日本は猛暑2011/08/10 23:54

何だか暴動を避けるかのように、先週から日本に来ております。ロンドン在住の皆様は無事にお過ごしでしょうか?

着いた日こそ、けっこう涼しい風も吹いていて、これなら楽勝と思っていたら、そこからジリジリと猛暑が戻ってきて、今日などこの夏一番の暑さ。20℃前後の気温になれた身体にはたいへんきっつい日本の真夏です。

と、取り急ぎ近況報告。ネット環境貧弱のため、いろいろと失礼、ご容赦ください。

ロンドンは涼しい2011/08/22 07:13

皆様、プロムスや旅行を楽しまれているご様子でしたが、その間私は休暇(と一部仕事)で日本に帰っておりました。のんびりとリラックス、と言いたかったところですが、後半は連日最高気温36℃、最低気温27℃(←むしろこれがきつい)の好天に恵まれた?おかげで、オーヴンの中にほうりこまれたごとくのじりじりと皮膚に刺さる熱気に外出する気も失せ、節電なんか知ったことか命のほうが大事じゃと冷房つけっぱなしの屋内で、うだうだごろごろと過ごしておりました。

また後ほど京都の写真をいくつか載せたいと思いますが、まずは機内食の話から。年々質が落ちているとは感じていましたが、今回娘のためにプレオーダーしといたチャイルドミールをふと見ると、充実度で完全に逆転されているように思えます。


上がレギュラーのメニュー、ビーフハンバーグライスです。


そしてこちらがチャイルドメニュー、ミートボールカレーです。こっちのほうが一昔前のティピカルな機内食らしい取り揃えですよね。


着陸前の軽食は、レギュラーはビーフシチューのペンネ添えみたいなもの。


チャイルドメニューは上のようにオムレツ、ベーコンの定番メニューでした。

ちなみにANAのエコノミーです。写真は復路(成田→ロンドン)の分ですが、往路は、メインミールは牛丼でもっと小さい器でしたし、軽食もコールドミールのみで、チャイルドメニューとのボリューム差はもっと大きかったです。妻も同感で、「家族全員チャイルドメニューを頼みたいね」と言っておりました。

え?エコノミーなんか乗るからだ?ごもっともです。うちの会社はシブいんです…。でも、ボーイングの機体は足のスペースが多少広くなって、前の席の人がリクライニングを倒しても背もたれが後ろに倒れて来ないタイプだったので、まあまあ快適な空の旅でした。映画は「毎日かあさん」くらいしか見たいものがありませんでしたが、オーディオプログラムで例の佐渡裕/ベルリンフィルのショスタコ5番があったので、思わず2回聴いてしまいました。一発勝負の大熱演で、CDが安くなったら買おうと思いました。(日本のCD屋でも見かけたのですが、3000円だったので…)

2011 BBC PROMS 52:LSO/ゲルギエフ/カヴァコス(vn):LSOを後ろから見る2011/08/23 23:59


2011.08.23 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2011 PROM 52
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Leonidas Kavakos (Vn-2)
1. Prokofiev: Symphony No. 1 in D major ('Classical')
2. Dutilleux: L'arbre des songes
3. Dutilleux: Slava’s fanfare
4. Prokofiev: Symphony No. 5 in B-flat major

今年はまだ2つめのプロムスです。本日は舞台後方のコーラス席。上のサークル席よりずっと音響が良いのに昨年気付きました。本日のアーティストはゲルギエフ/LSOのお馴染みコンビですが、本拠地バービカンホールにはコーラス席がないため、LSOをこうやって後ろから眺めるのはプロムスならではの楽しみです。


ティンパニをこの至近距離で見るのもなかなかないことです。

演目はプロコフィエフとデュティユーというプログラム。1曲目の「古典交響曲」、有名曲のわりにはフル編成オーケストラのプログラムに載ることは意外と少ないような気がします。私も実演で聴くのは多分3回目、前回は確か10年前に初めてブダペストに行ったときでした。ロシア人だけあってゲルギエフはプロコフィエフを得意としているはずですが、予想外にぎくしゃくしたテンポで始まり、アンサンブルがぎこちなかったので、あれっと思いました。今どきの古典風アプローチではなく、フレージングやダイナミクスをいじくり倒した、飾り気の多い演奏。縦の線が緩めだったのもむべなるかな。正面から見るゲルギエフの指揮は素人にはますますわかりにくく、あれでよく合わせられるものだと少し感心しました。

2曲目はデュティユーの「夢の樹」と題されたヴァイオリン協奏曲。カヴァコスはすっかりプロムス常連で、私も気がつけば3年連続で聴いています。髪が伸びて怪しいオタク系の風貌になっていたので、一瞬別人かと思いました。初めて聴く曲ですが(デュティユー自体初めてかも)、二昔前の現代音楽といった趣きのとっつきにくい曲で、琴線に触れるものではありませんでした。お手上げのためパスです、すいません。


演奏後のカヴァコス。ピンボケしまくりですいません。

休憩を挟んで最初は、同じくデュティユーの「スラヴァのファンファーレ」というブラスのみの2分しない小曲。タイトルの通り「スラヴァ」ことロストロポーヴィチのために書かれた曲で、最後にトランペットがドヴォルザークのチェロ協奏曲をフレーズを短く吹きます。こちらは一転して楽しい曲でした。

間を置かず、メインのプロコフィエフ5番に突入。これは非常に好きな曲でして、このためにチケット取ったようなものですが、力作でありながらどこか人を食ったような気の抜け方がえも言われず魅力的だったりします。相当な難曲なのか、立派な実演にはなかなかめぐり合えませんが、今日のLSOは期待通りほぼ完璧な演奏を聴かせてくれました。コーラス席だと至近距離のため金管とティンパニの生音がビンビン耳に入ってきましたが、バランスが多少悪いのは仕方ないにせよ、全然耳障りにならないのはさすが磨き上げられた音のおかげです。官能的な第1楽章は、ところどころで鋭く決まるアタックが強烈なアクセントになって、相当綿密にリハを積み上げていってる様子がうかがえました。さては、1曲目の「古典」はノーリハだったのかな。第2楽章は軽快なリズムに乗った小太鼓の音の粒が見事に揃っていて思わずニヤリとさせられました。短調で重苦しい曲調の第3楽章もどこか軽やかさを残しながら、強奏では大げさに盛り上げてゲルギーもなかなかの役者ぶりを発揮します。終楽章はもう混沌の極致で、そのまま押すのかと思いきや、ラストはインテンポのヴァイオリンソロでぐっとテンションを下げ、最後の一瞬で思いっきり急峻に音量を上げて、ハイ、おしまい。最後まで肩の力が抜けた好演で、やんやの大歓声も納得でした。時差ボケがまだ完全に取れておらず、体調はもう一つだったのが残念ではありました。

2011 BBC PROMS 56:BBC響/ビシュコフ/ゲルシュタイン(p):BBC響も後ろから見る2011/08/26 23:59


2011.08.26 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2011 PROM 56
Semyon Bychkov / BBC Symphony Orchestra
Kirill Gerstein (P-1)
1. R. Strauss: Burleske
2. Mahler: Symphony No. 6 in A minor

時差ボケがいまだに抜け切らず、夕方になると目と頭がお眠りモードに引き寄せられて行ってしまいますが、そんな中の本日はビシュコフ/BBC響のプロムス。前回のLSOと同じく、本拠地バービカンでは体験できないコーラス席での鑑賞です。

1曲目のブルレスケは初めて聴く曲でした。リヒャルト・シュトラウスらしからぬストレートにロマンチックなピアノ・ヴィルトゥオーソですが、主題を導くメロディアスなティンパニから始まって、最後はまたティンパニの一音で締めくくられるのが特徴的です。キリル・ゲルシュタインは、かのバークリー音楽院のジャズ科出身で、その後クラシックに転向したという異色のキャリアを持つロシア人ピアニストですが、ここに限らずどのホールでも、コーラス席はピアノが聴こえにくいのが最大の難点ですね。今日も残念ながらピアノがどうのこうのという以前の問題で、どんな奏者なのかあまりよくわかりませんでした。BBCのサイトでじっくり聴き直したいです。

メインのマーラー6番は、今年2月にビエロフラーヴェクの指揮で聴いた、同じくBBC響の好演が記憶に新しいところですが、やはり指揮者が違うと趣きが相当変わります。ビシュコフはとことん歌を歌わせ、大仰なタメを作って壮大に盛り上げるのが得意な人という印象なのですが、果たして今日も早めのテンポで行進曲がキビキビと開始され、第2主題の「アルマのテーマ」もたっぷりとベルカントでとっても感傷的。ドラマ性重視のロマンチックな演奏です。管楽器のベルアップとか、カウベルや鐘を叩く位置とか、細かいところはスコアに忠実でしたが、全体的なフレームはビシュコフ独自のものでした。オケはさすがに堅実、堅牢で、トランペットやホルンも1カ所音がつぶれた以外はほぼ完璧な演奏。ティンパニの音が軽いのがちょっと気に食わなかったですが。ハープが4本立っていたのは音的にもビジュアル的にも圧巻でした。

ビシュコフは過不足ない的確な棒振りで、音楽をドラマチックに盛り上げるのがやっぱり非常に上手い。20年前の私だったら熱狂した演奏でしょう。しかし何故か、2月に聴いたビエロフラーヴェクの丁寧に積み上げられた節度ある演奏が、むしろしみじみと思い出されました。私も年を取ったのかな…。

なお、中間楽章はスケルツォ→アンダンテの順、終楽章のハンマーは現行のスコア通り2回のみでした。3回目を叩く実演にはなかなか巡り会えないので今日は期待したのですが、ちょっと残念。そのハンマー、見かけは特大ながら、打ち付ける台に重みがなかったのか、台ごと跳ね上がっていて、音は見かけほど重厚ではありませんでした。


打楽器群はステージ下手側上段に固められていました。前後に並んだティンパニが新鮮です。

2011 BBC PROMS 室内楽 7:ヨーヨー・マ(vc)/キャスリン・ストット(p)2011/08/29 23:59


2011.08.29 Cadgan Hall (London)
BBC Proms 2011 Chamber Music 7
Yo-Yo Ma (Vc), Kathryn Stott (P)
1. Graham Fitkin: L (London Premiere)
2. Egberto Gismonti/Geraldo Carneiro: Bodas de prata and Quatro cantos
3. Rachmaninov: Cello Sonata in G minor

珍しく室内楽でも聴いてみようかと思ったのは、もちろんヨーヨー・マが目当てです。ロイヤルアルバートホールの演奏会でもよかったのですが、曲目がフィトキンの新作チェロ協奏曲(初演)というちょっと得体が知れないものだったのと、あのホールでは距離がありすぎて多分不満が残るだろうなとの予測の下、カドガンホールの室内楽マチネのほうを狙いました。ラフな服装のストットに、お堅いスーツ姿ながらも出てくるなり人目をはばかることなく客席の知り合いに笑顔で手を振るヨーヨー、非常にリラックスした雰囲気です。

1曲目の「L」はローマ数字で50を意味します。長年の伴奏パートナーであるストットがヨーヨー50歳の誕生日プレゼントとしてグラハム・フィトキンに委託した曲で、ストットが50歳を迎えるのを待って、もちろん二人によって初演されたそうです。変拍子バリバリでユニゾンが多い、プログレロックを思わせる曲で、呼吸ぴったりな疾走感が際立っていました。

2曲目は、ジャンルを超えたコラボを積極的に行ってきたヨーヨーが2003年に発表した「オブリガード・ブラジル」からのピース。サンバやボサノバとはまた一味違った癒し系ブラジル音楽は、美しいの一言。ヨーヨーのチェロは輝かしいばかりに華のある音で、全くブレない高音が特に素晴らしいです。

メインはラフマニノフのソナタ。チェロソナタなどほとんど聴くことがない私にはもちろん馴染みのない曲ですが、チェロもピアノも難しいので有名だそう。浪花節、もといラフマニノフ節が解放されたという感じはなく、私的にはロマンチシズムを抑えたストイックな曲に思えました。ストットの硬質なピアノは曲想によくマッチしていましたが、ヨーヨーの明るくこぶしのよく回るチェロはまた全然個性が違い、この異質な二人の演奏が息はぴったりと合っているのだから面白いものです。終演後、お互いを称え合う二人はたいへん仲良さそうで、終始リラックスした空気がとても心地よかった昼下がりのひと時でした。


ピンボケ失礼。


健闘を称え合う二人。