ロイヤルオペラ/ヘンシェン/デノケ/ロイター:サロメ2010/07/06 23:59

2010.07.06 Royal Opera House (London)
Hartmut Haenchen / Orchestra of the Royal Opera House
David McVicar (Director), Justin Way (Revival Director)
Angela Denoke (Salome), Johan Reuter (Jokanaan)
Gerhard Siegel (Herod), Irina Mishura (Herodias)
Andrew Staples (Narraboth)
1. R. Strauss: Salome

マクヴィカーの衝撃的な血みどろ演出が評判の「サロメ」、今回はアンゲラ・デノケをタイトルロールに迎えての5回ぽっきりの再演(初演は2008年)です。これがまた、めちゃめちゃリアルな生首から鮮血がポタポタ滴り落ちるわ、素っ裸の処刑人も全身血まみれになるわ、噂に違わず陰惨極まりない演出で、とても子供には見せられませんが、インパクトは確かにかなりのものでした。

舞台は古代イスラエルではなく20世紀の戦時中くらいに置き換えられています。地下室のシャビーなトイレとおぼしき部屋の上階ではパーティーが開かれていますが、客席からはテーブル、イスと人々の下半身しか見えません。地下室の向かって右側に上階から下りてくる階段、左隅には大きなマンホールのようなメッシュの蓋があり、その下に予言者ヨカナーンが幽閉されていて、銃を持った兵士と刀を握った処刑人が監視しています。ジャマイカ人っぽい掃除夫や東欧系メイド(最初は全裸)もいます。物語の異常さを体現しているとも言えますが、演出家のコンセプトは正直よくわかりませんでした。

デノケはどうも本調子ではないようで、ハイトーンが出切っていなくて苦しそうな箇所が何度もありましたが、狂気の演技は鬼気迫るものがありました。ヨカナーンのロイターはどっしりした低音に迫力があり、ヘロデ王(といってもタキシードのハゲオヤジでしたが)のジーゲルも抜群の歌唱力でした。ロイヤルオペラで主要な役を得る歌手は、皆さん本当に声量があり、このやかましいオケでも埋もれることなくしっかり張り合っていました。サロメは血まみれの衣装のままではさすがに見た目が不快なので、カーテンコールでは血の付く前の白いドレスに速攻で着替えていました。

なお、天井桟敷のAmphitheatreに今回初めて座りましたが、思ったよりもステージがよく見えたのはよかったものの、ここはイスが狭い。両隣りに幅の大きい人が来ると暑苦しくてたいへんです。サロメならまだ我慢できますが、もっと長いオペラはちょっと勘弁、と思いました。