BBC PROMS 71: フランス国立管/ガッティ: 驚異的な「ハルサイ」2010/09/07 23:59

2010.09.07 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2010 PROM 71
Daniele Gatti / Orchestre National de France
1. Debussy Prelude a L'apres-midi d'un faune
2. Debussy La Mer
3. Stravinsky The Rite of Spring

ストのせいで終日地下鉄がほぼ全面ストップになっている中、客入りは上々でした。上の方は空席がチラホラありましたが、立見のアリーナがいつにも増して満員大盛況でした。ガッティは長年ロイヤルフィルの首席指揮者だったので、ロンドンにもファンが多いのでしょう。

フランス国立管もガッティもまだ聴いたことがないなー、というくらいの動機でチケットを買ったのですが、期待を遥かに超えた脅威の演奏でした。フランスのオケと言うと、演奏旅行では手を抜いてアンサンブルがてきとー(「適当」ではありません)というイメージを持ってしまうのですが、全くそんなことはなく驚くべき集中力を見せていたのと、管楽器のソリストが皆一様にめちゃくちゃ堅実な腕前。安全運転を心がけていれば切り抜けられるような選曲では全くないにもかかわらず、その危なげのなさは、先日のベルリンフィルをも凌いでいました。正直、フランス国立管というと、フランスではパリ管に次ぐ2番手という勝手な印象を持っていたのですが、この演奏クオリティは半端じゃないです。

ガッティは音の整理がたいへん上手で、あのひどい残響のロイヤル・アルバート・ホールでもぐしゃっとならずスッキリと透明感ある仕上がりになっていました。パートバランスが適正にコントロールされているんですね。ティンパニはフィルハーニア管のAndy Smithさんを彷彿とさせる「いい味系」の人で、私的にはさらに高ポイントです。相対的に弦が少し弱い気もしましたが、ホールと席のせいも多分にあるでしょう。

「牧神の午後」では完璧なソロ楽器を軸に上質の演奏技術でジャブを打ち、「海」ではブラスの馬力を解放してダイナミックレンジの広さを見せつけ、「春の祭典」ではティンパニ7台、大太鼓2台、銅鑼2丁を駆使した強烈な打楽器群でさらにバーバリズムの味付けをするという三段飛びのような構成です。調べると、音楽監督に就任したお披露目演奏会でも同じプログラムをやっていて、自信の十八番なんでしょうね。

とにかく、正直期待してなかった分、そのハイクオリティな演奏はたいへんインパクトがありました。もしパリに住んでいたら定期会員になりたいところです。こういったフランスものでは特に冴えわたった演奏を聴かせてくれそうですし、ベートーヴェンやマーラーだとどうなるかもちょっと興味津々です。

今年のプロムスも個人的にはこれで打ち止め。最後にこんな良いものが聴けて幸せでした。あとは少し休んで、2010/2011シーズンの開幕を待つのみです。