ロイヤルオペラ:椿姫/ゲオルギュー2010/07/11 23:59

2010.07.11 Royal Opera House (London)
Yves Abel / Orchestra of the Royal Opera House
Richard Eyre (Director)
Angela Gheorghiu (Violetta Valery), James Valenti (Alfredo Germont)
Zeljko Lucic (Giorgio Germont), Eddie Wade (Baron Douphol)
Richard Wiegold (Doctor Grenvil), Sarah Pring (Annina)
Kai Ruutel (Flora Bervoix), Changhan Lim (Marquis D'Obigny)
1. Verdi: La Traviata

今シーズンのトリとして、ゲオルギューの「椿姫」を見てきました。このリチャード・エアのプロダクションはDVDで何度も見ていますが、当たり前ですが16年の歳月を経てもほとんどそのまま同じでした。ただ、やっぱりゲオルギューは「老けたなあ」という正直な感想を禁じ得ません。29歳のころのDVDと全く同じ衣装で出てくるので見目の違いは歴然ですし、歌も、ビブラートがきつくなり歌い方だいぶ技巧的に変わっています。もちろん、この16年間、毎年世界各地で数限りなく歌ってきただけあって、トータルではこの上なき完璧な「ヴィオレッタ」でしたが、歌い手としてもう全盛期を過ぎているのはしょうがないでしょうね。

アルフレードのジェームス・ヴァレンティはスマートな長身で、ちょっと体育会系の朴訥な感じが役に合ってるかも、と最初は期待しましたが、歌は結局終始パッとしませんでした。見た目のわりには声の線が細く、演技も大根です。ルックスはまあ良いものを持っているとは思うんですが、ヘタクソとは言いませんが特に褒めるところも見つかりませんでした。うーむ、9月の日本公演でゲオルギューと共演するのもこの人なんですね…。

一方その「漁父の利」でやんやの喝采をもらっていたのがジェルモン父のジェルコ・ルチッチ。心地良く響く低音は確かにいい声でしたが、冷静に見て、そんなに取り立てて良い歌唱だったかというと私は疑問符でした。比べてはいかんのでしょうが、どうしてもDVDのレオ・ヌッチのイメージが強くて、威厳と品格の裏に狡猾と無責任が透けて見えてしまう複雑さが全然出てない凡庸な歌だなあ、などと(たいへん失礼にも)考えてしまいます。

第1幕、ヴィオレッタが胸に着けていた花飾りがポロリと落ちるハプニングがありました。その後でアリア「この花がしおれるころに」を歌いながらアルフレードに渡す大事な小道具ですので、百戦錬磨のゲオルギューも声こそ出しませんでしたが驚いた風で、途中でさりげなく拾おうとするものの失敗、花は逆にオケピットの方に落ちてしまい、あとはさすがというか、何事もなかったかのように花飾りなしで普通にアリアを歌いあげていました。

今日は何か客層が微妙に違う気がしたというか、オペラが好きで見に来ていると思える人が自分の周囲にはほとんどいない感じでした。前席ではがっしりしたゲイのカップルが、ふらふら頭を揺らしながら時々いちゃいちゃ。じゃまや、っちゅうねん。後席のカップルは上演中もコソコソ話をし、プログラムをパラパラめくり、悲劇的な第3幕ではなんと終始クスクス笑っている始末。舞台の上に興味がないならパブでW杯決勝戦でも見てた方が盛り上がるだろうに。オペラにツッコミを入れて笑いの種にしたいのなら自宅でDVDを見ればよろしい。そのくせ、カーテンコールでゲオルギューが出てくると立ち上がって写真を撮りまくり。マナーの点で小学生の我が娘の足下にも及ばない、恥知らずのイギリス人をここにも見つけました。

コメント

_ 守屋 ― 2010/07/16 15:09

はじめまして。ロイヤルの「マノン」の記事を集めたところから来ました。

 最後のイギリスの観客のマナーのひどさのところ、うなずきながら読みました。僕はロイヤルでは、できるだけ周りに他の人がいないような席を選ぶようにしていますが、ウィグモア・ホールのリサイタルでは立ち上がって、「歌手が歌っているときにのど飴の袋を破るのはやめろ!」、と何度も叫びたくなります。
 ホール側には手間かもしれませんが、マナー・ブックなどを作って配布して欲しいものです。

_ Miklos ― 2010/07/17 10:17

守屋さんこんにちは。はじめまして、ですが、ブログをいつも拝見させてもらっておりますので私の方はあまりはじめましてという気がしません。

ブダペストやウィーンと比べるとイギリスの聴衆のマナーはすこぶる良いほうと思っているので、この日は観光客か、普段オペラなどわざわざ見に来ない人が多かったのかな、とも思いました。マナーブックは、いかに読んでもらうかが難しそうですね。それを読んで自らを振り返れるような人だったら、そもそも最初からマナーの悪い振る舞いはしないと思います。

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