フィルハーモニア/ロウヴァリ:ファジル・サイは環境ビジネスの香り ― 2025/11/30 23:59
2025.11.30 Royal Festival Hall (London)
Santtu-Matias Rouvali / The Philharmonia Orchestra
Fazil Say (piano-2)
1. Sibelius: En Saga
2. Fazil Say: Mother Earth (Piano Concerto) (UK premiere)
3. Dvorak: Symphony No. 8
2021年に若くしてフィルハーモニア管6代目の主席指揮者に就任したロウヴァリは、2014年に一度ミューザ川崎ホールにて東響を振った演奏会を聴いて以来です。1曲目、元々はファリャ「恋の魔術師」がプログラムにあったのですが、数日前にメール連絡があり、シベリウス「エン・サガ」に曲目変更とのこと。直後の韓国ツアーで取り上げる曲に寄せたようですが、個人的にはファリャを聴きたかったので、がっかり。意気消沈して寝てました。
気を取り直して、2曲目は「母なる地球」をテーマにしたファジル・サイの新作ピアノ協奏曲。昔から気になっていたピアニストですがなかなか縁がなく、見るのも聴くのも初めてです。日本では「鬼才! 天才! ファジル・サイ!」というキャッチフレーズが先行して、私も鬼才にして怪人と勝手に思っていたのですが、ちょっと思ってたのと違う印象でした。もっとアヴァンギャルドな作風にぶっとんだピアノを想像していたら、既存イメージを寄せ集めたヒーリング音楽のような曲でした。ちょっと悪口っぽく言うと、思想政治的動機があって、芸術的野心はどこにもない感じ。鳥笛、ギロ、オーシャンドラムなどの打楽器を駆使して山と海の大自然を効果音でわかりやすく表現し、また自席からはよく見えなかったのですが、ピアノにもプリペアドの細工をしていたように聴こえました。そういった「飛び道具」を使わずに自然描写をするのが過去の大作曲家たちが取り組んできたクラシック音楽の矜持だと個人的には思うので、安直な効果音頼みは興醒めです。しかしジャンルを超えた人気ピアニストだけあって、ちょっと常識に欠けるファンも多く、演奏中にも写真や動画を撮ってて怒られてる人を多数見かけました。

メインのドヴォルザーク8番は、全体的に丁寧に作り込んだ演奏で、オケと指揮者が現在最も良い関係にあることがわかります。変に緊張感を煽ることもなく、聴衆のざわつきとか全く気にも留めずとっとと演奏を始めてしまうタイプですね。2014年に聴いた際はまだ20代にも関わらず、ラトルばりに細かいところまで仕掛けを施す恐れ知らずの芸風でしたが、年月が経ってだいぶ肩の力が抜けた感じです。細部まで気を配ったリードながらもあざとい感じはなく、カラッとした都会風のドヴォルザークでした。第9番の「新世界」ではなく、第8番でもそのアプローチを取るのが最近の流行りかもしれません。最終楽章のスピードはブラス泣かせではありましたが。
ロンドンではこれが今年最後の演奏会になるため、聴衆も招待しての創立80周年記念パーティーが終演後に開催されていましたが、翌日の仕事もあり、泣く泣く帰宅の途につきました。
フィルハーモニア/パヤーレ/フローレス:ラテン系ノリノリの「幻想交響曲」 ― 2025/11/27 23:59

2025.11.27 Royal Festival Hall (London)
Rafael Payare / The Philharmonia Orchestra
Pacho Flores (trumpet-2)
1. Berlioz: Overture, Le carnaval romain
2. Gabriela Ortiz: Trumpet Concerto (Altar de Bronce) (London premiere)
3. Berlioz: Symphonie fantastique
早めにサウスバンクに着いたので、18時からの若手奏者による無料の室内楽から聴いてみました。意外とストールの客席が埋まっていたのはびっくり。演目は全く守備範囲ではないですが、ポルトガル音楽界の教祖ルイス・デ・フレイタス・ブランコ及びラヴェルの弦楽四重奏曲で、1時間近くかかった長いプレコンサートでした。ヴィオラの吉村大智君が堂々と物怖じしない演奏で、アンサンブルの軸を担っていました。

さて本日のメインイベントは、ベネズエラのエル・システマ出身ミュージシャンによるベルリオーズを中心としたプログラム。ドレッドヘアが特徴的なラファエル・パヤーレは、不勉強で名前も知らなかったのですが、ドゥダメルに続け!とのし上がりに奮闘中の若手筆頭株、かと思いきや、年齢はむしろドゥダメルよりも上(1歳だけですが)、すでにそれなりのキャリアを積んでおり、現在はサンディエゴ響とモントリオール響の音楽監督を兼任。奥さんはチェリストのアリサ・ワイラースタイン。ちょうどこの1週間前にはN響定期にも客演していて、グローバルに活躍中の人なんですね。
1曲目の「ローマの謝肉祭」はキレ良く始まり、躍動的にオケを操ってギミック満載のリズムをダイナミックに生き生きと乗り越えていきます。冒頭のツカミは充分。多分フローレス目当てかと思われますが、ブラバン楽団員と思しきラフな格好の若者集団が聴きに来ていて、地味な高齢者ばかりの普段の客層とは違う空気感がありました。
2曲目はメキシコの女性作曲家ガブリエラ・オルティスのトランペット協奏曲「青銅の祭壇」。新作なのでほとんど情報がないのですが、プログラムによるとヴァイオリン協奏曲「弦の祭壇」を作曲中に、対となるトランペット協奏曲の発想を得ていたところ、指揮者と同じくエル・システマ出身のトランペッター、パーチョ・フローレスから作曲委嘱の話があり、作曲者がライフワーク的に取り組んでいる「祭壇」シリーズの新曲として誕生したようです。
フローレスはトランペット3本、追ってパヤーレもさらに1本を手に持って登場。シモン・ボリバルやサイトウ・キネンのトップ奏者を務めた実力者だけあって、冒頭から高速パッセージを披露。ソロトランペットに木管とハープ、さらにはオケ側のトランペットも呼応して、聴いたことがないユニークな展開が続きます。フローレスは艶やかな音色に、ほとんど音を外さない完璧な技巧、見た目は陽気なラテン系、なかなか得難いキャラクターの名手です。新作なのでもちろん初めて聴く曲ですが、いわゆる「現代音楽」のテイストはなく、耳に優しい親しみ深い曲調です。後半はラテンパーカッションが大活躍のカーニバル風になり、指揮者、ソリスト、聴衆が皆ノリノリになっていく中、打楽器陣は笑顔なく生真面目な顔で黙々と叩き続けていたのが可笑しかったです。カデンツァもかなり自由に、客席を指さしてカモン、「テキーラ!」の掛け声など、聴衆を巻き込みながらのパフォーマンスにやんやの喝采を浴びていました。アンコールは、曲名は知らないものの、弦楽合奏をバックにしっとりした曲を披露。こういうのもできるんだぜ、とばかりのトランペット名手は、サックス名手に負けず劣らずのズルカッコ良さでした。

メインの幻想交響曲は、これまた全力投球が気持ちいいノリノリのミュンシュ系演奏。今どきは当たり前かもしれませんが、スコア上のリピートは全て行っていても冗長に感じず、軽さと明るさが全編通して滲み出ていました。第2楽章はトランペット奏者がコルネットを持って下手に移動し演奏していましたが、コルネット付きの演奏自体、すごく久しぶりに聴いた気がします(メータ/NYPのレコード以来かも)。あとから調べたら、パヤーレがモントリオール響を振った新譜のレコーディングでもコルネット付き版を選択しているそうで、最近の傾向かもしれません。第3楽章のオーボエは舞台裏からちょっと遠目に、しかし音色はあくまで明るく鳴らして掛け合い、こういうところもミュンシュを彷彿とさせました。第4楽章はテンポを必要以上に揺さぶるわけではなく正攻法で盛り上げていましたが、ホルンのゲシュトップ奏法などスコアに書かれた演出は忠実に実行。最終楽章の弦もきっちり弱音器を使いおどろおどろしさを強調するも、鐘の音は高くてキラキラしており、やはり基本は明るいラテン系に終始していました。あまりに聴きすぎて食傷気味の「幻想」ですが、こういう若くて突き抜けた明るさも、真似しようと思ってもなかなか達成できるものではなく、良きかなと思いました。

フィルハーモニア/フルシャ:オペラの合間にマーラー「夜の歌」 ― 2025/11/13 23:59
2025.11.13 Royal Festival Hall (London)
Jakub Hrusa / The Philharmonia Orchestra
1. Mahler: Symphony No. 7
11月4日から21日までロイヤルオペラにて「マクロプロス事件」を上演中のフルシャが、その間隙をついてフィルハーモニア管の指揮台に1日だけ立つという詰め込みスケジュール、大丈夫かいなと思ってしまいましたが、何はともあれ歴史の目撃者(大袈裟)になれるのであれば、喜んで身を投じます。プログラムはマーラーの交響曲第7番「夜の歌」1曲のみ。まあオペラ座公演中のことも考えれば、あれやこれやはやってられないかと思います。しかし私は、マーラー好きでありながらこの曲がいまだに大の苦手。と言いながらも去年もジョナサン・ノット/新日本フィルで聴いてましたが。
オケは対抗配置で、チェロ、コントラバスが第1ヴァイオリンの奥、向かって左手に位置します。ということは、第2ヴァイオリンは右手の上手側。うーむ、12年ぶりだというのに、フィオナちゃんは自分の席からは背中しか見えない、残念。それはともかく、この曲はまず隠々滅々とした冒頭部分を無事に乗り切って、第一主題でしっかりとした足取りのペースを掴むのが肝要ですが、やはり冒頭のテナーホルンは鬼門、その不安定な演奏に一気に悪い空気が蔓延してしまいます。テナーホルンだけでなく普通のフレンチホルンのほうも不安定が感染し、フルシャも空回りしているように見える、集中力を欠く展開が第2楽章まで続きました。楽章の合間に途中退席する人が複数人いたためにしばらく間を置かざるを得なくなったのも要因かもしれません。
第3楽章でフルシャ得意のリズムのキレが戻ってきたのですが、全体像のフォルムが掴めないままに突入した、この曲のさらなる鬼門、第4楽章ナハトムジークの色彩感が、予想通り非常に浮いて聴こえてしまいました。マンドリンとギターはどちらも渋いイケオジ系で、収音マイクで音を拾っているようでした。最終楽章はティンパニの音程が抜かりなく正確にチューニングされており、非常に気持ちが良かったです。私が大好きだったレジェンドのティンパニスト、アンディ・スミスさんは10年前に引退されたようですが、ある意味アンディさんとは真逆のスタイルが新鮮でした。最後のコーダ前にオケを極限まで鳴らしてきたのにちょっと驚き、なるほどフルシャはここにピークを持ってくる作戦であったかと、早とちりを反省しました。やはりロイヤルオペラ音楽監督の肩書は伊達ではなく、すでにロンドンで大人気者のフルシャ、終了後はやんやの喝采を受けていました。
マゼール/フィルハーモニア管のマーラー交響曲シリーズ第2弾 ― 2014/05/25 23:59

没後100年の2011年にロンドンのロイヤルフェスティバルホールにてライブ録音されたマゼール/フィルハーモニア管のマーラー交響曲全集。4、5、6番の3曲を収めた第2弾のCDセットが届きました。第1弾から7ヶ月、このペースだと第3弾(おそらく7〜9番)、第4弾(おそらく10番、Erdeと歌曲集)までたどり着くのは来年でしょうかね。
まだざっと一通り聴いただけですが、豪快に音を外していた第6番のトランペットは、やっぱり直ってる(^^)。アンディ師匠のティンパニの破壊力、特に第5番の3楽章ですが、しっかりディスクに収められてます。
当時書いたレビューを見ながら、貴重な体験を懐かしく反芻したいと思います。
まだざっと一通り聴いただけですが、豪快に音を外していた第6番のトランペットは、やっぱり直ってる(^^)。アンディ師匠のティンパニの破壊力、特に第5番の3楽章ですが、しっかりディスクに収められてます。
当時書いたレビューを見ながら、貴重な体験を懐かしく反芻したいと思います。
マゼール/フィルハーモニア管のマーラー交響曲シリーズ ― 2013/09/21 23:59

2011年の記念イヤーに結局全部聴き通したマゼール/フィルハーモニア管のマーラー全交響曲シリーズ、いくつか事故のあった演奏だったのでオクラ入りかなと思っていたら、タワーレコードのサイトでCD発売の情報が出ていました。やったー。第一弾は1番&2番&3番で、10月20日発売。ゆっくりと懐かしく聴き直してみたいと思います。
自分の便宜のため、当時のブログへのリンクを下にまとめときます。
第1番&若人:2011年4月12日
第2番:2011年4月17日
第6番:2011年4月19日
第4番&リュッケルト:2011年4月28日
第5番&角笛:2011年5月5日
第3番:2011年5月8日
第7番:2011年5月26日
第10番&大地の歌:2011年9月29日
第9番:2011年10月1日
第8番:2011年10月9日
自分の便宜のため、当時のブログへのリンクを下にまとめときます。
第1番&若人:2011年4月12日
第2番:2011年4月17日
第6番:2011年4月19日
第4番&リュッケルト:2011年4月28日
第5番&角笛:2011年5月5日
第3番:2011年5月8日
第7番:2011年5月26日
第10番&大地の歌:2011年9月29日
第9番:2011年10月1日
第8番:2011年10月9日
フィルハーモニア管/サロネン:初演から100年の「春の祭典」 ― 2013/05/30 23:59
2013.05.30 Royal Festival Hall (London)
Esa-Pekka Salonen / Philharmonia Orchestra
1. Debussy: Prélude à l'après-midi d'un faune
2. Varèse: Amériques (version 1927)
3. Stravinsky: The Rite of Spring
2012/13シーズンもついに終盤戦。元々音楽監督の出番が少ないフィルハーモニア管は今日がシーズン最後のサロネン登板日です。先の日本ツアーでたいへん評判の良かった「ハルサイ」をやっと聴けるのが嬉しい。
しかしその出端を挫くかのごとく、隣席のおじいちゃんが困ったもので。まず、臭い。それだけなら非難もしにくいですが、オケが無料で配布しているメンバー表を四つ折りにして袋を作り、その中に痰を吐いて、さらに折り曲げて上着の内ポケットに入れてました…( ゜Д゜)。この不潔感漂う老人は、演奏中も終始口を開閉してニチャニチャと音を立て、時々咳をして、上のように痰を吐く。気に障ることこの上ない災厄でした。周囲は静かな人ばかりでしたが、皆内心で「このくそじじい」とイライラを募らせていたに違いない。こんなわけで「牧神の午後」は全く台無しでした。
次の「アメリカ」は、3年前にSouthbankの「ヴァレーズ360°」という全曲演奏会の企画で聴いて以来でした。「牧神の午後」を思わせるフルートのソロから始まり、「春の祭典」の不協和音と変拍子をさらに鮮烈にしたような展開が続く、まるで「牧神」と「春の祭典」が結婚してできた子供のような曲です。音量的にもようやく隣のじじいが気にならないレベルまで上がってきたので、何とか演奏に集中できました。これがまたキレキレの凄演で、私がこの難曲を理解しているとはこれっぽっちも思わないのですが、それでも万人の心を打つ、説得力抜群の演奏でした。最後は顔を文字通り真っ赤にして畳み掛けたサロネンの迫力に、惜しみない拍手大喝采が贈られていました。
前日が初演から100年の記念日だった「春の祭典」は、バルトークチクルスのときにもサロネンが取り上げていましたが、そのときは確かLSOとバッティングしていて聴けませんでした。もちろんサロネンの真骨頂、リズムの鋭いシャープな演奏ではあったのですが、前の曲で燃え尽きたのか、オケがちょっとお疲れ気味でした。冒頭から木管はしっかりしていたのですが、金管がどうしてもリズムの足を引っ張り、演奏にキズもありました。フィルハーモニア名物アンディ・スミス先生のティンパニは前半控え目で後半に爆発する戦略でしたが、生贄の踊りで原始的なリズムが炸裂する私の一番好きな箇所になると、アンディ先生、あろうことかリズムを間違える大暴走。珍しいものを見ましたが、これに象徴されるように、オケのほうが何となく「気もそぞろ感」というか、倦怠ムードが少しあったのは確かでしょう。もちろん、ベストとは言えないまでもハイレベルな演奏だったのは確かですが。お客の拍手は正直です。なおホルンの美人プリンシパル、ケイティ嬢は今日はワーグナーチューバを吹いていました。ちょうどチェロ奏者の影で姿がほとんど見えなかったのがたいへん残念です。フィオナ嬢もサロネンにがっちりブロックされて見えなかったし、最後のフィルハーモニアにしては、ちょっと淋しい…。
Esa-Pekka Salonen / Philharmonia Orchestra
1. Debussy: Prélude à l'après-midi d'un faune
2. Varèse: Amériques (version 1927)
3. Stravinsky: The Rite of Spring
2012/13シーズンもついに終盤戦。元々音楽監督の出番が少ないフィルハーモニア管は今日がシーズン最後のサロネン登板日です。先の日本ツアーでたいへん評判の良かった「ハルサイ」をやっと聴けるのが嬉しい。
しかしその出端を挫くかのごとく、隣席のおじいちゃんが困ったもので。まず、臭い。それだけなら非難もしにくいですが、オケが無料で配布しているメンバー表を四つ折りにして袋を作り、その中に痰を吐いて、さらに折り曲げて上着の内ポケットに入れてました…( ゜Д゜)。この不潔感漂う老人は、演奏中も終始口を開閉してニチャニチャと音を立て、時々咳をして、上のように痰を吐く。気に障ることこの上ない災厄でした。周囲は静かな人ばかりでしたが、皆内心で「このくそじじい」とイライラを募らせていたに違いない。こんなわけで「牧神の午後」は全く台無しでした。
次の「アメリカ」は、3年前にSouthbankの「ヴァレーズ360°」という全曲演奏会の企画で聴いて以来でした。「牧神の午後」を思わせるフルートのソロから始まり、「春の祭典」の不協和音と変拍子をさらに鮮烈にしたような展開が続く、まるで「牧神」と「春の祭典」が結婚してできた子供のような曲です。音量的にもようやく隣のじじいが気にならないレベルまで上がってきたので、何とか演奏に集中できました。これがまたキレキレの凄演で、私がこの難曲を理解しているとはこれっぽっちも思わないのですが、それでも万人の心を打つ、説得力抜群の演奏でした。最後は顔を文字通り真っ赤にして畳み掛けたサロネンの迫力に、惜しみない拍手大喝采が贈られていました。
前日が初演から100年の記念日だった「春の祭典」は、バルトークチクルスのときにもサロネンが取り上げていましたが、そのときは確かLSOとバッティングしていて聴けませんでした。もちろんサロネンの真骨頂、リズムの鋭いシャープな演奏ではあったのですが、前の曲で燃え尽きたのか、オケがちょっとお疲れ気味でした。冒頭から木管はしっかりしていたのですが、金管がどうしてもリズムの足を引っ張り、演奏にキズもありました。フィルハーモニア名物アンディ・スミス先生のティンパニは前半控え目で後半に爆発する戦略でしたが、生贄の踊りで原始的なリズムが炸裂する私の一番好きな箇所になると、アンディ先生、あろうことかリズムを間違える大暴走。珍しいものを見ましたが、これに象徴されるように、オケのほうが何となく「気もそぞろ感」というか、倦怠ムードが少しあったのは確かでしょう。もちろん、ベストとは言えないまでもハイレベルな演奏だったのは確かですが。お客の拍手は正直です。なおホルンの美人プリンシパル、ケイティ嬢は今日はワーグナーチューバを吹いていました。ちょうどチェロ奏者の影で姿がほとんど見えなかったのがたいへん残念です。フィオナ嬢もサロネンにがっちりブロックされて見えなかったし、最後のフィルハーモニアにしては、ちょっと淋しい…。
フィルハーモニア管/アシュケナージ/ガベッタ(vc):ショスタコの酢の物 ― 2013/02/21 23:59
2013.02.21 Royal Festival Hall (London)
Vladimir Ashkenazy / Philharmonia Orchestra
Sol Gabetta (cello)
1. Britten: Suite from "Death in Venice" (arr. Steuart Bedford)
2. Shostakovich: Cello Concerto No. 2
3. Shostakovich: Symphony No. 15
日曜にサウスバンクとバービカンをハシゴした後、月曜早朝から水曜まで出張、木曜金曜と再び連チャンという、なかなかキツいスケジュールでした。アシュケナージは好きな指揮者じゃありませんが、それでも聴きたかったのは、チャレンジングなプログラムだったので。しかしあまりにチャレンジングなため、疲れの溜まった身には苦行のように堪えました。
1曲目のブリテン「ヴェニスに死す」は、同名オペラから抜粋して小編成オケの組曲に仕上げたものですが、ちょうど「パゴダの王子」みたいなアジアンテイストを感じます。編曲のベッドフォードは確かこのオペラの初演を指揮した人ですね。私の耳にはブリテンらしい煮え切らない曲で、結局よくわかりませんでした。
続くショスタコのチェロコンチェルト第2番は、2年ほど前にプラハで聴いて以来です。そのときのソリスト、イケメンのミュラー=ショットと比べて今日のガベッタのほうがずっと男勝りの力強さを感じました。この若き美人チェリストは一見華奢に見えて、二の腕など実はなかなか筋肉質でパワーがあります。その分繊細さや透明感に欠ける気がして、ミュラー=ショットのときとは全く別の曲のような印象でした。やはりこれもまたつかみどころのない曲ですわな。アンコールはチェロ奏者4人を伴奏に弾きましたが、休憩時に観客がチェロ奏者に「今のは何て曲?」と聞いたら、「えーと、何だっけ」と応えられなかったのが微笑ましかったです。
あー、動いてしまって写真撮れませんでした…。
速攻で着替えてサイン会に臨んでいたガベッタさん。
メインのショスタコ15番はその昔、タコというとまだ5番と9番しか知らなかった頃にFMラジオで初めて聴いて、第一印象は「何て変な曲」だったけど何故かハマり、エアチェックしたテープを勉強のBGMによく聴いていました。実演は初めて、すごーく久々に聴きましたが、やっぱり何て変な曲(笑)。思い出しましたけど、第1楽章の「ウイリアム・テル」の他にもワーグナーや自作からの引用がいっぱいあるサンプリングミュージックなんですね。アシュケナージはN響と一緒にブダペストに来たのを聴いて以来。とにかくこの人のギクシャクとした指揮はどうにもいちいちカンに触っていけません。棒振りが杓子定規であえて手の内を見せないような指揮者は他にもいますが、この人の場合は本当にずっとスコアに目を落としながら、オケに合わせて腕を振り回しているだけに見えてしまうので、指揮者としていかがなものか、という思いを禁じ得ません。そんな感じでリズムは重たかったものの、日本公演から帰ったばかりのフィルハーモニア管は好調を維持して上手かっただけに、ちょっと無理が続いてしまった自分の体調と、今日の指揮者がサロネンじゃないという事実をちょっぴり残念に思いました。
指揮棒をくわえたり、やっぱり指揮者らしくない人です。
本日のフィオナちゃん。
フィルハーモニア管/サロネン/ツィマーマン(p):ルトスワフスキと「ダフニスとクロエ」 ― 2013/01/30 23:59
2013.01.30 Royal Festival Hall (London)
Esa-Pekka Salonen / The Philharmonia Orchestra
Krystian Zimerman (piano-2)
Philharmonia Voices
1. Lutosławski: Musique funèbre
2. Lutosławski: Piano Concerto
3. Ravel: Daphnis et Chloé (complete)
ポーランドを代表する作曲家ルトスワフスキは、今年生誕100年、来年没後20年と記念イヤーが続くので、演奏される機会が当分増えてくるでしょう。記念イヤーに目がない?フィルハーモニア管は今シーズン早速「Woven Words」と名打ったチクルスを組んでいます。しかし私、実はルトスワフスキをほとんど聴いたことがありません。今日のピアノ協奏曲も以前LSOで一度聴いているのですが、意識を失っていたためどんな曲だったかほとんど覚えていませんでした。
最初の「弦楽のための葬送音楽」は、東日本大震災の後、ベルリンフィルが追悼の意を込めて定期演奏会で演奏したことでも近年注目されました。実際聴くのは初めてだったのですが、バルトークをもっと無調にしたような音楽で、つまりは音列技法的な仕掛けがよりはっきりと現れています。けっして聴衆を突き放した音楽ではなく、素朴な民謡的風土が根底を貫いていることを感じさせ、ある意味心地良い音楽です。
続くピアノ協奏曲のソリストはこの曲の初演者でもあるクリスチャン・ツィマーマン。私がクラシックを聴き始めのころ、ハンガリー三羽烏(ラーンキ・コチシュ・シフ)を追い落とす超テクの若手としてちょうどブイブイいわしてたところでしたが、ようやく生で聴ける機会となりました。まだ60歳よりは全然手前のはずですが、すっかり白髪の枯れた風貌になってしまって、でも個人的には若いころよりちょっとかっこ良くなったと思います。曲のほうは切れ目無しに演奏される4楽章構成で、これもまた無調が基調の曲ですが、いろんな要素が凝縮している、一言では表現できない不思議な曲です。聴きやすいかどうかと言えば、耳に素直に入ってくるのでセンスの良い曲と思います。ツィマーマンは初演者だけに、全く自分のレパートリーとして弾きこなしています。テクニシャンらしい切れ味鋭い打鍵、色彩感豊かなアルペジオ、繊細なタッチ、どこをとっても非の打ちようがない、パーフェクト系のピアニストですね。そういえばこの人はピアニストとしては珍しく、自分の楽器を持ち歩くのでも有名でしたか。今年の予定を見ると、記念イヤーだけあってパリ管やベルリンフィルなどいろんなオケとこの曲を共演するもようです。
メインの「ダフニスとクロエ」全曲版は、20年以上前にここロイヤルフェスティヴァルホールを初めて訪れたとき聴いた曲ですので、思い出深いものがあります。しかし正直言うとこの曲、私はちょっと苦手。第2組曲ならまだ聴けるんですが、全曲版となると音楽は冗長だし、バレエ付きで観たいものだと思います。一つ良い点はコーラスが入っていることで、これは演奏会用の組曲ではめったに聴けないシロモノです。今日のフィルハーモニア管は「当たり」の日だったようで、フルートを筆頭に、管楽器のソロが抜群に素晴らしい。ホルントップのケイティ嬢もすっかり貫禄のプリンシパルです。サロネンもまた期待に応え、オケをこれでもかとガンガンに鳴らす鳴らす。このダイナミックレンジは久々に堪能しました。フィオナ嬢は定位置、第2ヴァイオリンの二番手。半年ぶりのフィルハーモニアだというのに、今日はいつになくドアガールのお姉ちゃんが写真撮ってる人をいちいち注意していたので、冒頭の以外、あまり写真が撮れませんでした(泣)。新手ではコントラバスパートに、楽器に似つかわしくない小柄な若い女の子(Ana Cordovaという名のようです)がいて目を引きました。
Esa-Pekka Salonen / The Philharmonia Orchestra
Krystian Zimerman (piano-2)
Philharmonia Voices
1. Lutosławski: Musique funèbre
2. Lutosławski: Piano Concerto
3. Ravel: Daphnis et Chloé (complete)
ポーランドを代表する作曲家ルトスワフスキは、今年生誕100年、来年没後20年と記念イヤーが続くので、演奏される機会が当分増えてくるでしょう。記念イヤーに目がない?フィルハーモニア管は今シーズン早速「Woven Words」と名打ったチクルスを組んでいます。しかし私、実はルトスワフスキをほとんど聴いたことがありません。今日のピアノ協奏曲も以前LSOで一度聴いているのですが、意識を失っていたためどんな曲だったかほとんど覚えていませんでした。
最初の「弦楽のための葬送音楽」は、東日本大震災の後、ベルリンフィルが追悼の意を込めて定期演奏会で演奏したことでも近年注目されました。実際聴くのは初めてだったのですが、バルトークをもっと無調にしたような音楽で、つまりは音列技法的な仕掛けがよりはっきりと現れています。けっして聴衆を突き放した音楽ではなく、素朴な民謡的風土が根底を貫いていることを感じさせ、ある意味心地良い音楽です。
続くピアノ協奏曲のソリストはこの曲の初演者でもあるクリスチャン・ツィマーマン。私がクラシックを聴き始めのころ、ハンガリー三羽烏(ラーンキ・コチシュ・シフ)を追い落とす超テクの若手としてちょうどブイブイいわしてたところでしたが、ようやく生で聴ける機会となりました。まだ60歳よりは全然手前のはずですが、すっかり白髪の枯れた風貌になってしまって、でも個人的には若いころよりちょっとかっこ良くなったと思います。曲のほうは切れ目無しに演奏される4楽章構成で、これもまた無調が基調の曲ですが、いろんな要素が凝縮している、一言では表現できない不思議な曲です。聴きやすいかどうかと言えば、耳に素直に入ってくるのでセンスの良い曲と思います。ツィマーマンは初演者だけに、全く自分のレパートリーとして弾きこなしています。テクニシャンらしい切れ味鋭い打鍵、色彩感豊かなアルペジオ、繊細なタッチ、どこをとっても非の打ちようがない、パーフェクト系のピアニストですね。そういえばこの人はピアニストとしては珍しく、自分の楽器を持ち歩くのでも有名でしたか。今年の予定を見ると、記念イヤーだけあってパリ管やベルリンフィルなどいろんなオケとこの曲を共演するもようです。
メインの「ダフニスとクロエ」全曲版は、20年以上前にここロイヤルフェスティヴァルホールを初めて訪れたとき聴いた曲ですので、思い出深いものがあります。しかし正直言うとこの曲、私はちょっと苦手。第2組曲ならまだ聴けるんですが、全曲版となると音楽は冗長だし、バレエ付きで観たいものだと思います。一つ良い点はコーラスが入っていることで、これは演奏会用の組曲ではめったに聴けないシロモノです。今日のフィルハーモニア管は「当たり」の日だったようで、フルートを筆頭に、管楽器のソロが抜群に素晴らしい。ホルントップのケイティ嬢もすっかり貫禄のプリンシパルです。サロネンもまた期待に応え、オケをこれでもかとガンガンに鳴らす鳴らす。このダイナミックレンジは久々に堪能しました。フィオナ嬢は定位置、第2ヴァイオリンの二番手。半年ぶりのフィルハーモニアだというのに、今日はいつになくドアガールのお姉ちゃんが写真撮ってる人をいちいち注意していたので、冒頭の以外、あまり写真が撮れませんでした(泣)。新手ではコントラバスパートに、楽器に似つかわしくない小柄な若い女の子(Ana Cordovaという名のようです)がいて目を引きました。
この演奏会の後、彼らはすぐに日本に行きツアーをやるそうですね。今日の演奏を聴く限り指揮者、オケ双方ともバイオリズムは上昇機運のようですので、日本の皆様は是非期待してください。
フィルハーモニア管/サロネン:スタイリッシュ系、マーラー「復活」 ― 2012/06/28 23:59

2012.06.28 Royal Festival Hall (London)
Esa-Pekka Salonen / The Philharmonia Orchestra
Kate Royal (S-2), Monica Groop (Ms-2)
Philharmonia Chorus
1. Joseph Phibbs: Rivers to the sea (London premiere)
2. Mahler: Symphony No. 2 (Resurrection)
個人的には今シーズン最後のフィルハーモニア管、最後のロイヤル・フェスティヴァル・ホールです。チケットの束をチェックしたら、フィルハーモニア管は何と今年一杯はもう聴きに行く予定がない!フィオナちゃん、ケイティちゃんも当分ご無沙汰です、しくしく。ところで、ロンドンでマーラーの「復活」を聴くのはこれで3回目ですが、指揮者は違えどオケは全てフィルハーモニア管というのが面白い。3シーズン連続で取り上げているということでもありますね。昨年4月のマゼールのマーラーシリーズで聴いた「復活」で、初めてフィオナちゃんを認識したのでしたっけ。月日の経つのは早いものです。
Esa-Pekka Salonen / The Philharmonia Orchestra
Kate Royal (S-2), Monica Groop (Ms-2)
Philharmonia Chorus
1. Joseph Phibbs: Rivers to the sea (London premiere)
2. Mahler: Symphony No. 2 (Resurrection)
個人的には今シーズン最後のフィルハーモニア管、最後のロイヤル・フェスティヴァル・ホールです。チケットの束をチェックしたら、フィルハーモニア管は何と今年一杯はもう聴きに行く予定がない!フィオナちゃん、ケイティちゃんも当分ご無沙汰です、しくしく。ところで、ロンドンでマーラーの「復活」を聴くのはこれで3回目ですが、指揮者は違えどオケは全てフィルハーモニア管というのが面白い。3シーズン連続で取り上げているということでもありますね。昨年4月のマゼールのマーラーシリーズで聴いた「復活」で、初めてフィオナちゃんを認識したのでしたっけ。月日の経つのは早いものです。

おさらいに余念のないフィオナちゃん。今日は三番手でした。

こちらはクールな余裕のプリンシパル、ケイティちゃん。
1曲目はフィブスの新曲で、先週のアンヴィルでの「世界初演」に続き、今日は「ロンドン初演」です。ゆったりと流れる川そのものの、穏やかなトーンの写実的音楽で、前衛的なところはみじんもなく、ドキュメンタリー映画のBGMとしてそのまま使えそうです。一度聴いたくらいでは引っかかりがなく、さらーと身体を通り過ぎる感じで、あれ、今のは何だったかなと。あまり心に残りませんでした。
さてメインの「復活」。サロネンのマーラーを聴くのはCDも含めて実は初めて。マーラー指揮者というイメージも正直なかったのですが、Wikipediaを読むと、サロネンの指揮者としてのキャリアはマーラーから始まっているんですね。今日の演奏の印象を一言で言うと「スタイリッシュな"復活"」。最初快活なインテンポでサクサク飛ばしたかと思えば、遅いところでは止まりそうなくらいにまでテンポを落とし、またダイナミックレンジもかなり広く取って、メリハリの利いた演奏でした。ある意味極端なことをやってるのですが、どろどろとした情念や汗臭さはなく、あくまで理知的でスマートです。時々ありがちな突貫工事の匂いはなく、多忙なサロネンにしてはいつになく丁寧に積み上げられているなあと感じました。オケはしっかりとサロネンに着いて行き、コケてしまった箇所も無いではありませんでしたが、総じて演奏の完成度は高く、木管、特にコールアングレの素晴らしい音色や、骨太だが角が取れているホルンなど、管楽器の妙技が光っていた演奏でした。コンマスのヴァイオリンソロだけはちょっと虚弱でしたが…。あと、スミスさんのティンパニは、相変わらずカッコいいんだけど、前の時も思ったけどチューニングがやっぱり変です。
メゾソプラノは当初エカテリーナ・グバノヴァが出演の予定が、スケジュールのコンフリクトのため(要はダブルブッキングということ?)降板、代役のモニカ・グループはメゾというよりはアルトの声で、急で時間がなかったということでもないのでしょうが、だいぶ安定度に欠ける歌唱でした。ソプラノのケイト・ロイヤルも声質は低めでメゾソプラノ向きにも思いますが、こちらはそつなく手堅い歌唱。ロイヤルはレコード会社の宣伝文句によれば「日本人好みの正統派癒し系シンガー」とのことですが、私の印象は全く違って、長身で見た目筋肉質の体格は「癒し系」どころかスポーツ選手のようです。
それにしてもサロネンさん、今日はいつもにも増してオケを鳴らす鳴らす。まるで一昨日のシモン・ボリバル響を聴いて対抗心を燃やしたかのような鳴らしっぷりでした。男女同数の低音を利かせた厚みのあるコーラスの健闘もあって、クライマックスの音量では実際負けてなかったと思います。マゼールのように最後は自然体にまかせるのではなく、最後まで力技を使ってピークに持って行くよう焚き付ける、そんな感じの「復活」でした。ロンドンでの最後の定期演奏会にふさわしく、音の洪水の大盤振る舞いに、聴衆の拍手喝采も相当なものでした。
一昨日に続き、連続して「音響浴」に身をあずけることになりましたが、今日は正直、プロフェッショナルの演奏にちょっとホッとした自分がいます。やっぱりシモン・ボリバルの圧倒的な「スタジアム系」には、楽しんだと同時に違和感を覚えていたということですか…。


フィルハーモニア管/グリーンウッド:謎の演奏会「カルミナ・ブラーナ」 ― 2012/05/18 23:59
2012.05.18 Royal Festival Hall (London)
Raymond Gubbay presents: Carmina Burana
Andrew Greenwood / The Philharmonia Orchestra
Sophie Cashell (P-2), Ailish Tynan (S-3)
Mark Wilde (T-3), Mark Stone (Br-3)
London Philharmonic Choir
Trinity Boys' Choir
1. Mendelssohn: Overture, The Hebrides (Fingal's Cave)
2. Grieg: Piano Concerto
3. Orff: Carmina Burana
チケットリターンのついでに当日買いでふらっと聴いてみました。この演奏会の存在に気付いたのは最近の話なのですが、フィルハーモニア管やSouthbankのシーズンプログラム(昨年出たもの)には載っておらず、そもそもフィルハーモニア管は17日、19日に各々全く別プログラムで定期演奏会が入っているので、その中日にさらに別の大曲プログラムを入れてくるとは無茶するなあと。指揮者も聞いたことない名前だし、少なくともレギュラーの定期演奏会に出てくる人じゃない気がする、もしかしたらオケも二軍メンバーのパチモンコンサートか、と多少訝っておりましたら、ふたを開けてみるとオケはいつものフィルハーモニア管フルメンバーでした。ホルンのケイティちゃんは降り番だったのが残念ですが、コンマスはいつものジョルト氏だし、フィオナちゃんが今日はセカンドヴァイオリンのトップ。合唱団が前半の演奏を聴くために最初からコーラス席に座っていました。
Raymond Gubbay presents: Carmina Burana
Andrew Greenwood / The Philharmonia Orchestra
Sophie Cashell (P-2), Ailish Tynan (S-3)
Mark Wilde (T-3), Mark Stone (Br-3)
London Philharmonic Choir
Trinity Boys' Choir
1. Mendelssohn: Overture, The Hebrides (Fingal's Cave)
2. Grieg: Piano Concerto
3. Orff: Carmina Burana
チケットリターンのついでに当日買いでふらっと聴いてみました。この演奏会の存在に気付いたのは最近の話なのですが、フィルハーモニア管やSouthbankのシーズンプログラム(昨年出たもの)には載っておらず、そもそもフィルハーモニア管は17日、19日に各々全く別プログラムで定期演奏会が入っているので、その中日にさらに別の大曲プログラムを入れてくるとは無茶するなあと。指揮者も聞いたことない名前だし、少なくともレギュラーの定期演奏会に出てくる人じゃない気がする、もしかしたらオケも二軍メンバーのパチモンコンサートか、と多少訝っておりましたら、ふたを開けてみるとオケはいつものフィルハーモニア管フルメンバーでした。ホルンのケイティちゃんは降り番だったのが残念ですが、コンマスはいつものジョルト氏だし、フィオナちゃんが今日はセカンドヴァイオリンのトップ。合唱団が前半の演奏を聴くために最初からコーラス席に座っていました。

久々に見たフィオナちゃん。今日はセカンドトップの大役ですが、リラックスした表情。

ケイティちゃんはいませんでしたが、チェロのヴィクトリアちゃんも久々。

アンディ・スミスさんは今日も健在でした。

フルートのゲストプリンシパル、くいだおれ太郎、ではなくてトム・ハンコックス君。
開演前、ステージに出ている団員のほとんどが隣りの人と私語を交わしていて、緊張感が薄いのが気になりました。もしかして指揮者舐められてる?登場したグリーンウッドは人の良さそうなオジサンで、明快でストレートな棒振りは、いかにも中堅ベテラン指揮者という感じ。前半の2曲はどちらもかつて部活で演奏したことがあり、特にグリーグはたいへん久々に聴いたので、まずは懐かしかったです。「フィンガルの洞窟」序曲は流れのよい弦と、抑制の利いた管がなかなかいい感じ。今日のフルートはThomas Hancoxという若いゲストプリンシパルで、道頓堀のくいだおれ太郎そっくりの顔ながら、中間部で美しいソロを聴かせてくれました。
グリーグの独奏はソフィー・ケイシェルという若手の美人ピアニスト。デッカの肝いりで2008年にCDデビューしたものの、ネット上のレビューはあまり芳しくなく、その後が続いていないもよう。確かに、天才性を発揮するとか聴き手をハッとさせるとかの領域にはまだ遠いものの、ピアノは非常に立派なものでした。マネージメントの思惑に振り回されず、腕を高めて行く余地は十分にあるのかなと思いました。ちょっとイラッとしたのはいちいち入る聴衆の拍手。慣れてない人が多いんでしょう、第1楽章が終ると満場の大拍手。第2楽章の終わりにも、すかさず拍手。ここは普通アタッカで繋げてもいいくらいなので、よっぽど身構えてないと拍手入れるのがむしろ難しいです。せっかく良い演奏だったのにいちいち流れが中断されるので、弱りました。終演後はもちろん、スタンディングオヴェーション。しかし2回くらいコールで呼ばれた後はすぐに拍手は止み、奏者が引き上げようとすると、また拍手。何だか私の知らないビギナー向けマニュアルでもどこかで配布されているんでしょうか。
メインの「カルミナ・ブラーナ」は、実演は初めてです。さすがにこの大げさな曲、生で聴くと格別の迫力がありますね。コーラスはちょっと荒いかなと思いましたが、むしろ曲想には合っていたかも。オーケストラは手抜きのない普段通りの(むしろ良いほうの)レベルの演奏で、アンディさんのティンパニも冒頭から期待通りの打ち込み。何のための「カルミナ・ブラーナ」かと言い、今日はこのティンパニを聴きに来たと言ってもいいくらいです。歌手もちゃんとした人達で(アイリシュ・タイナンは何度か聴いてますし)、テナーの小芝居も面白かったです。この長い演奏会、寝不足と仕事疲れもあって途中夢心地になりましたが、演奏は危惧したようないいかげんなものではなく、満足できました。ちょっとチケット高いけど。なお、この曲にしても、途中でちょっと拍手が起こりかけました。いったい誰がどんなマナーを教えているんでしょうね。別に曲の合間に拍手が起こること自体はそういうこともあるのでとやかく言いませんが、流れを分断するだけのKYな拍手は嫌いです。
ところで、この「謎の演奏会」が何なのかを知るために£3.5払ってプログラムを買ってみたところ、Raymond Gubbayという音楽プロモーターの主催であることがわかり、納得。Royal Albert Hallでよく「Classical Spectacular」などと銘打って著名曲ばかりを揃えたビギナー向けコンサートをよく興行しているところです。オーケストラだけでなくRAHの「蝶々夫人」「アイーダ」「カルメン」、カウフマン/ネトレプコ/シュロットのオペラスターコンサート、O2アリーナのバレエ「ロメオとジュリエット」など、とにかくでかい箱を使ってバンバン広告を打ち、普段演奏会に足を運ばない非マニア層を大量動員してちょっと高めのチケットを買ってもらう、というビジネスモデルに見えます。オケは主にロイヤルフィルを使っているようですが、RFHでも演奏会を開催し、フィルハーモニア管など他のオケも使うことがある、というのは今回初めて知りました。ふむ、フィルハーモニア管としても良い副収入になるのでしょうね。

ふと目の前を見ると、Raymond Gubbayがスポンサーの席でした…。









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