サイモン・フィリップス・プロトコル6@ロニー・スコッツ ― 2026/05/26 23:59

2026.05.26 Ronnie Scott’s Jazz Club, Main Club (London)
Simon Phillips & Protocol 6
Simon Phillips (drums)
Phillip Whack (saxes)
Alex Sill (guitars)
Otmaro Ruiz (piano/keyboards)
Ernest Tibbs (electric bass)
初のロニー・スコッツ。有名なジャズクラブですが、前回の駐在時にも一度行きたいと思いつつ結局機会がありませんでした。場所はロンドンの中心地、Soho。讃岐うどん「Koya」と同じ並びだったのを、現地に来てみて「ああ、ここだったか」と思い出しました。
5月なのに34℃超の記録更新猛暑の中、勝手がわからないのでとりあえず開場時間の15分前に到着してみたら、店の前にはすでに30人くらいの行列。ここから着席までさらに30分くらいかかりました。配席は当日決まるシステムみたいですが、先着順でより良い席、ということでもなく、グループの人数も考慮しつつ、その日のフロアチーフの独断で決められていくようです。今回は最初ということもありPriority席にしたのが功を奏し、案内されたのはドラム真正面の席。しかもステージかぶりつきではなく、ひとテーブル分置いて距離があったので、むしろ近すぎずにドラムを堪能できる席で良かったです。あまり近すぎるとドラムの生音が耳を直撃して他の楽器が聴こえなくなってしまうのですが、演奏全体を自分にとってちょうど良いバランス(ドラム近め)で楽しめる位置でした。

場内はまさに古い高級ジャズクラブの雰囲気。キャパはブルーノート東京とコットンクラブの中間くらいでしょうか。見渡すと、ロンドンのジャズクラブ界隈の客層は比較的年齢が高めで、ほぼ白人。男性客が多かったのはドラマー中心のバンドだからですかね。

サイモン・フィリップスを生で観るのは今回が初めてです。自分の同時代体験で言うとやはりマイケル・シェンカー・グループのファーストアルバムが最初の衝撃で、しかしこの人は基本メタルではなく、ジェフ・ベック、ミック・ジャガー、TOTOなどでのプレイの傍ら、ロック寄りではあるがフュージョン、ジャズなんでもござれのセッションドラマーとして長年第一線を走ってきた今やレジェンドで、そのドラミングを何度もコピーしたことがありますし、ドラムのスタイルで学ぶ点が非常に多いです。
普段からタムもバスドラも多めのサイモンのドラムセットはTAMA製で、思ったよりもコンパクトに配置されていました。ストレートではあるがシンプルではなく、多彩な音色を駆使するサイモン仕様は、得意なツインバスの上に、メロタムが10個(一番大きいのはフロアタムより大きい…)、シンバルも多数ある中で、ライドシンバルが左側に置かれていたのに違和感。それで、演奏が始まってようやく気づいたのですが、サイモンは左右の手がスネアの上でクロスしないオープンハンドスタイルのドラマーだったんですね。自分はあまり教則ビデオを見ないし、サイモンがクロスかオープンかなんて考えたこともなかったので、生で見る初サイモンのナチュラルかつ機能美を感じさせるオープンハンドのフォームが非常に新鮮でした。
今回は、サイモンが1989年から続けている自身のソロ・プロジェクト「Protocol」の第6弾ですが、「Protocol 6」のアルバムは6月発売予定でまだ世に出ていないので、このツアーで披露されるのが初出になります。エイトビートのノリの楽曲が中心ですが、曲ごとに16ビートやラテンなど多彩な味付けが加わり、アクセントになっています。意外に小柄なサイモンの身体から叩き出されるビートは、ツーバスを多用し、メタラーを思わせる完全にラウド系のドラム。ただパワフルなだけではなくて、リズムの体幹が揺るぎなく安定しており、アタックの効いた鋭い音に、ぶれないバランスと、生き生きとしたグルーヴ。打ち込みも少し使っていましたが、イヤモニを着けている様子はなく、自分のリズム感に絶対の自信がないとできない芸当です。フィルインやドラムソロではラウド系にあるまじき小技を詰め込み、圧巻のドラミングに圧倒されました。変態的なことは何もしておらず、パターン、フレーズは至って基本に忠実。ただその一つ一つが恐ろしく完璧で確実です。69歳という年齢を考えるともっと枯れていても不思議ではありませんが、若いころと変わらぬ路線で突き通すパワープレイは驚異的な生命力を感じさせました。
「Protocol 6」の他のメンバーは、黒人白人二人ずつ、出身も英国、米国、ベネズエラ、女性はいないものの年齢はバラバラで、多様性があります。ベースのアーネスト・ティブスは「Protocol II」からずっと参加していますが、サックスを除く他メンバーは「Protocol V」からの参加です。しかしメンバーが誰であれ、このプロジェクトがサイモン中心であることは明確で(実際、最初のProtocolはサイモンが全楽器を担当)、皆サイモンという大きな船に乗っかっており、決してはみ出さないし、戦わない。サイモンのハイテクパワードラムを存分に堪能できただけでもう十分お腹いっぱいの夜でした。
最近のコメント