アムステルダム2011/12/01 23:59


仕事でちょっとだけアムステルダムに行きました。実は初オランダです。あまり時間はありませんでしたが、ちょいと写真を。


アムステルダム中央駅。東京駅のモデルとなった駅舎、と私もそう聞いて信じ込んでいたのですが、調べてみると信憑性のない俗説だそうです。実際見てみると、赤レンガ造りというのが共通しているだけで、一見してまず様式が全然違います(アムステルダムはネオゴシック、東京はビクトリアンだそう)。駅の中はさらに、全く別物という印象。東京があまりにゴテゴテし過ぎているのかもしれませんが。


駅前の自転車置き場はおびただしい数の自転車でとんでもないことになっていました。アムステルダム市内は専用道路がくまなく整備されている自転車天国。けっこう猛スピードで走ってくるので旅行者には恐かったです。


前を通りかかっただけ、コンセルトヘボウ。いつか一度はここで極上の演奏を聴いてみたいものです。


国立美術館(ライクス・ミュージアム)は改装工事中でしたが、フェルメール、レンブラント等のオランダ絵画のメジャーな所蔵品は展示してます。


夕食は「五匹の蠅(D’ Vijff Vlieghen)」というレストランに行ってみました。まだ早い時間帯に行ったので店内はガラガラ。中世の雰囲気を残した内装は一見の価値ありです。


料理の名前はメモり忘れましたが、前菜は子牛肉の薄切りにレバーのムースとルコラが乗ったもの。生ではなく一応火は入っています。


メインはマッシュポテトの上に赤魚のグリルが乗ってます。どちらも味付けはいたってシンプル、ソースも非常に控えめで、素材の持ち味を大事にしているので日本人の口に合うでしょう。モダンブリティッシュに似ている気もします。私的にはもうちょっとパンチの利いた味が欲しいところ。次に機会があったら、もっとローカルな庶民料理にチャレンジしたいです。


インパクトがあったのはデザートで選んだチーズの盛り合わせ。オランダのゴーダというと、日本ではプロセスチーズよりはちょっとまし、くらいな位置づけで売られていますが、本場の熟成品は全く別物の美味しさでした。

3コースで35ユーロはそんなに安くはないけれど、まあ有名な老舗ということで。ボリューム的には十分満腹になります。特に最後のチーズがききました。

あとは、写真は撮ってませんが、せっかくアムステルダムに来たのだからやはり一度は見てみないと、ということで「飾り窓」地区も少し歩いてきました。家族旅行だったら、ちょっと来れないところだし。本当に、ショーウインドウの中で怪しい照明に照らされながら、下着姿のおねえちゃん達(おばちゃんもいましたが)が営業スマイルを投げてきます。まだ観光客がわんさかいたのでよかったですが、ちょっと一つ横道に入ると人通りがぱたっとなくなったりして、ここを夜中に一人で歩く勇気はないかなあ。

ロイヤルバレエ:「くるみ割り人形」初日は主役緊急交代ハプニング2011/12/03 23:59


2011.12.03 Royal Opera House (London)
The Royal Ballet
Barry Wordsworth / BBC Concert Orchestra
Peter Wright & Lev Ivanov (Choreography)
Marianela Nuñez (The Sugar Plum Fairy), Thiago Soares (The Prince)
Iohna Loots (Clara), Ricardo Cervera (Hans Peter/The Nutcracker)
William Tuckett (Herr Drosselmeyer), Laura Morera (Rose Fairy)
1. Tchaikovsky: The Nutcracker

ちょうど2年前のロイヤルバレエ「くるみ割り人形」が我々のROHデビューでした。数えてみるとこの2年でROHにはオペラ、バレエ合わせて都合23回来ており、ほぼ月一のペース。ロンドンはチケットが高いので何でもかんでも見に行けないなと思っていたのですが、ブダペストのころの4年で60回というペースよりは落ちるものの、振り返ると結局そんなにセーブできてないんですなー。

今シーズンの「くるみ」はいつものオペラハウスのオケだけでなく、公演の約半分、26回中12回をBBCコンサートオーケストラが担当します。ここはクロスオーヴァー、ライトミュージックを専業とする軽めの楽団のようで、なぜ今回の伴奏を、全部ではなく中途半端に半分以下を担当することになったのか(しかも大事な初日を含む)、経緯はよくわかりませんが、今シーズンの「くるみ」は公演数が多いので劇場付きのオケのみでは規定労働時間を超えてしまうとか、そういう問題なのではないかいな。初めて聴くオケでしたが、一聴して音が平板、いかにも「お仕事お仕事」という感じの演奏で面白みがありませんでした。レスポンスの鈍いオケで、ただの裏打ちがはねてシャフルのリズムになってしまっているところもありました。ティンパニも何だかヘタクソ。今日は席の選択をミスったか、舞台向かって右側の最前列だったのでブラスの音がまともに耳に入ってきて、ブカブカとうるさいトロンボーンにチューバ、荒いトランペットが耳に障って仕方ありませんでした。一番良かったのはハープの男性二人です(笑)。指揮者のワーズワースは以前トリプルビルで聴いています。正直オケの統率力には疑問符を感じたのですが、今日は自身が桂冠指揮者を勤める手兵だったのでリラックスし、大崩れなくまとめていました。

第一幕はテンポの良い場面転換でパーティーのシーンまで持っていき、のっけからワクワクさせます。細部まで凝りに凝った、ゴージャスなプロダクション。真ん中で踊っている人々のかたわら、舞台の隅のほうでも各々小芝居が繰り広げられ、見ていて飽きません。クララ役のアイオーナ・ルーツは芝居が細かいんですがわざとらしくならない節度があって、ナチュラルな表現力に長けた人ですね。相手役のセルヴェラはもっと素朴で実直な感じ。ドロッセルマイヤー役のトゥケットも落ち着いた渋い演技でした。第一幕だと、最初に見て擦り込まれているのがワイノーネン版なので、プレゼントは最後に黒塗りのムーア人人形が飛び出してきてクルクル回るのが自分の中ではデフォルトなのですが、顔黒塗りはやっぱり表現方法としてマズいのか、ライト版では男女ペアの兵士人形(今日は蔵健太さんでした)が銃を構えて子供たちを脅します。銃で子供を脅すのは教育上問題ないんですかねえ。イギリス人の理屈はようわからん。

第二幕が開く直前、バレエ芸術監督のモニカ・メイソンが突然マイクを持って登場したので、もしやと思いましたがそのもしやでした。シュガープラムを踊る予定だったセイラ・ラムが急病のため踊れなくなり、幸いオペラハウスに別のシュガープラムがいたので(と言うと笑いが起こりました。そりゃそうだ、今日の出演メンバーの中にも踊れる人が何人もいましたから)、急きょ代役としてマリアネラ・ヌニェスが踊ります、というようなアナウンス。今シーズンの「くるみ」では、ヌニェスはキシュとのペアでエントリーされているので、予定外の夫婦競演が見れてラッキーと言うか何と言うか。逆に、長年のパートナーだからこそ、こんな急な代役でも引き受けることができたんでしょう。予定外の出演でリハ無し(でしょう、もちろん)をモノともせず、ダイナミックで思い切りがよく、キメのポーズがまたいちいち美しい、完成されたパ・ドゥ・ドゥでした。

それにしても、万が一の事態のために代役のできるプリンシパルは常に誰か劇場で待機しなければならないとしたら、今更ながらプリンシパルってのは過酷な職業ですね。実は前回、2年前に見たときも、カスバートソンの代役でヌニェスの金平糖を見ていたのでした(このときは当日の配役表ですでに代わっていたので、それほど急な降板ではなかったけれど)。逆にセイラ・ラムはトリプルビルでしかまだ見たことがなかったので今回楽しみだったのですが、その点はちょっと残念。第二幕では他に、葦笛の踊りで高田茜さんが元気そうに復活されてました。花のワルツでは、2年前はバラの精だったユフィちゃんが今回は取り巻きの花に一歩下がっていました。ユフィちゃん、来年の分では金平糖の精を踊ったりもするので、ファーストソリストは忙しいですね。怪我だけは気をつけてください。

毎年12月は家族揃って「くるみ割り人形」を見に行くと決めてから今年で8年目。来年はどこで見ているかわかりませんが、もしまだロンドンにいて、ロイヤルが来シーズンもやってくれていたら、是非是非また見に行きたいものです。

ブリテン・シンフォニエッタ/エルダー卿:比類なき美しさ「キリストの幼時」2011/12/08 23:59

2011.12.08 Queen Elizabeth Hall (London)
Sir Mark Elder / Britten Sinfonia
Sarah Connolly (Ms), Allan Clayton (T)
Roderick Williams (Br), Neal Davies (Bs)
Britten Sinfonia Voices
1. Berlioz: L'enfance du Christ, Op.25

初めて聴くブリテン・シンフォニエッタは、BritainではなくBrittenです。つまり作曲家ブリテンの名を冠したアンサンブルで、本拠地はケンブリッジだそうです。シーズンプログラムをざっと見るとバロック、古典から現代まで幅広いレパートリーを持っていますが、やはりブリテン周辺の20世紀の音楽を得意としている様子。

ベルリオーズを特に好んで聴く人でもない私が(嫌いというわけではないのですが、結局「幻想交響曲」以外、よく知らないのです)何故この「キリストの幼時」という苦手ジャンルの声楽曲を聴きに行ったかと言うと、終盤に出てくる有名な「2本のフルートとハープの3重奏」には訳あってノスタルジーがあり、一度実演で聴いてみたいと思っていたところ、たまたまこの演奏会を見つけたのでした。生で聴く機会はなかなかない曲と思っていたのですが、イギリスだとそうでもないみたいですね。今日はフェスティヴァル・ホールのほうではアシュケナージ/フィルハーモニア管がほかでもない幻想交響曲を演奏していたのでそちらもたくさん人がいたのですが、渋いプログラムのこちらもほぼ満員。ただし客層は見事にシニア一色でした。

この曲を通しで聴くのはほとんど初めてのようなものです。ベルリオーズが自分の名を伏せ、17世紀に作曲された宮廷礼拝堂のオラトリオの断片として紹介した「悪戯」が、この作品の誕生したきっかけですので、全編ベルリオーズらしからぬ古雅で敬虔な雰囲気で統一され、確かに、予備知識がなければ私もバロック時代の作品と信じたでしょう。ということで、「ベツレヘムの嬰児虐殺」をテーマに含んでいるわりにはやけに落ち着いて、派手な音響、えげつない表現は一切ない心地良いヒーリング音楽に、第一部はすっかり夢の彼方。

休憩で気を取り直して第二部。最初に作曲され、出所を偽って発表されたのはこの部分ですが、何という美しい旋律とハーモニー。誰の作曲であろうと、この比類ない美しさは賞賛されたと思います。ブリテン・シンフォニエッタの弦とコーラスが、これまた非常に澄み切った極上サウンドなので驚きました。第三部の「2本のフルートとハープの3重奏」も人智を超えた天上の響き。開演が15分も遅れたので規律の弱いオケだなと最初は悪印象だったのですが、完璧なアンサンブルにすっかり感心してしまいました。この透明感は、まさにピリオド系の古楽器集団のものです。ピリオド専門じゃない楽団がここまでの音を作れるとは、ブリテン・シンフォニエッタ、侮れじ。独唱も粒ぞろいで穴がなく、ホールが広すぎない分よく声が通って、素晴らしい出来でした。ただ、演出にはちょっと難ありです。上手下手の端に独唱者を分けて配置し、歌う場面になると指揮者の近くまでそろりと歩いてくるのですが、この美しく静かな音楽に足音は全く邪魔でした。最後など、コーラスが消え入るように歌っている最中に独唱者を歩かせたりするのはいかがなもんかと。単純に、指揮者の左右に座って出番が来たら立つのではなぜいけなかったのか。また、ハープは第2ヴァイオリンの後ろに置かれていてフルートと相当距離があり、どうするんだろうと思っていたら、3重奏のときにフルートが端まで移動してきて、ついでに指揮者まで移動してきて丁寧に3重奏を指揮していました。舞台上フルートの横あたりはスペースがあったので、なぜ最初からそこにハープを置かないのか。理解できないことだらけでした。

この曲、来週木曜日までBBC Radio 3のオンラインで放送してますが、演奏はこれではなく、ウェールズのBBCナショナル管のカーディフでのライブです。うーん、残念。


Philipsのコードオンリーひげ剃り2011/12/10 23:59

1ヶ月ほど前になりますが、20年ぶりに電気ひげ剃りを買い替えました。下のブルーのが新しく買ったHQ6940という機種です。


上のほうの古いPhilipsは初めてヨーロッパ旅行に行く前に買ったので、かれこれ20年近く前の製品です。全電圧対応なのにロンドンのホテルでは何故か動かなかったのを思い出します。今から思うと、B型のアダプタが必要だったのにC型しか持ってなかったのが原因かも(一見ぴったり入るだけにタチが悪い)。

そう、どちらのひげ剃りもコードオンリー、つまり充電池のないタイプなのです。それ以前に使っていた何台もの電気ひげ剃りは、寿命が充電池の寿命で決まってしまいどれも数年も保たなかったし、急いでいるときに限って充電不十分で困ったことが何度もありました。そこで思い切って充電できないヤツを買ったら、めちゃめちゃ軽いし、キャンプにでも行かない限り電気は必ずあるので使えない事態はなく、たいへん気に入ってしまいました。それ以降20年ずっと現役でほぼ毎日何の問題もなく使ってきたのだから、選択は間違ってなかったわけです。メンテも、ひげが溜まったら開けてブラシで掃除するくらい。下手にアルコールとか超音波とかで洗浄しなかったのが(水洗いなどはもってのほか)さびを防ぐ意味でむしろよかったのでしょう。

しかし、さすがに経年劣化は否めず、モーターの音が年々うるさくなり、剃ったひげがこぼれるようになったり、歯の高さ調整のベルトも切れてしまって、ぼちぼち引退の時期かなと最近思い始めていました。Philipsのコードオンリーのひげ剃りは日本ではずいぶん前からカタログから外れており、買うならヨーロッパにいる今がチャンスということで。

が、世の常として、こういう機械類は昔の製品のほうが得てして作りがしっかりとしています。新しいPhilipsちゃん、確かに音は静かですが、歯の部分のはめ合いが甘くガタガタ動くので、やっぱりひげはこぼれてきます。何だかこいつはそんなに長持ちしないような気がしています。筐体が少し大きくなったのも、コンパクト好きな私としては気に食わない。しかしPhilipsでもコードオンリーはこいつとその後継機種しかカタログになく、選択肢がありません。コードオンリー、私は絶対に良いと思うんですが、世の中の需要はそんなにないんですかねえ…。まあ、20年も買い替えてくれなかったら、メーカーとしては商売あがったりですが。

LSO/ガーディナー:魂の抜けた「第九」は宇宙人のシワザ?2011/12/15 23:59


2011.12.15 Barbican Hall (London)
Sir John Eliot Gardiner / London Symphony Orchestra
Rebecca Evans (S-2), Wilke te Brummelstroete (Ms-2)
Michael Spyres (T-2), Vuyani Mlinde (Bs-2)
Monteverdi Choir
1. Beethoven: Symphony No. 1
2. Beethoven: Symphony No. 9 (‘Choral’)

去年の2月ですからほぼ2年近く前に、テナーを除き全く同じ取り合わせの演奏会を聴いています。選曲まで全く同じなので、どうしようかと思ったのですが、せっかく12月に「第九」をやるのだから、日本人的にはやっぱり聴いておこうと。前回は高速テンポの中でも透明ながらも芳醇という一見背反する特質がちゃんと同居していたので、さすがはLSO世界の超一流、と感心したものでした。コーラスも少人数で十分な声量と完璧なアンサンブル、日本ではめったに聴けないであろう少数精鋭の「第九」でした。

しかしながら今回は、ずいぶんと贅肉がつき、魂のない演奏になっていたのでがっかりしました。ピリオド系演奏であることは変わりがなく、基本ノンビブラートの弦に速いテンポで突き進みますが、上辺だけ取り繕ってがちゃがちゃ弾いている印象が拭えず、前のようにきっちり丁寧に積み上げたところがなくなっていました。ピッコロは他の木管から離れてトランペットの隣りで、しかも立って演奏していましたが、ぴーぴーとうるさく、何もそこまで強調せんでもと。弦は気が抜けていて、木管はうるさく、金管は音が濁ったうえに雑、演奏しているのはいつものLSOの人々に見えますが、人知れず侵略してきた宇宙人が成り済ましているんじゃないかと思ってしまったくらいでした。そんな中でもいつもの質を保っていたのは打楽器パート。ティンパニは前回同様硬質のバチで鋭いアクセントをつけ、第1番ではバロックティンパニ2台、第9番はモダンティンパニ4台と使い分けながらも、さすがにチャイコフスキーのときのような勝手な音程変更は一切なく、黙々と仕事をこなしていました。オケがピリッとしないのはコーラスにも伝染し、前聴いたようなドライな清涼感はなく、ハーモニーに濁りが目立ちました。あまりにもおかしいなと思ってメンバー表を2年前のと見比べてみたら、コーラスは半分近くが入れ替わっているんですね。さらには独唱もパッとせず、特にソプラノ、バリトンはよれよれでした。

この演奏会はいったい何だったのでしょう。前日忘年会でもやって皆さん二日酔いなんですかね。どこをとってもあからさまにリハ不足に見えました。聴いた席も前回とほぼ同じあたりですので、席のせいではないでしょう。最初、今シーズンのプログラムでこの演奏会を見つけたとき、何も全く同じ選曲でやらなくてもよいものをと思ったのですが、日程的にリハの時間が取れないことがあらかじめわかっていたのであえて同じ曲にしたのか、と考えればいろいろと腑に落ちます。2シーズンぶりとは言え同じメンバーで前にもやったのだから、とナメてかかっていたのがこの報いです。LSOはたまにこういうのがあるからなー。後になって一歩引いて思い起こせば、そこまでひどい演奏でもなかったのかもしれませんが、こちらは2年前と同様の感動を期待していた落差がありましたので、辛い評価しか出てきません。それとも、こちらの耳が肥えてしまったのかな…。

ロイヤルバレエ/マルケス/マクレー:眠れる森の美女(最終日)2011/12/21 23:59


2011.12.21 Royal Opera House (London)
The Royal Ballet
Boris Gruzin / Orchestra of the Royal Opera House
Marius Petipa (Choreography), Frederick Ashton, Anthony Dowell,
Christopher Wheeldon (Additional Choreography)
Roberta Marquez (Princess Aurora), Steven McRae (Prince Florimund)
Gary Avis (King Florestan XXIV), Genesia Rosato (His Queen)
Alastair Marriott (Cattalabutte), Kristen McNally (Carabosse)
Itziar Mendizabal (Lilac Fairy), Ryoichi Hirano (Lilac Fairy's Cavalier)
Lara Turk (Crystal Fountain Fairy), Emma Maguire (Enchanted Garden Fairy)
Fumi Kaneko (Woodland Glade Fairy), Elizabeth Harrod (Song Bird Fairy)
Bennet Gartside (English Prince), Johannes Stepanek (French Prince)
Kenta Kura (Indian Prince), Thomas Whitehead (Russian Prince)
Sian Murphy (The Countess), Philip Mosley (Gallison)
Kenta Kura, Elizabeth Harrod, Lara Turk (Florestan and his sisters)
Liam Scarlett (Puss-In-Boots), Elsa Godard (The White Cat)
Yuhui Choe (Princess Florine), Alexander Campbell (The Bluebird)
Romany Pajdak (Red Riding Hood), Thomas Whitehead (The Wolf)
1. Tchaikovsky: The Sleeping Beauty

我が家の今年最後のオペラハウスは「眠れる森の美女」最終日。今回は前から興味のあったストール最前列ど真ん中の席で見てみました。確かに足ワザが見えにくかったり、指揮者が振り向くと目の前に顔があり驚きますが、舞台を見る上では指揮者はほとんど邪魔にならず、ダンサーに最も近い距離で見れるということで、マクレー様ファンの妻はいたく気に入った様子でした。

ロイヤルバレエの「眠れる森の美女」はけっこう古いプロダクションで、これが858回目の公演だそうです。パリあたりだと「田舎臭い」と一蹴されそうなオーソドックスな舞台でしたが、我々にはこういう古き良き香りのほうが好みです。原色を大胆にあしらったダンサーの衣装はカフラフルでたいへん華やか、これは田舎臭いどころかデザイナーの尖ったセンスを感じました。実は生まれて初めて見たバレエの舞台は「眠れる森の美女」だったのですが、たいしたストーリーじゃないのに延々と踊りが続く長丁場が苦痛で、音楽的にも同時期に作曲していた交響曲第5番からのメロディーやアイデア借用がいちいち鼻について、正直好きではないバレエでした。しかし今日は間近で見るダンサーの一挙手一投足、テンポのよい場面転換、盛りだくさんのキャラクター、ロイヤルらしく隅々で繰り広げられる小芝居と、飽きるヒマもなく最後まで楽しめました。オケの演奏もビロードの響きとまではいきませんがいつになくしっかりしており、コンマスAnia Safonovaさんの実に艶やかなソロが華を添えていました。

オーロラ姫のマルケスは今回2公演しかキャスティングされてなかったうち1回を怪我でキャンセルしたはずなので、これが今シーズンで唯1度のオーロラでしょうか。小柄でプリティ系のお顔立ちは無垢なお姫様役にうってつけです。第1幕のローズ・アダージョ、他と見比べてないので何とも言えませんが、最初にポアントで王子の手を次々と取っていく場面で、バランスがヤバかったのか、さっと手を触るだけで早く次ぎに行ってよ、みたいに焦っている箇所がありましたが、他は文句のつけようもなく、パーフェクトに可憐なオーロラ姫でした。パートナーのマクレーとの息も変わらずぴったりで、うちの妻は「あの二人は絶対に愛し合っている!」といつも主張しております。私生活のパートナーシップまで私は知りませんが。


妖精が出てきて姫を祝福するプロローグでは、緑の妖精(Woodland Glade、どう訳すんですか)に金子扶生さんが抜擢されていました。お顔立ちは吉田都さんを思わせる和風作りですが、恵まれた体格は本当に舞台映えしますね。ベテランのごとく堂々と成熟した技術も見ていて安心感があり、度胸もありそうなので、引き続き注目して応援したいと思います。あとは青い鳥のユフィちゃんは相変わらず美人でした。ちょっとよく判別できなかったのですが、最後の群舞では高田茜さんがいたように見えました。小林ひかるさんはマチネのほうでオーロラを踊っていたのでこちらには出演してませんでしたが、男性陣は平野さん、蔵さんとも元気に出ていて、特に平野さんのほうは、こんなにキレのあるダイナミックな踊りをする人だったのかと、不見識ながら初めて気付きました。

今日の席は舞台を見るには良かったんですが、娘の隣席に座った(多分)中国系のおばさんがノイジーでぶち切れ寸前でした。最初、指揮者が出てきて指揮台に上り指揮棒を構えるギリギリまで携帯で通話をしていました。ただスイッチを切らなかったんじゃないんです、通話です。演奏が始まってからも、バッグに携帯をしまい、手に抱えたスーパーのビニール袋からガサガサと大きい音を立てつつペットボトルの水を取り出して堂々と飲んでいました。じっとしていられないたちなのか、終始何かごそごそとしてはスーパーの袋をガサガサと探り、うるさいことこの上ない。周りの人々がじっと見て無言で抗議をするも、気にする様子ゼロでした。反対側、妻の隣席の白人女性が休憩時間に娘の年齢を聞いてきたので10歳と答えると、「10歳の子がこんなに行儀よく聴いているのに、(その隣りのノイジーおばさんを指して)あの30過ぎの女性は(私が見たところ50くらいでしたが)とってもうるさいわね」とブツブツ文句を言ってました。続くようなら文句を言ってやろうと思って娘と席を代わってもらいましたが、水は飲み切ったのか、スーパー袋をガサガサ開けることはもうありませんでした。結局文句を言うタイミングを逸しましたが、とにかく終始ごそごそと動かずにはおれないようで、横に座られると鬱陶しいたらありゃしない。オペラ座やコンサートホールでは二度と接近遭遇したくないですなー。

バイエルン州立歌劇場:ヘンゼルとグレーテル2011/12/25 23:59


2011.12.25 Nationaltheater, Bayerisches Staatsoper (Munich)
Asher Fisch / Bayerisches Staatsorchester
Kinderchor der Bayerischen Staatsoper
Herbert List (Director)
Martin Gantner (Peter, broom-maker), Irmgard Vilsmaier (Gertrud)
Okka von der Damerau (Hänsel), Laura Tatulescu (Gretel)
Heike Grötzinger (Gingerbread Witch), Silvia Hauer (Sleep Fairy)
Iulia Maria Dan (Dew Fairy)
1. Humperdinck: Hänsel und Gretel

初見参のバイエルン州立歌劇場です。クリスマスに「ヘンゼルとグレーテル」という演目で、マチネとは言えないものの午後4時という早めの開始だったので会場は子供が多かったです。ヨーロッパ最高峰の一つなのでもっとゴージャスな内装を想像していたのですが、意外と質素。カフェやクロークは機能重視のモダンなものでした。ボックス席は舞台すぐ横以外にはなく、上のほうの階はどの席でも鑑賞しやすく設計されているように見えました。


まず感じたのは、この劇場の音響の素晴らしさです。今回はストール最前列左端で、反対側からトランペットがまっすぐこちらを向いているような席だったのですが、さしづめロイヤルオペラハウスなら汚い生音が直接差し込んで来るところ、非常にまろやかに響いて来て、至近距離だったホルンも、弦楽器も、どの楽器もワンクッション置いて角の取れた音で耳に届き、たいへん心地が良い。また、音響の助けがなくともオケの集中力は高く、特にこれぞビロードの肌触りと思える弦は久々に聴きました。これはオケだけでも一流です。対する歌手陣も、スターはいないもののドイツ人歌手を中心に劇場レギュラーの実力者揃いで、音楽的には非の打ち所のない好演でした。

難があったのは演出。モダンで過激な演出ばかりのドイツの歌劇場でも「ヘンゼルとグレーテル」だけは伝統的なスタイルを守るという話を聞いたことはあるのですが、オーソドックスと工夫がないのとは違います。おそらく100年前の舞台はこうであったろう、おとぎ話そのものの大道具、衣装に、歌を邪魔しない最小限の動き。今の感覚では全体的にヌルく、イケてません。もちろん、楽しい劇ではあるのですが。第1幕から第2幕は連続ではなく、珍しくいったん休止を入れたので「あれっ」と思ったのですが、後でスコアを確認すると、演出によってどちらでもかまわないんですね。第2幕以降は舞台にずっと半透明のスクリーンがかかっていて、第2幕だけなら夕暮れの森の中のもやがかかった情景を演出したいのかと解釈できるのですが、第3幕の最後まで引きずるのは意味不明で、はっきり言って余計でした。工夫が全くなかったわけではなくて、眠りの精や魔女はワイヤで空を飛ぶし、第2幕最後には天使が多数出て来て癒し系の踊りを踊り、魔女のオーブンからは本物の火が出ますが、緩和な雰囲気は最後まで拭えず、緊張感も目を引く特異性も何もありませんでした。子供向けと言ってもあれでは退屈するのではないでしょうか?

この劇場で一番新鮮だったのは、ピットの中にも観客席側壁沿いに一列分ベンチシートの席があったことでした。見ると子供とその保護者ばかりでしたので、この演目に限って特別に子供にだけ解放しているのでしょうか。これはしかし、指揮者の真横、奏者の目の前まで子供が座って視線を送っているということで、これだと奏者も張り切らざるを得ませんね。あとは、休憩時間になると聴衆は全員いったん外に出され、次の開演ギリギリまで入れないのも初めての体験でした。どうしてそんなシステムになっているのか、ロビーにそんなに広いスペースがあるわけではないので混み合って、これはいただけませんでした。


ピット内の客席。これは楽団にはプレッシャーでしょう。木のベンチシートで座り心地は悪そうです。ワーグナーだと死にそうですね。

さらに、劇場に置いてあったシーズンプログラムを見ていて凄いと思ったのは、そのレパートリーのとっても保守的なこと。今シーズンの演目を列挙すると、ボエーム、カルメン、ホフマン物語(新演出)、コシ・ファン・トゥッテ、愛の妙薬、子供と魔法/こびと、フィデリオ、こうもり、ヘンゼルとグレーテル、ばらの騎士、トスカ、トゥーランドット(新演出)、魔笛、セビリアの理髪師、ドン・カルロ、後宮からの逃走、エフゲニ・オネーギン、さまよえるオランダ人、マクベス、蝶々夫人、オテロ、ラインの黄金(新演出)、ロベルト・デヴリュー、椿姫、ワルキューレ(新演出)、カプレーティとモンテッキ、チェネレントラ、ルイザ・ミラー、フィガロの結婚、パルジファル、ジークフリート(新演出)、ヴォツェック、利口な牝狐の物語(新演出)、神々の黄昏(新演出)、先斗の王ミトリダーテ、と、書き写していてため息が出るくらいに超定番アイテムのオンパレード。これらをワンシーズンにやるのだから驚きです。ちょっと集客に苦労しそうな「ロベルト・デヴリュー」はグルベローヴァ、「カプレーティとモンテッキ」はカサロヴァとネトレプコを配置する布陣ですから、穴のない鉄壁のプログラムです。時々旅行に行くのなら、何時行ってもメジャーな演目が見れてよいですが、もしミュンヘンに住んで通うとなると数年で飽きて、刺激に飢えるようになる気がします。新プロダクションが多数あるのが救いですが、こうやってドイツの歌劇場はますます過激な読み替えに走って行くんですかね。

ミュンヘン2011/12/26 23:59


今年のクリスマスは定番中の定番、ミュンヘンのクリスマスマーケットを見に行って来ました。さすが本場ドイツでも最大級だけあって、ものごっつい数の観光客で賑わっていました。



フラウエン教会の前には、それを模した屋台が。

出店はさすがにドイツのクリスマス市らしく、クリッペというキリスト生誕の模型パーツ(けっこう高い)の店が多かったです。他に目を引いたのは、下のように幻想的なペーパークラフト・ライティングを売っているお店でした。



日も暮れると、カールス広場のデパートやスケートリンクもカラフルにライトアップされてました。



夕食は、美味そうに焼けてる骨付き肉に引き寄せられて、Haxnbauerへ。



豚と仔牛のすね肉ローストが名物なので、両方味わえるミックスプレートを注文。うーん、ボリューム感溢れる肉塊は、これぞドイツ、これぞバイエルン。私もかつては「ドイツ料理など二日で飽きる、この世から無くなっても一番困らない料理だ」とまで考えていたのですが、ハンガリー生活ですっかり肉食人種になってなってしまってから、こういった「がっつり肉料理」はしばらく食べないと禁断症状のように、無性に食べたくなります。日本人の生活習慣には根本的に合わないので、困ったもんだ。

賑わったクリスマスマーケットも24日の午前中までで、午後2時ごろにはもう完全に撤収モードです。その後は25日にかけて屋台もショップもレストランもぱたっと閉まってしまい、行く当てのない観光客がとぼとぼと歩くばかりで、すっかり淋しいものでした。


美術館も全て閉まった中、イノシシとナマズのオブジェが印象的な狩猟博物館だけは25日も果敢にオープンしていました。



今回ミュンヘンに行ったもう一つの目的は「Donislの白ソーセージが食べたい!」というのもあったのですが、初日はホテルにチェックインした後直行で行ったのですが、2時半ではさすがにもう「売り切れです」。翌日は早く行くつもりが買い物に手間取って、1時前に入ったらまたしても「too late」。それならばと25日は朝の10時半に出かけ、三度目の正直でようやく念願の白ソーセージにありつけました。


3人分6本のソーセージ。朝っぱらから白ビールなど飲みながら味わいました。ここのは皮がしっかりと固く、中はふわっと溶けるように柔らかく、パセリも非常にフレッシュな味わいで、今回他でも食べましたが、やっぱりここのが一番美味しかったです。


25日はまだ閉まっているレストランも多かったのですが、オペラのあとは劇場近くのZum Franziskanerというビアホールが開いていたので、がっつりと夕食。ドイツのクリスマスらしくガチョウのローストを注文しました。でかい!ですが食べるところは意外と少なくペロッとイケます。前菜で頼んだコンソメスープもたいへん美味しかったです。気楽に食べるには、ここはオススメ。


最終日、フライトは午後だったので午前中にドイツ博物館に行きました。前回来たのは2003年ですから8年ぶりです。盗品、略奪品ばかりの大英博物館と比べてこのドイツ博物館は、ドイツ人の手により生み出された科学技術がこれでもかと陳列されています。展示はありとあらゆる技術分野におよび、「全ての科学技術はドイツ発祥である」とでも言わんばかりです。どう見ても日本製のカメラや、NASAの宇宙船模型なんかが展示してあるのはご愛嬌ですが。


理系男子にとっては何時間いても飽きない場所ですが、妻と娘の琴線にはあまり触れなかったもよう。最初に地下の巨大でめちゃリアルな炭坑ジオラマなんか見せたのがいけなかったか。フライトの時間もあり、全体の10分の1も見れないままに、後ろ髪引かれつつ空港に向かいました。

年末のバラ・マーケット2011/12/29 23:59

年末の買い出しに、バラ・マーケットへ久々に行って来ました。今年は29〜31の3日間しか開いてないので、早速買い出しの人々と観光客で賑わっていました。



残酷ではありますが、兎、鳩、雉、家鴨などが締めてそのまま吊るされているのも、日本ではまず見ることがないヨーロッパの風物詩ですね。


ここに来ると定番なのは、まず入り口左側のスペイン食材屋に行き、生ハムを注文。100gあたり6〜20ポンドくらいで、種類とグラム数をオーダーし、手作業で丁寧に切って行くので、長いときは40分待ちなどと言われます。今日は10ポンドの黒豚と15ポンドのイベリコ豚を100gずつ注文、まだ朝だったので6分待ちで済みました。

昨年行ったときに買ったフレンチ食材屋の白ソーセージは、今年まだ一度もお目にかかっていません。今日もフレッシュなソーセージは入荷してなく、もう作ってないのかも。本場ミュンヘンで食べたどの白ソーセージよりもおいしかったのに、かなし…。

生フォアグラの塊は、今年はフレンチ屋ではなく奥の禽類専門店で買ってみました。値段はフレンチ屋の約半分。ただしグースかダックかと聞くと、残念ながら全てダックとのこと。まあ、フレンチ屋のだってダックでしょう(フランスで一般的に食べられているのはダックのフォアグラですが、ハンガリーではグースが一級品、ダックは二級品でした)。一つ600gとちょっと小ぶりだったので、つい勢いで2個も買ってしまい…。身体に悪いのはわかっているんですが、日本に帰ったら食べられないと思うと、つい気が緩みます。


小腹がすいたので、前から気になっていたラクレットを食べてみました。お昼前でしたがすでに長蛇の行列が。茹でたジャガイモにピクルスを添えて、天火で焼き溶かしたラクレットチーズを削って乗せただけの料理です。そりゃあチーズのおこげは美味しいのですが、じっくりと熱を入れて溶かしてないので、すぐに冷えて固まってきます。ジャガイモも茹で過ぎ。これで5ポンドはちと高いぞ。同じ店でチーズのホットサンドも売っていて、こちらも5ポンド。溶けたチーズから出て来た大量の脂がパンによく染みて香ばしく、こちらのほうがまだ美味しかったです。が、カロリーは相当なもんだし、やっぱり5ポンドも出して食べるもんじゃないなあ。家で作ったほうがもっと美味しくできます。

ということで、皆様よいお年を。