フィルハーモニア管/グリーンウッド:謎の演奏会「カルミナ・ブラーナ」2012/05/18 23:59

2012.05.18 Royal Festival Hall (London)
Raymond Gubbay presents: Carmina Burana
Andrew Greenwood / The Philharmonia Orchestra
Sophie Cashell (P-2), Ailish Tynan (S-3)
Mark Wilde (T-3), Mark Stone (Br-3)
London Philharmonic Choir
Trinity Boys' Choir
1. Mendelssohn: Overture, The Hebrides (Fingal's Cave)
2. Grieg: Piano Concerto
3. Orff: Carmina Burana

チケットリターンのついでに当日買いでふらっと聴いてみました。この演奏会の存在に気付いたのは最近の話なのですが、フィルハーモニア管やSouthbankのシーズンプログラム(昨年出たもの)には載っておらず、そもそもフィルハーモニア管は17日、19日に各々全く別プログラムで定期演奏会が入っているので、その中日にさらに別の大曲プログラムを入れてくるとは無茶するなあと。指揮者も聞いたことない名前だし、少なくともレギュラーの定期演奏会に出てくる人じゃない気がする、もしかしたらオケも二軍メンバーのパチモンコンサートか、と多少訝っておりましたら、ふたを開けてみるとオケはいつものフィルハーモニア管フルメンバーでした。ホルンのケイティちゃんは降り番だったのが残念ですが、コンマスはいつものジョルト氏だし、フィオナちゃんが今日はセカンドヴァイオリンのトップ。合唱団が前半の演奏を聴くために最初からコーラス席に座っていました。


久々に見たフィオナちゃん。今日はセカンドトップの大役ですが、リラックスした表情。


ケイティちゃんはいませんでしたが、チェロのヴィクトリアちゃんも久々。


アンディ・スミスさんは今日も健在でした。


フルートのゲストプリンシパル、くいだおれ太郎、ではなくてトム・ハンコックス君。

開演前、ステージに出ている団員のほとんどが隣りの人と私語を交わしていて、緊張感が薄いのが気になりました。もしかして指揮者舐められてる?登場したグリーンウッドは人の良さそうなオジサンで、明快でストレートな棒振りは、いかにも中堅ベテラン指揮者という感じ。前半の2曲はどちらもかつて部活で演奏したことがあり、特にグリーグはたいへん久々に聴いたので、まずは懐かしかったです。「フィンガルの洞窟」序曲は流れのよい弦と、抑制の利いた管がなかなかいい感じ。今日のフルートはThomas Hancoxという若いゲストプリンシパルで、道頓堀のくいだおれ太郎そっくりの顔ながら、中間部で美しいソロを聴かせてくれました。

グリーグの独奏はソフィー・ケイシェルという若手の美人ピアニスト。デッカの肝いりで2008年にCDデビューしたものの、ネット上のレビューはあまり芳しくなく、その後が続いていないもよう。確かに、天才性を発揮するとか聴き手をハッとさせるとかの領域にはまだ遠いものの、ピアノは非常に立派なものでした。マネージメントの思惑に振り回されず、腕を高めて行く余地は十分にあるのかなと思いました。ちょっとイラッとしたのはいちいち入る聴衆の拍手。慣れてない人が多いんでしょう、第1楽章が終ると満場の大拍手。第2楽章の終わりにも、すかさず拍手。ここは普通アタッカで繋げてもいいくらいなので、よっぽど身構えてないと拍手入れるのがむしろ難しいです。せっかく良い演奏だったのにいちいち流れが中断されるので、弱りました。終演後はもちろん、スタンディングオヴェーション。しかし2回くらいコールで呼ばれた後はすぐに拍手は止み、奏者が引き上げようとすると、また拍手。何だか私の知らないビギナー向けマニュアルでもどこかで配布されているんでしょうか。

メインの「カルミナ・ブラーナ」は、実演は初めてです。さすがにこの大げさな曲、生で聴くと格別の迫力がありますね。コーラスはちょっと荒いかなと思いましたが、むしろ曲想には合っていたかも。オーケストラは手抜きのない普段通りの(むしろ良いほうの)レベルの演奏で、アンディさんのティンパニも冒頭から期待通りの打ち込み。何のための「カルミナ・ブラーナ」かと言い、今日はこのティンパニを聴きに来たと言ってもいいくらいです。歌手もちゃんとした人達で(アイリシュ・タイナンは何度か聴いてますし)、テナーの小芝居も面白かったです。この長い演奏会、寝不足と仕事疲れもあって途中夢心地になりましたが、演奏は危惧したようないいかげんなものではなく、満足できました。ちょっとチケット高いけど。なお、この曲にしても、途中でちょっと拍手が起こりかけました。いったい誰がどんなマナーを教えているんでしょうね。別に曲の合間に拍手が起こること自体はそういうこともあるのでとやかく言いませんが、流れを分断するだけのKYな拍手は嫌いです。

ところで、この「謎の演奏会」が何なのかを知るために£3.5払ってプログラムを買ってみたところ、Raymond Gubbayという音楽プロモーターの主催であることがわかり、納得。Royal Albert Hallでよく「Classical Spectacular」などと銘打って著名曲ばかりを揃えたビギナー向けコンサートをよく興行しているところです。オーケストラだけでなくRAHの「蝶々夫人」「アイーダ」「カルメン」、カウフマン/ネトレプコ/シュロットのオペラスターコンサート、O2アリーナのバレエ「ロメオとジュリエット」など、とにかくでかい箱を使ってバンバン広告を打ち、普段演奏会に足を運ばない非マニア層を大量動員してちょっと高めのチケットを買ってもらう、というビジネスモデルに見えます。オケは主にロイヤルフィルを使っているようですが、RFHでも演奏会を開催し、フィルハーモニア管など他のオケも使うことがある、というのは今回初めて知りました。ふむ、フィルハーモニア管としても良い副収入になるのでしょうね。


ふと目の前を見ると、Raymond Gubbayがスポンサーの席でした…。

コメント

_ 守屋 ― 2012/05/22 05:54

こんばんわ。チェロのヴィクトリアさんの髪が、後ろの人の髪型と重なって、モヒカンに見えてしまいました。

 皆さん本当に精力的に出かけていらっしゃいますね。僕も、6月半ばくらいから再び出没する予定です。

_ Miklos ― 2012/05/22 08:18

確かに、言われてみるとモヒカンに見えますね。本物はパンクとはほど遠い色白お嬢さんなんですが。今年の5月は「当たり月」で、私もいつも以上に忙しいです。演奏会以外にも書きたいネタがあるのに、レビュー追いつきません…。

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