済んでしまいました。今日は支払いの段で一度エラーが出て焦ったのですが、元のページに戻してやり直したらすんなりできました。以前のように待合室に入れられて何時間も待ったり、途中でエラーが起こったらまた最初から並び直し、というのに比べたら、今回は魔法のようにサクサクとチケットが買え、正直驚きました。(あまりに楽だったので、確認メールが来るまで、半信半疑で不安でした。)

とにかく待ち時間なしというのが、最高に評価できます。このシステムを維持してくれるなら、今後も喜んでFriend会費を払いますよ。

ロイヤルバレエ/ヌニェス/キシュ/マルケス/マクレー:王妃の舞踏会、ラ・シルフィード2012/05/24 23:59

2012.05.24 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: Double Bill (Ballo della regina/La Sylphide)
Daniel Capps / Orchestra of the Royal Opera House

私「次のマクレーさんのダブルビル、いつにする?」
妻「全部!」
私「あほ言え、我が家のオペラ座基金はとうに底抜けて大赤字なんじゃ!(怒)」
妻「パートナーは誰なの?」
私「初日の月曜がコジョカル、木曜はいつものマルケス。コジョカルまだ見たことないし…」
妻「どっちでもいいけど、かぶりつき席が取れるほう!」

という会話があったかはともかく、今回もマルケス・マクレーのゴールデンコンビをかぶりつき席で鑑賞です(半泣)。


1. Verdi: Ballo della regina (from 'Don Carlo')
George Balanchine (Choreography)
Merrill Ashley (Staging, Principal Coaching)
Marianela Nuñez, Nehemiah Kish
Samantha Raine, Leanne Cope, Yuhui Choe, Emma Maguire

最初は「王妃の舞踏会」という短いバレエ。ヴェルディの「ドン・カルロ」からバレエの場面を切り出して、ジョージ・バランシンが独自の振付をつけたものだそうです。初演は1978年ですが、ロイヤルバレエでは昨シーズン初めて取り上げられました。ストーリーは特になく、純粋にダンスの妙技を鑑賞する演目のようでした。込み入ったステップに、手足を始終ダイナミックに駆使して、見かけ以上に体力を消耗しそうな踊りです。ヌニェスは綺麗だし、キシュはそんなに長身ではないはずですが、手足のさしが長いのか、伸縮のダイナミックさに目を奪われました。ついでに意識も奪われ、後半はついウトウトと。すいません。(観劇前にオペラ座横のMasala Zoneでしっかり食い、暑かったのでビール飲んじゃったのが敗因です…)



2. Løvenskiold: La Sylphide
August Bournonville (Choreography)
Johan Kobborg (Additional Choreography, Production, Staging)
Roberta Marquez (The Sylph), Steven McRae (James)
Sabina Westcombe (Effie), Alexander Campbell (Gurn)
Elizabeth McGorian (Madge), Genesia Rosato (Anna)
Sarah Keaveney (Little Girl), Emma Maguire (First Sylph)

2つ目の「ラ・シルフィード」は、昨年マリインスキー劇場のロンドン公演で見た「レ・シルフィード」とは全く別物の作品で、ロマンチックバレエの古典中の古典だそうです。ストーリーは、結婚間近の青年ジェイムズが許嫁そっちのけで妖精シルフに心奪われ、婚約指輪を奪って逃げたシルフを追いかけて、捕まえようと魔女からもらったショールをかけるとシルフは羽根がもげて死んでしまい、自分も息絶えそうになる中、許嫁が別の男と結婚していくのを見る、という救われない話。このジェイムズというのが、今まで見たマクレーさんの役にはなかった「ひどいヤツ」キャラクターで、婚約者とのデュエットは心の通わない空々しいもので、愛情がないのは明らかなのに、彼女に横恋慕している若い農夫が近寄ってくると害獣を追い払うかのように跳ね除けるという、独占欲だけは旺盛な駄々っ子。「嫌なヤツキャラ」が立っていたのは、マクレーさんの非情な演技がそれだけ優れていたということですね。一方、マルケスのシルフは存在感が希薄で、妖精というよりもまるで幽霊のよう。正直、不気味で恐いです。いつもよりも何だか踊りもフラフラしていて不安定に見えたのは、多分意図的な演技なのでしょう。お互い心引かれているはずのジェイムズとシルフのデュエットにしても、すり抜け、すれ違いの連続で、結局ジェイムズの孤独感をいっそう際立たせるだけ。ダンサーにとっては、いつも組んでいるパートナーと、フィジカルな接触なしでもいかに絶妙のコンビネーションを発揮できるかという、非常に難しい演目だったのではないでしょうか。上手くいったのかどうか私には判断できませんが、少なくとも「ラ・シルフィード」の世界観は十分心に染み入りました。しかし救いのないラストはどーんと暗い気分になるので、一日の最後に見たい演目じゃないですね。

スコットランドの農村が舞台なので、男女共にチェックのスカートを着たフォークダンスは一見の価値ありです。子役もみんなかわいかったし。こういった民族衣装を纏ったフォークダンスのシーンは、ハンガリー国立バレエではよく見ましたが、ロイヤルバレエでは珍しいと思います。素朴で田舎臭いダンスは、先進国の大都会では敬遠されるんでしょうかねえ。妻は最前列でもオペラグラスをしっかりと握り、スカートで回転するマクレーさんに目が釘付けでした。

このところやけにしっかりした音を出していたオケ、今日はまた前に逆戻りでした。トランペットはピッコロトランペットのソロも含めて立派なものでしたが、ホルンがアマチュアをずらりと並べたようなひどさ。特にシルフィードの第2幕はホルンが音楽表現の主役なのので、あのずっこけぶりは犯罪的と言ってもいいくらい。途中、弦のピッチもおかしくなり、睨みをきかせられない指揮者の統率力の問題だと思います。まあ、まだコートが手放せなかった先週から、今週急に真夏(イギリス標準)になったので、ダレるのはしょうがないんでしょうけども。



ロイヤルオペラ/ガッティ/マエストリ:50'sの「ファルスタッフ」2012/05/19 23:59

2012.05.19 Royal Opera House (London)
Daniele Gatti / Orchestra of the Royal Opera House
Robert Carsen (Director)
Ambrogio Maestri (Sir John Falstaff), Ana Maria Martínez (Alice Ford)
Kai Rüütel (Meg Page), Marie-Nicole Lemieux (Mistress Quickly)
Amanda Forsythe (Nannetta), Joel Prieto (Fenton)
Carlo Bosi (Dr Caius), Dalibor Jenis (Ford)
Alasdair Elliott (Bardolph), Lukas Jakobski (Pistol)
Royal Opera Chorus
1. Verdi: Falstaff

今シーズンのロイヤルオペラのニュープロダクション、「ファルスタッフ」はヴェルディが最後の最後に、ほとんど自分自身のために書いたと言われる喜劇です。肩の力が抜けたヴェルディらしからぬ軽さで、歌手が「どや顔」で歌い切るような聴かせどころのアリアはほとんどありませんが、音楽は円熟の極み、無駄なくナチュラルに次々と展開して行くので、飽きるところがありません。今日驚いたのは、ガッティがこの長いオペラを全て暗譜で振っていたこと。出てくるオケの音は最後まで美しく、力強く、まるでパッパーノ大将が横でにらみをきかせているかのような充実ぶり。先日の「リーズの結婚」といい、メンバー総入れ替えでもしたかのようなオケはレベルアップは、いったいどうしちゃったの?最近何かテコ入れをしたんでしょうか。何にせよ、在ロンドンのプロとして、誇りを持って是非クオリティをキープしてもらいたいと思います。

歌手陣は、ロイヤルオペラのヤングアーティストだったカイ・リューテルは何度か見ていますが、後は聞いたことない歌手ばかり。しかし、知らぬは私ばかり也だったようで、どこを切っても穴のない、真に歌える人を揃えたであろう内容の濃い歌手の布陣でした。特にファルスタッフのマエストリは、肉襦袢の必要ない自前の太鼓腹で、よく響くとっても良い声をしていました。老けメイクをしていますがその実私よりも若く、その年齢でその腹は健康上ちょっとマズいだろうとは思いましたが、脂の乗り切った歌唱に感動しました。女性4人も各々役どころを理解した完璧なキャラクター作り。スターはいないのかもしれないけど、けちのつけどころがどこにもない、バランスの取れた歌手陣に拍手喝采です。

演出は、原作のシェークスピア「ウィンザーの陽気な女房たち」が書かれた1590年代を1950年代に読み替えたものでしたが、よく整った舞台装置はセンスが良く、決して奇を衒っただけのモダン演出ではありませんでした。まあ、中世と第二次戦後の大量消費時代は趣きが根本的に違うので、よく見ると歌詞と演出が全然マッチしてない場面もありましたが。レストラン、カフェ、キッチンが舞台となっているので食べ物、飲み物がたくさん出てきて、全てが本物ではないでしょうが、オペラグラスで見ていても非常に美味しそうに見える、たいへんよく出来た小道具でした。娘も単純に楽しみ、概ね満足のいくプロダクションでしたが、少し苦言を言うと、演技する場所が左右に振れすぎていてバルコニーボックスからは見えにくい場面が多かったこと、間男を探すべくキッチンを荒らしまくるのはまだよいとしても、ダイニングテーブルの上を土足で歩いたり(しかもその後そのテーブルに食事をサーブする)、最後に全員で観衆を指差して嘲笑するといった、ちょっと度の過ぎたドタバタは品位を欠き、いただけませんなー、と思いました。

なお、開幕前にアナウンスがあり、この日の公演は前日に亡くなったディートリヒ・フィッシャー=ディースカウに捧げられました。フィッシャー=ディースカウは1967年にショルティの指揮の下、このロイヤルオペラでファルスタッフを歌ったそうです。


ロイヤルバレエ/マルケス/マクレー:リーズの結婚2012/05/16 23:59


2012.05.16 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: La Fille mal gardée
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Frederick Ashton (Choreography)
Steven McRae (Colas), Roberta Marquez (Lise)
Philip Mosley (Widow), Ludovic Ondiviela (Alain)
Gary Avis (Thomas), Alastair Marriott (Village Notary)
Michael Stojko (Cockerel, Notary's Clerk)
1. Ferdinand Hérold: La Fille mal gardée (orch. arr. by John Lanchbery)

アシュトン振付の「リーズの結婚」は本当に楽しいプログラムなので、妻も娘もこの日を心待ちにしていました。ちょうど2年ぶりですが、例によってマクレー様の踊る日を選んだので、群舞の人々を除いて2年前と全く同じキャストで見ることに。私はどちらかというとコジョカルとか、見たかったんですが…。

最終日だった今日はオン・シネマの生中継があったので、ストールにテレビカメラが6台も入っていました。周辺の人は迷惑だったことでしょう。映像が残るということはDVDソフト化の可能性もあるわけで、妻は今からキャーキャー言って勝手に盛り上がっております。また、今回の「リーズ」の広告ポスターもマクレー&マルケスのカッコいいキメポーズ写真が使ってあり、駅などからはすでに撤去されているようですが、オペラハウスのショップで売り出されていないかと丹念に探しておった妻でした。

冒頭のほのぼのとしたスクリーンから、ラストの赤い傘を見つけたアランの無邪気な笑顔まで、終始見ているこちらの顔も緩みっぱなしの、無心に楽しめるプロダクションです。マルケスは、無垢で華奢で可憐なリーズが本当にはまり役。オペラグラスで見ていると、最初から汗びっしょりで、ちょっと調子が悪かったかもしれません。しかし素人目に何かケチをつけるほどのものではなく、マクレーとのコンビネーションも相変わらず見事。そのマクレー様はいつものごとく、ブレないステップ、滞空時間の長いジャンプ、ビシッと決まったポーズの美しさはどれもこれも素晴らしい。世界に向けて生中継する価値の十分あるプリンシパルたちでした。

未亡人のお母さんは、木靴の踊りが2年前に思ったのと同じく、バラバラとしていてイマイチでした。ふと思ったのは、タップダンスの得意なマクレーさん、将来年齢を重ねて第一線から退いた後は、この未亡人役でヤケにキレキレの木靴の踊りを嬉々として披露していたりするのかな、という妄想です。そういえば、マクレー夫人のエリザベス・ハロッドはニワトリ役で出演していたようですが、何せ着ぐるみなので、どの人か分からず…。ちょっと淋しい夫婦共演ですね。

特筆すべきは、今日のオーケストラがいつものバレエではあり得ないほどに冴えていて、素晴らしかったこと。パッパーノが振るとき以外でこのオケがこんなにしっかりしているのって、今まで聴いたことがないです。現金なものですが、これも生中継の威力でしょうか。しかし、やればできるんだな!じゃあ何故普段からこれをやらんのじゃ!と怒りもちょっと覚えました。



ロイヤルオペラ:「連隊の娘」は笑いと涙の松竹新喜劇2012/04/21 23:59


2012.04.21 Royal Opera House (London)
Yves Abel / Orchestra of the Royal Opera House
Laurent Pelly (Original Director), Christian Rath (Revival Director)
Wendy Ebsworth (Interpreter to British Sign Language)
Patrizia Ciofi (Marie), Colin Lee (Tonio), Alan Opie (Sulpice Pingot)
Ann Murray (La Marquise de Berkenfeld), Donald Maxwell (Hortensius)
Ann Widdecombe (La Duchesse de Crackentorp), Jonathan Fisher (Corporal)
Luke Price (Peasant), Jean-Pierre Blanchard (Notary)
1. Donizetti: La Fille du Régiment

デセイとフローレスが出演した一昨年の公演は、一般発売日にはもう碌なチケットが残ってなくて断念しました。今年はそのリベンジでしたが、歌手陣がガラっと変わってしまって(正直ダウングレード)ちと残念。ロンドンブロガーの方々でもほとんど話題に上らないのは、皆さん2年前にきっちりご覧になっていて今年はパスされてるからなんですかねー。

こないだ数えてみたら、オペラ・バレエ鑑賞を合わせてようやく生涯100本目を超えたところですが(まだまだヒヨッコです…)、意外にもドニゼッティのオペラを生で見るのは初めてです。「連帯の娘」はロンドンに来るまで名前すら知りませんでしたが、笑いあり涙あり、ストレートでどこかほのぼのとしたストーリーは、まさに松竹新喜劇の世界。台詞に唐突に英語(しかもオリンピックなど時事ネタ)やドイツ語が混じってきて面食らいますが、それも爆笑を取る計算のうち。無邪気に笑える素敵なプロダクションでした。

マリー役のパトリツィア・チョーフィは特に出だしの調子が上がらず。高い声は出ているものの、いかにも声が弱く、オペラの歌になっていませんでした。風邪が治ったばかりのような、芯のない声でした。これはやっぱり、DVDで見たデセイにかなうものではありません。ただ妻に言わせると、「ジャガイモの皮むきはデセイより上手かった」。軍曹のアラン・オピーも、いい体格をしているわりには声は意外と細く、というか繊細で、ちょっと舞台の奥に引っ込むと途端に声が通らなくなるのはどうしたものかと。演技は面白かったですが。

このオペラの真の主役、トニオを歌ったコリン・リーは、たいへん立派な歌唱で感心しました。そりゃフローレスと比べたらスターのオーラは薄いし、ゴツめの身体は二枚目役には似合わないけど、ハイCはよく出ていたし、演技も達者でした。指揮者のイヴ・アベルは確か2年前のゲオルギューの「椿姫」で聴いていますが、オケの出来はまずまずといったところ。あの荒れがちなオケを手堅くまとめたという点では、よい仕事をしたと言えましょう。

今日の公演はBSLというイギリスの手話に通訳する女性が舞台袖にずっと出ずっぱりで、ほとんど全ての歌・台詞を身振り手振りで訳していました。まさかフランス語の歌を同時通訳でBSLに訳していたわけではなく、脚本はあったんでしょうが、長丁場に渡り全身を優雅にかつダイナミックに使った熱演で、今日一番大変だったのは間違いなくこの人でしょう。


拍手喝采、熱唱のコリン・リー。


チョーフィはどうしてもデセイと比べられてしまう宿命なので、ある意味気の毒。


カーテンコールでは手話通訳のウェンディさんも一緒に。

ロイヤルバレエ:「不思議の国のアリスの冒険」再び2012/04/13 23:59

2012.04.13 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: Alice’s Adventures in Wonderland
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Christopher Wheeldon (Choreography)
Lauren Cuthbertson (Alice) Federico Bonelli (Jack/The Knave of Hearts)
Edward Watson (Lewis Carroll/The White Rabbit)
Laura Morera (Mother/The Queen of Hearts)
Gary Avis (Father/The King of Hearts), Steven McRae (Magician/The Mad Hatter)
Fernando Montano (Rajah/The Caterpillar), Philip Mosley (The Duchess)
Ricardo Cervera (Vicar/The March Hare), James Wilkie (Verger/The Dormouse)
Kristen McNally (The Cook), Ludovic Ondiviela (Footman/Fish)
Dawid Trzensimiech (Footman/Frog), Emma Maguire, Leanne Cope (Alice's Sisters)
Michael Stojko (Butler/Excutioner)
Sander Blommaert, James Hay, Valentino Zucchetti (The Three Gardeners)
1. Joby Talbot: Alice’s Adventures in Wonderland

幸い出張は微妙にずれて、今度は家族と共に2度目の「アリス」です。王様、カエルを除き、前回とほぼ同じキャストですが、欲を言えば別のキャストでも見てみたかったかも。ただ、前回とは反対側に位置する席でしたので、別アングルを楽しめました。

主役二人の動きは前よりちょっと悪かったような。息が合わない箇所があり、リフトなどもだいぶ慎重になっていました。一方、マクレーは相変わらずの芸達者で、今日は思わず帽子を落としてしまうくらい、クレイジーにはじけていました。はじけると言えばハートの女王のモレラ。ますます吹っ切れて堂に入ったコメディエンヌぶりに、妻も娘も大笑い。やはりこの役、ファーストキャストのヤノウスキーの長身を前提に作られていると思うので、モレラはもうちょっと身長があれば、と思わないでもないですが、これはこれで、背が高いと思わせておいてカバーをあけたら小柄な女性、というギャップも面白いかも。何にせよ家族で気楽に楽しめるほのぼのプロダクションです。来シーズンもやるので、また是非見たいです(ロンドンにまだ居れば、ですが)。


今日も6番ひかるさん、7番ユフィさん。


ちょっとお疲れ?主役のペア。


マクレー、モレラの芸達者組は、怪演度合いが増しています。

ロイヤルバレエ:不思議の国のアリスの冒険2012/03/26 23:59


2012.03.26 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: Alice’s Adventures in Wonderland
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House
Christopher Wheeldon (Choreography)
Lauren Cuthbertson (Alice)
Federico Bonelli (Jack/The Knave of Hearts)
Edward Watson (Lewis Carroll/The White Rabbit)
Laura Morera (Mother/The Queen of Hearts)
Christopher Saunders (Father/The King of Hearts)
Steven McRae (Magician/The Mad Hatter)
Eric Underwood (Rajah/The Caterpillar)
Philip Mosley (The Duchess)
Ricardo Cervera (Vicar/The March Hare)
James Wilkie (Verger/The Dormouse)
Kristen McNally (The Cook)
Ludovic Ondiviela (Footman/Fish)
Kenta Kura (Footman/Frog)
Leanne Cope, Samantha Raine (Alice's Sisters)
Michael Stojko (Butler/Excutioner)
James Hay, Dawid Trzensimiech, Valentino Zucchetti (The Three Gardeners)
1. Joby Talbot: Alice’s Adventures in Wonderland

今週から夏時間になり、「日の長いヨーロッパ」がまだやってきました。

昨年見れなかったロイヤルバレエの新作「不思議の国のアリスの冒険」、実は来月の公演のチケットを取っていたのですが、出張が入ってしまったので急遽他の日はないかとチケットを探し、全公演ほぼソールドアウトの中、運良くポコッと出てきた1枚をゲットすることができました。隣席のおじさんがリターンをしたそうで、「君はラッキーだ」としきりに言われました。

ディズニーの前まではアニメ化すら不可能と言われた原作の摩訶不思議な世界を、どう舞台に乗せるのかが肝だと思いますが、前半は半透明のスクリーンに映し出す映像を多用して、不思議の国に落ちていく場面(落ちていくアリスはマリオネットで表現)、ドリンクを飲んで大きくなったり小さくなったりする場面は、なかなかよく練られてうまくできていると感心しました。肝心の振り付けは、うーん、昨年のプレミエではコアなバレエファンからの評判があまり芳しくなかったようですが、私はそんなに深く踊りを見ているわけではない(その素養もない)ので、パフォーマンスとしては十分楽しめました。アリスもマッドハッターもハートの女王も、やっぱりただの演技やマイムだけだったら楽しさ半減で、ダンスがあってこその舞台だった、とも言えますし。

初めて見るアリス役のカスバートソンは初演のAキャストで、DVDでも踊っているので、誇りを持って自信たっぷりに演じ尽くしています。顔はちょっとオバン臭い(失礼!)ですが、体格がよく、一つ一つの仕草が上手くて存在感あるダンサーだと思いました。第1幕のかけっこする場面、追い抜かれていく様子をポワントの後ずさりで表現したのは「おー、ムーンウォークの原点はこのワザだったか」と慧眼しました(笑)。マクレーのマッドハッターは、昨年の評判を聞いてか、さすがの大人気。生で見る彼のタップダンスは確かにかっこいい!ただDVDで見た印象と比べると意外とハジケてなく、マッドさが足りなかったような。ちょっとお疲れ気味かな、と思ってしまいました。


第2幕が終ったところの幕間では、巨大な斧に「INTERVAL」の文字が。第3幕開演前にはちゃんと「ACT III」と表示が変わっていました。

展開の速い第1幕に比べて、第2幕と第3幕の後半はちょっとダレる気がします。第3幕の「眠れる森の美女」のパロディには大笑い。ハートの女王はここまでほとんど踊りがなく、満を持してのステップです。モレラはこういうコミカルでアブノーマルな踊りが真骨頂(と言ったら失礼かな)で、本当に上手かったのですが、やはり背が低いのが残念でした。ここの場面はヤノウスキくらい長身の人のほうが絶対に映えるのは、仕方がないところ。

脇役、その他大勢にも知った顔がたくさんあり、ダンサー大動員、正に総力を挙げて取り組んでいる気合が伝わります。大人も子供も楽しめる良質のプロダクションだと思います。是非定期的に舞台に乗せ、進化させて行って欲しいですね。


クレジットはされていませんでしたが、6番は小林ひかるさん、7番はチェ・ユフィちゃんですね。あらたまって見ると、頭の上の数字は間抜けだ…。


大人気、マクレーさんのマッドハッター。


ボネッリのジャックも初々しくて良かったです。

ロイヤルオペラ/パッパーノ/ダルカンジェロ:フィガロの結婚2012/02/24 23:59


2012.02.24 Royal Opera House (London)
Antonio Pappano / Orchestra and Chorus of the Royal Opera House
David McVicar (Director), Leah Hausman (Revival Director)
Ildebrando D'Arcangelo (Figaro), Aleksandra Kurzak (Susanna)
Lucas Meachem (Count Almaviva), Rachel Willis-Sørensen (Countess Almaviva)
Anna Bonitatibus (Cherubino), Bonaventura Bottone (Don Basilio)
Ann Murray (Marcellina), Carlo Lepore (Bartolo)
Jeremy White (Antonio), Susana Gaspar (Barbarina)
1. Mozart: Le nozze di Figaro

ROHの「ダ・ポンテ三部作」シリーズは、娘と一緒なので、この中では倫理規定が一番低そうな「フィガロの結婚」だけ見に行くことにしました。とは言ってもマクヴィカー演出なのでもしや血みどろではあるまいな、とちょっと危惧したのですが、至って素直な演出にオーセンティックな衣装、前半の大道具の使い回し方も上手く、家族揃って楽しめました。

キーンリーサイドがキャンセルしたため、今日出た歌手は(脇役のジェレミー・ホワイトを除き)全員初めて見る人かも。フィガロのダルカンジェロは噂どおり深くて地を這うように響く、非常に良い声でした。素晴らしい歌唱だったと思うのですが、声質、歌ともに私的には重く、ノリの軽いフィガロのイメージとは違いました。スザンナのクジャクは声量十分、よく通るかわいらしい声で、おきゃんな雰囲気がなかなかよろしい。ケルビーノのボニタティブスは立派な下半身が思春期の少年役にはちょっと違和感があり、第2幕の有名なアリアは声がかすれてよれていたのが弱かったですが、コメディの演技は良かったです。ロジーナ役、立派な体格のウィリス=セレンセンはよく見ると北方系の美人顔。この人も立ち上がりはイマイチでしたが後半調子を上げてきました。キーンリーサイド降板の代役、ミーチャムも華はないものの十分立派な歌唱。際立ったスターはいませんが全体としてレベルの高い歌手陣でした。

今日はパッパーノ自身がレチタティーヴォのチェンバロを弾きながら小編成のオケを、いつものごとく抉るような熱い指揮で引っ張っていました。ホルンがちょっと雑だった外は、最後まで引き締まった良い演奏でした。本当に、バレエも含めて全演目の全公演、パッパーノが振ってくれないものかと思いますね。


いまだに遠いとカーテンコールの写真は上手く撮れない…。