ノセダ/パリ管:どこまでも愛想のない新フィルハーモニーホール2018/02/01 23:59



2018.02.01 Philharmonie de Paris, Grande salle Pierre Boulez (Paris)
Gianandrea Noseda / Orchestre de Paris
Irina Lungu (soprano-3), Dmytro Popov (tenor-3), Alexander Vinogradov (bass-3)
Choir of the Orchestre de Paris (cond. by Lionel Sow)
1. Alfredo Casella: "La donna serpente" Suite No. 2
2. Debussy: Images (Gigues, Iberia, Rondes de printemps)
3. Rachmaninov: The Bells, choral symphony

3年前に落成したパリの新しいフィルハーモニーホールはずっと気になっていたので、出張の折にタイミングよく聴きに行けたのはラッキーでした。最後にパリ管を聴いたのは5年前(指揮は佐渡裕)。当時の本拠地サル・プレイエルは、フィルハーモニー完成後、クラシックの演奏会から手を引いたそうで、感慨深いものがあります。


フィルハーモニーは中心部からはちょっと北東に外れた、メトロ5番のPorte de Pantin駅から徒歩5分くらいの位置です。シテ科学産業博物館もあるヴィレット公園の中にあり、夏場であればまた雰囲気は違うのかもしれませんが、冬場のとっぷり暮れた夜だと(パリ管の開演時間は20時30分です、遅い!)、町外れにあるただの寂しく怪しい暗がりです。駅を出ても案内板もないし、街灯も少なく、ホールにたどり着くまでの道がとにかく暗い。ただでさえ油断のならない町パリ、他に人がいなければ絶対に夜歩きたくないロケーションです。

後で「地球の歩き方」を見ると、カフェ、レストランが充実などと書いてありましたが、全くの嘘。建物内のカフェは狭くてすぐに満席、置いてある商品もしょぼくて、充実どころかヨーロッパではプアな部類でしょう。コンサート・カフェなる施設もありますが、建物を出て駅前まで戻らなくてはなりません。ここも混んでいたので、結局駅前のマクドナルドで腹ごしらえしました(後述)。

建物内に入った印象は、とにかく殺風景。前のサル・プレイエルにしても、打ちっ放しコンクリートのような内装がどうも好きになれなかったんですが、こちらも負けず劣らずぶっきらぼうなデザイン。ホールに入るのに、非常口の鉄扉のようなドアを開けたら、まさかの暗い廊下。それを抜けて次の鉄扉を開けると、また舞台裏のような人に見せるものではない空間が広がり、その次の扉でやっとホールの中に入れました。そこかしこで中途半端に何かが足りない感をいちいち覚え、デザイナーに来客に寄り添う思想はまるでないと結論。ただし、ホール内とそれ以外での落差が大きいので、単純に予算が足りなかったのかなとも思いました。

ホール内はさすがに立派で、曲線を多用したモダンというか未来的なデザイン。ワインヤード式のホールに客席が大きくらせん状に配置されているのはミューザ川崎と通じるものがあります。しかし、ホールの外のイメージが残っているのか、この曲線美も私にはどうも造形先行、ドライで暖かみがないように思えてなりませんでした。肝心のホールの音響ですが、最前列真ん中近くの席だったので、良し悪しは正直判断できず(パリ管の名手と歌手はできるだけ至近距離で聴きたかったので…)。



指揮は、たまたまですが、昨年ワシントンナショナル響でも聴いたばかりのジャナンドレア・ノセダ。いかにもノセダらしい渋い選曲で、同郷イタリアのカゼッラ「蛇女」第2組曲、ドビュッシー「管弦楽のための映像」全曲、ラフマニノフの合唱交響曲「鐘」という構成。作曲された年代は映像→鐘→蛇女という順番ですが、いずれも20世紀前半の作品。昨年のダラピッコラ同様、カゼッラも名前からして知らなかった近代イタリアの作曲家ですが、わかりやすい曲調と色彩感豊かなオーケストレーションは、同世代のレスピーギと通じるものがあります。ドビュッシー「映像」は、真ん中の「イベリア」だけ単独で演奏されることが多く、全曲通してというのは私も初めてです。案の定、「イベリア」が終わったところで半数くらいは拍手。まあ、それだけ熱演だったので、これは仕方がありません。以上の前半戦2曲はパリ管のコンマスや木管の惚れ惚れする音色がたいへん心地よく、しかも、終始汗だくで振りまくっていたノセダにうまくノセられ、全体的にフランスオケらしからぬ?熱意と気合を感じた演奏に、時代も変わったのかなと。後半の「鐘」は初めて聴く曲で、正直評価に困ったのですが、若めのロシア人を揃えたソリストが皆それぞれ恐れを知らぬ堂々とした歌唱で良かったです。

出張の間隙をついて何とか聴きに行けたコンサートですが、今回は特に体力的にキツキツで、ところどころ集中力が彼方に飛んでおりました。というわけで細かい部分が記憶に定着しておらず、今回は音楽の話というよりホールの悪口ばかりですいません。

余談ですが、パリのマクドナルドは全てタッチパネルでオーダーするシステムに変わっていました。たった一人の調理スタッフがちんたら仕事をしていて、待ち人が結局カウンター前で長蛇の列。効率化の意味まるでなし。接客の人件費削減というお題目で導入したのでしょうけど、調理スタッフまで減らしたらこうなるのはわかったはず。フランスでマクドに行くときは、混んでそうな店や時間帯は避けるが吉です。

コメント

_ 守屋 ― 2018/02/22 06:17

パリでマクドナルドだなんて、もったいなさすぎです。四半世紀以上あっていない親戚がロンドンはパスしても、パリには来るそうなので、会いに行こうか逡巡中。もし行けたら、行ってみたいレストランが2軒あるんです。

_ Miklos ― 2018/04/01 19:36

守屋さん、遅いレスですいません。マクドは好き好んで行ったわけではありませんが、日本とは違うメニューがあったりするのは面白いです。相変わらず治安は悪く、ルーブル近くで少年少女の集団スリに取り囲まれ、速攻でカバンを開けられ中を探られました(被害はなかったですが)ので、まったく油断ならない町です、パリは。

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