フィルハーモニア管/マゼール:マーラー「悲劇的」2011/04/19 23:59


2011.04.19 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
1. Mahler: Symphony No. 6

春を通り越してロンドン的には夏到来と思わんばかりの陽気の中、「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズの第3弾はMy Favoriteの第6番。「マーラー6番をロンドンの地のオケで聴きたおすシリーズ」第4回でもあります。

今日はのっけから大トラブル。開演時間になって奏者がスタンバイし、後はコンマスのジョルト氏の登場を待つだけの段になって、いっこうに出て来ないコンマス。スタッフのおじさんが2度出て来て、舞台下から何やらヴァイオリン奏者に話しかけていましたが、結局「コンサートマスターがJubilee Lineのトラブルのため遅刻しており、代理のコンマスで演奏を開始します」というアナウンスがあって、場内大爆笑。急きょコンマスに押し上げられたPhilippe Honoreさんにも拍手喝采ですが、本人は無表情を装いながらも緊張した様子でした。しかし、今日はちょっと早めに着いたとはいえ私も同じJubilee Lineでここまで来たわけだし、演奏会の要のコンマスがどんだけギリギリに来てんだよ!という話です。しかも、いつ止まってもおかしくないロンドンの地下鉄を使って、てのは危機管理意識なさすぎ。確かにバービカンでも開場を待ってソファーに座っていると、コートを着たコンマスのTomoさんやWeiさんがけっこうギリギリの時間で入ってくるのを見たことがありますが、どこもそんなもんなんでしょうかねえ。

ということで何やら落ち着かない雰囲気で10分遅れて始まったマーラー6番。今日は指揮台にも譜面台が置いてあり、このシリーズ全曲を暗譜でこなすという偉業をやってのけてくれるのかと勝手に思っていた私は早々に当てが外れました。ガッガッと勢いよくスタートしたのはよいものの、トランペットが主題の鬼門箇所で繰り返しの2回とも大外し。まあ金管が外すのはよくあることとはいえ、レコーディングをしますというアナウンスもあったので、さすがにこれは録り直しでしょうなー。あー今日は残業かあ、という団員のため息が聞こえてきそうでした。他にも前回から私が注目している第2ヴァイオリンの色白美人Fionaさんが第1楽章で弦を切るというハプニングがあり、すぐに後ろの奏者と順次楽器を交換していました。へえ、コンマスじゃなくてもこういうときは楽器を交換して行くんだー、という新鮮な発見でした。第2主題の「アルマのテーマ」は非常にゆっくりとしたテンポで入って、ふとコントラバスを見るとバルトークかと思うほど激しいピチカートを叩きつけていて、相変わらずマゼール先生は個性的なマーラーをやらかしてくれます。ただ、2月のBBC響で徹底して磨き上げられた同曲の演奏を聴いた記憶がまだ鮮烈に残っており、今日はどうもマゼール先生のヘンテコ演奏に気持ちが着いていけません。

第1楽章が終わるとコンマス氏がそそくさと登場、意外と冷たい拍手がパラパラ。Philippeさんは突然の代役でソロもかなり危なっかしかったので、お役ご免でほっとしたご様子でした。中間楽章はスケルツォ→アンダンテの順。スケルツォは怪しさ満開、幻想交響曲の終楽章みたいにおどろおどろしい雰囲気だったので思わず目が覚めました。何故にサバト?という疑問符が頭から消えないまま、曲はアンダンテに進みましたが、今度は冷めた空気で淡々とした演奏で、弦にも管にも「歌」というものがありません。何というクールな、そしてつまらないアンダンテ!カウベルの音もやたらと軽いし、何から何までちぐはぐな印象をぬぐえませんでした。ハプニングもあったとはいえ、一昨日の「復活」の快演で指揮者もオケも燃え尽きてしまったんでしょうかね。リハの時間も十分に取れていない感が随所に漂っていました。

「復活」の終楽章でマゼールは小細工をやめて音楽自体の力を最大限引き出すことに成功していましたが、こちらの終楽章は逆に何かしら芝居をかますなどやらないと音楽が散逸してしまう危険を孕んでいると思います。オケはよく鳴っていましたが、私の頭も疲れてきて、どうもむなしく響いているだけに聴こえてなりませんでした。本日はもう白旗降参です。1週間のうちに同じ演奏者でマーラーを3曲というのは、奏者にも聴き手にもあまり良い条件・環境とは言えないかもしれませんね。なお、本日のハンマーは2回でした。見てくれは太くて凄そうなハンマーでしたが、音は死んでいてもう一つでした(作曲者の意図には案外これが近いのかもしれませんが)。

珍しく終演後の写真なぞを撮ってみました。マゼール先生の右に見えるのがFionaさん、すぐ左はPhilippeさん、左端がコンマスのZsoltさんです。

コメント

_ voyager2art ― 2011/04/22 19:53

Miklosさんこんにちは。

会社の同僚で、止まってしまったJubilee Lineに1時間ほど閉じ込められた上に、結局Tubeのトンネルを最寄り駅まで歩く羽目になったという人がいました。ロンドンの地下鉄に大きな期待はしていませんが、もうちょっと何とかならないものかといつも思います。

僕は最近バレエに寝返っているのでこの演奏会には行かなかったんですが、マゼールは先日の復活がとても良かったのでこの日の6番もいいんだろうと思っていました。やっぱり短期集中しすぎなんでしょうか。それにしてもMiklosさん、厳選と言いつつ皆勤ですね。

_ Miklos ― 2011/04/25 20:06

連休出かけていたので遅くなりすいません。マゼール・マーラー・チクルスはけっこう日程が詰まっていて、2番と6番は中1日しかありませんでした。奏者側も聴衆側もきつかったのではと感じてます。この後の過密日程は、5番と3番が中2日、大地の歌と9番が中1日、というのがありますね。3番、9番なんかは大曲だけに、今からちょっと心配になってきます。ちなみに、私はまだチケット買ってない演奏会がありますから、厳選しておりますよ〜。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
スパム対策で「クイズ認証」導入してます。2020年夏季五輪開催地の日本の首都は?(漢字で)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://miklos.asablo.jp/blog/2011/04/19/5819742/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。