トーンキュンストラー管(ウィーン楽友協会ホールにて)2010/11/07 23:59

2010.11.07 Musikverein, Grosser Saal (Vienna)
Michail Jurowski / Tonkuenstler-Orchester Niederoesterreich
Chloe Hanslip (Vn-2)
1. Barber: Overture to "The School for Scandal" Op. 5
2. Walton: Concerto for Violin and Orchestra
3. Barber: Adagio for Strings Op. 11
4. Bernstein: Symphonic Dances from "West Side Story"


先日の休暇の際、一度は娘に見せてやらねばと思っていたウィーン楽友協会大ホールにようやく行く機会を得ました。この日は日曜日ということもあって、朝はロイヤルコンセルトヘボウ管、午後はトーンキュンストラー管、夜はオーケストラ・ケルビーニというトリプルヘッダーでしたが、コンセルトヘボウにも惹かれたものの、結局チケットが取りやすく曲目も楽しそうだったトーンキュンストラーを今回は選びました。

指揮はミハイル・ユロフスキ。ウラディーミル、ディミトリ兄弟のお父ちゃんですが、まだ65歳のバリバリ現役世代です。登場したお父ちゃんは息子達からは想像もつかない恰幅の良い体型で、杖をつきながらおぼつかない足取りでよたよたと歩いてきました。しかしいったん演奏が始まると、ぴしっと伸びた背筋を軸に、滑らかでけっこう技巧的な指揮をしています。職人肌の人のようで、ロシア人指揮者とウィーンのオケによる米英作品の夕べ、というよく考えると意図不明の企画にもかかわらず、違和感なく手堅く聴かせていました。反面、特徴やハッとする部分もなく、病み付きになりそうな味ではありませんでした。

ウエストサイド物語のダンスナンバーでは終始リズムがぎこちなかったのは、指揮者のせいよりもオケに寄るところが大きかったかもしれません。打楽器陣はシモンボリバルほどノリノリでやってくれとは言いませんが、全体的にリズムの足を引っ張りがちで躍動感を殺いでいました。ティンパニが珍しく女性でしたが、せっかくマラカスに持ち替えながらも思い切りが悪く迫力に欠けました。オケも、トランペットやホルンは破綻せずがんばっており、スコアにない(がオリジナルのミュージカルにはある)フィンガースナップや「マンボ!」のかけ声も加えて、気合いは見せていましたが、この日は聴衆の年齢層が高くノリが悪かったのもいけなかったかも。

一方の有名なバーバーの「アダージョ」では、変に情感過多になることなく淡々と作った起伏がむしろ好ましいと思いました。このオケは木管はイマイチでしたが、弦とブラスはけっこう上手です。

前後しますが、クロエ・ハンスリップという人は名前からして初めて聴きました。まだ弱冠23歳ですが、芸歴は長く、レコードデビューは13歳のときだそうです。実際に出てきたハンスリップは、写真で見たイメージよりはちょっと顔が老け、体型も「おばさん化」し始めていました。ウォルトンの協奏曲はあまり聴かないので聴きどころがよくわからなかったですが、運指と弓の当て方がロマンチックというよりヒステリックに感じました。もちろん非の打ちようもないテクニックなのですが、こちらもまた深い印象を残すものでもありませんでした。

ホールはさすがにふくよかな残響で、低音も高音も柔らかに飛び込んで来ます。内装は、あたり前ですが、変わらずキンキラキンのまま。18年前に初めてこのホールで演奏会を聴いた時を思い出すと、今では感動はもうだいぶ薄れていますが、それでも是非また、何度でも来たいホールではあります。できればウィーンフィルを聴きに…。