ロイヤルオペラ/パッパーノ/カウフマン/ハロウトゥニアン/クヴィエチェン/ユリア=モンゾン/フルラネット/ハーフヴァーソン/ロイド:人類の至宝「ドン・カルロ」2013/05/11 23:59


2013.05.11 Royal Opera House (London)
Sir Antonio Pappano / Orchestra of the Royal Opera House
Nicholas Hytner (director)
Jonas Kaufmann (Don Carlos), Lianna Haroutounian (Elizabeth of Valois)
Ferruccio Furlanetto (Philip II), Mariusz Kwiecien (Rodrigo, Marquis of Posa)
Béatrice Uria-Monzon (Princess Eboli), Dušica Bijelic (Tebaldo)
Robert Lloyd (Monk/Carlos V), Eric Halfvarson (Grand Inquisitor)
Téo Ghil (Priest Inquisitor), Susana Gaspar (voice from Heaven)
Pablo Bemsch (Count of Lerma), Elizabeth Woods (Countess of Aremberg)
ZhengZhong Zhou, Michel de Souza, Ashley Riches,
Daniel Grice, Jihoon Kim, John Cunningham (Flemish Deputies)
Royal Opera Chorus
1. Verdi: Don Carlo

このロイヤルオペラ2008年のプロダクションはビリャソン、キーンリサイド、ポプラフスカヤのキャストですでにDVD化されていますが、我家にあったのはさらにその前のヴィスコンティ演出の映像でした。いずれにせよ生の「ドン・カルロ」は初めて見ます。ワーグナー並みに長くて登場人物も多いオペラなので、ヴェルディのほかの作品に比べて上演機会は少ないようです。

ロンドンではキャンセル魔として知られるアーニャ・ハルテロスが、今回は果たして何日歌うのか注目されていたようですが、初日に出た後は、大方の予想通り「病気のため」キャンセルとなりました…。代役は、元々後半戦にキャスティングされていたアルメニア人のリアンナ・ハロウトゥニアン。今回がロイヤルオペラデビューだそうです。見るからにおばちゃん体型で、王妃の気品と色気の点ではちょっと残念ではありましたが、代役もすでに2日目でしたので固さの取れた演技に、カウフマンと歌い合っても聴き劣りしない、ふくよかな美声が素晴らしく良かったです。

エーボリ公女のユリア=モンゾンは知らない人だったので調べると、カルメンに定評がある様子。言われてみれば確かにそんなジプシーっ気を匂わせている人で、逆に公爵夫人というにはあまりにも蓮っ葉なお顔立ち。私はあのテの顔がどうしても苦手で生理的に受けつけません。自分の「呪われし美貌」を切々と歌う場面など、もう違和感ありまくりで、すいません、いくら歌が上手くてもオペラはビジュアルもやっぱり大事だなあと思い知りました。なお、天の声のソプラノは、本当にオペラ座の天井から聴こえてきました。バルコニーからは姿もちらっと見えた気がしましたが、下のほうの人にはどうだったんでしょうか。

この作品は女声が相対的に影薄く、全く男声陣のためのオペラと言えましょう。タイトルロールのカウフマンは相変わらずテナーにあるまじき野太い声が健在で、スターの立ち振る舞いもたいへん良かったのですが、それをさらに食っていたのがロドリーゴ役のポーランド人、マリウシュ・クヴィエチェン。細身ながら低音のよく響く声に、ちょっと抑え目の演技が役所を捉えていてカッコいい。フルラネット、ハーフヴァーソン、ロイドのベテランバス3人組は、皆さん地響きのような低音の中にも声に各々個性があって、ここまでの人達が競演してくれる機会もそうそうないでしょう。歌手陣は総じて素晴らしい出来で、満足度の高い「ドン・カルロ」初生鑑賞でした。

演出は、シンプルでシンボリックな舞台ながらも衣装は中世スペイン風で奇抜な発想転換はなく、火あぶりの刑の見せ方など工夫があって感心しました。カルロス5世の墓はどう開くのだろうと思っていたら結局開かず、ドン・カルロは剣でやられて息を引き取るだけ、墓には引きずり込まれませんでした。ドン・ジョヴァンニの地獄落ちみたいなのを期待していたら、肩すかしでした。


大司教のエリック・ハーフヴァーソン。


エーボリ公女、ベアトリス・ユリア=モンゾン。


ロドリーゴのマリウシュ・クヴィエチェンは、大人気。


渋いベテラン、フルッチョ・フルラネット。


なかなか良かった、ハルテロス代役のリアンナ・ハロウトゥニアン。


ヨナス・カウフマンはスターですな。


真ん中はパッパーノ大将。今日もオケは熱演でした。