LSO/ハイティンク/ピレシュ(p):ロマンティックが止まらない2011/06/16 23:59

2011.06.16 Barbican Hall (London)
Bernard Haitink / London Symphony Orchestra
Maria João Pires (P-1)
1. Mozart: Piano Concerto No. 27, K595
2. Bruckner: Symphony No. 4

LSOおよびバービカンは、今シーズンはこれで見納めです。元々はマレー・ペライアを一度聴いてみたくて買ったチケットですが、病気のため4日前にキャンセル。前週のロイヤルフィルでアルゲリッチ、今週のLSOでペライアが各々シューマンのコンチェルトを弾く予定だったので、絶好の聴き比べ機会だったのですが、残念ながら結局二人ともキャンセルとなってしまいました。ロイヤルフィルのほうは代役がすでに2度聴いているルガンスキだったし、デュトワの「ハルサイ」を是非聴きたい気分でもなかったのでチケットをリターンしました。一方のLSOは何と大御所のピレシュをリプレイスに引っ張って来て、ピレシュはまだ聴いたことがなかったので(ブダペストで1度キャンセルを食らって以降縁がなく)、十分納得の対応です。

しかし今日は、出張から戻ったばかりで疲労が蓄積していたのと、最近変えた花粉症の薬のせいか、開演前からもう眠くて眠くてしょうがない。瞼をしゃきんと開けていられない状態で、モーツァルトとブルックナーという、私にとっての二大睡魔巨匠が控えているこの状況では、戦わずして負けが見えてました。

登場したピレシュはとても小柄で、庶民的だけど品性はすこぶる良さそうなおばさん。長い序奏の後に入ってきたピアノは、極めてくっきりと粒の揃った真珠のような、何とも言えぬ渋い輝きを感じました。音ははっきりと立っていますが、力強く打鍵するのでもなく、かといって軽やかに上滑りするのでもなく、力の入り具合が絶妙で、トリル等の装飾音にも一切ごまかしがなく、最上質の「お手本」のような演奏に思いました。しかし集中して聴いていられたのも最初のほうだけで、寝ていたつもりはないのですが、途中断続的に意識が飛んでしまい、気がつけば曲が終っておりました。うーむ、もったいない。けど、私がモーツァルトのピアノ協奏曲を聴くときの集中力は多かれ少なかれこんなもんかも。

ハイティンクは久しぶりです。過去3度聴いたのは全てバービカンでLSOとのマーラー(4番、6番、大地の歌)でした。ブルックナーの4番を聴きに行くのもずいぶん久しぶりで、前回聴いたのは多分高校生のころまで遡ります。何を隠そうデートでした。「ロマンティック」という副題でだまくらかして、というような話だったかと思いますが、女子高生とのデートでブルックナーを聴きに行くとは、私もイタイ男だったんですなー。それはさておき、82歳のハイティンク御大は、出てくる足取りこそヨボヨボしていましたが、用意されていた椅子には結局座らずに、長丁場をずっとしゃんとした背筋でカクシャクと指揮しておりました。その姿もさることながら、出てくる音楽の力強いこと!この人は小細工なしの直球勝負と巨大なスケール感が持ち味で、私もその凄さは実演に接するまで認識できませんでした。フィリップスレーベルのちょっとモコモコした録音と、当たり障りなさそうなお顔立ちから、あえて選んで聴く価値もない中庸の人、と勝手に思い込んでおりました。実演に接してまざまざと感じた実直な説得力は、巨匠の時代の名残でもあり、もうこの先こんな人は登場しないのではないかと思うと、1歳下のマゼール御大と共に、いつまでもお元気で活躍してもらいたいものだと切に思います。この日のブルックナーはオケの集中力も素晴らしく、ホルンを筆頭とした管楽器の、必要にしてかつ十分な音圧で迫るアンサンブルが、厚みのある弦とからみあって、ドイツの森がどうのこうのといった表題性を超越した純音楽的な高みへと結像していました。身体は相変わらず辛かったので後半はなかなか集中力を維持できませんでしたが、寝る間もなく圧倒されっぱなしの1時間でした。前日聴いたプラハ交響楽団は、もちろん世界の一流の仲間ではありますが、こうやって連続して聴いてしまうと、やはりLSOは別格のクオリティを持っているのを再認識しました。それと、やっぱりバービカンは良いホール。私はたいへん気に入ってます。

コメント

_ つるびねった ― 2011/06/22 00:48

ブルックナー・でえととても気になります。上手くいったのかしら?
わたしも男の人とブルックナーを聴きに行ったことありますよ。どうだったと聞かれたので、よく分からなかった、と答えたら、そうだろう。女にブルックナーは分からない、男の音楽だから、なんたらかたら言われて、それきりです。まっ、ブルックナーは苦手ですけどね。
でも、この音楽会は本当に良かったですね。まったく、こんなブルックナー聴けるんだったら、ブルックナーでえともいいなぁ。

_ Miklos ― 2011/06/22 09:24

とても気にしていただく話でもないのですが、ええ、上手くいきませんでしたとも。その時の演奏会がハイティンクとロンドン響だったら、また違った人生だったかもしれませんね。

その男性のおっしゃる通りですよ、ブルックナーは男の音楽で、ブルーチーズは男のチーズなんです。(なんのこっちゃ)

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