デイヴ・ウェックル&トム・ケネディ・プロジェクト@ロニー・スコッツ ― 2026/05/27 23:59

2026.05.27 Ronnie Scott’s Jazz Club, Main Club (London)
The Dave Weckl/Tom Kennedy Project
Dave Weckl (drums)
Tom Kennedy (electric bass)
Ryan Davlin (tenor sax)
Stu Mindeman (keyboards)
昨日に続き、二夜連続でロニー・スコッツ。今日は欧州ツアー中のデイヴ・ウェックル&トム・ケネディのプロジェクトです。昨今のジャズ・シーンなど全く知識がない私にとって、心を引き寄せられたのがまずはドラマーのプロジェクトでしたので、たまたまサイモン・フィリップスとデイヴ・ウェックルというレジェンドが続いてしまったおかけで連チャンになってしまいました。サイモンが「ストレートな凄腕ラウド系」だとすれば、デイヴ・ウェックルはまさに「異星から来た、人間を超えたハイテク手数系」ドラマー。ちょっとでも隙間があれば高精細な変態的フレーズのオカズで埋めていき、なおかつ音楽としてセンス良く成立させるバランス感覚を備えた、サイモンとは全くタイプの違うジャズ・ドラマーです。過去に一度だけそのプレイを見たのは2004年、真夏の盛りのブダペストで、チック・コリア・エレクトリック・バンドのオールスタンディングライブでした。
今回はPriorityではなくStandardの席を試してみました(というかPriorityは売切れ…)。昨日の経験から10分早めに到着したものの、入場の列はさほど変わらず、やはり着席できたのは17時45分頃。案内された席がやや後方なのはまあ仕方がないのですが、ちょうど柱がドラムセットに被る位置でドラマーの姿が見えにくく、がっかりしました。会場内には他にも柱はあるものの、ステージを遮るような柱はこの1本だけで、自分で選べるなら(特にドラムが目当ての自分にとっては)絶対に選ばないエリアの席です。実際、ドラムはほぼ全身がスポッと柱の影に入ってしまい、演奏中に辛うじて見えたのがドラマーの左手首から先だけというたいへん残念な状況。今後ここに来る際は何としてもこの邪魔な柱を回避したく、そうすると基本はPriority席を買うのかなと思いました。あとは入場する際の配席担当者にダメ元で希望を言ってみるとか。

ベースのトム・ケネディは、初めて見ますが、長身の眼鏡姿が頼もしさを感じさせるナイスミドル。ウェックルとは90年代から組んで、ずっと一緒にプレイしている相性抜群の盟友です。スラップはやらないものの、こちらもかなりの手数系と言えそうです。今日のセットリストは、5月に出たばかりのケネディ自身の新作リードアルバム「The Summit」と、彼の過去作からの選曲が中心。名義こそウェックルを前面に出したプロジェクトながら、実質的なバンドリーダーはケネディだと見ました。演奏した曲はどれ一つ音源を持っておらず、知らない曲だったのですが、曲を知らないのがむしろデフォルトで、それでも十分楽しめるのがジャズライブの良いところだと改めて感じました。

そもそも今回の目的は「デイヴ・ウェックルの生プレイを見ること」。その意味では「見る」ことは満足できなかったものの、生演奏の音は堪能できました。ドラムセットはヤマハ製で、ラックで固定された比較的オーソドックスなジャズドラムの構成。打ち込みはなかったと思うのですが、ミキサーがあり、本人もイヤモニをしていたので、モニタの返し、兼、耳の保護もあったのではないかと。それにしてもやはりウェックルは凄かったの一言です。圧倒的なドラムプレイと千手観音のドラムソロは66歳になった今も健在。基本パターンの際は昔よりも多少大人しくなった気もしましたが、無理筋なオカズをしれっと突然詰め込んで、リズムは一切ブレることなく通り過ぎるその安定感よ。単に音数が多いだけでなく、片手だけで高速タム回しをやってみたり、誰もやらないようなフレーズのアイデアがいちいちカッコ良い。センスがぶっ飛んでるので、長年のパートナー、ケネディですら時々合わせ損ねる場面もありました。そして、異次元のドラムソロはもう言葉もありません。恐ろしいのは、これだけメチャクチャ叩きまくって、まだまだ余力を残しているような余裕が感じられること。しかし、無駄な動きが少なく身体的な動作は非常にコンパクトなので、柱の影からはやっぱり左手の手首から先しか見えないという恨み節…。とにかく今日は席が最悪だったので、ウェックルにはどんな企画でもいいからまた近いうちに来てくれないかな、と思うものであります。
サイモン・フィリップス・プロトコル6@ロニー・スコッツ ― 2026/05/26 23:59

2026.05.26 Ronnie Scott’s Jazz Club, Main Club (London)
Simon Phillips & Protocol 6
Simon Phillips (drums)
Phillip Whack (saxes)
Alex Sill (guitars)
Otmaro Ruiz (piano/keyboards)
Ernest Tibbs (electric bass)
初のロニー・スコッツ。有名なジャズクラブですが、前回の駐在時にも一度行きたいと思いつつ結局機会がありませんでした。場所はロンドンの中心地、Soho。讃岐うどん「Koya」と同じ並びだったのを、現地に来てみて「ああ、ここだったか」と思い出しました。
5月なのに34℃超の記録更新猛暑の中、勝手がわからないのでとりあえず開場時間の15分前に到着してみたら、店の前にはすでに30人くらいの行列。ここから着席までさらに30分くらいかかりました。配席は当日決まるシステムみたいですが、先着順でより良い席、ということでもなく、グループの人数も考慮しつつ、その日のフロアチーフの独断で決められていくようです。今回は最初ということもありPriority席にしたのが功を奏し、案内されたのはドラム真正面の席。しかもステージかぶりつきではなく、ひとテーブル分置いて距離があったので、むしろ近すぎずにドラムを堪能できる席で良かったです。あまり近すぎるとドラムの生音が耳を直撃して他の楽器が聴こえなくなってしまうのですが、演奏全体を自分にとってちょうど良いバランス(ドラム近め)で楽しめる位置でした。

場内はまさに古い高級ジャズクラブの雰囲気。キャパはブルーノート東京とコットンクラブの中間くらいでしょうか。見渡すと、ロンドンのジャズクラブ界隈の客層は比較的年齢が高めで、ほぼ白人。男性客が多かったのはドラマー中心のバンドだからですかね。

サイモン・フィリップスを生で観るのは今回が初めてです。自分の同時代体験で言うとやはりマイケル・シェンカー・グループのファーストアルバムが最初の衝撃で、しかしこの人は基本メタルではなく、ジェフ・ベック、ミック・ジャガー、TOTOなどでのプレイの傍ら、ロック寄りではあるがフュージョン、ジャズなんでもござれのセッションドラマーとして長年第一線を走ってきた今やレジェンドで、そのドラミングを何度もコピーしたことがありますし、ドラムのスタイルで学ぶ点が非常に多いです。
普段からタムもバスドラも多めのサイモンのドラムセットはTAMA製で、思ったよりもコンパクトに配置されていました。ストレートではあるがシンプルではなく、多彩な音色を駆使するサイモン仕様は、得意なツインバスの上に、メロタムが10個(一番大きいのはフロアタムより大きい…)、シンバルも多数ある中で、ライドシンバルが左側に置かれていたのに違和感。それで、演奏が始まってようやく気づいたのですが、サイモンは左右の手がスネアの上でクロスしないオープンハンドスタイルのドラマーだったんですね。自分はあまり教則ビデオを見ないし、サイモンがクロスかオープンかなんて考えたこともなかったので、生で見る初サイモンのナチュラルかつ機能美を感じさせるオープンハンドのフォームが非常に新鮮でした。
今回は、サイモンが1989年から続けている自身のソロ・プロジェクト「Protocol」の第6弾ですが、「Protocol 6」のアルバムは6月発売予定でまだ世に出ていないので、このツアーで披露されるのが初出になります。エイトビートのノリの楽曲が中心ですが、曲ごとに16ビートやラテンなど多彩な味付けが加わり、アクセントになっています。意外に小柄なサイモンの身体から叩き出されるビートは、ツーバスを多用し、メタラーを思わせる完全にラウド系のドラム。ただパワフルなだけではなくて、リズムの体幹が揺るぎなく安定しており、アタックの効いた鋭い音に、ぶれないバランスと、生き生きとしたグルーヴ。打ち込みも少し使っていましたが、イヤモニを着けている様子はなく、自分のリズム感に絶対の自信がないとできない芸当です。フィルインやドラムソロではラウド系にあるまじき小技を詰め込み、圧巻のドラミングに圧倒されました。変態的なことは何もしておらず、パターン、フレーズは至って基本に忠実。ただその一つ一つが恐ろしく完璧で確実です。69歳という年齢を考えるともっと枯れていても不思議ではありませんが、若いころと変わらぬ路線で突き通すパワープレイは驚異的な生命力を感じさせました。
「Protocol 6」の他のメンバーは、黒人白人二人ずつ、出身も英国、米国、ベネズエラ、女性はいないものの年齢はバラバラで、多様性があります。ベースのアーネスト・ティブスは「Protocol II」からずっと参加していますが、サックスを除く他メンバーは「Protocol V」からの参加です。しかしメンバーが誰であれ、このプロジェクトがサイモン中心であることは明確で(実際、最初のProtocolはサイモンが全楽器を担当)、皆サイモンという大きな船に乗っかっており、決してはみ出さないし、戦わない。サイモンのハイテクパワードラムを存分に堪能できただけでもう十分お腹いっぱいの夜でした。
SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026 in LONDON ― 2026/03/31 23:59
2026.03.31 O2 Academy Brixton (London)
City Pop Waves: SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2026
高中正義 (guitar)
斉藤ノヴ (percussion)
岡沢章 (bass)
宮崎まさひろ (drums)
井上薫 (keyboard)
髙本りな (keyboard)
大滝裕子, 斉藤久美 (chorus)
高中は自分の世代的には「虹伝説」リリース時にずいぶん熱心に聴き込んだことと、その後バンドでいくつか著名曲を演奏したこともあり、もちろん生で見たかったアーティストの一人だったのですが、基本的に武道館とか野外フェスなどの巨大な箱でしかやらない人という先入観があり、足が遠のいていました。このライブに気づいたとき、せっかくロンドンに来るというのでこれは是非見たいと思ったのですが、チケットはすでにソールドアウト。オフィシャル販売サイトであるTicketmasterにリターンが出てないかを日々ウォッチしつつ、リセールサイトのTwicketでもアラート登録をして待ち構えていたのですが、ライブの一ヶ月前になろうとする時期になっても一向に出てこないので、痺れを切らせて別のリセールサイトviagogoを探すといくつか出ているのを発見。ここは手数料が高く、トータルでけっこうな値段になってしまうのですが、毎日ヤキモキするのも疲れるのでここらで諦めて手を打ち、もうストールで立ち見する年齢でもないので、Limited Viewですがサークル席のチケットを無事ゲットしました。
いろいろネットを調べていると、このライブは最初、同じO2でもShepherd's Bush Empireのほうで開催の予定だったのが、チケットの売れ行きが想像以上だったため、急きょ場所がO2 Academyに変更になり、さらに追加公演も発表されたという経緯のようです。例えば2025年に藤井風が行ったロンドン公演はO2 Shepherd’s Bush Empire(収容約2千人)で二日間ソールドアウトだったのに対し、今回の高中はO2 Academy(収容約5千人)で同じく二日間ソールドアウト、動員力はざっと藤井風の2.5倍あったということになります。キャリアもジャンルもファン層も違うので比較はあまり意味がないかもしれませんが(私は両方大好きなのですが)、これが日本だったら藤井風のライブチケットは高中の100倍は入手困難でしょうから、ロンドンで高中の人気がこれほどまでに高いというのがまず素直に驚きでした。
18時開場、20時開演ですが、着席だからあまり早く行っても時間を持て余すと思い、それでもちょっと早めに結局18時半ごろ会場に着いてみれば、入場を待つ人々が2ブロック先まで続く長蛇の列を成しており、あらためてビックリ。大人しく並んで、やっと入口まで辿り着いたかと思ったら、行列は何とさらに建物を一周巻いて続いており、さらにぐるっと回らされてやっと入場できました。雨に降られなくて本当に良かったです。客層を見ると、人種はいろいろですが、概ねイギリス人の若者ばかり。日本人らしき人は一人も見かけませんでした。列に並んでいる際も、すぐ後ろにいた白人の若者集団(多分20代前半)はまだ肌寒い気候の中Tシャツ一枚でワインを瓶からラッパ飲みしつつ大騒ぎしており、時折り「Brasilian Skies」や「Seven Goblins」を鼻歌で歌ったりしてたので、行列を間違えていないなという確認にはなったのですが、日本の高中のライブでは多分まず見ることがないであろう客層です。そのうちの一人は「自分は高中ファンだけどカシオペアのほうが好きなんだ」などと声をかけてきて、何でそんな古いジャパニーズフュージョンがイギリスで人気なのか聞きたかったのですが、彼らは楽器をやるわけではなく、ただ日本のフュージョンシーンはとても特別で、イギリスでも好んで聴く人は多い、というところで、入場の列がストールとサークルで分かれてしまい話途中までしか聞けず。
O2 Academy Brixtonは初めて来たのですが、元々Brixton Academyと呼ばれていた老舗のライブシアターで(例えばBrian May Bandのライブアルバム)、建物も内装もトイレも、かなり伝統と歴史を感じさせる古臭さです。サークルから下を見下ろすと、立ち見のストールは盛り上がる気満々の人々ですでに寿司詰め状態。
特に前座アーティストもなく、8時ジャストにライブがスタート。バンドメンバーに続いて、「TAKA!」コールに後押しされ、定番の真っ赤なスーツで登場した高中は、年齢を感じさせず元気いっぱいの様子。1曲目はオリジナルアレンジの「Blue Lagoon」、早速場内大盛り上がり。こっちの若者のライブの楽しみ方は、とにかく歌う歌う。高中の曲は基本的にインストなので、ウォーウォーワーワーとスキャットでメロディラインを歌いつつ、歌詞のある曲ではもちろん、「Tokyo Reggie」のような日本語の歌詞でも皆さん歌いまくるのは感心しました。高中の曲はインプロヴィゼーション重視のモロジャズとは違い、メロディアスなギターテーマと決めソロ中心のシティポップ・フュージョンですから、完全に歌モノとして捉えられているようです。また、ストールはオールスタンディングですが、サークルでもみんな立って歌うのかなと思っていたら、昨今の聴衆はみんなスマホで動画撮影するので、周囲に遠慮してむしろ基本は大人しく座ったままだったのが意外でした(一方で演奏中でも頻繁にビールを買いに行ったりトイレに立ったりする人は後を絶ちませんでしたが)。
セットリストは文末の通りで、おそらく日本でやるライブでもほぼ同じようなラインナップでしょう。「Blue Lagoon」からサンタナの「哀愁のヨーロッパ」カバーまでは70年代の曲が続き、その後は80年代の人気曲を中心に、最後はサディティック・ミカ・バンドの「黒船」まで一気に年代を遡ってしっとりと終わりますが、もちろんアンコールではお約束のサーフボードギターを披露し、シメは超定番「虹伝説」からのシングルカット曲「You Can Never Come To This Place」。潔いほどのオール懐メロプログラムでした。私の大好きな小林泉美の「Palm Street」を筆頭に、聴きたかった曲はだいたい全部やってくれたので、大満足です。
バンドの中心メンバーは長年大きな変化はなく、斉藤ノブと岡沢章が75歳、宮崎まさひろが71歳、高中がその中間の73歳、セクシーなコーラスお姉様方のアマゾンズ(今回は吉川さんを欠く二人構成でしたが)もすでに還暦越え。皆さん年齢を全く感じさせない溌剌としつつも、年輪を重ねた安定感抜群のパフォーマンスで、こちらもその恩恵で力をもらった気分になれます。一方でこのバンドのキーボードはだいたいいつも比較的若い人が常に2名サポートする編成になっていますが、近年の常連メンバー井上薫に加えて、もう一人は今年のツアーから高本りなが新たに加入。見目麗しい外見からは想定外のパワフルでリズムキレキレのピアノが非常に良かったです。まあ、ホールの音響はどう見てもジャズ向きではないので、本来ならいろいろ細かい技を持っている宮崎まさひろや斉藤ノブのプレイがもっと解像度良く近くで聴けたら、とは無い物ねだりでしょうか。
今日の客層から言うと、自分らはおろか両親すらまだ生まれていないかもしれない年代の曲を、祖父母世代の極東ミュージシャンがはるばる海を越えてきて演奏するのを若い音楽ファンがこれだけ熱狂して楽しめるのというのは、シンプルに凄いことだと感服しました。日本のオールドミュージシャンとイギリスの若い音楽ファンに脱帽するしかありません。
セットリスト:
01. BLUE LAGOON (1979)
02. RADIO RIO (1979)
03. BLUE CURACAO (1978)
04. BRASILIAN SKIES (1978)
05. OH! TENGO SUERTE (1976)
06. Tokyo Reggie (1976)
07. Europa (Earth's Cry, Heaven's Smile) (Santana cover) (1976)
08. JUNGLE JANE (1986)
09. SHAKE IT (1986)
10. Nagisa Moderato (1985)
11. SAUDADE (1982)
12. PALM STREET (1980)
13. Taj Mahal (Jorge Ben Jor cover) (1972)
14. THUNDER STORM (1981)
15. READY TO FLY (1977)
16. Kurofune (Kaei 6-nen 6-gatsu 4-ka) (Sadistic Mika Band song) (1974)
アンコール:
17. JUMPING TAKE OFF (with surfboard guitar) (1983)
18. YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE (with rainbow guitar) (1981)
ピーター・アースキン・ニュー・トリオ+1@コットンクラブ ― 2017/05/10 23:59
2017.05.10 コットンクラブ (東京)
PETER ERSKINE NEW TRIO + 1
Peter Erskine (ds), Vardan Ovsepian (p), Damian Erskine (b), Aaron Serfaty (per)
そんなにたくさん聴いてきたわけじゃないけど、ピーター・アースキンのドラミングスタイルは、何を聴いても引き出しの多さに圧倒され、とても真似したり目指したりする気にならないので、正直好みではありませんでした。従って生で見る機会も今までなかったのですが、12月の読響演奏会でドラム協奏曲のソリストとして出演することが判明し、これは是非見に行かねばと楽しみにしていたところ、それに先立ってジャズトリオでの来日もあるということで、もう今年はピーター・アースキン・イヤーで行くしかないと、前哨戦として聴いてみました。
ステージ上のドラムセットは、シズルシンバルやペダル付きのカバサがちょっと目を引きますが、あとはワンタム、ツーフロアのいたってオーソドックスなジャズドラムセット。その横のパーカッションも、コンガ、ボンゴ、あと小物という感じで、スパイラルシンバルが珍しいくらい。さてトリオはドラム、ピアノ、エレキベースという構成で、今回はプラスワンとしてパーカッションが加わります。まあでも、パーカスは正直なくても困らない程度の存在感でした。甥っ子のベースを初め、ピーター以外は皆息子というよりむしろ孫に近いような若手を集め、「アースキン翁の音楽道場」といった趣きの朗らかさが漂っていました。若い3人はピーターを頼り切っている感じのバンドで、スリリングさはあまりなかったのが不満ですが、その中でもピアノは自身の作曲では時々エキセントリックな独特の曲調を覗かせて、良い味を出していました。
さて肝心のピーター・アースキンのドラムは、小技系かと思いきや、意外とラウド系。シンプルに粒のそろったビートを安定したタイム感で叩き出す、オーソドックスな正にお手本ドラム。バラードを含めリズミカルな曲ばかりで、16以外のありとあらゆるリズムのサンプルを聴かされた気分で、そのどれもが基本に忠実でありながら、やっぱり引き出しの多さは別格。ハメを外すことはなかったですが、リムショットしながら肘でスネアのヘッドを押してチューニングをグリッサンド気味に下げるというよくわからない裏技を披露する茶目っ気もあり。あらためて、凄い人でした。アコースティックなドラムの醍醐味を十二分に堪能させてもらいました。
(後で調べたら、ピーター・アースキン62歳、ヴァルダン・オヴセピアン41歳で、孫というほどの年齢差はないんですね、すんません…)
PETER ERSKINE NEW TRIO + 1
Peter Erskine (ds), Vardan Ovsepian (p), Damian Erskine (b), Aaron Serfaty (per)
そんなにたくさん聴いてきたわけじゃないけど、ピーター・アースキンのドラミングスタイルは、何を聴いても引き出しの多さに圧倒され、とても真似したり目指したりする気にならないので、正直好みではありませんでした。従って生で見る機会も今までなかったのですが、12月の読響演奏会でドラム協奏曲のソリストとして出演することが判明し、これは是非見に行かねばと楽しみにしていたところ、それに先立ってジャズトリオでの来日もあるということで、もう今年はピーター・アースキン・イヤーで行くしかないと、前哨戦として聴いてみました。
ステージ上のドラムセットは、シズルシンバルやペダル付きのカバサがちょっと目を引きますが、あとはワンタム、ツーフロアのいたってオーソドックスなジャズドラムセット。その横のパーカッションも、コンガ、ボンゴ、あと小物という感じで、スパイラルシンバルが珍しいくらい。さてトリオはドラム、ピアノ、エレキベースという構成で、今回はプラスワンとしてパーカッションが加わります。まあでも、パーカスは正直なくても困らない程度の存在感でした。甥っ子のベースを初め、ピーター以外は皆息子というよりむしろ孫に近いような若手を集め、「アースキン翁の音楽道場」といった趣きの朗らかさが漂っていました。若い3人はピーターを頼り切っている感じのバンドで、スリリングさはあまりなかったのが不満ですが、その中でもピアノは自身の作曲では時々エキセントリックな独特の曲調を覗かせて、良い味を出していました。
さて肝心のピーター・アースキンのドラムは、小技系かと思いきや、意外とラウド系。シンプルに粒のそろったビートを安定したタイム感で叩き出す、オーソドックスな正にお手本ドラム。バラードを含めリズミカルな曲ばかりで、16以外のありとあらゆるリズムのサンプルを聴かされた気分で、そのどれもが基本に忠実でありながら、やっぱり引き出しの多さは別格。ハメを外すことはなかったですが、リムショットしながら肘でスネアのヘッドを押してチューニングをグリッサンド気味に下げるというよくわからない裏技を披露する茶目っ気もあり。あらためて、凄い人でした。アコースティックなドラムの醍醐味を十二分に堪能させてもらいました。
(後で調べたら、ピーター・アースキン62歳、ヴァルダン・オヴセピアン41歳で、孫というほどの年齢差はないんですね、すんません…)
パット・マルティーノ・トリオ ― 2014/03/26 23:59

2014.03.26 コットンクラブ (東京)
Pat Martino Trio
Pat Martino (g), Pat Bianchi (Hammond B3), Carmen Intorre (ds)
広告を見て、パット・マルティーノが生で聴けるとは、行こうかどうしようか、と迷っているときに、コットンクラブからメルマガ会員特典として1名分のチャージで3名まで入場できます、という追い風メール。この機会に娘をジャズクラブデビューさせてやろうということで、家族揃って行ってまいりました。
私はジャズキチでは全くないし、パット・マルティーノもデビュー作の「El Hombre」は多少聴き込んだ、程度のえせファンですので、最初の感想は「おー、パット・マルティーノ、動いてるよ、まだ生きてるよ」などというミーハーかつ失礼なものですいません。大病を患ったため長いブランクがあり、今年70歳なので見た目はすっかりおじいちゃんになってしまっているのですが、デビュー時の22歳とスタイルは基本的に変わっていないのが凄いです。カッティングのアタックは鋭く音圧があり、マルティーノ節の速弾きも健在。一方で即興にはだいぶ波があると感じました。サポートメンバーは、近年レギュラーでトリオを組んでいる人々のようです。ドラムは上手いんですがリズムがもっさりとしていて、好みではありませんでした。オルガンは多分「影のバンマス」で、常にメンバーに目線を送り、演奏しながらPAに指示を出し、の活躍でした。ただし演奏自体は控え目なもので、せっかくのベース抜きオルガントリオなら、「El Hombre」のようにド派手なオルガンサウンドをかまして欲しかったと勝手な妄想。
さて肝心の娘のジャズクラブデビュー、けっこう気に入ったようで「オペラより全然いい」とかぬかしおって、この贅沢モノめ。
Pat Martino Trio
Pat Martino (g), Pat Bianchi (Hammond B3), Carmen Intorre (ds)
広告を見て、パット・マルティーノが生で聴けるとは、行こうかどうしようか、と迷っているときに、コットンクラブからメルマガ会員特典として1名分のチャージで3名まで入場できます、という追い風メール。この機会に娘をジャズクラブデビューさせてやろうということで、家族揃って行ってまいりました。
私はジャズキチでは全くないし、パット・マルティーノもデビュー作の「El Hombre」は多少聴き込んだ、程度のえせファンですので、最初の感想は「おー、パット・マルティーノ、動いてるよ、まだ生きてるよ」などというミーハーかつ失礼なものですいません。大病を患ったため長いブランクがあり、今年70歳なので見た目はすっかりおじいちゃんになってしまっているのですが、デビュー時の22歳とスタイルは基本的に変わっていないのが凄いです。カッティングのアタックは鋭く音圧があり、マルティーノ節の速弾きも健在。一方で即興にはだいぶ波があると感じました。サポートメンバーは、近年レギュラーでトリオを組んでいる人々のようです。ドラムは上手いんですがリズムがもっさりとしていて、好みではありませんでした。オルガンは多分「影のバンマス」で、常にメンバーに目線を送り、演奏しながらPAに指示を出し、の活躍でした。ただし演奏自体は控え目なもので、せっかくのベース抜きオルガントリオなら、「El Hombre」のようにド派手なオルガンサウンドをかまして欲しかったと勝手な妄想。
さて肝心の娘のジャズクラブデビュー、けっこう気に入ったようで「オペラより全然いい」とかぬかしおって、この贅沢モノめ。
ケープタウン・オペラ:ポーギーとベス ― 2012/07/14 19:59
2012.07.14 London Coliseum (London)
Cape Town Opera: Porgy and Bess
Albert Horne / Orchestra of the Welsh National Opera
Christine Crouse (Director), Sibonakaliso Ndaba (Choreographer)
Xolela Sixaba (Porgy), Nonhlanhla Yende (Bess)
Mandisinde Mbuyazwe (Crown), Philisa Sibeko (Clara)
Arline Jaftha (Serena), Tshepo Moagi (Sportin’ Life)
Gloria Bosman (Maria), Mthunzi Mbombela (Robbins)
Owen Metsileng (Jake), Mandla Mlangeni (Trumpeter)
Cape Town Opera Chorus
1. Gershwin: Porgy and Bess
南アフリカから来たケープタウン・オペラのUKツアーです。バーミンガム、エディンバラ、カーディフ、カンタベリーを回って最後がロンドン。「ポーギーとベス」はなかなか見れる演目ではないので、何はともあれ見ておこうと。
一応オペラに分類される「ポーギーとベス」ですが、様式的にはミュージカルの走りとも言われ、確かにこの演出だとノリはほとんど歌って踊るミュージカル。歌手もオペラ系とミュージカル系が混在し、声量自体と声の響かせ方に個人差が相当あります。ポーギー役のバリトン(この人に限らず名前の読み方はさっぱりわかりません・・)はしっかりした歌唱で、演技も良かったです。ベスは声量がちょっと足りないものの、若さが故のふらつきやすさはよく感じが出ていました。何より、ベスが巨漢のおばさんじゃなくて良かった。クラウン、スポーティンライフ等の準主役クラスもそれなりのレベル以上で、まあ良かったのですが、それ以外の端役・群集はけっこうグダグダなコーラスで、底の高い歌劇団とは言えませんでした。
ストーリーは、海辺の黒人居住区「なまず横丁」で足の不自由なポーギーが、ならず者の夫クラウンが殺人を犯して逃げた後の妻ベスを匿って口説き、住人が皆でピクニックに行ったり、ハリケーンがやってきて漁師夫婦が死んだりといった事件の後、戻ってきたクラウンをポーギーが殺し、警察に拘留されている間にベスは麻薬売人のスポーティンライフに口説かれてニューヨークに行ってしまう、という、何ともハチャメチャで救いようのない話です。全体のトーンは暗いのですが、シリアスかと思えば笑いもあり、第3幕のベスの豹変ぶりはもうほとんど吉本ギャグの世界。ベスを追うため、明るく希望に満ち溢れてニューヨークへと旅立つポーギーは、見方によっては意味深な解釈もありでしょう。まあしかし、もう一回見たいと積極的に思うオペラではなかったですかなー。
このUKツアーではウェールズ国立オペラのオケが帯同しましたが、堅実な演奏で感心しました。ROHのオケよりマシかも。なお9月には再びツアーに出て、ベルリンでこの「ポーギーとベス」を、何とラトル指揮ベルリンフィルと一緒に公演するとのこと。歌手はもうちょっと底上げしたほうがよいんじゃないかと思います。
Cape Town Opera: Porgy and Bess
Albert Horne / Orchestra of the Welsh National Opera
Christine Crouse (Director), Sibonakaliso Ndaba (Choreographer)
Xolela Sixaba (Porgy), Nonhlanhla Yende (Bess)
Mandisinde Mbuyazwe (Crown), Philisa Sibeko (Clara)
Arline Jaftha (Serena), Tshepo Moagi (Sportin’ Life)
Gloria Bosman (Maria), Mthunzi Mbombela (Robbins)
Owen Metsileng (Jake), Mandla Mlangeni (Trumpeter)
Cape Town Opera Chorus
1. Gershwin: Porgy and Bess
南アフリカから来たケープタウン・オペラのUKツアーです。バーミンガム、エディンバラ、カーディフ、カンタベリーを回って最後がロンドン。「ポーギーとベス」はなかなか見れる演目ではないので、何はともあれ見ておこうと。
一応オペラに分類される「ポーギーとベス」ですが、様式的にはミュージカルの走りとも言われ、確かにこの演出だとノリはほとんど歌って踊るミュージカル。歌手もオペラ系とミュージカル系が混在し、声量自体と声の響かせ方に個人差が相当あります。ポーギー役のバリトン(この人に限らず名前の読み方はさっぱりわかりません・・)はしっかりした歌唱で、演技も良かったです。ベスは声量がちょっと足りないものの、若さが故のふらつきやすさはよく感じが出ていました。何より、ベスが巨漢のおばさんじゃなくて良かった。クラウン、スポーティンライフ等の準主役クラスもそれなりのレベル以上で、まあ良かったのですが、それ以外の端役・群集はけっこうグダグダなコーラスで、底の高い歌劇団とは言えませんでした。
ストーリーは、海辺の黒人居住区「なまず横丁」で足の不自由なポーギーが、ならず者の夫クラウンが殺人を犯して逃げた後の妻ベスを匿って口説き、住人が皆でピクニックに行ったり、ハリケーンがやってきて漁師夫婦が死んだりといった事件の後、戻ってきたクラウンをポーギーが殺し、警察に拘留されている間にベスは麻薬売人のスポーティンライフに口説かれてニューヨークに行ってしまう、という、何ともハチャメチャで救いようのない話です。全体のトーンは暗いのですが、シリアスかと思えば笑いもあり、第3幕のベスの豹変ぶりはもうほとんど吉本ギャグの世界。ベスを追うため、明るく希望に満ち溢れてニューヨークへと旅立つポーギーは、見方によっては意味深な解釈もありでしょう。まあしかし、もう一回見たいと積極的に思うオペラではなかったですかなー。
このUKツアーではウェールズ国立オペラのオケが帯同しましたが、堅実な演奏で感心しました。ROHのオケよりマシかも。なお9月には再びツアーに出て、ベルリンでこの「ポーギーとベス」を、何とラトル指揮ベルリンフィルと一緒に公演するとのこと。歌手はもうちょっと底上げしたほうがよいんじゃないかと思います。
ジョン・スコフィールド・トリオ ― 2010/11/15 23:59
2010.11.15 Queen Elizabeth Hall (London)
John Scofield Trio:
John Scofield (G), Steve Swallow (B), Bill Stewart (Ds)
+ Scottish National Jazz Orchestra
Southbank CentreのWebサイトをつらつら見ていてふと発見したので(普段はオーケストラの情報ばかり見てるのでLondon Jazz Festivalのほうは気付きませんでした)、当日飛び込みで聴きに行ってみました。ジャズは普段あまり聴かないのですが、ジョンスコの「Electric Outlet」から「Pick Hits Live」くらいまでのアルバムは、当時組んでいたバンドでいくつかコピーをしていたこともあり、よく聴いていました。もう20年以上も前になるんですなあ…(遠い目)。
本日は、前半がジョンスコ・トリオ、休憩を挟んで後半がSNJO featuring John Scofieldという2部構成でした。実は生では初めて見るジョンスコは、来月で59歳。髭も、残り少ない髪もすっかり白くなって、もはやおじいちゃんの風貌です。ベースのスティーヴ・スワローはさらに上を行く70歳、若いドラムのビル・スチュワートにしてすでに44歳の超ベテラン熟年トリオですが、プレイは衰え知らずのアグレッシブで、特にハイテンションなギターは全く健在でした。この20年全く追いかけていなかったので知らない曲ばかりでしたが、曲はスインギーでブルージーな色合いがいっそう濃くなって、変態的なリズムやコード進行は鳴りを潜めていました。ビル・スチュワートの音は軽すぎてあまり好みではなかったのですが、手数系でポリリズムを多用した密度の濃いドラミングは、さすがです。
ジョンスコがゲストソリストで出演した後半は、あくまでビッグバンドが主役でしたので、打って変わってリラックスしたプレイでのびのびといっそうブルージーに弾いていました。マイルス時代のジョンスコの曲が中心だったらしいですが、その時代はあまり聴いていないので、「あー、これね」とわかる曲はありませんでした。SNJOはトランペットとテナーサックスのソロが非常に上手かった他は、特段粒ぞろいという感じはなく、ブラスがちょっとキンキン響き過ぎで聴いてて疲れました。ドラムは何かもっさりしていて、前半のスチュワートと比較されたら本人もたまらんでしょうが、並べるとやはり見劣りはしてしまうので、損しましたね。
隣りのおじちゃんは後半のほうがノッていましたが、私はトリオのほうがスリリングで面白かったかな。いずれにせよジョンスコのプレイは見かけより全然若かったので、思い立って聴きに行って本当に良かったです。
John Scofield Trio:
John Scofield (G), Steve Swallow (B), Bill Stewart (Ds)
+ Scottish National Jazz Orchestra
Southbank CentreのWebサイトをつらつら見ていてふと発見したので(普段はオーケストラの情報ばかり見てるのでLondon Jazz Festivalのほうは気付きませんでした)、当日飛び込みで聴きに行ってみました。ジャズは普段あまり聴かないのですが、ジョンスコの「Electric Outlet」から「Pick Hits Live」くらいまでのアルバムは、当時組んでいたバンドでいくつかコピーをしていたこともあり、よく聴いていました。もう20年以上も前になるんですなあ…(遠い目)。
本日は、前半がジョンスコ・トリオ、休憩を挟んで後半がSNJO featuring John Scofieldという2部構成でした。実は生では初めて見るジョンスコは、来月で59歳。髭も、残り少ない髪もすっかり白くなって、もはやおじいちゃんの風貌です。ベースのスティーヴ・スワローはさらに上を行く70歳、若いドラムのビル・スチュワートにしてすでに44歳の超ベテラン熟年トリオですが、プレイは衰え知らずのアグレッシブで、特にハイテンションなギターは全く健在でした。この20年全く追いかけていなかったので知らない曲ばかりでしたが、曲はスインギーでブルージーな色合いがいっそう濃くなって、変態的なリズムやコード進行は鳴りを潜めていました。ビル・スチュワートの音は軽すぎてあまり好みではなかったのですが、手数系でポリリズムを多用した密度の濃いドラミングは、さすがです。
ジョンスコがゲストソリストで出演した後半は、あくまでビッグバンドが主役でしたので、打って変わってリラックスしたプレイでのびのびといっそうブルージーに弾いていました。マイルス時代のジョンスコの曲が中心だったらしいですが、その時代はあまり聴いていないので、「あー、これね」とわかる曲はありませんでした。SNJOはトランペットとテナーサックスのソロが非常に上手かった他は、特段粒ぞろいという感じはなく、ブラスがちょっとキンキン響き過ぎで聴いてて疲れました。ドラムは何かもっさりしていて、前半のスチュワートと比較されたら本人もたまらんでしょうが、並べるとやはり見劣りはしてしまうので、損しましたね。
隣りのおじちゃんは後半のほうがノッていましたが、私はトリオのほうがスリリングで面白かったかな。いずれにせよジョンスコのプレイは見かけより全然若かったので、思い立って聴きに行って本当に良かったです。










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