フィルハーモニア管/マゼール:マーラー3番2011/05/08 23:59


2011.05.08 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Sarah Connolly (Ms)
Philharmonia Voices (Ladies), Tiffin Boys' Choir
1. Mahler: Symphony No. 3

「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズ第6弾。週末なので家族連れで聴きに行きました。前回の5番が良かっただけに、その前に良かった2番の次の6番がヘロヘロだったのを思い出し、ちょっぴり不安がよぎります。

本日はマゼール先生、暗譜じゃなくて楽譜を置いていました。冒頭のホルンのユニゾンから気合い十分の迫力ある音色で、おおっ、と身を乗り出しましたが、その後のテンポ設定がとにかく遅い。例によって緩急付けて怪しくゆさぶる場面もあったものの、特に第1楽章の芯となっているマーチングが全然快活じゃない。私はこの楽章がマーラーの音楽の中でも特に好きで、晴れ渡るチロルの山を朗らかに歩いて行く自分をいつも思い浮かべるのですが、これでは足取りが重過ぎて、歩くという感覚がまるでない。これを作曲したときのマーラーはまだウィーンに出る前で、もちろんアルマとも出会う前で、もっと若々しさがあったはず。オケは非常によく鳴っていて、本日もティンパニの衝撃は凄まじいものがありましたが、エネルギーは前に向いておらず後ろ向きの感じがしました。コンマスのジョルト氏のヴァイオリンソロは先のベルリンフィルのブラウンシュタインと比べるといかにも線が細く、今日のテンポでは押しつぶされていまにも止まってしまいそうなソロでした。再現部の前で突如叩かれるマーチング小太鼓は舞台裏から叩いていましたが、複数台で叩いていたように聴こえました(スコアを見ると確かにそのような指示があります)。コーダではまだまともなテンポになって、これぞ爆演という感じで盛り上がって終りました。

第2楽章はほとんど仕掛けもなく、ヴァイオリンが甘いメロディーを奏でるところなどもっと表情を付けるかと思ったら、意外と淡々と進みました。第3楽章の舞台裏ポストホルンソロは、トランペットで代用ではなく本当にポストホルンを吹いていたようでした。音色では判別できませんでしたが、ソロが終ったあと、明らかに形の違う楽器を抱えて舞台に戻って来ていましたので。1カ所くらいはミスっていましたがほぼ完璧なソロで、吹きにくいポストホルンでこのレベルは会心の出来と言っていいでしょう。

第4楽章、のどの感染症で降板したストーティンの代役で、先日「角笛」で素晴らしい歌唱を聴かせてくれたコノリーが登場。この人、衣装の趣味が悪いと評判だそうですが、今日はシックな黒のドレスでした。急な代役で歌うくらいだからてっきり十八番なのかと思ったら、この曲の独唱者としては珍しく、楽譜を見ながら歌っていました。先日のベルリンフィルで歌ったシュトゥッツマンはいかにもアルトの低周波に厚い声でしたが、コノリーはやっぱりメゾソプラノ、ずいぶんと軽い声質です。決して悪くはなかったしたいへん美しい声なのですが、歌い慣れてない緊張が随所に出ていたように思います。視線が楽譜からなかなか離れないし、次の第5楽章では歌い出しをミスった箇所もありました。話を4楽章に戻すと、あとは先日のラトルと同じくオーボエが強烈なポルタメントをかけていたのが特徴的でした。

間髪入れず第5楽章に突入。少年合唱団は見かけちょっとトウが立っている(失礼!)ようでしたが、声はずっと幼く繊細で、女声とオケに負けていました。まあ、歌詞がほとんどビム〜バム〜だけで声量を出しようもないのでしょうがないですが、ここの少年合唱は実演ではいつも物足りなく感じてしまうところです。

終楽章は再びスローなテンポで、抑制ききまくりの黙示録的演奏でした。2番では音楽の力自体に任せてナチュラルな起伏を作って行ったマゼールさんが、3番ではあえて音楽自体の推進力を利用せず、膨大な静電エネルギーを鉄球に貯めていくかのような演奏になったのはどういう解釈があってのことなのか、なかなか理解は難しいです。本日、オケの迫力には圧倒されましたが、私が聴きたかった3番ではありませんでした。小学生の娘には、全体的に明るい曲だから楽しめる箇所はあるだろうと最初は思ったのですが、この長丁場はちときつかったようです。大人しく座って聴くのはもう慣れているので、真後ろに座っていた常連のおじいさん(RFHでよく顔を見ます)から「very good behaviour」と褒められてはいましたが。

しかし、コーダのティンパニはまさにやりたい放題。指揮者がそれを許しているとはいえ、スミスさん、回を追うごとに爆演がエスカレートしてますぞ。是非、もっとやってください。


本日のフィオナちゃんです。今日もちょっと見にくい席だったのが残念ですが、相変わらずかわいいので許します。


あっ、こら、おっさんおっさん、俺のフィオナちゃんの前に立つんじゃない!

コメント

_ Wulf ― 2011/05/10 08:33

ああ、、、 最後のとこのティンパニ、聴きたかったです。
あそこって、ツァラの冒頭と同じ音ですかね?

_ かんとく ― 2011/05/11 05:45

今回はかぶりつき席ですね。Miklosさんのおかげで、演奏会もいろんな楽しみ方が出来るようになってきました。

_ つるびねった ― 2011/05/11 06:00

こら、おっさんって。。。。マエストロ・マゼールさん。。。

_ Miklos ― 2011/05/11 06:34

>Wulfさん

ツァラはCとG、マラ3のラストはDとAなので、完全四度の音程という意味では同じですね。マーラーは二組のティンパニがユニゾってますが。

>かんとくさん

それが、ちょっとずれたかぶりつきって、かえって見えないんですね(大涙)。

>つるびねったさん

いや、角度が悪くてただでさえファインダに捕らえるのに苦労していたところ、ずいっと邪魔されたので。もはや音楽談義ではない・・・(笑)

_ voyager2art ― 2011/05/11 08:01

こんばんは。
これだけみんな同じ演奏会に行って、同じフィオナちゃんを注目してたなんて。
いや、僕もずっとまじまじと見てたんですが。僕の席からは(遠かったけど)よく見えました♪

_ Wulf ― 2011/05/11 09:09

あはは、、、
やっぱり私には音感がないや。。。。。

フィオナちゃんて、胸、スゴクないですか?(笑)

_ Miklos ― 2011/05/12 06:07

リュブリャナのホテルから書いてます。

>voyage2artさん

ごく一部の日本人にこれほどのブームを巻き起こしているとは、本人はつゆ知らずでしょうなー。

>Wulfさん

おおっ、フィオナちゃん巨乳疑惑か?もう収集つかなくなりそう。(といいつつ次回要チェック)

皆さんお気づきとは思いますが、フィルハーモニア管のWebsiteにフィオナちゃんの紹介ページもちゃんとあり、Podcastで彼女のキュートな姿と初々しい声が拝めます。

ttp://www.philharmonia.co.uk/orchestra/players/second_violins/fiona_cornall/

確かに・・・なかなか・・・・。

ところで、昨日自宅のMacBookが突然絶不調になり、ネットに繋がりません。起動はするがユーザログインができない状態です。もしかするとしばらくブログを更新できないかもしれません。

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_ ロンドン テムズ川便り - 2011/05/11 05:47

日曜日の夜、私自身2回目のマゼールさんのマーラーチクルスに足を運びました。今回は、100分を超える大曲の交響曲3番。昨年のプロムスで聞いたはずです。

しかし、この日は、私自身がダメでした。何故か、昼過ぎから眠くてたまらず、コンサートに備えて昼寝までしたのに...