BBC PROMS 65: ベルリンフィル/ラトル2010/09/03 23:59

2010.09.03 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2010 PROM 65
Sir Simon Rattle / Berliner Philharmoniker
1. Beethoven: Symphony No. 4 in B-flat major
2. Mahler: Symphony No. 1 in D major

PROMS 2010の目玉の一つだけあってチケットは早々にソールドアウト、満員御礼で場内はえらい盛り上がりでした。

まず私的には、舞台上にティンパニが3組もあったのが目を引きました。ベートーヴェンは弦楽器各4プルトのコンパクトな編成で、広いステージの前の方にかためていたのですが、マーラー用の2組とは別に、もう1組のティンパニをチェロのすぐ後ろに配置。バロックティンパニを使うのならまだしも、全く同じタイプの楽器だったのが不可解でした。ひな壇から上げ下ろしがたいへんなのはわかりますが、普通はティンパニを11台も持ってツアーには出ないでしょう。ブルジョワぶりを見せつけられたような気もしました。

比較するのもなんですが、一昨日のマーラー・ユーゲント管と比べたらさすがにベルリンフィルは大人の貫禄でした。弱音はとことん繊細に、強奏はとことん大胆に、ダイナミックレンジの幅広さと表現力の多様さが抜群に素晴らしいです。各ソロ楽器の音色も大人の艶やかさで(けっこう外すこともありますが)、さすがに世界最高峰のオケです。機会があれば何度でも聴きたいものですね。ベルリンに住まないと難しいでしょうが。なお、コンサートマスターは樫本大進さんでしたが、もう第1コンマスになったんですね。

ラトルはベートーヴェンにしろマーラーにしろ小細工の多い人で、細部まで精巧に作り上げた人工物のような演奏でした。ある程度はオケを解放しておおらかに響かせるのが得意なヤンソンスとは対照的に見えます。もちろんクオリティに文句のつけようはないのですが、どこか突き放した覚醒感が時々漂ってきます。特に弱音のデリケートなコントロールが徹底していて、ベルリンフィルの首席に抜擢されてもう8年ですか、表現は悪いかもしれませんが、自分のオケとしてしっかり飼い慣らしてますね。3楽章冒頭のティンパニをあえてミュートさせたまま叩かせたのは、乾いた音を出したかったのでしょうが、ちょっと小細工やりすぎと思いましたが。終楽章のコーダでは、お約束のホルン奏者総立ち(多分各人の音量から言えばその必要はないんでしょうけど)はスコア通りきっちりやり、最後は大太鼓も全力で鳴らして大音圧でたたみかけました。聴衆は会場が揺れるくらいに足を踏み鳴らしてのやんややんやの大喝采。アンコールはありませんでしたが、たいへん盛り上がった一夜でした。