LSO/ビシュコフ/ストーティン(ms):圧巻最高のマーラー3番2012/04/01 23:59


2012.04.01 Barbican Hall (London)
Semyon Bychkov / London Symphony Orchestra
Christianne Stotijn (Ms)
Ladies of the London Symphony Chorus
Tiffin Boys' Choir
1. Mahler: Symphony No. 3

ビシュコフのマーラー3番は2004年にブダペストで聴いて以来ですので、実に8年ぶりです。そのときのオケだったケルン放送響と録音したCDは当時評判になっていましたし(確か賞も取ったはず)、当時の手兵ケルン放送響とのアジアツアーや、その他のオケへの客演でもマーラー3番を好んで取り上げていて、指揮者急病の代打でもよく呼ばれているようで、よっぽどオハコなんでしょうね。

今日はストールのE列だったのですが、いつもよりステージが張り出していて、何と最前列でした。オケが下手だったりバランスが悪かったりするとこの曲をこの至近距離で聴くのは苦痛にもなりかねないのですが、流石にLSOだとはそんな心配は無用で、極上のオーケストラサウンドを大迫力の音響で十二分に堪能できました。ビシュコフのマーラーは強弱のコントラストが大きく、よく歌い、よく泣き、大爆発する、極めてドラマチックな音楽です。大地を隆起させるような冒頭のホルンに、決して外さず炸裂するトランペット、盤石なLSOブラスセクションにはもう降参するしかありません。鋭く叩き込む打楽器群は、今までこの曲を聴いたどのオケよりも衝撃的です。もちろん弦も木管もほぼパーフェクト、穴がない演奏集団を従えて、ビシュコフも自信たっぷりに「俺のマラ3」を紡いで行きます。途中、ぐっとテンポを落として「タメる」箇所で、わずかにオケが追従できず前のめりになってしまう瞬間もあったりしましたが、圧巻の第1楽章が終った時点で、もう本日終了でもいいくらいの満足感。実際拍手がパラパラ起こっていましたが、思わず拍手したくなる気持ちは私も同感でした。

今日の少年合唱は昨年のマゼール/フィルハーモニア管のときと同じティフィン少年合唱団でした。舞台袖ではなく後方のオルガン下の扉から登場、最初から舞台に出ていたので待機時間が長く気の毒でした。少年合唱も女声合唱も昨年より人数が少なめだったので、オケの音量に比べて終始負け気味でした。ストーティンは昨年のマゼールチクルスでも最初クレジットされていたものの、急病でキャンセル(代役はセイラ・コノリー)。彼女のマーラー3番は初めて聴きましたが、昨年の穴埋めをして余りある堂々とした歌唱でした。

終楽章の一番最後はふわりと着地するように終りますが、待ちきれず即効で拍手が起こったのは、まあ仕方がないですかなー。終演後の歓声の盛り上がりは相当なものでした。例えばブーレーズのようなマーラーをリファレンスにしている人が聴けば「何故にここまで劇的にやらなきゃならんのか」「外見立派だが中身がない」「カラヤン的」と蔑むような演奏かもしれません。ですが、夏の休暇中にアルプスの大自然を散策し、作曲のインスプレーションを得たマーラーが頭に思い描いたのは、対象の中に自ら飛び込むようなビシュコフの演奏のほうではないか、と私は確信します。

最前列かぶりつきだったので奏者の顔はあまり見えなかったのですが、かんとくさんお気に入りの「ミナ嬢」ことMinat Lyonsさんがちょうど正面に見えて、じっくりと鑑賞することができました。確かに黒髪のエキゾチックな美人で、ほのかに紅潮した頬が色っぽいです。この人はまた、豊かな表情がたいへんキュート。演奏中も隣りの奏者と目が合えばニコっと微笑み、出番のない箇所でコンマスのヴァイオリンソロを聴き入って「ああっ、何て素晴らしいのっ」とでも言いたげな表情でなんとも官能的にかぶりを振ったり、音楽に没頭して本当に楽しそうに弾いているので、見ていて飽きません。しかーし、第4楽章の前にストーティンが入ってきたとき、第1ヴァイオリン奏者の椅子の位置が変わってしまって彼女の姿をブロック、以降最後まで人影になって見えませんでした(大粒涙)。写真もロクなのが撮れず。次回以降、またチャレンジです(何を?)。


花束をもらうストーティン。ビシュコフはいったん指揮台を下りた後は、ずっと人の影だったので写真撮れませんでした。