ラブリーな食材たち2014/06/07 18:36

シュパーゲル・ソロ
コールラビ
テンダーステムブロッコリ
活ムール貝

日本に帰ったら滅多にお目にかかれないんだろうなーと思っていたこれら食材が、うちの生活圏内のスーパーで売られているのをここ最近相次いで発見、思わず衝動買いが続いております。

シュパーゲル・ソロは、もちろんオランデーズソースで。何より、今年も食べられたのが嬉しい。

コールラビは、グヤーシュに。定番の具材が戻って我が家のグヤーシュもちょいと原点回帰しました。量があったら(1個しか買えなかった)ぬか漬けにもしたかったところですが…。

テンダーステムブロッコリは、バーベキューもいいですが、さっと茹でてシンプルにマヨネーズが結局一番美味い。

活ムール貝は、ベルギー風でセロリと一緒にスパークリングワインで蒸す(リークがないのが痛いが…)。煮汁はわざと残して、翌日リゾットに。激うまー。

おかげ様で、疲れ果てて帰宅しても、最後はほんのり幸せな気分で一日を終れます。

本当は、消費税が上がった分、食費も節約しようと誓ったはずでしたが…。

新日本フィル/ハーディング/ファウスト(vn):ブラームス4番とvn協奏曲2014/06/20 23:59

2014.06.20 すみだトリフォニーホール (東京)
Daniel Harding / 新日本フィルハーモニー交響楽団
Isabelle Faust (violin-1)
1. ブラームス: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op. 77
2. ブラームス: 交響曲第4番ホ短調 op. 98

トリフォニーホールは1998年以来ですから、16年ぶりですか。個人的な利便性からもっと通いたいホールなんですが、新日本フィルとアマオケが多いようで、なかなか「買い」の演奏会がタイムリーに見つからず1年が経ちました。

今日は前回に続き、ハーディングのブラームスシリーズ第2弾。ヴァイオリン協奏曲は超有名曲なのに何故か縁がなく、初めて実演で聴きます。イザベル・ファウストは3年前の山田和樹/BBC響で聴いて以来ですが、そのときは現代音楽だったので演奏はよく憶えていません。前回はかぶりつき席だったのですらっと長身に見えたのですが、今日のように引きで見ると、小柄なハーディングよりもさらに小さい、華奢でボーイッシュな中性おばさんでした。そのヴァイオリンは、知的でデリケート。熱に浮かされるでもなく、雄弁に語るでもなく、虚飾を排した音と真摯に向き合い丁寧に紡いでいくという演奏で、内面的な志向が私にはちょっと五嶋みどりを思わせました。おそらく(というのは私はこの曲をよく知らないので)パーフェクトに近い演奏だったのでしょう、充実感に溢れた満面の笑みで聴衆に応えていました。アンコールは最近こればっかり聴くバッハのサラバンド。これまた独特な味わいのユニークな演奏でした。

メインのブラ4。前回サントリーホールで聴いたブラ2、3があまりにも酷かったので正直今日は全く期待してなかったのですが、こないだよりはずっと良かったです。少なくとも、概ねちゃんと音が出てました。先日を聴いてない妻は「この楽団はプロなの?」と、せっかくのハーディングなのにがっかりした様子でしたが。それにしてもハーディングのブラームスはぎこちない表情付けで、無茶な揺さぶりもあり、けっこうヘンな演奏です。オケは、ボウイングが適当ながらも、弦はまだましで、管楽器の集中力がなさ過ぎなのが、全体の品格を落としてます。まあそれでも、衝撃的だった前回のダメダメぶりは払拭されていたので、まだ安心しました。

本日の収穫は、客演奏者として入っていたチェロの飯尾久香さんという方。目に優しい正統派美人です。客演なので、次はどこでお見かけすることになるやら…。

都響/フルシャ/アンデルシェフスキ(p):ハルサイと、奔放なバルトーク2014/06/25 23:59

2014.06.25 東京芸術劇場コンサートホール (東京)
Jakub Hrůša / 東京都交響楽団
Piotr Anderszewski (piano-2)
1. オネゲル: 交響的楽章第1番《パシフィック231》
2. バルトーク: ピアノ協奏曲第3番 Sz.119
3. ストラヴィンスキー: バレエ音楽《春の祭典》

注目株のフルシャ/都響を聴くのは、昨年11月以来です。まず1曲目の「パシフィック231」を実演で聴くのは初めて。有名な曲ですが、あんまりプログラムに上らないかも。冒頭の甲高い汽笛の後、早速機関車が起動しますが、重々しくてキレがなく、ダラリとした走りっぷりは全く意外でした。リアリティを狙ってやってるのかもしれませんが、描写としてはリアルでも、音楽が表現したかったのは当時の人々の「衝撃」だったと私は思うので、それが伝わってこないのはオケの限界か、はたまた、演奏解釈としては弱いんじゃないかと。

続いてバルトーク。ピアノの編んでるシェフ好き、じゃなくてアンデルシェフスキは1年ほど前にロンドンで1度聴いていますが、言うなれば超天然系。今日も我が道を行く、今まで聴いたことがないバルトークでした。昨今のバルトーク弾きは技術度でいうと相当に高度な人ばかりかと思うのですが、ミスタッチなど全く気にする様子がない自由奔放ぶりがたいへん新鮮だったのと同時に、スタイリッシュでピカピカした演奏にはない、東欧の空気がしっかりと流れていた気がしました。ただし、ピアノに引きずられたのか、オケにはまだキレ戻らず。拍手に気を良くしたアンデルシェフスキはピアノに座るなり弾き出したのがバルトークの「チーク県の3つの民謡」。譜面通りじゃないものをいっぱい盛り込んだ、個性的ながらも正統派の民謡アプローチ、と後から無理矢理に解釈を当てはめてはみたものの、本人はけっこう思うに任せて気ままに弾いているようにも思えました。もう1曲、知らない曲でしたがどう聴いてもバッハ(パルティータからサラバンド、らしいです)を弾いてくれて、最後まで期待を裏切らない超ユニークな演奏で楽しませてくれました。

メインの「ハルサイ」を日本のオケで聴くのはよく考えたら初めてかも。オケは良く鳴っていましたが、バーバリズムを押し出す演奏ではなくて、リズムのキレはやっぱり悪かったです。破綻とまでは言わないにせよ、トランペットとホルンはちょっと厳しかった。全体的にいっぱいいっぱいという感じで余裕がなかったです。ちょうど今朝見たサッカーW杯日本代表の試合のようなもどかしさ。まあ、一流オケの奏者でも、何度やってもこの曲を演奏するときは緊張して、個人練習に力が入ると言いますし。奏者にとって気の毒なのは、ハルサイの場合、聴衆のほうも曲を熟知しているのでごまかしようがない、ということですか。話を戻すと、若さに対して多少先入観があったのかもしれませんが、フルシャはリスクを取ってオケを振り回すようなキャラではなく、意外と老獪なセンスが持ち味の人で、ハルサイのようなヴィヴィッドな曲は案外得意じゃないのか、と思えました。

インキネン/日フィル:いにしえの解釈、マーラー6番2014/06/27 23:59

2014.06.27 サントリーホール (東京)
Pietari Inkinen / 日本フィルハーモニー交響楽団
1. シベリウス: 交響詩《夜の騎行と日の出》
2. マーラー: 交響曲第6番《悲劇的》

すいません、このインキネンというフィンランドの若い指揮者は名前も知りませんでしたが、経歴を見るとロンドンとは縁がなかったよう。本職はヴァイオリニストみたいです。このプログラムは2011年に行うはずが、東日本大震災のおかげで中止になり、3年を経てようやく実現したファン待望の演奏会とのことだそうです。そのわりには空席が目立ってましたが。

1曲目、シベリウスのこの曲は初めて聴きます。著名度ベスト3と言えるフィンランディア、第2交響曲、ヴァイオリン協奏曲の後に作曲された最壮盛期の作品ですが、どうも私はシベリウスが苦手というか、よくわかりません。突き放して接してしまうと着想の退屈さを感じるばかりで、よっぽど体内リズムと合わないのかなあと思わざるを得ない。タイトルのごとく馬が疾走する場面の音楽がキレ悪く、インキネンさん、大仰な指揮ぶりでバトンテクは優秀なんだろうけど、もうちょっと縦線はそろえてくれんかのー。

最初はLAゾーンで聴いてたのですが、がら空きだったので休憩時間に下の席に移動。メインのマーラー6番は特によく聴きに行く曲ですがこのところチャンスがなくて、実演は2年前のBBCプロムス(シャイー/ゲヴァントハウス管)以来です。スローペースの行進曲で始まった第1楽章は、やはり縦の線がおおらか。今回金管はなかなか頑張っていて、特にホルンのトップは単に巧いというよりもさらに上位の、世界で通用する「音」を手中にしている素晴らしい奏者と思いました。

中間楽章の順序はスケルツォ→アンダンテといういにしえのスタイル。ここ10年の間に聴いた演奏を思い起こすと、スケルツォ→アンダンテを取っていたのはハイティンク、マゼール、ビシュコフ、ヴィルトナー、その逆のアンダンテ→スケルツォはハーディング、シャイー、ビエロフラーヴェクでした。スケルツォ→アンダンテのほうが若干多めですが、判断は二分されていると言ってよいでしょう。ただしインキネンのように若い指揮者がスケルツォ→アンダンテを採用するのは珍しいと思います。

楽章を追うごとに指揮者も奏者もどんどん疲弊してきて、まず木管が先に脱落、ピッチが合わなくなってくきてヤケクソ気味の音になっておりました。最後に意表をつかれたのは、3回目のハンマーが正しく初稿通りの第783小節で打ち下ろされたこと(手持ちのCDだとバーンスタインが3回目のハンマーを叩かせてますが、楽譜指定とは違う第773小節でした)。中間楽章の順序は未だ両者の解釈がせめぎ合う中、ハンマーを3回叩くのはさすがに昨今の実演ではほとんど聴かれなくなっていると思います。私も実演では他に記憶がありません。小ぶりのハンマーを両腕を使い刀を振り下ろすかのごとくぶっ叩くのは、なかなか気持ちのよい瞬間でした。

全体的には、息切れしながらも最後までよくがんばった演奏、と言えそうですが、オケの力量の上限を見てしまったのもまた事実。ただそれよりも、インキネンは北欧人らしいシュッとした若者のくせに、やってる音楽が「昭和」(「前世紀」というよりもこのほうが年代的にもしっくりきます)の大家風の域を出ず、もちろん本人はまだ「巨匠」では全くないので、求心力も包容力も深みも貫禄も、まだまだこれからの話。何が一番気に入らなかったかと言えば、まあそんなところです。

余談ですけど、私はNAXOSレーベルへの録音実績を誇らしげに経歴に書き込むアーティストは大成しないと思ってます。自分は容易に置き換え可能な存在です、と自ら表明するようなもので、芸術家の姿勢としては、むしろ恥ずかしげに隠すものではないのでしょうか。(今回の場合、日フィルのプログラムに載っているインキネンの経歴が本人承諾の文章なのかはわからないので、評価は保留してますが。)