Norwegian Wood (ノルウェイの森)2011/04/05 08:42

原作を読んだのはもう20年も前ですか。読んでみたのは単に世間で評判だったからですが、ご多分にもれず、たちまち村上春樹の世界にのめり込み、一時期村上作品を片っ端から読み込んでいた時期がありました。それ以前にハマっていた筒井康隆のハードSF作品や、ジョン・アーヴィングの長編小説(村上春樹の翻訳もありました)と同じ空気を感じたのも要因だったと思います。

前回「ノルウェイの森」を読み返したのもずいぶん前になるので相当忘れていますが、映画は原作のディティールと空気へのリスペクトを感じました。大胆な発想で再構築した脚本ではなく、原作を丁寧に刈り込み煮詰めて行ったので時間の流れに違和感がありませんでした。ただし、原作のノスタルジックな雰囲気はかなりスポイルされていましたが、これは外国(ベトナム)人監督だから仕方がないのかな。

役者選びとキャラクター作りは、読み込んだ小説の映画化にはどうしても辛口になってしまいます。村上小説は、やっぱり「やれやれ」がないとね。とは言え、原作の時代設定、原作の発表時、今回の映画化と、各々約20年の間隔がある中で、よくがんばった、とも思います。水原希子の緑だけは、あまりに痩せ過ぎの今風モデル体型でイメージ違いまくったけど。

違和感があったのは音楽。どこの現代音楽作曲家かと思ったら、Radioheadの人(Jonny Greenwood)なんですね。ポップスのジャンルに身を置いている人が作ったとは思えない、終始リゲティのような音楽でした。この音楽は映画が懐古的で甘ったるいムードに陥るのを徹底的に拒絶していますので、完全に監督の意図が入っているでしょう。そう言えば、こないだ見た「告白」にもRadioheadの曲が使われていて、今日本映画界では「旬」なんですかね。日本でそんなに人気が出そうなバンドじゃないように思うんですけど。

あとは、細野晴臣、高橋幸宏がちょい役で出てたのが嬉しかったですが(思わず坂本龍一も出ないかと注意して見ましたが、残念ながら彼は出演せず)、村上作品との接点はいったい何なのでしょう?

ロンドンでは3月11日から一般劇場公開が始まり、Curzon Soho、Odeon Covent Gardenなどでまだやってます。

フィルハーモニア管/マゼール:マーラー「巨人」2011/04/12 23:59

2011.04.12 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Michelle DeYoung (Ms-1)
1. Mahler: Lieder eines fahrenden Gesellen
2. Mahler: Symphony No. 1

マーラー没後100年である今年、シーズンをまたいでマーラー全交響曲の演奏に取り組むマゼール/フィルハーモニア管。今シーズンは4月と5月で1番から7番までを一気に駆け抜け、9月からの来シーズンで残りの8〜10番(アダージョ)と「大地の歌」を走破します。私は2009-2010のシーズンから数えるとロンドンでマーラーの演奏会にはここまでですでに19回通い、10番完全版を含む交響曲全曲プラス「嘆きの歌」を聴いております。さすがに食傷気味なので、ここはひとつ演奏会を厳選し、じっくりと耳を傾けたいと思います。

ということでマゼール・チクルスの開幕は第1番「巨人」から(最近は表題付けないのが主流ですか?でも自分的にはもう「巨人」で擦り込まれてますねえ)。その前座として「巨人」のモチーフとでも言うべき「さすらう若人の歌」をやるというニクい選曲。大柄なデヤングに先導されてさっそうと登場したマゼールは、頭はだいぶ薄くなったものの、きびきびとした動きは81歳という年齢を全く感じさせません。非常に遅めのテンポで入りましたが、いちいち仰々しいアゴーギクをかまして、時折鋭く指揮棒を真芯に打ち込むその姿は、まだまだ若いのー、と思わせました。しかしデヤングが、声だけはよく出ているものの歌は一本調子でニュアンスもへったくれもなく、正直イマイチ。美声なんですけどねー。ちょっと重苦しく退屈な「若人の歌」でした。

メインの「巨人」でもマゼールはかくしゃくとしてまだまだ元気でした。テンポをこまめに動かして、ポルタメントを利かせまくり、これ見よがしのパウゼを入れてみたり、何かしらやらかさずにはおられない「イロモノ」演奏は、マゼールならではの個性かと。同様に小細工の多いサイモン・ラトルとは何が違うのかというと、その小細工の向こうに解釈が見えないことで、「とにかくいじってみました」感が強く、ほほーと感心するよりも奇特な印象の方が残ります。あとは、オケがいっぱいいっぱいで時々指揮者に着いて行けなくなっていて、フィルハーモニア管はあたり前ですがやっぱりベルリンフィルではないのだなあと。それでも最後は盛り上がり、ホルンも立ち上がって力ワザの大団円で締めるところはぴっしり締めました。大喝采のスタンディングオベーション、まずまずの開幕だったのではないでしょうか。なおティンパニのスミスさんは本日も健在で、いい味を出しておりました。あのゲートリバーブかけたような伸びてストンと落ちる独特の音は、生の打楽器でいったいどうやったらそんなワザができるのか、私には永遠の謎です。

今日は隣りに座ったご老体が1曲目でも2曲目でも途中からぐーぐーいびきを立てて寝ていたので参りました。さすがに肘でつついて注意しましたが、寝るのは勝手ですがいびきは勘弁して欲しいものです。さらに隣りに座っていたご老体の奥さん(とおぼしき人)も気にするそぶりもなく、それどころか「巨人」の冒頭、弦のフラジオレットがはじまったとたんにパンフをごそごそ取り出してパラパラめくり始めるし(言うまでもなく最もそれをやって欲しくない瞬間です)、いやはや、何とも言葉がございませんでした。そう言えば、開演前に「この演奏会はレコーディングされますので、携帯電話やアラーム付き時計はスイッチを切ってください」とアナウンスがあったにもかかわらず、8時と9時ジャストの時刻には案の定どこかでアラームが鳴っていました…。

フィルハーモニア管/マゼール:マーラー「復活」2011/04/17 23:59

2011.04.17 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Sally Matthews (S), Michelle DeYoung (Ms)
BBC Symphony Chorus
1. Mahler: Symphony No. 2 "Resurrection"

「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズ第2弾は、本日もほぼ満席の入り。リターン待ちの列ができていました。場内でも常連さんが多いのか、あちらこちらで「火曜日もいらっしゃるの?」みたいな会話が聞かれて、アットホームな雰囲気です。

プログラムは「復活」1曲のみ。ちょうど1年くらい前に、やはりフィルハーモニア管で聴いて以来です(指揮はインバル)。マゼール御大はニコリともせず厳しい表情で登場。譜面台がないので、この大曲を暗譜でやるようです。さっすがー。第1楽章はかなり遅めのテンポで重厚に始まり、重苦しい雰囲気を引きずったまま、まさに雨の中の「葬礼」のような足取りで進みます。このままで行くのかなと思っていると、突如としてドライブをかけてアチェレランドしていき、他で聴いたことがないようなスピードまで持って行くという驚かしが入るので油断がならんです。この2番は手元にスコアを持っていないのでちゃんと確認はしてないのですが、こんなのは楽譜の指示に忠実にやってるわけではないでしょう。自らの解釈で設定した遅いテンポと速いテンポを強引にアチェレランドで繋いで、スコアを大きく踏み越えた独自の「マゼール界」を築いていますね。

そうは言ってもこの人はしかし、今日もたいへん明朗な指揮で、フレーズの切れ目にはいちいちくるっと指揮棒を丸めてすくい取り、音に対する配慮が非常にきめ細かいです。やってることは小ワザを利かせるというよりむしろアクロバティックな大ワザ連発なわけですが、「神は細部に宿る」という言葉もある通り、技のつなぎ目のさりげないコントロールが全体をうまく引き締めていたのではないかと。それでなくともこの曲は、各セグメントがブツ切れで張り合わされている「ツギハギ音楽」にも見える弱さをけっこう持っていると思いますが、その弱点が全然気に止まらない演奏になっていたのがさすがです。あとは、パートバランスとダイナミクスのコントロールも非常に手堅くまとめられていたこと。かなりしっかりとリハーサルが積まれているように見えました。

メゾソプラノのデヤングは、いろいろとボロが出ていた先日の「さすらう若人の歌」と比べると押さえ気味の歌唱で、面白みがないものの調子は上がっていたように見えました。ソプラノのマシューズのほうは何だか手探りのような歌い出し方で最初はあれっと思いましたが、盛り上がるオケと合唱に引っ張られて徐々に高揚していました。

本日の合唱はPhilharmonia ChorusでもPhilharmonia Voicesでもなく、何故かアマチュアのBBC Symphony Chorus。終楽章の後半、合唱が入ってから後はマゼール先生も小細工は一切せず、この曲が元々持っている音楽の力だけで押し切っていました。それは本当に、素直に感動的な音楽でした。私のマーラー原体験は、レコードではバーンスタイン/NYPの1番でしたが、ちょうど30年前に初めて生演奏で聴いた「復活」の途方もないエネルギーが、自分をマーラーフリークに向かわせた決定的なきっかけであったのを鮮烈に思い出しました。この曲の本来持っている力はやはり凄いものなんだなと、昨年のインバル指揮の演奏会では感じられなかったことが今回再認識できてたいへん満足しました。今日は一人でしたが、家族も連れてくれば良かったと後悔することしきり。

終楽章で出てくる舞台裏のブラスセクションは向かって左にホルンとティンパニ、右にトランペットと打楽器群という風にきっちり左右に振り分けられて不思議なステレオ空間を演出していましたが、マゼール先生もそんなところまで凝らなくてもいいのに、とは思いました。どうせなら舞台上の二人のティンパニも左右に分けてニールセンのように掛け合いっぽくやらかしてくれる指揮者が誰かいないものかと前々から思っているのですが、まだそういう演奏には遭遇したことがありません。なお舞台裏のブラス隊も最後はコーラスの横に出て来て演奏に加わっていましたが、正直、あんまし上手くなかったです。

本日のその他の収穫は、私の席からよく見えた、指揮者の真向かいに座っていた第2ヴァイオリンの色白美人。後で楽団のホームページを調べると、Fiona Cornallさんという人ですね。こんだけチャーミングなのに、うーむ、今まで気付かなかったなあ。以後、注目したいと思います。

フィルハーモニア管/マゼール:マーラー「悲劇的」2011/04/19 23:59


2011.04.19 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
1. Mahler: Symphony No. 6

春を通り越してロンドン的には夏到来と思わんばかりの陽気の中、「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズの第3弾はMy Favoriteの第6番。「マーラー6番をロンドンの地のオケで聴きたおすシリーズ」第4回でもあります。

今日はのっけから大トラブル。開演時間になって奏者がスタンバイし、後はコンマスのジョルト氏の登場を待つだけの段になって、いっこうに出て来ないコンマス。スタッフのおじさんが2度出て来て、舞台下から何やらヴァイオリン奏者に話しかけていましたが、結局「コンサートマスターがJubilee Lineのトラブルのため遅刻しており、代理のコンマスで演奏を開始します」というアナウンスがあって、場内大爆笑。急きょコンマスに押し上げられたPhilippe Honoreさんにも拍手喝采ですが、本人は無表情を装いながらも緊張した様子でした。しかし、今日はちょっと早めに着いたとはいえ私も同じJubilee Lineでここまで来たわけだし、演奏会の要のコンマスがどんだけギリギリに来てんだよ!という話です。しかも、いつ止まってもおかしくないロンドンの地下鉄を使って、てのは危機管理意識なさすぎ。確かにバービカンでも開場を待ってソファーに座っていると、コートを着たコンマスのTomoさんやWeiさんがけっこうギリギリの時間で入ってくるのを見たことがありますが、どこもそんなもんなんでしょうかねえ。

ということで何やら落ち着かない雰囲気で10分遅れて始まったマーラー6番。今日は指揮台にも譜面台が置いてあり、このシリーズ全曲を暗譜でこなすという偉業をやってのけてくれるのかと勝手に思っていた私は早々に当てが外れました。ガッガッと勢いよくスタートしたのはよいものの、トランペットが主題の鬼門箇所で繰り返しの2回とも大外し。まあ金管が外すのはよくあることとはいえ、レコーディングをしますというアナウンスもあったので、さすがにこれは録り直しでしょうなー。あー今日は残業かあ、という団員のため息が聞こえてきそうでした。他にも前回から私が注目している第2ヴァイオリンの色白美人Fionaさんが第1楽章で弦を切るというハプニングがあり、すぐに後ろの奏者と順次楽器を交換していました。へえ、コンマスじゃなくてもこういうときは楽器を交換して行くんだー、という新鮮な発見でした。第2主題の「アルマのテーマ」は非常にゆっくりとしたテンポで入って、ふとコントラバスを見るとバルトークかと思うほど激しいピチカートを叩きつけていて、相変わらずマゼール先生は個性的なマーラーをやらかしてくれます。ただ、2月のBBC響で徹底して磨き上げられた同曲の演奏を聴いた記憶がまだ鮮烈に残っており、今日はどうもマゼール先生のヘンテコ演奏に気持ちが着いていけません。

第1楽章が終わるとコンマス氏がそそくさと登場、意外と冷たい拍手がパラパラ。Philippeさんは突然の代役でソロもかなり危なっかしかったので、お役ご免でほっとしたご様子でした。中間楽章はスケルツォ→アンダンテの順。スケルツォは怪しさ満開、幻想交響曲の終楽章みたいにおどろおどろしい雰囲気だったので思わず目が覚めました。何故にサバト?という疑問符が頭から消えないまま、曲はアンダンテに進みましたが、今度は冷めた空気で淡々とした演奏で、弦にも管にも「歌」というものがありません。何というクールな、そしてつまらないアンダンテ!カウベルの音もやたらと軽いし、何から何までちぐはぐな印象をぬぐえませんでした。ハプニングもあったとはいえ、一昨日の「復活」の快演で指揮者もオケも燃え尽きてしまったんでしょうかね。リハの時間も十分に取れていない感が随所に漂っていました。

「復活」の終楽章でマゼールは小細工をやめて音楽自体の力を最大限引き出すことに成功していましたが、こちらの終楽章は逆に何かしら芝居をかますなどやらないと音楽が散逸してしまう危険を孕んでいると思います。オケはよく鳴っていましたが、私の頭も疲れてきて、どうもむなしく響いているだけに聴こえてなりませんでした。本日はもう白旗降参です。1週間のうちに同じ演奏者でマーラーを3曲というのは、奏者にも聴き手にもあまり良い条件・環境とは言えないかもしれませんね。なお、本日のハンマーは2回でした。見てくれは太くて凄そうなハンマーでしたが、音は死んでいてもう一つでした(作曲者の意図には案外これが近いのかもしれませんが)。

珍しく終演後の写真なぞを撮ってみました。マゼール先生の右に見えるのがFionaさん、すぐ左はPhilippeさん、左端がコンマスのZsoltさんです。

今年も白アスパラガスの季節2011/04/25 23:59

イースター連休は家族でデュッセルドルフに行ってました。何故デュッセル?とは人によく聞かれたのですが、何と言ってもこの季節、白アスパラ(Spargel)を確実に食するにはドイツ圏に行かねばなりません。デュッセルは特に観光客が好んで行くような場所ではありませんが、私は仕事で何度も行ってるものの家族は行ったことがなかったのと、ケルンには今まで行ったことがなかったので、やはり大聖堂を一度は見てみたいということで、決めました。日本と同じようなラーメンが食べれるよ、というのも高ポイントでした。

まずはデュッセルドルフ中央駅から徒歩圏、Oststrasse沿いにあるSchumacherから。自家製アルトビアが有名です。



白アスパラ・オランデーズソースのハム添えです。どの店もメニューは代わり映えしません。ソースはバターかオランデーズ、添え物の肉はスモークハムかシュニッツェルが選べます。

次も著名なレストラン、デュッセルドルフ旧市街にあるZum Schiffchen。ここのアルトビアはFrankenheimです。




白アスパラもさることながら、牛テールの煮込み料理も濃いい味でしたがたいへん美味でした。

最後はケルンの大聖堂の近くにあるFrüh。ここも歴史があって有名なビアホールです。ケルンビールもデュッセルと同様1/4リットルの細長いグラスでこまめにオカワリしながら飲みますが、ビールの中身は相当違い、ケルンのは黄色のピルスナー系です。デュッセルの人はいつもケルンのビールを馬の小便と言ってバカにしています。(隣人は得てして仲が悪いものですが)



今回のランキングは、アスパラの質・太さとソースの味ではZum Schiffchenがベストだったのですが、ゆで加減では意外とFrühの絶妙さが最高でした。いずれにせよたいへん美味で、今年もこれが食べられて幸せ〜、という言葉に尽きるのは言うまでもありません。

デュッセルドルフの麺処「匠」2011/04/26 23:59

ドイツは観光地の一部を除き、祝祭日には基本的に全てのお店が閉まってしまうのですが、「匠」は無休で営業していました。他に選択肢が乏しいせいもあるのか、昼12時の開店前にはもう行列ができていました。


真面目に取った鶏ガラ・とんこつスープと、札幌から直送しているちぢれ麺のハーモニーが、まさに至福のジャパニーズ。スープは塩、醤油、味噌から選べ、各々の「特上」(ちょっと高い)もあります。


これは醤油ラーメンに味玉とワカメのトッピングです。やっぱ、麺がええわ〜。スープは見た目よりもずっとあっさり味。特上にすると多少こってり感が増しますが、劇的な違いはありません。私的には普通の醤油で十分です。餃子や唐揚げのサイドメニューもきっちりジャパニーズなのが嬉しいです。もしかしたら、日本の激戦区でも勝ち残って行けるほどの力はないのかも知れないけれど、異国の地で食するには十二分過ぎる、正真正銘の「日本のラーメン」です。ほんと、ロンドンの町中に支店を出してくれないものかと切に思います。

余談ですが、店員に一人、(多分)ハーフのめちゃかわいいメガネっ子さんがいらっさいまして、だからどうこうするわけではないですが、うきうきとした気分で食事を楽しめました。(爆)

ちなみにデュッセルにはもう一件「なにわ」という老舗のラーメン屋があり、一度行ったことがありますが、味が日本風から離れ「Wagamama」化の方向に向かっていると感じたので、それ以降行ってません。


おまけでデュッセル旧市街の様子を少し。老舗のビアホールUerigeの前には昼も夜もいつも人だかりで、皆さんアルトビアを立ち飲みしてます。ロンドンのパブをちょっと彷彿とさせますね。


幸い快晴に恵まれ(暑かったですが)、ライン川の向こう岸に沈み行く夕日が非常に奇麗でした。

デュッセルなんか観光に来る人はいないだろうと思っていたのですが、旧市街はけっこうな人出で予想外にたいへんにぎわっていました。日本人の旅行者も意外とたくさんいて、家族連れが多かったので、多分オランダ、ベルギー、ルクセンブルク等の近隣諸国から車で来ている駐在員の人々なんだろうなあと勝手に想像しました。

ケルン大聖堂2011/04/27 23:59


白アスパラに次いで今回の目的だったケルン大聖堂。さすがにでかいです。観光客もいっぱい。

左側の塔の上、とんがり帽子の根元くらいのところに展望台がありますが、エレベーターはなく、500段ほどの螺旋階段をえんえんと登って行かねばなりません。初めて行く町ではできるだけ高いところにまず登ってみるのが信条の私としては、登らない手はありません。気温が高かったので大汗をかきながら、娘と一緒に何とか上まで登りました。


展望台は落下防止の金網で覆われていて、眺めはもう一つでした。ケルンの町並み自体が、中世風に統一された奇麗な屋根が立ち並ぶわけでもなく、モダンなビルばかりです。

階段を下りている最中からちょっとやばいかもと思っていたのですが、案の定、翌日両ふくらはぎが筋肉痛で動けず。まるまる2日間筋肉が張りっぱなしで難儀しました。いままで高台に階段で上るというのはほうぼうでやってましたが、こんなにピンポイントで痛んだのは初めて。もう若くはないということですかのー。

写真は撮りませんでしたが、聖堂内のステンドグラスも、非常に大掛かりで芸術性の高いものでした。

フィルハーモニア管/マゼール:マーラー4番2011/04/28 23:59

2011.04.28 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Simon Keenlyside (Br-1), Sarah Fox (S-2)
1. Mahler: Rückert-Lieder
2. Mahler: Symphony No. 4

「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズの第4弾。気付けばここ4回は連続してフェスティヴァルホールに来ています。

1曲目は「リュッケルトの詩による5つの歌曲」。私は元来声楽曲が苦手で、それは大好きなマーラーでもしかり。交響曲のCDの埋め草に入っているのをごくたまに聴くだけでほとんど馴染んでないのですが、それを差し引いても今日はのっけから何か違和感。あれ、リュッケルト・リーダーってこんな曲だっけ?どうも曲順が私の持っているCD(カラヤン)と違ったようです。後で調べると、この歌曲集の曲順は特に固定されてなく自由なんだそうですね。本日は下のような曲順でした。

1. Liebst du um Schönheit(美しさゆえに愛するのなら)
2. Blicke mir nicht in die Lieder!(私の歌を覗き見しないで)
3. Um Mitternacht(真夜中に)
4. Ich atmet' einen linden Duft(私は仄かな香りを吸い込んだ)
5. Ich bin der Welt abhanden gekommen(私はこの世に捨てられて)

サイモン・キーンリサイドを生で見るのは初めてですが(奥さんでロイヤルバレエ・プリンシパルのヤノウスキは今年に入って2回見ていますが)、長身でなかなかいいオトコではないですか。骨折でもしたのか、左腕にギブスをしていましたが、先週の演奏会では腕を吊るバンドも着けていたそうなので、それよりは回復しているんでしょう。たいへん華があって伸びもある美声で、腕のせいで声に力が入らないということはなさそうでした。ただ、第1曲と第4曲で何カ所かファルセットになっていたのがちょっと違和感がありました。カラヤンのCDだと歌はメゾソプラノでしたが、よく考えたらこの曲をバリトンで聴いたことがなかったので。今日のマゼール先生、コールアングレでちょっと濃いめのポルタメントをさせていた以外は、全体的にどうも淡白です。指揮はコンパクトで、各曲の終止で指揮棒をくるくる丸めながらも左手はもう楽譜を次にめくっていて、何だか先を急いでいるような感じ。

客入りは、後方で空席が目立ちました。今日はサイドの後列席だったので、休憩時間にフロントストールの空席に移動。マゼール先生、マーラー4番は暗譜です。冒頭、インテンポの鈴&フルートとリタルダンドをかけるクラリネット&弦で生じる「時間の歪み効果」は、つるびねったさんに指摘されるまでは気にしたことがなかったのですが(確かに手持ちのCDのほとんどはそうなってます)、マゼールさんそんなちっちぇえことはまる無視、みんな仲良くリタルダンドで一件落着でした。あれれと思いましたが、その後はわりと端正に進んで行きます。先日の6番と比べると負担がずいぶん楽なせいもあるんでしょう、金管は崩れることなくぴっちり決めてました。展開部のフルートのユニゾンは生演で聴くとピッチの微妙なずれが気になることが多いのですが、ことさら早めにデクレッシェンドして目立たないようにしていました。今日は何か真っ当じゃん、と思いながら聴いていると、最後の第2主題が戻ってきて弦が強烈なリタルダンドをかけるあたりで崩壊寸前に陥り、ちょっとハラハラしました。あれはコンマスが悪いんじゃないかなあ、ヴァイオリンが指揮者とコンマスのどちらに着いて行ったら良いか一瞬迷ったように見えたので。危機を何とか乗り切った後、コーダではこれでもかというくらいアチェレランドをかけて終りました。

さあこれから行きますよ、という合図かと思ったけど、続く第2楽章でもそれほど変なことは仕掛けて来ず(もちろん楽譜の通りこまめにテンポは変化していますが)、マゼールはスコアをねじ伏せるというよりも上手くさらさらと乗りこなしているという感じでした。6番のときと同様、スケルツォ楽章ではことさらえげつなく諧謔的になるのは相変わらずでしたけど。第3楽章は何と言ってもクライマックスでスミスさんのティンパニが期待通りの爆演。この人はいつも彼しか出せない渋い音を安定して叩き出してくれるので、毎回楽しみです。

終楽章しか出番がないソプラノは、3楽章が始まる前に出て来て座ってじっと待っていたり、3楽章のクライマックスのところで静々と歩いて出てきたり、一度は終楽章が始まってから悠長に歩いて出て来たこともありましたが、いずれにせよ終楽章の前に休止を置かないのが普通です。しかし今日は3楽章の後にも休止を入れ、ソプラノが登場して場内の咳が収まるのを待ってから演奏を開始していました。ソプラノのサラ・フォックスは多分初めて聴く人ですが、生真面目な歌いっぷりで、可も不可もなく、という感じ。マゼールもここはさすがに歌い手のほうに合わせて、何かをやらかす余地はなかったです。コーダではぐっとテンポ落とし、リタルダンドまでかけて、終る前に止まってしまうかのような終り方でした。ここまでの3回と比べると、拍手の盛り上がりはちょっとテンションが下がり気味でした。

今日はマゼールにしてはあまりヘンタイな仕掛けはなく、至って真っ当な演奏と言ってよいでしょう。こちらも「何をやらかしてくれるか」と身構えているからか、ちょっと拍子抜けでしたが、フェアーに個性的な演奏ではありました。変わっているという意味では、前に聴いたユロフスキ/ロンドンフィルの演奏のほうがよっぽど変わってましたね。

ロイヤルバレエ/マルケス/マクレー:マクミランの「マノン」2011/04/30 23:59

2011.04.30 Royal Opera House (London)
The Royal Ballet
Martin Yates / Orchestra of the Royal Opera House
Kenneth MacMillan (Choreography)
Roberta Marquez (Manon), Steven McRae (Des Grieux)
Ricardo Cervera (Lescaut), Bennet Gartside (Monsieur G.M.)
Laura Morera (Lescaut's Mistress), Genesia Rosato (Madame)
Thomas Whitehead (Gaoler), Alastair Marriott (Old Gentleman)
Yuhui Choe, HIkaru Kobayashi (Courtesans)
1. Massenet: Manon (ballet, compiled by Leighton Lucas)

バレエの「マノン」です。内容的に子供にはどうかなとも思ったのですが、ロイヤルバレエの名物だし、去年オペラの「マノン」のほうはもう見ちゃってるから、まーいいかと。このマノンは元々バレエのために作曲されたものではなく、マスネの「シンデレラ」「ドン・キホーテ」「クレオパトラ」「タイス」といった10以上のオペラ、およびオラトリオやピアノ曲からも断片を拝借し、編曲して新たに再構成したプロダクションです。マスネには「マノン」というオペラもあるのに、そこからは1曲も借りていないのは、オペラのイメージから切り離して新しいドラマを創作したいという意気込みがあってのことでしょう。

今回も妻の希望により、マルケス&マクレー様ペアの日を選択。マクレーさん、やっぱ上手いわ。朴訥な青年が美少女マノンに一目惚れして、話しかけるきっかけを作るために後ろを向いてわざとぶつかったりする小芝居が実に達者だし、もちろん踊りも、見かけ以上に難しそうな第1幕のソロをきっちりと決めて、調子は良さそう。一方のマルケスはその小柄で童顔な外見から、可憐な美少女マノンがまさにハマり役。パ・ド・ドゥは、ペアを組むことが多い二人だけあって、さすがに息がぴったりでした。マクレーさんのリフトの上でさらにくるくるっと回転するところなど、あまりに迷いなく飛び込んでいくので怪我をしないかと見ているほうがハラハラするくらい。留守中に乗り込んで来たムッシュGMが見せる宝石やコートで、あっという間にくらくらと誘惑されてしまうマノンも、この人ならさもありなん、と納得してしまうほど無邪気さがよく出ていました。一方ムッシュGMを演じたガートサイドは「好色な老富豪」というにはちょっと若すぎて、デ・グリューと同じく若気の至りでマノンに惑わされてしまったようにしか見えず、老醜の枯れた演技は全く見られませんでした。

大富豪の愛人となって登場する第2幕のマノンは、第1幕とがらっと変わって妖艶な雰囲気に。しかし、あどけなさをまだ残して、悪女というよりは無邪気な小悪魔という感じ。ある意味よけいにタチが悪いかも。ここの踊りは、まずはレスコーと愛人の酔っぱらいのパ・ド・ドゥが非常に面白く、娘も大ウケしてました。これは相当上手い人じゃないと笑いが取れるレベルにならない、けっこう難しい踊りなんではないでしょうか。マクレーさん、この幕はほとんど踊りませんが、富豪の愛人になって変わってしまったマノンを見る目の何と切ないことよ。踊り抜きでも芝居の上手さで光れる人だなと思って見ていたら、幕の最後のほうでキレキレの回転技を見せてくれて、やっぱこの人は凄いわ。

第3幕のマノンは髪を切られ、ぼろぼろの服をまとった囚人として出てきますが、その姿の痛々しいこと。精魂尽き果て、無邪気さも妖艶さも何もかも失っています。マルケスは各々の幕でがらっと違うマノンのキャラクターを、うまく演じ分けていたと思います。ただ、第2幕であどけなさを残してワルになりきれなかったところは、この人は「白鳥の湖」のオディールはちょっと苦手かも、と思ってしまいました。マクレーさんとのパ・ド・ドゥは幕を追うに従って調子が上がって来て、最後まで切れることなく呼吸の合った踊りを見せてくれました。踊り切った後はさすがに二人とも息が上がっており、事切れたはずのマノンが、横たわって死にながら胸は激しく呼吸をしてたのが見えました。バレエのマノンを見るのは初めてでしたが、全体を通して非常にドラマチックなプロダクションで、飽きるところなく見入ってしまいました。

高級娼婦役で出ていたチェ・ユフィさん、今日はちょっとオーラが足りなかったですかね。髪型も似合ってない(笑)。第2幕ではしばらく注目して見ていましたが、小芝居がわざとらしくて、娼婦や小悪魔系はあまり得意じゃないのかなと。彼女がマノンを踊る(踊れる)日はいつ来るんでしょうか。

カーテンコールの写真にトライしてみましたが、うーむ、なかなかうまくいきません。うちのカメラは光学ズーム3.8倍なのでアップは限界がありますが、露出やシャッタースピードなどその他の設定にまだまだ研究の必要がありますね。


主役の3人、左からセルヴェラ、マルケス、マクレー様。