ロイヤルバレエ:ついてなかった、アシュトン・ミックスビル2013/02/15 23:59

2013.02.15 Royal Opera House (London)
Royal Ballet: Ashton Mixed Programme
(La Valse/Méditation/Voices of Spring/Monotones I, II/Marguerite and Armand)
Emmanuel Plasson / Orchestra of the Royal Opera House
Frederick Ashton (choreography)

アシュトン振付の小品を集めたミックスビル。昨年ENBに移籍したタマラ・ロホの退団記念公演、さらには元プリンシパルの問題児ポルーニンがゲストで復活というエポックメイキングな公演でもありました。ですが、今日は寝不足の悪い体調で臨んだ上、悪条件が重なったせいで、あまりポジティブなことは書けません。ロイヤルバレエ団に一切非はないんですが。ちなみに今日はテレビカメラが多数入っていたので、3月に日本のNHK BSで放送する映像撮りがあったのかもしれません。そのせいか、今日のオケは普段よりずっとしっかりしてました(これができるんなら、普段からそうやらんかい…)。


1. Ravel: La Valse
Hikaru Kobayashi, Samantha Raine, Helen Crawford
Ryoichi Hirano, Bennet Gartside, Brian Maloney

最初、スモークの向こうで華やかな舞踏会の様子が垣間見え、霧が晴れたとたん目の前に広がるきらびやかな世界。音楽が形を崩すに従い踊りも宮廷ワルツから自由になっていき、最後は曲が終わらないうちに幕が下りてしまう。ラヴェルの音楽に対するリスペクトがあります。飽きる暇もない濃密度な展開に、こいつは一発で気に入りました。しかし問題は、真後ろの席の母子連れ。多分就学前の男の子は風邪がひどいようで、上演中ず〜〜〜〜〜っとコンコンゴホゴホと咳をし続け(もちろんマスク、ハンカチなど持っておらず、菌バラ撒きまくり)、迷惑この上ない。こっちのイライラオーラが立ち昇っているのを母親のほうは察知してか、時々子供の口を押さえたりしてましたがそれで収まるわけもなく。舞台の上にあまり集中できないうちに終わってしまい、やれやれと思いつつカーテンコールの写真を一枚撮ったところ、妻の横の席のおばさんがすかさず、私ではなく妻に「写真はだめよ」と。マナー違反は承知の上なので、正面から言われたらやめるしかないです、すいません。もちろんこの日はロホの引退公演なので、立ち上がって写真・ビデオを撮っている人は他にもいっぱいいましたが…。


というわけで、唯一撮れた写真。

2. Massenet: Méditation from Thaïs
Mara Galeazzi, Rupert Pennefather (replaces Thiago Soares)

「タイスの瞑想曲」にちょっとアラビックテイストな振付がなされています。高いリフトが印象的ですが、うーん、私ごときの素養では、何のこっちゃ感の残る不思議な一品でした。後ろの子供の咳はまだ止まらず。この曲に後ろでずっとゴホゴホやられたら、たまったものじゃありません。そもそも子供が一番気の毒、さっさと家に帰してやんなさい、と思いましたが、お母さんは我関せずで「ブラヴォー」叫びまくってました。

3. Johann Strauss II: Voices of Spring
Emma Maguire (replaces Yuhui Choe), Valentino Zucchetti

ヨハン・シュトラウス二世の「春の声」。こちらもリフトで登場、リフトで退場という持ち上げワザが目を引きます。いかにも春らしい、活気あふれる楽しいデュエットでした。最近見てないユフィちゃんが降板してしまったのは残念です。ところでカーテンコールの写真を撮ってないと、どんな衣装だったかも早速おぼろげというか記憶がごっちゃになってしまっているので、記録としての写真が残ってないのは非常に痛い。と、ここで最初の休憩。

4. Monotones I and II
1) Satie: Préludes d’Eginhard (orch. by John Lanchbery)
2) Satie: Trois Gnossiennes (orch. by John Lanchbery)
3) Satie: Trois Gymnopédies (orch. by Debussy and Roland-Manuel)
Emma Maguire, Akane Takada, Dawid Trzensimiech
Marianela Nuñez, Federico Bonelli, Edward Watson

休憩後、子供は戻ってきませんでした。ほっ。序曲の後に、とんねるずの「モジモジ君」を連想せずにはいられない黄緑色の全身スーツに身を包んだ3人が、サティの寂寞な「グノシェンヌ」に乗せて組み体操のような踊り(と言うんでしょうか)を静かに繰り広げます。後半は白の全身スーツの、よく見るとヌニェス、ボネッリ、ワトソンという凄いメンバーが、これまたストレッチのような寡黙なパフォーマンス。これは正直、眠かった。ヌニェスの驚異的な身体の柔らかさ以外はほとんど記憶から飛んでます。せっかくうるさい咳がなくなったのに、これではいけませんなー。

5. Marguerite and Armand (Liszt: Piano Sonata in B minor, arr. by Dudley
Simpson)
Robert Clark (solo piano)
Tamara Rojo (Marguerite), Sergei Polunin (Armand)
Christopher Saunders (Armand's father), Gary Avis (Duke)
Sander Blommaert, Nicol Edmonds, Bennet Gartside
Ryoichi Hirano, Valeri Hristov, Konta Kura
Andrej Uspenski, Thomas Whitehead (Admires of Marguerite)
Jacqueline Clark (Maid)

もう一つ休憩を挟んで、本日のメイン「マルグリートとアルマン」ですが、これは前にも同じロホ、ポルーニンのペアで見ています。久々のロイヤル登場、自分のさよなら公演にあえて首になったポルーニンを引っ張り出してきたのは、よほど気に入ったのか、あるいはポルーニンに復活のチャンスを与えたいという温情とか、はたまた将来ENBに引っ張り込みたいという政治的思惑があったり、いろんなものが渦巻いていたのかもしれませんが以上は全て勝手な想像です。なお今回は二人ともゲスト・プリンシパルではなく単なるゲスト・アーティストという取り扱いでした。

久々に見るポルーニンは、めちゃカッコいい。シャープな立ち振る舞いは今のロイヤルにも代わりがいない、貴重な逸材です。身体のキレも衰えているようには全く見えず、ロホとの息もぴったし。ロホの美貌も、超柔軟な身体も、プリンシパルの貫禄も、この人はもうここにはいないんだということを忘れてしまうくらい、このオペラハウスの舞台に自然に馴染んでいました。前回見たときと感想に大きな変化はないんですが、私の趣味から言うとこの演目は音楽が絶望的に退屈です。申し訳程度にオケがサポートしてはいるものの、伴奏のメインはあくまでピアノですが、しかしそのピアノに舞台の上のパフォーマンスを受け止め支えるだけの力が全くない。曲のせい、ではないんでしょう。ピアニストも前と同じ人でしたが、せっかくのさよなら公演、スペシャルなゲストを呼んでくるアイデアでもあればまだ状況は違ったかも。とにかく、この演目は私にはちっとも楽しくなかったです。やっぱり自分は、バレエの公演でも6割くらいは音楽そのものに意識が行っているのだなあと、自己の性向を再認識するしかありませんでした。

例の子供はまた席に戻ってきていて、だいぶ風邪の様子はよくなっていたものの、幕が上がっても母親にずっと小声で話しかけていたかと思えば、そのうちまた咳き込み始め、やっと静かになったと思いきや、グーグーいびきをかきながら寝てしまいました。もうぶち切れ寸前。こんな状態の幼児を無理やり劇場に連れてきて、わざわざ害悪を周囲に撒き散らすのは、二重の犯罪行為だと糾弾さしてもらいます。帰り際によっぽど「あんたのおかげで最悪な夜だった」と言ってやろうかと思いましたが、とっとといなくなってました。さらに悪いことには、終了間際ですが、我々の後ろの立ち見席の人が意識を失って大きな音と共に突然倒れ、大騒ぎになってまして、とても舞台に集中するどころではありませんでした。長丁場の立見は、くれぐれも体調と相談してくださいね…。

コメント

_ 守屋 ― 2013/02/22 15:15

おはようございます。

 本当に酷い目に遭いましたね。明らかに、母親がみたくて、でも息子の面倒を見てくれる人やシッターが見つからずに連れ来たということでしょうね。バレエを習っている、もしくは子供ながら既に何度もバレエの舞台を観ているのでなければ、僕は10歳以下の子供がバレエを楽しむとは思っていません。ましてご覧になられたアシュトンのあのプログラムは、無理だと思います。体調、良くなりますように。

 5月に、リンベリィで面白そうな新作バレエが上演されるようです。

_ Miklos ― 2013/02/24 05:06

オペラ座に非常に体調の悪い子供を連れてくる親、というのは前にも経験してますけど、もちろんノイズのソースは子供ですが、子供に罪はないよなあ、とその時も思いました。気持ちは分からんでもないですが、他者への迷惑、というものは、そういう人達は考えたこともないんでしょうなー。

5月の新作は「ヘンゼルとグレーテル」ですか?もちろんチェックしてますが、チケット取れるかな…。あと、子供に見せても大丈夫そうでしょうか?

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