エリーナ・ガランチャ@バービカン2012/10/02 23:59

2012.10.02 Barbican Hall (London)
Elina Garanča (Ms)
Karel Mark Chichon / London Symphony Orchestra
Gordon Nikolitch (Vn-3)
1. Glinka: Overture to "Ruslan and Ludmila"
2. Tchaikovsky: "Yes, the time has come" from "The Maid of Orleans"
3. Massenet: Meditation from "Thaïs"
4. Saint-Saëns: "Mon coeur s’ouvre à ta voix" from "Samson et Dalila"
5. Saint-Saëns: Bacchanale from "Samson et Dalila"
6. Gounod: "Plus grand, dans son obscurité" from "La Reine de Saba"
7. Pascal Marquina Norro: España Cañí
8. Santiago Lope Gonzalo: Gerona
9. Manuel Penella: Pasodoble from "El gato montés"
10. Bizet: Extracts from "Carmen"
 1) Prélude     (Act I)
 2) Habanera  (Act I)
 3) Entr’acte   (Act III)
 4) Séguedille  (Act I)
 5) Entr’acte   (Act IV)
 6) En vain, pour éviter  (Act III)
 7) Entr’acte    (Act II)
 8) Chanson bohème (Act II)

このように歌手を前面に立てた「オペラアリアの夕べ」みたいなのは、器楽志向の私は最も避けてきた部類の演奏会ですが、一度は見たいと思っていたエリーナ・ガランチャを今シーズンもオペラ座で見ることはできなさそうだというのが判明してから、ちょうど頃合よく目に付いたこのチケットを思わず買ってしまいました。何でもこのコンサートはドイツ・グラモフォンから先月発売されたばかりの新譜「Romantique」のプロモーション・ツアーの一環だそうです。それにしてもバックがLSOとは豪勢な話。指揮者は聞いたことがない名前でしたが、ガランチャのダンナさんなんですね。

1曲目の「ルスランとリュドミラ」序曲が終わり、入場してきたガランチャは、今まで見たどのプロモーション写真とも違う(笑)、シックなグレーのドレスに身を包んだ、がっしりとした体格の飾りっ気ない中年女性でした。もっと細身で色気たっぷりのお姉ちゃんを想像していた私は思いっきり肩すかし。30代半ばにしてはちょっと老け顔だし、身体の線も、ちょっと…。

いや、だってね、





こんな美女が出てくるのかっ、とワクワクしていたら、この中の誰とも違う人が出てきたので…。(失礼)

オケの間奏を挟みながら進行するプログラムの前半は、チャイコフスキー「オルレアンの少女」、サン=サーンス「サムソンとデリラ」、グノー「シバの女王」から各々メジャーなアリアを取り揃えます。前半はお腹で手を組み、品格高い歌唱を心がけていました。LSOがよく鳴るのでオケがうるさ過ぎのところもありましたが、それにも負けずによく通る美声でした。メゾソプラノの太さはそのままに、ソプラノのように突き抜けたロングトーンの伸びは、天性のものがありますね。私はこのへんのオペラアリアはさっぱりわからないのですが、声の特質をよく活かした、じっくり聴かせる選曲になっていました。


後半はスパニッシュ特集。黒いドレスと深紅の口紅にお召し替え、前半よりもくだけた感じで小芝居の入ったシアトリカルな歌唱にイメチェン。「カルメン」はさすがのオハコで、自信たっぷり、余裕たっぷりのコロラトゥーラ・メゾ。技巧に長けていてやけに健全なカルメンという印象でした。もっと場末でヘタウマのくずれた感じもあったほうが、全くのアウトローである本来のカルメンのキャラクターには合う気もしますが、それはそれとしてもガランチャは是非ともオペラ座で見たかった。3年前にアラーニャとのコンビでROHの「カルメン」に出演したとき、我が家はまだROHデビュー前だったので見てないのです…。

ダンナさんのチチョンは、オペラ指揮者にはありがちな、カリスマはないけど仕事きっちりのタイプで、結構若いのに手慣れた棒さばきでLSOを鳴らし、安定感がありました。愛妻のためとは言え、この雑多なプログラムを全部暗譜でやってたのは立派。ガランチャも後半は終始リラックスした表情で上機嫌、アンコールではスペイン系をさらに3曲歌ってくれました。