ロンドン響/ゲルギエフ:完璧すぎるマーラー5番2010/09/26 23:59



2010.09.26 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Andrew Marriner (Cl-2), Rachel Gough (Fg-2)
1. Shchedrin: Concerto for Orchestra No. 1 'Naughty Limericks'
2. R. Strauss: Duett-Concertino for Clariner and Bassoon
3. Mahler: Symphony No. 5

前日はシーズンのオープニングでゲルギエフ/LSOの濃いいサウンドを十二分に堪能しましたが、やはりせっかくだからマーラーも是非とも聴いておきたく、連チャンとなりました。

まずはシチェドリンの管弦楽のための協奏曲第1番、表題は日本語では「お茶目なチャストゥーシュカ」というらしいですが、モロなジャズのリズムに乗って、民謡風のメロディーがごった煮みたいに畳み掛けてきます。コーダはどんどん加速して行って、ブレークし、不協和音でドン。アイヴズを彷彿とさせる作風ですね。しかし、曲は面白いのですが、今日もいまいちリズムのノリが悪いです。手持ちのプレトニョフのCDと比べたら、スイングの差は歴然です。ロンドンは意外とジャズ系のライブハウスが少なく、ジャジーな土壌が薄いのかもしれません。終演後は前日に引き続き作曲者が登場し、喝采を浴びていましたが、今日はやけにあっさり拍手が止んでいました。

2曲目、デュエット・コンチェルティーノは確か聴くのは2度目ですが、変に軽すぎて好みではないというか、聴きどころがもひとつよくわからないので、パスです。クラリネットは、特に冒頭たいへん澄んだ良い音で感心しました。今日は3階のバルコニー席でしたので、ファゴットの音があまり届いて来なかったのは残念。上から見るとかぶりつき席に少し空席を見つけましたので、休憩中にそそくさと移動しました。

さて、メインのマーラー5番は、LSO Liveシリーズのためレコーディングされていたせいでしょうか、ひときわ集中力高く、完璧な演奏でした。トランペットからホルンから、とにかく皆さんパーフェクトに凄い。これぞ超一流のプロの演奏と感服しました。昨日感じたルーズさはみじんも現れず、みっちりとリハをしているなと感じました。思えば昨日の「展覧会」は得意で軽めの曲ということもあって、適当に流していた面はあったのでしょうね。通しでリハをやったかどうかも怪しいものです。対して今日のマーラーは、フレーズはいちいちピシッと決まっていながらも音楽が痩せたり固くなったりせず、音響がどんどん拡大して行きます。音自体はわりと冷徹にも感じるのですが、大らかに広げていくのがゲルギエフは得意そうですね。アダージエットではとことん繊細なところも見せ、スケールの大きいマーラー像を紡いでいました。熱演系でもバーンスタインともヤンソンスとも違う、独特の味ですね。終楽章コーダ前の金管コラールは圧巻な音圧で、しびれました。席を移動してきて本当に良かったです。カメラをようやく買い替えたこともあり、今日は自分としては珍しく、終演後の写真なんぞを撮ってみました。CDが出たら買おうと思いますが、この迫力は決してCDには収まっていないんでしょうね…。