2011 BBC PROMS 52:LSO/ゲルギエフ/カヴァコス(vn):LSOを後ろから見る2011/08/23 23:59


2011.08.23 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2011 PROM 52
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Leonidas Kavakos (Vn-2)
1. Prokofiev: Symphony No. 1 in D major ('Classical')
2. Dutilleux: L'arbre des songes
3. Dutilleux: Slava’s fanfare
4. Prokofiev: Symphony No. 5 in B-flat major

今年はまだ2つめのプロムスです。本日は舞台後方のコーラス席。上のサークル席よりずっと音響が良いのに昨年気付きました。本日のアーティストはゲルギエフ/LSOのお馴染みコンビですが、本拠地バービカンホールにはコーラス席がないため、LSOをこうやって後ろから眺めるのはプロムスならではの楽しみです。


ティンパニをこの至近距離で見るのもなかなかないことです。

演目はプロコフィエフとデュティユーというプログラム。1曲目の「古典交響曲」、有名曲のわりにはフル編成オーケストラのプログラムに載ることは意外と少ないような気がします。私も実演で聴くのは多分3回目、前回は確か10年前に初めてブダペストに行ったときでした。ロシア人だけあってゲルギエフはプロコフィエフを得意としているはずですが、予想外にぎくしゃくしたテンポで始まり、アンサンブルがぎこちなかったので、あれっと思いました。今どきの古典風アプローチではなく、フレージングやダイナミクスをいじくり倒した、飾り気の多い演奏。縦の線が緩めだったのもむべなるかな。正面から見るゲルギエフの指揮は素人にはますますわかりにくく、あれでよく合わせられるものだと少し感心しました。

2曲目はデュティユーの「夢の樹」と題されたヴァイオリン協奏曲。カヴァコスはすっかりプロムス常連で、私も気がつけば3年連続で聴いています。髪が伸びて怪しいオタク系の風貌になっていたので、一瞬別人かと思いました。初めて聴く曲ですが(デュティユー自体初めてかも)、二昔前の現代音楽といった趣きのとっつきにくい曲で、琴線に触れるものではありませんでした。お手上げのためパスです、すいません。


演奏後のカヴァコス。ピンボケしまくりですいません。

休憩を挟んで最初は、同じくデュティユーの「スラヴァのファンファーレ」というブラスのみの2分しない小曲。タイトルの通り「スラヴァ」ことロストロポーヴィチのために書かれた曲で、最後にトランペットがドヴォルザークのチェロ協奏曲をフレーズを短く吹きます。こちらは一転して楽しい曲でした。

間を置かず、メインのプロコフィエフ5番に突入。これは非常に好きな曲でして、このためにチケット取ったようなものですが、力作でありながらどこか人を食ったような気の抜け方がえも言われず魅力的だったりします。相当な難曲なのか、立派な実演にはなかなかめぐり合えませんが、今日のLSOは期待通りほぼ完璧な演奏を聴かせてくれました。コーラス席だと至近距離のため金管とティンパニの生音がビンビン耳に入ってきましたが、バランスが多少悪いのは仕方ないにせよ、全然耳障りにならないのはさすが磨き上げられた音のおかげです。官能的な第1楽章は、ところどころで鋭く決まるアタックが強烈なアクセントになって、相当綿密にリハを積み上げていってる様子がうかがえました。さては、1曲目の「古典」はノーリハだったのかな。第2楽章は軽快なリズムに乗った小太鼓の音の粒が見事に揃っていて思わずニヤリとさせられました。短調で重苦しい曲調の第3楽章もどこか軽やかさを残しながら、強奏では大げさに盛り上げてゲルギーもなかなかの役者ぶりを発揮します。終楽章はもう混沌の極致で、そのまま押すのかと思いきや、ラストはインテンポのヴァイオリンソロでぐっとテンションを下げ、最後の一瞬で思いっきり急峻に音量を上げて、ハイ、おしまい。最後まで肩の力が抜けた好演で、やんやの大歓声も納得でした。時差ボケがまだ完全に取れておらず、体調はもう一つだったのが残念ではありました。