LSO/ハイティンク/ピレシュ(p):巨匠・ザ・グレート2012/06/10 23:59


2012.06.10 Barbican Hall (London)
Bernard Haitink / London Symphony Orchestra
Maria João Pires (P-2)
1. Purcell: Chacony in G minor
2. Mozart: Piano Concerto No. 20
3. Schubert: Symphony No. 9 (‘The Great’)

モーツァルトとシューベルトなんて私としては非常に珍しい選択ですが、リターンバウチャーを使いたかったのと、久々に「グレート」を聴いてみたくなったので。

去年もシーズン終盤の6月にバービカンでハイティンク、ピレシュの共演を聴きましたが、季節の風物詩なんですかね。ピレシュは磐石なテクニックに、くっきりした音の粒のたいへん品の良いピアノ。昨年の備忘録を読み直してみると、ほとんど同じ感想を書いてました。小柄でパワーはなさそうなのに、ハイティンクのちょっと重めのオケに埋もれず、サークル席でも非常にクリアに聴こえてきました。オケは少し低めの重心で堅牢な土台を作り、その上で安心して踊っているピレシュのピアノは、澱み、迷い、引っかかりが一切なく、実に自然に心に響いてきて、今更ながら「ええ曲やなー」と聴き入ってしまいました。モーツァルトのピアノ協奏曲を聴いていて沈没しなかったのはほとんど初めてかも。なお、ティンパニはクレジットされてなかったけどプリンシパルのナイジェル・トーマスが叩いてました。

メインの「ザ・グレート」はかつて部活のオケでやったことがある曲なので(自分の出番はなかったですが)さんざ聴き込みました。生で聴くのはえらいこと久しぶりで、新婚の旅行でザンデルリンク/フィルハーモニア管の演奏をロイヤル・フェスティヴァル・ホールで聴いて以来。それ以降積極的に聴きたいとも思わなかったし縁もなかったのですが、長い年月を経て次に巡ってきた機会が、再びロンドンというのは感慨深いです。古き良き巨匠時代の生き残りハイティンク御大だから、コッテリ高カロリーでミシミシと踏みしめるように行くのかと思っていたら、予想に反して快速テンポでテキパキとぶっ飛ばしました。序奏と第1主題でテンポの差があまりなかったです。先のモーツァルトよりもまた少し重心を下げ、先日のブルックナーと比べても旋律の歌わせ方などは意外と雄弁で、細かくいじり込まなくても本来の音楽の力だけでこれだけ語ってしまうところなど、ハイティンクは曲もオケ(LSO)も十分に知り尽くしています。対照的に終楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェとしては多少遅めくらいのテンポで、セカセカしないように地に足がついた歩みっぷり。巨匠の懐の深さを垣間見ました。こちらのティンパニはクレジットされていたAntoine Bedewi(アントワン・ベドウィと読むの?)。LSOではパーカッションを叩いているほうが多い人ですが、まれにセカンドティンパニにも入っています。硬質のバチで乾いた音を叩き出すトーマス流で、この人も普通に上手かったです。ハイティンク御大はさすがの人気で、いつものように会場総立ちの大拍手。いつものごとくアンコールは無しでした。


この距離だと、ピンボケどうのこうのより、私のカメラの限界を超えてます。


おまけ。今日初めて気付いた、バービカンのパーキングの天井にあった謎のオブジェ。