ロンドンフィル&ロシアナショナル管/ユロフスキ:英露融和の影で、一杯のコーヒー2012/10/05 23:59

2012.10.05 Royal Festival Hall (London)
Vladimir Jurowski / London Philharmonic Orchestra & Russian National Orchestra
Lawrence Power (Va-2)
1. Tchaikovsky: '1812' Overture
2. Britten: Lachrymae 'Reflections on a song of Dowland' (arr. for viola & strings)
3. Shostakovich: Symphony No. 7 in C 'Leningrad'

前日の続き、「War and Peace」の最終日はLPOとRNOの合同オーケストラです。どちらもユロフスキのオケかと誤解していたのは前に書いた通り。今日は開演前にトラブルが。チケットカウンタの奥側にあるカフェで小腹ごしらえにエスプレッソとブラウニーを買い、ミルクを入れて、砂糖を取ろうと左手を伸ばしたところ、手前にフィルターコーヒーが置いてあり、邪魔で砂糖が取れなかった。持ち主のおばさんと目が合い、砂糖を取りたいと言おうとしたら、何やらぎゃーぎゃーと早口で文句を言ってきます。反対側から右手を伸ばして取れ、というようなことを言っているようで、もしかしてそのおばさんのコーヒーに自分の手や袖が触ってしまったかなと確認するも、どこも濡れていない。触れてないし、ましてやこぼれてもいない、私の手が近づいただけのそのコーヒーを、おばさんは「こんなものもう飲めないわ」と言って私の買ったブラウニーの上に全部ぶちまけて、すたすたと去って行きました。一瞬の、あまりの出来事に唖然。人が買ったものの上にわざわざ熱いコーヒーをぶっかけて行くなんて、何が原因だったとしてもあり得ない仕業です。一見白人のレディだったのに、やっぱり「紳士の国」イギリスには紳士も淑女もおらん、との認識をあらたにしました。

そんなわけでのっけから超悪い気分で望んだ演奏会。気のせいではなく、満員御礼ながらも今日は客筋が悪いというか、演奏中に携帯鳴らすヤツはいるし、楽章の合間でいちいち拍手は出るし、隣席のおっさんは終始すーすーと寝息をかきながら夢ごこち(うるさいっちゅうねん)。とっても落ち着かない演奏会でした。

合同オケは通常の1.5倍はありそうな大編成で、さすがに第一線のプロオケが合体しているので音圧は大したものでした。総練など直前しかやってないでしょうが、弦のボウイングがちゃんと合っていたのは立派です。昨日はヘタレぶりが気になった管楽器も、今日は両者の精鋭トップが肩を並べ競い合う図式になっていたので、打って変わって熟達堅牢なプレイに感心しました。LPOとRNOは元々個性が似ているのか、対立したり火花が散ったりすることもなく、誰がどっちだか区別のつかないくらいに見事に融合していました。

「1812年」は、プロオケで聴いたのはもしかしたら初めてかも。有名だけど取り立てて面白いところもなく、正直つまらん曲です。コージー・パウエルも、何でまたこんな曲に合わせてドラムソロをやってたんだか。この曲のハイライトは最後のほうで出てくるカノン砲ですが、野外コンサートでもない限り録音か電子音で済ませるのが普通です。今日も録音を使ってましたが、スピーカーが貧弱なのか、つぶれてしまって何だか全然分からない音になってました。これなら大口径の大太鼓を思いっきり叩くとかで代用したほうがよっぽど良かった気がします。

ブリテン「ラクリメ」は初めて聴きます。ローレンス・パワーのヴィオラもお初ですが、並外れた技巧を持っていながらもガチガチに整えた感じではなく、あえてユルさも残した、ある意味ヴィオラらしい懐の深い演奏でした。メインの「レニングラード」は、私の印象では前日同様にクソ真面目な演奏。元々冗長な曲なので、息が詰まって、つい眠気も…。前日ひどかった金管も、今日は両者の精鋭がお互いを意識しながら全力を尽くしていたので完成度は高く、この音圧勝負の曲を最後までトップギアで吹き抜いていました。終演後、指揮者が最初に立たせたのは第1楽章で小太鼓の若者、次に打楽器群。もちろん大拍手です。各楽器でLPO、RNO各々のトップがいちいちがっしりと握手する姿はなかなか感動的でした。

前日が短めの演奏会だったのに対し、今日は終演10時の長丁場。1812年かブリテンのどちらかは、正直なくてもよいプログラムだったのでは。それよりも、英露融和をうたうなら、アンコールで威風堂々第1番でもやってお祭り騒ぎのうちにシメて欲しかったです。


コメント

_ sony ― 2012/10/14 21:13

連日の英露合同の演奏会とは面白そうです。日本でもこんな企画があったらいいなと思いました。英国の女性はレディーだと思っていましたが、もしかしたらイギリスを知らない女性だったりして・・・でも不愉快な経験でした。しかし、miklosさんは紳士ですね。わたしならブラウニーにコーヒーをかけられたのですから追いかけて行って「何をするんですか」と文句を言っていたと思います。日本代表の紳士でした。あっぱれ!

_ feliz ― 2012/10/16 08:51

いやいや、大変でしたね。お察しします。コンサートに行く人の中にもこんな人がいるんですねぇ。驚きです。
何だかプロムスみたいな雰囲気でしたね。演奏は引き締まってて私は好きでした。
例によって私のブログからリンクを貼らせていただきました。

_ Miklos ― 2012/10/20 09:09

>sonyさん
あまりの仕打ちに固まってしまった、というのが正直なところです。実は、去り際のおばさんに、手に持っていた砂糖を後ろから投げつけてやりました…。やはり正しくは、追いかけて腕を捕まえ「これはもう食えないからあんたが食べなさい」と口に突っ込んでやるべきでした。(おいおい)

>felizさん
開演前にそんなこんなあったわりには、演奏会自体はわりと冷静に楽しめました。これももう2週間前ですねえ。忙しいのに出張先では必死で演奏会に行ったりするものだから(昨日はチェコフィル)、また書き溜まってしまいました。

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_ *クラシック*音楽生活@イギリス - 2012/10/16 08:47

Fri 05 October 2012 7:30pm @Royal Festival Hall

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