日フィル/山田和樹/小林美樹(vn):20世紀のロマンティストたち ― 2014/05/10 23:59
2014.05.10 みなとみらいホール (横浜)
山田和樹 / 日本フィルハーモニー交響楽団
小林美樹 (vn-1)
1. コルンゴルト: ヴァイオリン協奏曲
2. ラフマニノフ: 交響曲第2番
みなとみらいホールは超久しぶりです。確か前に行ったのは前世紀かと。
今日は山田和樹のラフマニノフが聴きたいがために遠路横浜まで出てきたので、コルンゴルドはソリストの名前も知らないし、正直全く期待してなかったのですが、予想外に良かったので得した気分でした。1990年生まれの小林美樹さん、チラシを見た限り、今流行?のぷにぷに系アイドル・アーティストとして売り出したいんだけど事務所がまだそれほどはやる気になってない、という十把一絡げ的な香りがだいぶしたのですが、やっぱり演奏家はまずは音を聴いてから判断しなくてはなりませんね。舞台に登場した小林さん、確かにぽっちゃり系なんですが、実物は写真よりもずっとキュート、という普通とは逆のパターン。意外と体格はがっしりとしていて、男勝りに音がしっかりしており、2階席まで十分な芯を持ちつつ届いていました。時々雑に響くところもありましたが、情緒的でも感傷に走らない大人の表現力は、単に「上手い」以上のプラスαを持っています。ふくよかな二の腕から奏でられる「男のロマン」を体現したようなヴァイオリンは、ジャニーヌ・ヤンセンとかサラ・チャンの系列ですかねえ。また、その若さにして終始落ち着いたマダムの振る舞いは、大した肝の座り方と感服しました。オケもメリハリが利いていて、ソリストを盛り立てました。今後小林美樹の名前を見つけたら、安心して積極的に聴きにいきたいと思います。
メインのラフマニノフ第2番。山田和樹がBBC響を振ったロンドンデビューの演奏会を聴き、ざっくりとした全体像を上手く抽出してみせて最後まで見失うことなくオケを鳴らせる人、という印象だったのですが、その後BBC Radio 3で放送された当日のライブを録音し、繰り返し聴くうちに、マクロだけじゃなく、特に第2楽章、第3楽章ではミクロにもいろいろときめ細かいリードを利かせていることに気付き、BBC響の卓越した演奏能力も相まって、その演奏が益々好きになりました。日本のオケを相手に同じことがどこまで出来るのか心配もあったのですが、期待を裏切らずきっちりと自分の音楽を作っていたので感心しました。前と同じく遅めのテンポながらも、コンパクトでクリアな印象を与える見通しの良い演奏です。ゆったりやるとゆうに1時間はかかる長大な曲ですが、長丁場を全く飽きさせないのはロードマップが明確で、音の整理がしっかりとできているからでしょう。オケも最後まで破綻せずによく鳴っており、クラリネットもホルンもソロで美しい見せ場をきっちりと作り、そりゃあBBC響のレベルには届かないとしても、プロの仕事として素晴らしい仕上がり。はるばる横浜まで聴きに来た甲斐は十二分にありました。
あらためて思いましたが、山田和樹はホンモノです。音楽の充実とオケの鳴りっぶりを聴くに、今の日フィルとの良好な関係もうかがえます。しかし、それでもあえて思ったのは、彼には出来るだけ「一流の楽器」を与えてあげて、グローバルスタンダードの世界でタフに成り上がって欲しい、ということ。ヨーロッパの活動を優先し、年に1回くらいは日本に帰ってくる、くらいの露出感でも全く良いのではないかと。
山田和樹 / 日本フィルハーモニー交響楽団
小林美樹 (vn-1)
1. コルンゴルト: ヴァイオリン協奏曲
2. ラフマニノフ: 交響曲第2番
みなとみらいホールは超久しぶりです。確か前に行ったのは前世紀かと。
今日は山田和樹のラフマニノフが聴きたいがために遠路横浜まで出てきたので、コルンゴルドはソリストの名前も知らないし、正直全く期待してなかったのですが、予想外に良かったので得した気分でした。1990年生まれの小林美樹さん、チラシを見た限り、今流行?のぷにぷに系アイドル・アーティストとして売り出したいんだけど事務所がまだそれほどはやる気になってない、という十把一絡げ的な香りがだいぶしたのですが、やっぱり演奏家はまずは音を聴いてから判断しなくてはなりませんね。舞台に登場した小林さん、確かにぽっちゃり系なんですが、実物は写真よりもずっとキュート、という普通とは逆のパターン。意外と体格はがっしりとしていて、男勝りに音がしっかりしており、2階席まで十分な芯を持ちつつ届いていました。時々雑に響くところもありましたが、情緒的でも感傷に走らない大人の表現力は、単に「上手い」以上のプラスαを持っています。ふくよかな二の腕から奏でられる「男のロマン」を体現したようなヴァイオリンは、ジャニーヌ・ヤンセンとかサラ・チャンの系列ですかねえ。また、その若さにして終始落ち着いたマダムの振る舞いは、大した肝の座り方と感服しました。オケもメリハリが利いていて、ソリストを盛り立てました。今後小林美樹の名前を見つけたら、安心して積極的に聴きにいきたいと思います。
メインのラフマニノフ第2番。山田和樹がBBC響を振ったロンドンデビューの演奏会を聴き、ざっくりとした全体像を上手く抽出してみせて最後まで見失うことなくオケを鳴らせる人、という印象だったのですが、その後BBC Radio 3で放送された当日のライブを録音し、繰り返し聴くうちに、マクロだけじゃなく、特に第2楽章、第3楽章ではミクロにもいろいろときめ細かいリードを利かせていることに気付き、BBC響の卓越した演奏能力も相まって、その演奏が益々好きになりました。日本のオケを相手に同じことがどこまで出来るのか心配もあったのですが、期待を裏切らずきっちりと自分の音楽を作っていたので感心しました。前と同じく遅めのテンポながらも、コンパクトでクリアな印象を与える見通しの良い演奏です。ゆったりやるとゆうに1時間はかかる長大な曲ですが、長丁場を全く飽きさせないのはロードマップが明確で、音の整理がしっかりとできているからでしょう。オケも最後まで破綻せずによく鳴っており、クラリネットもホルンもソロで美しい見せ場をきっちりと作り、そりゃあBBC響のレベルには届かないとしても、プロの仕事として素晴らしい仕上がり。はるばる横浜まで聴きに来た甲斐は十二分にありました。
あらためて思いましたが、山田和樹はホンモノです。音楽の充実とオケの鳴りっぶりを聴くに、今の日フィルとの良好な関係もうかがえます。しかし、それでもあえて思ったのは、彼には出来るだけ「一流の楽器」を与えてあげて、グローバルスタンダードの世界でタフに成り上がって欲しい、ということ。ヨーロッパの活動を優先し、年に1回くらいは日本に帰ってくる、くらいの露出感でも全く良いのではないかと。

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