ブリテン・シンフォニア:20周年ガラコンサート ― 2012/10/27 23:59
2012.10.27 Barbican Hall (London)
Britten Sinfonia 20th Anniversary Birthday Concert
Britten Sinfonia Voices (1)
Thomas Gould (violin/director-1,2)
Alina Ibragimova (violin-3)
Pekka Kuusisto (violin/director-3,4,7)
Mark Padmore (tenor-4)
Jacqueline Shave (violin/director-5,6)
Joanna MacGregor (piano/director-8,9)
Andy Sheppard (saxophones-9)
Kuljit Bhamra (tabla-9)
Seb Rochford (drums-9)
Tom Herbert (double bass/electric bass guitar-9)
1. Purcell: Hear my prayer, O Lord, Z15
2. Nico Muhly: Looking Forward (world premiere)
3. J. S. Bach: Concerto for Two Violins in D minor, BWV1043
4. Britten: Les Illuminations
5. James MacMillan: One (London premiere)
6. Prokofiev: Symphony No. 1 ‘Classical’
7. Pekka Kuusisto: OMG HBD
8. J. S. Bach: Keyboard (Harpsichord) Concerto No. 5 in F minor, BWV1056
9. Louis 'Moondog' Hardin: Sidewalk Dances, 12 Moondog Pieces (arr. MacGregor)
ブリテン・シンフォニアは昨年12月に聴いて以来です。20周年記念コンサートということで、いったいどんなことになるかわからなかったのですが、ひとえにまだ見たことがないアリーナ・イブラギモヴァ目当てでチケット買いました。
パーセル作曲の賛美歌「我が祈りを聞きたまえ、主よ」で厳かに開始し、そのままニコ・マーリーの委嘱作品へ。マーリーは1981年生まれ、31歳のアメリカ人。パーセルを解体し、自由に展開していってますが、20世紀の「ゲンダイオンガク」の香りはもはやないんですね。聴きやすくてスマートな曲でした。
次のバッハは、待望のアリーナが登場。もう一人のフィンランド人ソリスト、ペッカ・クーシストも、私は知らなかったのですが人気のヴァイオリニストのようで、クラシックに留まらずジャズやクロスオーヴァーもやる人みたいです。指揮者がおらず、ソリストが身振りで合図します。先ほどの現代作品とはオケの音がガラリと変わり、澄んだ響きの端正なバロックになったので感心しました。27歳のアリーナと36歳のクーシスト、二人ともリラックスした演奏で、短調の曲ながら音楽が喜びに溢れています。特にアリーナは表情が目まぐるしくて面白い。二人とも初めて聴きましたけど、私が知らないだけで若手にも才能あふれる人はまだまだいるのだなあと、明るい未来を感じました。
続く「イリュミナシオン」は一昨年LPOで聴いて以来。その時はシェーファーのソプラノでした。17世紀のバッハから20世紀のブリテンまで時代が飛んで、またオケの音にふくよかさが纏わりついてきました。クーシストが一段高くなったコンマスの席に座り、弾き振りをしますが、バッハならともかく、複雑なブリテンまでも指揮者無しでやるとは、合奏にはよほどの自信があるんでしょう。テナーのパドモアは痩せたジャン・レノという感じのスマートなおじさん。取り立ててすごい声というわけではありませんが、表現力豊かな歌唱でした。
ここでコンマスが本来のリーダー、貫禄オバサンのジャックリーンに交代。ジェームズ・マクミランの新作「ワン」は一聴して日本の現代音楽風に感じましたが、実はスコットランドとアイルランド民謡のトランスクリプションがモチーフとのこと。日本とスコットランドは実際、古来の民謡が類似していると指摘されているみたいです。続くプロコフィエフも、シンプルに見えて意外と難しい曲だと思うんですが、指揮者なしでたいへん見事な合奏。相当練習もしてるのでしょうし、ガヴォットなんか、ノリ一発で合わせている感じ。クーシストも何気に最後尾で弾いていましたが、本当に演奏するのが楽しくてたまらないんでしょうね。
休憩を挟み後半1曲目はエレクトリックヴァイオリンのためのソロ曲。ディレイなどのデジタルエフェクトを駆使し、偶然性や即興も入った一期一会の曲ですが、作者でもあるクーシストは忙しくフットペダルを踏みつつ、時々ボリュームも調整しつつ、最後はヴァイオリンをウクレレのように抱えながら口笛で哀愁のメロディを吹くという、面白いけど何だかよくわからない作品でした。
次はマルチなピアニスト、ジョアンナ・マグレガー登場。わずかにウェーブのかかったブロンドヘアにシックな黒のスーツで、落ち着いた感じの彼女もなかなかかっこいい。バッハのハプシコード協奏曲第5番は第2楽章が「バッハのアリオーソ」として有名で、聴けば「あーこれか」と思い出しました。マグレガーの抑制のきいた端正なピアノと、ノンビブラートで本領発揮のオケが再び気分をバロックに引き戻します。
最後はジャズのビッグバンド風組曲で、サックス、ベース、タブラ(インド鼓)がゲストで加わりますが、これらソリストが必ずしも主役というわけではなく、どちらかというとバンドの曲した。タブラが入っているせいでアジアンな香りも強烈に漂ってます。実は初めて名前を聞いたムーンドッグ(まだまだ知らないことだらけだなー、しゅん…)は盲目でありながらニューヨーク6番街で路上生活ミュージシャンをしていたというかなりユニークな人生を歩んだ人だそうです。気持ち良いスイングもあればブルージーなムード音楽もあり、アラブのオアシスも感じて、ごった煮のような組曲でしたが、私は気に入りました。すでにCDを買う気になってます。マグレガーはピアノも良かったですが、シックな装いで指揮する姿がまた異様にカッコ良かったです。ドレッドヘアーに派手なドレスよりも、このほうが絶対いい。
コンサートが終わったのは10時半。演奏会としては長かったけど、なかなか楽しいひとときでした。
Britten Sinfonia 20th Anniversary Birthday Concert
Britten Sinfonia Voices (1)
Thomas Gould (violin/director-1,2)
Alina Ibragimova (violin-3)
Pekka Kuusisto (violin/director-3,4,7)
Mark Padmore (tenor-4)
Jacqueline Shave (violin/director-5,6)
Joanna MacGregor (piano/director-8,9)
Andy Sheppard (saxophones-9)
Kuljit Bhamra (tabla-9)
Seb Rochford (drums-9)
Tom Herbert (double bass/electric bass guitar-9)
1. Purcell: Hear my prayer, O Lord, Z15
2. Nico Muhly: Looking Forward (world premiere)
3. J. S. Bach: Concerto for Two Violins in D minor, BWV1043
4. Britten: Les Illuminations
5. James MacMillan: One (London premiere)
6. Prokofiev: Symphony No. 1 ‘Classical’
7. Pekka Kuusisto: OMG HBD
8. J. S. Bach: Keyboard (Harpsichord) Concerto No. 5 in F minor, BWV1056
9. Louis 'Moondog' Hardin: Sidewalk Dances, 12 Moondog Pieces (arr. MacGregor)
ブリテン・シンフォニアは昨年12月に聴いて以来です。20周年記念コンサートということで、いったいどんなことになるかわからなかったのですが、ひとえにまだ見たことがないアリーナ・イブラギモヴァ目当てでチケット買いました。
パーセル作曲の賛美歌「我が祈りを聞きたまえ、主よ」で厳かに開始し、そのままニコ・マーリーの委嘱作品へ。マーリーは1981年生まれ、31歳のアメリカ人。パーセルを解体し、自由に展開していってますが、20世紀の「ゲンダイオンガク」の香りはもはやないんですね。聴きやすくてスマートな曲でした。
次のバッハは、待望のアリーナが登場。もう一人のフィンランド人ソリスト、ペッカ・クーシストも、私は知らなかったのですが人気のヴァイオリニストのようで、クラシックに留まらずジャズやクロスオーヴァーもやる人みたいです。指揮者がおらず、ソリストが身振りで合図します。先ほどの現代作品とはオケの音がガラリと変わり、澄んだ響きの端正なバロックになったので感心しました。27歳のアリーナと36歳のクーシスト、二人ともリラックスした演奏で、短調の曲ながら音楽が喜びに溢れています。特にアリーナは表情が目まぐるしくて面白い。二人とも初めて聴きましたけど、私が知らないだけで若手にも才能あふれる人はまだまだいるのだなあと、明るい未来を感じました。
続く「イリュミナシオン」は一昨年LPOで聴いて以来。その時はシェーファーのソプラノでした。17世紀のバッハから20世紀のブリテンまで時代が飛んで、またオケの音にふくよかさが纏わりついてきました。クーシストが一段高くなったコンマスの席に座り、弾き振りをしますが、バッハならともかく、複雑なブリテンまでも指揮者無しでやるとは、合奏にはよほどの自信があるんでしょう。テナーのパドモアは痩せたジャン・レノという感じのスマートなおじさん。取り立ててすごい声というわけではありませんが、表現力豊かな歌唱でした。
ここでコンマスが本来のリーダー、貫禄オバサンのジャックリーンに交代。ジェームズ・マクミランの新作「ワン」は一聴して日本の現代音楽風に感じましたが、実はスコットランドとアイルランド民謡のトランスクリプションがモチーフとのこと。日本とスコットランドは実際、古来の民謡が類似していると指摘されているみたいです。続くプロコフィエフも、シンプルに見えて意外と難しい曲だと思うんですが、指揮者なしでたいへん見事な合奏。相当練習もしてるのでしょうし、ガヴォットなんか、ノリ一発で合わせている感じ。クーシストも何気に最後尾で弾いていましたが、本当に演奏するのが楽しくてたまらないんでしょうね。
休憩を挟み後半1曲目はエレクトリックヴァイオリンのためのソロ曲。ディレイなどのデジタルエフェクトを駆使し、偶然性や即興も入った一期一会の曲ですが、作者でもあるクーシストは忙しくフットペダルを踏みつつ、時々ボリュームも調整しつつ、最後はヴァイオリンをウクレレのように抱えながら口笛で哀愁のメロディを吹くという、面白いけど何だかよくわからない作品でした。
次はマルチなピアニスト、ジョアンナ・マグレガー登場。わずかにウェーブのかかったブロンドヘアにシックな黒のスーツで、落ち着いた感じの彼女もなかなかかっこいい。バッハのハプシコード協奏曲第5番は第2楽章が「バッハのアリオーソ」として有名で、聴けば「あーこれか」と思い出しました。マグレガーの抑制のきいた端正なピアノと、ノンビブラートで本領発揮のオケが再び気分をバロックに引き戻します。
最後はジャズのビッグバンド風組曲で、サックス、ベース、タブラ(インド鼓)がゲストで加わりますが、これらソリストが必ずしも主役というわけではなく、どちらかというとバンドの曲した。タブラが入っているせいでアジアンな香りも強烈に漂ってます。実は初めて名前を聞いたムーンドッグ(まだまだ知らないことだらけだなー、しゅん…)は盲目でありながらニューヨーク6番街で路上生活ミュージシャンをしていたというかなりユニークな人生を歩んだ人だそうです。気持ち良いスイングもあればブルージーなムード音楽もあり、アラブのオアシスも感じて、ごった煮のような組曲でしたが、私は気に入りました。すでにCDを買う気になってます。マグレガーはピアノも良かったですが、シックな装いで指揮する姿がまた異様にカッコ良かったです。ドレッドヘアーに派手なドレスよりも、このほうが絶対いい。
コンサートが終わったのは10時半。演奏会としては長かったけど、なかなか楽しいひとときでした。
上手く撮れませんでしたが、シックな装いがかっこいいマグレガー。
コメント
_ 守屋 ― 2012/11/01 16:01
_ Miklos ― 2012/11/06 10:06
守屋さん、そうなんです、ニコ・マーリーは「旋律」志向の人だ、とは私も思いました。パドモアは、どんな人だろうと思って検索してたら守屋さんのブログに行き当たりました(笑)。ボストリッジとパドモアのツーショット写真があって、私も聴きながら「オペラ歌手らしからぬ痩せ具合はボストリッジみたいだ」と思っていたところでした。ついでに髪を坊主にする前の写真も見つけましたが、全然雰囲気の違うイケメンですね。髪型と歌唱は基本的に関係ないでしょうけど、今のほうが芸域が広く見えてよい気はしますね。
_ つるびねった ― 2012/11/26 22:46
わたしもアリーナ目当てで行ったんですけど、パドモアさんがすごく良かったです♡
それに、マグレガーさんの指揮、かっこよかったですよね。
それに、マグレガーさんの指揮、かっこよかったですよね。
_ Miklos ― 2012/11/28 05:11
おー、いらしてたんですね。前に、ロンドンでアリーナはもう聴けない、とおっしゃってた気が…。それはそうと、アリーナはコール2回くらいでアンコールもなくあっさり引っ込んでしまったのが残念でした。クーシストに比べて出番少な過ぎです。
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ニコ・マーリーは、ロイヤル・バレエの「メタモルフォーシス」の一作目「マキナ」の音楽を担当していました。正直、今となっては旋律を思い出せませんが、飽きない音楽でした。
>パドモアは痩せたジャン・レノという感じのスマートなおじさん
彼は髪を短くしてからぐっと渋くなりましたね。