LSO/アデス/コチシュ2010/06/06 23:59

2010.06.06 Barbican Hall (London)
Thomas Ades / London Symphony Orchestra
Zoltan Kocsis (P-2), Barbara Hannigan (S)
1. Ades: ... but all shall be well
2. Bartok: Piano Concerto No. 1
3. Ades: These Premises are Alarmed
4. Gerald Barry: La Plus Forte, an opera in one act (UK premiere)
5. Ades: Dances from Powder Her Face

ロンドン出身、39歳の若き作曲家、兼ピアニスト、兼指揮者で、今年のClassical Britsでは"Composer of the Year"を獲得、今一番勢いに乗っている時期であろうトーマス・アデスの指揮によるロンドン響の演奏会がありました。ゾルターン・コチシュの独奏によるバルトークのピアノ協奏曲1番もプログラムにあり、もちろん最大の目当てはそれであります。しかしこのチケットはまだロンドンに来る前、バービカンではどの席がどうなのかをあまり把握しないままに取ったものだったので、正面ではなく端の席になり、指揮者とピアニストがよく見えず、ちょっと悲しかったです。

バルトークの1番はコチシュの指揮では過去に2度聴いています(2度共ピアノはラーンキ)。打楽器奏者を指揮者の眼下に並べて、パーカッシブなピアノと打楽器の一体感を演出していましたが、今日は指揮者、ソリストどちらのアイデアかは知りませんが、舞台最前列、ピアノに向かって右にティンパニ、左にその他の打楽器群を配置した(つまり打楽器全員が前に出てきて、舞台奥の“定位置”には奏者が誰もいない)もので、まさにピアノも含めた打楽器協奏曲の様相を呈していました。コチシュのピアノは、若いころのCDで聴かれるような即物的演奏は全く健在で、指が回ること回ること。アデスの指揮につき合ってか、リタルダンドを大げさに取ったり、また、音の切れ味が多少丸くなった気もしましたが、指揮活動に軸足を置くのは本当にもったいないと感じました。一方のアデスは嬉々として小躍りしながら指揮をしていて、この曲は普段から血沸き肉踊る思いをしながら聴いているのだろうな、と想像できました。

初めて聴くアデスの曲は、頭が痛くなるような「現代音楽」では全くなく、エンターテイメント色が強く感じられるものだったので面白かったです。バリーの20分程の1幕オペラはさらに懐古主義的で、バロックにまで回帰したような箇所がありました。内容は、字幕の流れが速くてついていけなくなりましたが、夫に対する不満をたらたらとぶつける、至って庶民的な話のようでした。

Spagel(白アスパラ)2010/06/17 07:24

先日のバンクホリデーに休暇でドイツのニュルンベルクとバンベルクへ旅行、その後すぐにデュッセルドルフとミュンヘンへの出張があったため、おかげで今年は合計8回、旬のシュパーゲルを飽きるまで食べることができました。

Spagel Heilig Geist Spital

ニュルンベルク旧市街のHeilig Geist Spitalで食べた定番オランデーズソース、子牛のステーキ添え。

Spagel Schumacher

デュッセルドルフのSchumacherビアホールではシンプルにバターソースで。ここは料理もさることながら何よりビールが上手い!1/4リットル単位でフレッシュなグラスをおかわりできるデュッセルドルフスタイルが、最初から1リットルどんと来るミュンヘンスタイルより、私は好きです。

写真を撮り損ねたけど、バンベルクのSchlenkerlaビアホールで食べたシュパーゲルが一番美味しかったです。名物のスモークビールは、ちょっと私の好みではありませんでしたが。

こっそり持ち帰ってきた細身のシュパーゲル(約1kg)で妻がポタージュスープを作りましたが、冷製で食するとアスパラの風味がさらに増して非常に美味、という嬉しい発見が今回ありました。あー、もうすぐ旬が終わってしまうのは残念でなりませんなー。

それにしても、ロンドンでは結局白アスパラを一度も見かけなかったです。ドイツマーケットに行かないと買えないみたいですが、イギリス人が全く興味を示さないのはちょっと不思議です。

LSO/エトヴェシュ/ポリーニ2010/06/20 23:59

2010.06.20 Barbican Hall (London)
Peter Eotvos / London Symphony Orchestra
Maurizio Pollini (P-3)
1. Bach (arr Webern): Fugue in Six Voices
2. Helmut Lachenmann: Double (Grido II)
3. Brahms: Piano Concerto No. 1

エトヴェシュ指揮の現代音楽中心という渋いプログラムながらほぼ満員の入りだったのは、ひとえにポリーニ効果でしょう。6/6と比較して、コチシュと言えどもポリーニと比べたら集客力には雲泥の開きがあったようです。エトヴェシュの指揮を聴くのは3回目ですが、自分の曲と20世紀以降の音楽しかやらない人だと思っていたので、ブラームスは初の19世紀もので意外な選曲でした。

ラッヘンマンはヴァイオリンが3群に分かれた弦楽合奏による25分くらいの曲で、私が思う典型的な「現代音楽」のイメージです。各弦楽器はこれでもかというくらい特殊奏法を駆使し、キーキーした落ち着かない音がが全編に渡って鳴り響きます。LSOはもちろん、イギリスのオケがラッヘンマンを取り上げることは今までなかったそうですが(BBC響は除く)、それだけにオケメンバーの真剣さはよく伝わってきて、聴衆は息を飲んで見守るしかありませんでした。

メインのブラームス、ポリーニを生で見るのは初めてでしたが、猫背でいかにも老いた感じは否めませんでした。ピアノはもちろんくずれることなくたいへん上手なのですが、アタックが弱くて覇気に欠け、終始淡々としていていました。これはこれで円熟の渋みなのかもしれませんが、思っていたポリーニのイメージとはずいぶん違いました。オケもいたってクールで、ノンビブラートに近い奏法で旋律に「歌」がなく、心を熱くさせる演奏ではありませんでした。エトヴェシュだったら、それこそバルトークでもやってくれたらお互いの「クールさ」が生きたかもしれないのになあ、と思ってしまいました。

フォークストーンで化石拾い2010/06/26 23:59

相変わらず女の子らしいものにはいっこうに興味を示さない娘との約束で、南東イングランド、ケント州の海岸沿いの町、フォークストーンまで化石探しに行ってきました。ロンドンから車で約2時間。良い天気でしたが風もあって酷暑ということはありませんでした。

イギリスには化石採掘できる場所が多数あり、情報サイトも豊富です。ざっと調べたところ、ロンドンから近くて確実に化石を拾えそうなところということで今回はフォークストーンを選びました。娘はこの日をずっと楽しみにしていて、「ティラノサウルスの爪を見つけるんだ」と、夢だけは壮大に持っておりました。

実際行ってみると、「ここが化石の海岸です」などと書いてある標識があるわけではなく、場所がわからなかったのでツーリストインフォメーションで聞いて、だいたいこのあたり、という砂浜まで何とかたどり着きました。

Folkstone

足下の石を注意深く見ながら歩いていると、早速巨大な蜂らしき昆虫が入った石を発見。

fossil 1

ところが、その後が全く見つからない。ガイドによればここはアンモナイトの化石の宝庫であり少し歩くといくらでも拾える、という話だったのですが、小さい二枚貝らしき残骸が入った石が少し見つかっただけでした。一時間くらい探し回り、諦めて引き上げようとしたところ、たまたまやって来たイギリス人のおっちゃんが「ここには化石はないよ。あるのはむこうの岩場の方(上の写真を撮っている自分の背後の方向)。今は満潮で行けないから、子供連れなら潮が引くのを待ってから行けばいい」と教えてくれました。潮の満ち引きは多少懸念はしていましたが、やはりそうだったか…。

一旦町に上がってランチを食べ、今度は反対側からその「Copt Point」と呼ばれる化石スポットにアプローチしてみました。潮はだいぶ引いていて、娘と一緒にすべりやすい岩場を慎重に歩きながらも何とか到達すると、確かに、アンモナイトや貝類の化石はわんさか見つかりました。ただし、歩いているだけで簡単に拾える、というほど甘くはありませんでした。まず、ごろごろとした岩場を歩くので、小さい子供には危険でオススメできません。また、化石はたいがい粘土質の土の中に埋もれていますので、掘り出して土を洗ってやるまではそれが何なのかはっきりわかりません。我々が全くの素人だからなんでしょうが、見つかるのは部分的な破片ばかりで、大きなものはそう簡単には見つからないと思いました。

1.5cmの小さいものでしたが、本日で最も形が良かったのはこれです。初回としては、まあ満足でしょう。良い休日でした。

fossil 2