ロンドン響/ゲルギエフ:シチェドリンとマーラー2010/11/19 23:59

2010.11.19 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Olli Mustonen (P-1)
1. Shchedrin: Piano Concerto No. 4 'Sharp Keys'
2. Mahler: Symphony No. 1

11月は出張が多くてなかなか演奏会に行けず、久々のバービカンです。金曜日のおかげか、盛況な客入りでした。本日は前半が今シーズン集中的に取り上げているシチェドリン、後半は生誕150周年のマーラーという、シーズンコンセプトを象徴する選曲です。

まずシチェドリンのピアノ協奏曲第4番。もちろん聴くのは初めてですが、長大かつ壮大な曲でした。第1楽章はピアノのノスタルジックなフレーズで始まり、それを軸に徐々に肉付けされて行って盛り上がります。非常に調性的で耳に優しく、標題音楽のように何かしらの情景を頭に喚起させる音楽でした。私の場合はほろ苦いノスタルジーを覚え、子供のころ、夕焼けの中に河原の土手で遊んだ情景を思い浮かべていました。「ロシアの鐘」と題された第2楽章もまさに描写音楽で、甲高い鐘の音を模したピアノがキンキン響く中、情緒的な弦がピアノの周りに絡んで行きます。ひとしきり盛り上がりピークを越えたあとは冒頭のフレーズが戻ってきて、畳みかけるようなコーダで明るく終わります。

ムストネンはピアノの他に指揮も作曲もやるマルチタレントな人だそうですが、見た目は素朴そうなお兄ちゃんです。ところが、ピアノを弾いているときの眼光の鋭さと言ったら!演奏も切れ味の良いシャープなピアノで、音の粒が達人のチャーハンの如くパラリと立っています。アタックの強い打楽器のような弾き方は全くバルトーク向きですので、ピアノ協奏曲の2番なんかを是非聴いてみたいものです。癖なんでしょうか、助走をつけて構えた右腕の指先が、待ちきれない風にいちいちピラピラと動いていたのが印象的でした。また、たいへん汗っかきな人なんですね。燕尾服の袖で何度も汗を拭いていましたが、ハンカチくらいマネージャーが用意したらんかい、と思いました。

メインのマーラーは、オケがもうひとつ乗り切れていないように思えました。もちろんLSOですから技術的に非の打ち所はほとんどないんですが、全体を通して細かいところで雑なリズム、雑な音の処理が気になりました。そう言えば今日のコンマスRoman Simovicさんは、記憶に違いがなければ前に聴いた時にも雑な弾き方をする人だなという印象を持ったはずです。今日は真正面に座っていましたが、本来ならバシバシ感じるはずの音圧があまり来なかったのもちょっと不満。最後の最後、練習番号60の手前で一瞬無音になってしまったのはトライアングルとティンパニが両方同時に落ちたとしか考えられないんですが、そんなこともあるんですかねえ。

今年のPROMSで聴いたベルリンフィルが、圧倒的な演奏技術力を誇示しつつも、3楽章でギョっとするようなギミックを入れてきたりして余韻を引く音楽になっていたのと比べると、今日のLSOは工夫がなく、何となく小さく奇麗に流してしまったような気がします。9月の5番は凄く良かったのに、リハの時間が十分なかったんでしょうかね。まあ、そうは言っても、客観的総合的に見れば、ハイクオリティの「巨人」であったことは間違いないでしょう。次の9番を楽しみにしてます。