LSO/チャン/デイヴィーズ(fl):バルトークは続くよどこまでも2011/11/09 23:59


2011.11.09 Barbican Hall (London)
Xian Zhang / London Symphony Orchestra
Gareth Davies (Fl-2)
1. Bartók: The Miraculous Mandarin - Suite
2. Nielsen: Flute Concerto
3. Zemlinsky: Die Seejungfrau (The Mermaid)

ブダペスト旅行から帰ってきても、やっぱりバルトーク。とりあえずこれで一段落ですが。この演奏会のチケットを買ったのも、ひとえにバルトークが目当てでした。「中国の不思議な役人」は何度も聴いて(見て)いるお気に入りの演目ですが、そこそこ人気があるはずの組曲版を何故か実演で聴いたことがなかったのです。今日の指揮者は中国人のチャン・シエン(張弦)、女性の若手です。中国人名のカタカナ化はけっこう難しく、PMFのWebサイトでは「シャン・ザン」となっていました。小柄な身体ながら非常にわかりやすそうな指揮をする人で、変拍子も極めて明解に振っていました。ならず者たちに客を取らされている少女が道ゆく男を誘う場面のクラリネットのカデンツ風ソロまで細かく棒を操っているのには、そこまでせんでも、と思ってしまいました。しかし、この場面を含めて全体的にいかがわしさがよく出ていたし、リズムにもキレがあり、なかなか変態チックな好演でした。

2曲目のニールセンは全く初めて聴く曲でした。ちょっと変わった雰囲気の曲で、金管はトランペットを欠いてホルン2本にトロンボーン1本。クラリネットやトロンボーンがソロイスティックに活躍し、フルートにしつこく絡んでいきます。ティンパニもドカドカとうるさく、フルートの主役の座は常に脅かされており、むしろ影が薄いと言ってもよい状態。張さんはこの小編成の曲をふわりと軽めにまとめて、さっきとは違う面を見せていました。

メインはツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」という、これまたドマイナーと言ってよい選曲。冒頭はドビュッシーのように見せかけといて、実はリストからリヒャルト・シュトラウスへと繋がるドイツ交響詩の王道に乗った、聴き応え十分の力作でした。途中チャイコフスキーのような旋律も聴かれ、かなりロマンチックな曲です。アンデルセンの童話をベースにしていますが、メルヘンチックではなく複雑な響きをすっきりと整理した、見通しのよい直線道路のような演奏でした。ただ、先のニールセンもそうですが、ここまで馴染みのない曲だと演奏を論評するのもはばかられますので、どうかこのへんでご勘弁。

客入りは今までLSOを聴きにきた中でも極端に悪く、上階の席は本当にお寒かったです。このマニアックなプログラムではいたしかたなしですか。指揮者はなかなか器用な人で、将来有望な若手であることは間違いないと感じました。調べるといつもこんな感じのマイナーなプログラム路線を猪突猛進している人みたいで、これが出来てしまうのはある意味LSOの懐の深さも凄いわけですが、ニッチ市場向けで終わってしまってはもったいない、どこかで殻を破る必要があるんじゃないかと僭越ながら思ってしまいました。