ロイヤルバレエ/マルケス/マクレー:マクミランの「マノン」 ― 2011/04/30 23:59
2011.04.30 Royal Opera House (London)
The Royal Ballet
Martin Yates / Orchestra of the Royal Opera House
Kenneth MacMillan (Choreography)
Roberta Marquez (Manon), Steven McRae (Des Grieux)
Ricardo Cervera (Lescaut), Bennet Gartside (Monsieur G.M.)
Laura Morera (Lescaut's Mistress), Genesia Rosato (Madame)
Thomas Whitehead (Gaoler), Alastair Marriott (Old Gentleman)
Yuhui Choe, HIkaru Kobayashi (Courtesans)
1. Massenet: Manon (ballet, compiled by Leighton Lucas)
バレエの「マノン」です。内容的に子供にはどうかなとも思ったのですが、ロイヤルバレエの名物だし、去年オペラの「マノン」のほうはもう見ちゃってるから、まーいいかと。このマノンは元々バレエのために作曲されたものではなく、マスネの「シンデレラ」「ドン・キホーテ」「クレオパトラ」「タイス」といった10以上のオペラ、およびオラトリオやピアノ曲からも断片を拝借し、編曲して新たに再構成したプロダクションです。マスネには「マノン」というオペラもあるのに、そこからは1曲も借りていないのは、オペラのイメージから切り離して新しいドラマを創作したいという意気込みがあってのことでしょう。
今回も妻の希望により、マルケス&マクレー様ペアの日を選択。マクレーさん、やっぱ上手いわ。朴訥な青年が美少女マノンに一目惚れして、話しかけるきっかけを作るために後ろを向いてわざとぶつかったりする小芝居が実に達者だし、もちろん踊りも、見かけ以上に難しそうな第1幕のソロをきっちりと決めて、調子は良さそう。一方のマルケスはその小柄で童顔な外見から、可憐な美少女マノンがまさにハマり役。パ・ド・ドゥは、ペアを組むことが多い二人だけあって、さすがに息がぴったりでした。マクレーさんのリフトの上でさらにくるくるっと回転するところなど、あまりに迷いなく飛び込んでいくので怪我をしないかと見ているほうがハラハラするくらい。留守中に乗り込んで来たムッシュGMが見せる宝石やコートで、あっという間にくらくらと誘惑されてしまうマノンも、この人ならさもありなん、と納得してしまうほど無邪気さがよく出ていました。一方ムッシュGMを演じたガートサイドは「好色な老富豪」というにはちょっと若すぎて、デ・グリューと同じく若気の至りでマノンに惑わされてしまったようにしか見えず、老醜の枯れた演技は全く見られませんでした。
大富豪の愛人となって登場する第2幕のマノンは、第1幕とがらっと変わって妖艶な雰囲気に。しかし、あどけなさをまだ残して、悪女というよりは無邪気な小悪魔という感じ。ある意味よけいにタチが悪いかも。ここの踊りは、まずはレスコーと愛人の酔っぱらいのパ・ド・ドゥが非常に面白く、娘も大ウケしてました。これは相当上手い人じゃないと笑いが取れるレベルにならない、けっこう難しい踊りなんではないでしょうか。マクレーさん、この幕はほとんど踊りませんが、富豪の愛人になって変わってしまったマノンを見る目の何と切ないことよ。踊り抜きでも芝居の上手さで光れる人だなと思って見ていたら、幕の最後のほうでキレキレの回転技を見せてくれて、やっぱこの人は凄いわ。
第3幕のマノンは髪を切られ、ぼろぼろの服をまとった囚人として出てきますが、その姿の痛々しいこと。精魂尽き果て、無邪気さも妖艶さも何もかも失っています。マルケスは各々の幕でがらっと違うマノンのキャラクターを、うまく演じ分けていたと思います。ただ、第2幕であどけなさを残してワルになりきれなかったところは、この人は「白鳥の湖」のオディールはちょっと苦手かも、と思ってしまいました。マクレーさんとのパ・ド・ドゥは幕を追うに従って調子が上がって来て、最後まで切れることなく呼吸の合った踊りを見せてくれました。踊り切った後はさすがに二人とも息が上がっており、事切れたはずのマノンが、横たわって死にながら胸は激しく呼吸をしてたのが見えました。バレエのマノンを見るのは初めてでしたが、全体を通して非常にドラマチックなプロダクションで、飽きるところなく見入ってしまいました。
高級娼婦役で出ていたチェ・ユフィさん、今日はちょっとオーラが足りなかったですかね。髪型も似合ってない(笑)。第2幕ではしばらく注目して見ていましたが、小芝居がわざとらしくて、娼婦や小悪魔系はあまり得意じゃないのかなと。彼女がマノンを踊る(踊れる)日はいつ来るんでしょうか。
カーテンコールの写真にトライしてみましたが、うーむ、なかなかうまくいきません。うちのカメラは光学ズーム3.8倍なのでアップは限界がありますが、露出やシャッタースピードなどその他の設定にまだまだ研究の必要がありますね。
The Royal Ballet
Martin Yates / Orchestra of the Royal Opera House
Kenneth MacMillan (Choreography)
Roberta Marquez (Manon), Steven McRae (Des Grieux)
Ricardo Cervera (Lescaut), Bennet Gartside (Monsieur G.M.)
Laura Morera (Lescaut's Mistress), Genesia Rosato (Madame)
Thomas Whitehead (Gaoler), Alastair Marriott (Old Gentleman)
Yuhui Choe, HIkaru Kobayashi (Courtesans)
1. Massenet: Manon (ballet, compiled by Leighton Lucas)
バレエの「マノン」です。内容的に子供にはどうかなとも思ったのですが、ロイヤルバレエの名物だし、去年オペラの「マノン」のほうはもう見ちゃってるから、まーいいかと。このマノンは元々バレエのために作曲されたものではなく、マスネの「シンデレラ」「ドン・キホーテ」「クレオパトラ」「タイス」といった10以上のオペラ、およびオラトリオやピアノ曲からも断片を拝借し、編曲して新たに再構成したプロダクションです。マスネには「マノン」というオペラもあるのに、そこからは1曲も借りていないのは、オペラのイメージから切り離して新しいドラマを創作したいという意気込みがあってのことでしょう。
今回も妻の希望により、マルケス&マクレー様ペアの日を選択。マクレーさん、やっぱ上手いわ。朴訥な青年が美少女マノンに一目惚れして、話しかけるきっかけを作るために後ろを向いてわざとぶつかったりする小芝居が実に達者だし、もちろん踊りも、見かけ以上に難しそうな第1幕のソロをきっちりと決めて、調子は良さそう。一方のマルケスはその小柄で童顔な外見から、可憐な美少女マノンがまさにハマり役。パ・ド・ドゥは、ペアを組むことが多い二人だけあって、さすがに息がぴったりでした。マクレーさんのリフトの上でさらにくるくるっと回転するところなど、あまりに迷いなく飛び込んでいくので怪我をしないかと見ているほうがハラハラするくらい。留守中に乗り込んで来たムッシュGMが見せる宝石やコートで、あっという間にくらくらと誘惑されてしまうマノンも、この人ならさもありなん、と納得してしまうほど無邪気さがよく出ていました。一方ムッシュGMを演じたガートサイドは「好色な老富豪」というにはちょっと若すぎて、デ・グリューと同じく若気の至りでマノンに惑わされてしまったようにしか見えず、老醜の枯れた演技は全く見られませんでした。
大富豪の愛人となって登場する第2幕のマノンは、第1幕とがらっと変わって妖艶な雰囲気に。しかし、あどけなさをまだ残して、悪女というよりは無邪気な小悪魔という感じ。ある意味よけいにタチが悪いかも。ここの踊りは、まずはレスコーと愛人の酔っぱらいのパ・ド・ドゥが非常に面白く、娘も大ウケしてました。これは相当上手い人じゃないと笑いが取れるレベルにならない、けっこう難しい踊りなんではないでしょうか。マクレーさん、この幕はほとんど踊りませんが、富豪の愛人になって変わってしまったマノンを見る目の何と切ないことよ。踊り抜きでも芝居の上手さで光れる人だなと思って見ていたら、幕の最後のほうでキレキレの回転技を見せてくれて、やっぱこの人は凄いわ。
第3幕のマノンは髪を切られ、ぼろぼろの服をまとった囚人として出てきますが、その姿の痛々しいこと。精魂尽き果て、無邪気さも妖艶さも何もかも失っています。マルケスは各々の幕でがらっと違うマノンのキャラクターを、うまく演じ分けていたと思います。ただ、第2幕であどけなさを残してワルになりきれなかったところは、この人は「白鳥の湖」のオディールはちょっと苦手かも、と思ってしまいました。マクレーさんとのパ・ド・ドゥは幕を追うに従って調子が上がって来て、最後まで切れることなく呼吸の合った踊りを見せてくれました。踊り切った後はさすがに二人とも息が上がっており、事切れたはずのマノンが、横たわって死にながら胸は激しく呼吸をしてたのが見えました。バレエのマノンを見るのは初めてでしたが、全体を通して非常にドラマチックなプロダクションで、飽きるところなく見入ってしまいました。
高級娼婦役で出ていたチェ・ユフィさん、今日はちょっとオーラが足りなかったですかね。髪型も似合ってない(笑)。第2幕ではしばらく注目して見ていましたが、小芝居がわざとらしくて、娼婦や小悪魔系はあまり得意じゃないのかなと。彼女がマノンを踊る(踊れる)日はいつ来るんでしょうか。
カーテンコールの写真にトライしてみましたが、うーむ、なかなかうまくいきません。うちのカメラは光学ズーム3.8倍なのでアップは限界がありますが、露出やシャッタースピードなどその他の設定にまだまだ研究の必要がありますね。
主役の3人、左からセルヴェラ、マルケス、マクレー様。
コメント
_ つるびねった ― 2011/05/03 00:51
_ Miklos ― 2011/05/03 05:55
アリスのワンダーランドはあと1年も先ですね。先日のテレビ放送もiPlayerも結局見逃してしまいましたので、見れたらいいんですが、しがないサラリーマンは1年後どこで何をしているやら、予見がつかないですから…。そういえば、来シーズンはマノンもまたありますね。
_ 守屋 ― 2011/05/05 05:14
こんばんわ。昨年、吉田都さんの公開インタヴューのときに、質問できる機会があったので「あなたがマノンを踊ったら、とても素晴らしいものになったと思います」といったら、本人は予想外のコメントだったようで驚いていました。いつか、崔さんには挑戦して欲しいものです。
ところで、来シーズンをご覧になれるようでしたら、ぜひ、アシュトンの「エニグマ・ヴァリエイション」を。初めてみたとき、バレエというフォーミュラでこれほど深く心の機微が描けるのか大感動しました。それと、シーズン前半だったはずですが、マクミランの「レクイエム」も、ベンジャミンが出るときがお勧めです。
ところで、来シーズンをご覧になれるようでしたら、ぜひ、アシュトンの「エニグマ・ヴァリエイション」を。初めてみたとき、バレエというフォーミュラでこれほど深く心の機微が描けるのか大感動しました。それと、シーズン前半だったはずですが、マクミランの「レクイエム」も、ベンジャミンが出るときがお勧めです。
_ Miklos ― 2011/05/05 07:42
守屋さん、こんばんは。都さんの公開インタビューは守屋さんの当時のブログで興味深く読ませていただいてました。マノンはロイヤルのプリンシパルなら当然レパートリーとしてMUSTなのかと思っていたので、意外でした。
しがないサラリーマンは、来シーズンをまっとうできるのかどうか皆目わかりませんが(それどころか来シーズンの開幕すらちゃんと見れるのか?という話も)、衝動大人買いで今更ながらFriendになっちゃいました。トリプルビルの楽しみ方がいまだよくわからないのですが、Requiemはすでにチェックしております。Enigma Variationも良いのですか。あーお金が飛んで行く〜。
しがないサラリーマンは、来シーズンをまっとうできるのかどうか皆目わかりませんが(それどころか来シーズンの開幕すらちゃんと見れるのか?という話も)、衝動大人買いで今更ながらFriendになっちゃいました。トリプルビルの楽しみ方がいまだよくわからないのですが、Requiemはすでにチェックしております。Enigma Variationも良いのですか。あーお金が飛んで行く〜。
_ 守屋 ― 2011/05/06 06:16
何度もすみません。僕も、ロンドンに来てすぐの頃は、ダブル・ビルやトリプル・ビルにはあまり興味をもてませんでした。でも、いつからかはもう思い出せませんがダブルやトリプルの時には一晩のうちに沢山のプリンシパルを観ることができてお得だなと。
来シーズンはモニカ・メイソン監督の最後の一年ということで、アシュトンとマクミランの一幕ものが沢山あってとても楽しみです。
来シーズンはモニカ・メイソン監督の最後の一年ということで、アシュトンとマクミランの一幕ものが沢山あってとても楽しみです。
_ Miklos ― 2011/05/06 09:58
そうですね、マルチビルは一度にいろんなプリンシパルを観れるのが利点かも。何せ私は、アコスタもソアレスもコジョカルもロホもラムもまだ見てないんです。
_ さらさら ― 2011/10/22 16:41
はじめまして。自分が観たこの日の「マノン」の配役を調べていて辿り着きました。ロイヤルのサイトには、先シーズンのはアーカイブされてないので、貴重な情報をありがとうございます。
ロンドンにいるのは、30日のみだったので、ロイヤルバレエを観たいだけの観劇でした。とっても美人さんの力量あるプリマで、色恋もののドラマティックバレエにとても良い配役だと思いました。そして、「マノン」の舞台装置と衣装の豪華さに、さすがイギリスのロイヤルバレエ団とパンチをくらいました。
ロンドンにいるのは、30日のみだったので、ロイヤルバレエを観たいだけの観劇でした。とっても美人さんの力量あるプリマで、色恋もののドラマティックバレエにとても良い配役だと思いました。そして、「マノン」の舞台装置と衣装の豪華さに、さすがイギリスのロイヤルバレエ団とパンチをくらいました。
_ Miklos ― 2011/10/23 01:02
さらさらさん、初めまして。自分自身の記録用に残しているようなものですが、お役に立てまして幸いです。ロベルタ・マルケスは上手くてキュートでフレッシュで、我が家も大のお気に入りのプリンシパルなんです。
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_ miu'z journal *2 -ロンドン音楽会日記- - 2011/05/03 00:38
30.04.2011 @royal opera house
massenet: manon
roberta marquez (manon), steven mcrae (des grieux)
ricardo cervera (lescaut), bennet gartside (monsieur g.m.)
laura morera (lescaut's mistress), genesia rosato (madame), etc.
kenneth macmillan (choreography)
martin yates / orchestra of roh...
massenet: manon
roberta marquez (manon), steven mcrae (des grieux)
ricardo cervera (lescaut), bennet gartside (monsieur g.m.)
laura morera (lescaut's mistress), genesia rosato (madame), etc.
kenneth macmillan (choreography)
martin yates / orchestra of roh...
マクレーさん、良かったですねっ。普段のバレエは男性はあんまり活躍しないけど、マノンは見所たくさんありますしね。奥様には来シーズンのアリスをぜひ。キャストは発表されていませんが、帽子屋のタップを踊れるのはマクレーさんだけでしょう。カナダで初演される公演にもマクレーさんは客演です。
リフトの数々はほんと凄かったですね。一歩間違えば大怪我しそうだし、よっぽどの信頼関係がなければ怖くてできないでしょうね。
お話に納得できるかは別にして、とても素晴らしいバレエでした。また観に行きます〜。