LSO/MTT/ブロンフマン(p)/シャハム(vn):ベルクとマーラー2012/05/31 23:59

2012.05.31 Barbican Hall (London)
Michael Tilson Thomas / London Symphony Orchestra
Yefim Bronfman (P-1), Gil Shaham (Vn-1)
1. Berg: Chamber Concerto
2. Mahler: Symphony No. 1 (‘Titan’)

日曜日に続き、MTTのマーラーミニチクルス第2弾ですが、まずはベルクの室内協奏曲から。演奏に先立ってMTTによる曲のモチーフ解説があり、その後、満を持してソリスト登場。前回はウイルス感染でキャンセルしたブロンフマンは仏頂面ながら見たところ顔色は良さそうで、対するシャハムはいつものごとく幸せそうな福顔。私、よく考えたらこの曲はおろか、ベルクの曲を実演で聴くのはほとんど初めてだったかも。新ウィーン楽派の音楽は別に嫌いではないんですが、感覚的にすっと入ってこないので、特に器楽曲はどれを聴いても区別がよくわからないのが正直なところ。この曲も正に12音、正にゲンダイオンガクの典型的、類型的な様相にしか見えなくて、さっぱりわからんかったと言うほかないです。ソリストの熱演はビジュアル的に楽しめましたし、頭痛も眠気もありませんでしたが、非常に困ったのは隣りに座った相撲取りのように巨漢のおっさん。お尻が席に収まりきらず完全にはみ出しており、幸い反対側の隣席が空いていたので一つ移動したのですが、それでも圧迫感と汗臭さは伝わってきて、なおかつ演奏中は始終「スー、ハー」と苦しそうな口呼吸をしていて、うるさいことこの上なし。背骨で自重を支えきれないのか隣りの席(私の元の席)に時々手を付き、そのたびに座席がミシミシッと悲鳴を上げて、ともかくとても演奏に集中できる環境ではありませんでした。あんたは演奏会を聴きに来る前に、医者に行ったほうがよいんではないですかい?とにかく、これではたまらんと、ストールの反対側で空いている席を物色し、休憩時間に移動しました。


メインのマーラー「巨人」は、先日の4番ほどには感心できない、ちょっと期待はずれの演奏でした。冒頭の木管下降音からして早速ばらけてますし、音が汚い。続くホルンのピッチも、これがLSOと思うくらい悪かったです。MTTは今度は指揮棒を使って、かなり大胆にテンポを動かして表情付けした音楽を導こうとしているので、主題が始まってもかえって息の合ってなさが目立つことになり、どこか腰の据わらない印象が残る演奏でした。正直、やり慣れた曲だから舐めてかかり、リハ不足なのではと感じました。LSOも年に何回かはこういう集中力に欠けた演奏をやらかしちゃうので、まあそこがカワイイと言えないこともないですが、さらに今日は管打楽器の各パートが序列を入れ替えていたようで、少なくともトランペット、ホルン、ティンパニはプリンシパルがファーストを取らず、他の奏者に譲っていたのでそれもあったのかも。

演奏がそんなんだったからことさら気に障ったのかも知れませんが、お客もダメダメで、演奏中にバサバサっとプログラムなどを落とす人が後を絶たず、第1楽章終了直後にはブラックベリーのアラーム音が響き渡るし、これでは集中しろというほうが、無理。それでも腐ってもLSOですから、最後の強奏になるとブラスなどもさすがに馬力を発揮し、音圧で圧倒していました。終了後のやんやのスタンディングオベーションを見て、みんな一体何を聴いていたのかなーと、納得いかない気分のまま会場を後にしたのでした。