LPO/N.ヤルヴィ/ギルトバーグ(p):My Lonely Valentine ― 2012/02/14 23:59
2012.02.14 Royal Festival Hall (London)
Neeme Järvi / London Philharmonic Orchestra
Boris Giltburg (P-1)
1. Rachmaninov: Piano Concerto No. 2
2. Kreisler (arr. Rachmaninov, orch. Leytush): Liebesleid (European premiere)
3. Rachmaninov: Symphony No. 2
妻娘が揃って風邪でダウン、おっさん一人で「バレンタインコンサート」に行くことになってしまいました。このベタベタにロマンチックな選曲、やはり客層は若い人、いかにも普段演奏会には行かなさそうな人が多かったです。楽章が終わるごとに拍手する人々、演奏中にカツカツとハイヒールの音を立てつつ外に出て行く女性、演奏中にボリボリ物を食べるガキなど…。
1曲目は超メジャーなピアノ協奏曲第2番、ライブで聴くのはすごく久しぶりです。6年前聴いたときのソリスト、ラン・ランは今週末バービカンにやってきますが、それはさておき。ボリス・ギルトバーグは今年28歳になるユダヤ系ロシア人の若手ピアニスト。昨年のチャイコフスキーコンクールに出たもののラウンド2に残れなかったようです。風邪でもひいているのか、右の鼻穴にティッシュを詰めて出てきました。別段どうということはないピアノだったので、論評に困ります。どうも音があまり澄んでない(はっきり言うと濁っている)ように聴こえるのは、ピアノの調律のせいかもしれないし、私の耳がおかしいのかもしれませんが、よく観察していると細かいミスタッチが多く、しかも後半になるほど増えていってました。まあ、本当に体調は悪かったのかも。ヤルヴィお父ちゃんは初めて聴きますが、巨匠の風格溢れる体格の通り、低音を効かせて堂々とした進行です。ニュアンスというものは薄く、その代わりに弦の音は磨き上げられ、弦と木管のハーモニーが実に美しく溶け合っていました。こういうのは厳格なリハーサルとベテランのワザがあってこその結果ですよね。ただし、一番重要なはずのクラリネットは、音は綺麗なんですが木で鼻をくくったような何とも味のないソロで、私は感心しませんでした。
1楽章が終わったところで大量のレイトカマーを入れたため、この人達がどやどやといつまでも騒々しく、ヤルヴィもいったん指揮を始めようとしたもののあまりにうるさくて断念し、結局ノイズが収まるまで長い時間仏頂面で待っていました。せっかくのテンションに水を注されたかっこうで、これは会場のマネージメントが悪いです。
続くクライスラーの「愛の悲しみ」は、欧州初演というふれこみでプログラムにクレジットされていたものの、これは本来ならアンコールという取り扱いですよね。拍手がほとんど消えかかっていたにもかかわらず、ボリス君はもう1曲アンコールで子犬のワルツのようなコロコロとした小曲(曲名不明)を弾いてくれました。こういう軽めのアルペジオな曲のほうがこの人の本来の持ち味が生きるように思いました。
メインのラフマニノフ第2番はここ数年マイブームなので、実演の機会があればできるだけ聴きに行ってます。ここでもヤルヴィはすっきりと見通し良く音を整理しながら、ストレート、質実剛健に歩んで行きます。LPOはいつになく上手いし、リタルダンドやポルタメントはきっちりやってますが、情緒こもったロマンチックにはなり切れない歯がゆさがありました。あまりスケール感はなく、意外と小さくまとまっている印象です。1楽章ラストのティンパニの一撃は無し。ヤルヴィは打楽器奏者出身なのでガツンとやってくれるかと期待したのですが。
ロマンチックの極み、第3楽章ではまたしてもクラリネットが「木偶の坊」(「マグロ」と書いて、下品なのでやめました。って、結局書いてますが)。ここまで徹底しているということは、これは指揮者の解釈か、奏者のこだわりなんでしょう。終楽章は金管打楽器を思いっきり解放し、熱く盛り上げて行きました。なかなか上手いドライブで、LPOもハマるとここまで馬力が持続するんだ、と見直しました。だいぶ遅い時間だったので終楽章の途中で帰る人もいれば、少なからぬ人が終演と同時に席を立ちましたが、拍手はけっこう盛り上がっていました。私もコーダの迫力と疾走感は、ヤルヴィの統率力に感心しました。
大勢の人がすでに帰った中、トドメのアンコールはもちろん「ヴォカリーズ」でロマンチックに閉めました。時刻はすでに夜10時、長い演奏会でした。何となく物足りなくて、昨年のBBC響/山田和樹の演奏会録音(膝上ではありません、BBC Radio 3から)をiPodで聴きつつ帰りましたが、艶やかな音の膨らみ、情感溢れる弦の旋律、切々と歌うクラリネット、やっぱこの曲はええわー。これは悪いけど正直、BBC響の圧勝でした。
Neeme Järvi / London Philharmonic Orchestra
Boris Giltburg (P-1)
1. Rachmaninov: Piano Concerto No. 2
2. Kreisler (arr. Rachmaninov, orch. Leytush): Liebesleid (European premiere)
3. Rachmaninov: Symphony No. 2
妻娘が揃って風邪でダウン、おっさん一人で「バレンタインコンサート」に行くことになってしまいました。このベタベタにロマンチックな選曲、やはり客層は若い人、いかにも普段演奏会には行かなさそうな人が多かったです。楽章が終わるごとに拍手する人々、演奏中にカツカツとハイヒールの音を立てつつ外に出て行く女性、演奏中にボリボリ物を食べるガキなど…。
1曲目は超メジャーなピアノ協奏曲第2番、ライブで聴くのはすごく久しぶりです。6年前聴いたときのソリスト、ラン・ランは今週末バービカンにやってきますが、それはさておき。ボリス・ギルトバーグは今年28歳になるユダヤ系ロシア人の若手ピアニスト。昨年のチャイコフスキーコンクールに出たもののラウンド2に残れなかったようです。風邪でもひいているのか、右の鼻穴にティッシュを詰めて出てきました。別段どうということはないピアノだったので、論評に困ります。どうも音があまり澄んでない(はっきり言うと濁っている)ように聴こえるのは、ピアノの調律のせいかもしれないし、私の耳がおかしいのかもしれませんが、よく観察していると細かいミスタッチが多く、しかも後半になるほど増えていってました。まあ、本当に体調は悪かったのかも。ヤルヴィお父ちゃんは初めて聴きますが、巨匠の風格溢れる体格の通り、低音を効かせて堂々とした進行です。ニュアンスというものは薄く、その代わりに弦の音は磨き上げられ、弦と木管のハーモニーが実に美しく溶け合っていました。こういうのは厳格なリハーサルとベテランのワザがあってこその結果ですよね。ただし、一番重要なはずのクラリネットは、音は綺麗なんですが木で鼻をくくったような何とも味のないソロで、私は感心しませんでした。
1楽章が終わったところで大量のレイトカマーを入れたため、この人達がどやどやといつまでも騒々しく、ヤルヴィもいったん指揮を始めようとしたもののあまりにうるさくて断念し、結局ノイズが収まるまで長い時間仏頂面で待っていました。せっかくのテンションに水を注されたかっこうで、これは会場のマネージメントが悪いです。
続くクライスラーの「愛の悲しみ」は、欧州初演というふれこみでプログラムにクレジットされていたものの、これは本来ならアンコールという取り扱いですよね。拍手がほとんど消えかかっていたにもかかわらず、ボリス君はもう1曲アンコールで子犬のワルツのようなコロコロとした小曲(曲名不明)を弾いてくれました。こういう軽めのアルペジオな曲のほうがこの人の本来の持ち味が生きるように思いました。
メインのラフマニノフ第2番はここ数年マイブームなので、実演の機会があればできるだけ聴きに行ってます。ここでもヤルヴィはすっきりと見通し良く音を整理しながら、ストレート、質実剛健に歩んで行きます。LPOはいつになく上手いし、リタルダンドやポルタメントはきっちりやってますが、情緒こもったロマンチックにはなり切れない歯がゆさがありました。あまりスケール感はなく、意外と小さくまとまっている印象です。1楽章ラストのティンパニの一撃は無し。ヤルヴィは打楽器奏者出身なのでガツンとやってくれるかと期待したのですが。
ロマンチックの極み、第3楽章ではまたしてもクラリネットが「木偶の坊」(「マグロ」と書いて、下品なのでやめました。って、結局書いてますが)。ここまで徹底しているということは、これは指揮者の解釈か、奏者のこだわりなんでしょう。終楽章は金管打楽器を思いっきり解放し、熱く盛り上げて行きました。なかなか上手いドライブで、LPOもハマるとここまで馬力が持続するんだ、と見直しました。だいぶ遅い時間だったので終楽章の途中で帰る人もいれば、少なからぬ人が終演と同時に席を立ちましたが、拍手はけっこう盛り上がっていました。私もコーダの迫力と疾走感は、ヤルヴィの統率力に感心しました。
大勢の人がすでに帰った中、トドメのアンコールはもちろん「ヴォカリーズ」でロマンチックに閉めました。時刻はすでに夜10時、長い演奏会でした。何となく物足りなくて、昨年のBBC響/山田和樹の演奏会録音(膝上ではありません、BBC Radio 3から)をiPodで聴きつつ帰りましたが、艶やかな音の膨らみ、情感溢れる弦の旋律、切々と歌うクラリネット、やっぱこの曲はええわー。これは悪いけど正直、BBC響の圧勝でした。
コメント
_ つるびねった ― 2012/02/17 09:08
おやっ。Miklosさんもひとりヴァレンタイン・デーでしたか。わたしなんて冬の旅でしたよ。心がすさんでくー。
_ Miklos ― 2012/02/18 04:34
あのー、私の「ひとりヴァレンタイン・デー」はアクシデントなわけでして…。数ある演奏会の中であえて「冬の旅」を選ぶつるびねったさんの根性に脱帽です。歌曲は苦手分野なんで、「菩提樹」くらいしか知らないかなー。
_ feliz2 ― 2012/02/20 06:39
初めまして。以前から楽しく拝見させて頂いてました。私もコンサートはわりとよく行っており、滞在も長くなってきて、行ったコンサートが訳わからなくなってきたので、ちょっと整理をしないとなぁと思って、ブログを始めました。
(つるびねったさんとはツィ友(?)です。)
私もネーメ、金曜の方に行きました。金曜も若い人が多かったです。ラフ2には大満足でした。NYフィルのマラ9も聴きましたが、私はえらく琴線に触れ、衝撃を受けてしまいました。世間ではあんまり評判がそれほどよくなかったようですが、私はえらくはまってしまいました。よろしければ今後どうぞよろしくお願いします。
(つるびねったさんとはツィ友(?)です。)
私もネーメ、金曜の方に行きました。金曜も若い人が多かったです。ラフ2には大満足でした。NYフィルのマラ9も聴きましたが、私はえらく琴線に触れ、衝撃を受けてしまいました。世間ではあんまり評判がそれほどよくなかったようですが、私はえらくはまってしまいました。よろしければ今後どうぞよろしくお願いします。
_ Miklos ― 2012/02/20 08:44
feliz2さん、コメントありがとうございます。ブログ拝見いたしましたが、さすがつるびねったさんのツィ友、精力的に演奏会を聴かれているご様子で、話の合いそうな方にいらしていただけて非常に嬉しいです。
ぶつくさ文句ばかり書いているように自分でも思いますが、たいていの演奏会では、音楽そのものには満足して帰っているんですよ(そうでない場合は直接的に不快感を表してます)。「人は憎んでも音楽は憎まず」が長年のモットーですし。ヤルヴィお父ちゃんのラフ2もオケの馬力を十分に引き出した快演だったと思います。NYPのマラ9は極めて繊細に作り込まれた演奏で、こういうのこそ、かぶりつきで聴くべきだったかと後悔しました。
今後ともどうかよろしくお願いいたします。
ぶつくさ文句ばかり書いているように自分でも思いますが、たいていの演奏会では、音楽そのものには満足して帰っているんですよ(そうでない場合は直接的に不快感を表してます)。「人は憎んでも音楽は憎まず」が長年のモットーですし。ヤルヴィお父ちゃんのラフ2もオケの馬力を十分に引き出した快演だったと思います。NYPのマラ9は極めて繊細に作り込まれた演奏で、こういうのこそ、かぶりつきで聴くべきだったかと後悔しました。
今後ともどうかよろしくお願いいたします。
_ feliz2 ― 2012/02/20 17:25
お返事ありがとうございます。数は結構行ってるのですが詳しくはないです。私の場合、コンサートは感動したか、楽しかったか、が基準なのであんまりあてにならないです。素人ですし。ちなみに上に書いた「世間では」というのは新聞その他が出してるレビューのことです^^。かなり自分の感想と違うことが結構あります。
あのマラ9の時は、私はたまたま空いていた一階の端の方の安い席を取りました。私もコンサートで座るのは大抵前方です。
あのマラ9の時は、私はたまたま空いていた一階の端の方の安い席を取りました。私もコンサートで座るのは大抵前方です。
_ feliz2 ― 2012/02/20 18:37
ブログリンクさせていただきました。事後報告ですみません。ご都合悪ければおっしゃて下さい。
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_ *クラシック*音楽生活@イギリス - 2012/02/20 18:04
Fri 17th Feb, 2012 19.30- @Royal Festival Hall
Sergey Rachmaninov: Piano Concerto No.2
Fritz Kreisler: Liebesleid (Old Viennese Dance No.2) arr. Rachmaninov, orch. Leytush
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