ランラン・イン・コンチェルト:サンバ良ければ全て良し2011/05/21 23:59


2011.05.21 Royal Festival Hall (London)
Lang Lang Inspires: Lang Lang in Concerto
Ilyich Rivas / Youth Orchestra of Bahia
Lang Lang (P-2,4)
1. Respighi: Fountains of Rome
2. Chopin: Piano Concerto No.2
3. Stravinsky: The Firebird, Suite (1919)
4. Gershwin: Rhapsody in Blue

日本人にはどうしてもパンダの名前か「恋のインディアン人形」に見えてしまうラン・ラン。漢字では「郎朗」と書くそうですね。4年前5年前にブダペストで見て以来の3回目になります。今回は“Lang Lang Inspires”と題したシリーズでソロ、室内楽、コンチェルトの演奏会を連続開催しますが、今日のコンチェルトはSouthbank CentreのWebサイトでClassical Music/Orchestralをブラウズしても出て来なかったので、しばらく存在に気付きませんでした(普段めったに見ないClassical Music/Chamberのほうに出ていたのです)。見つけたときにはピアノがよく見える席はすでに売り切れだったのですが、ほどなくリターンが出て、幸い3列目の良いチケットをゲットできました。選曲も「ファンタジア2000」で娘がお気に入りの「火の鳥」と「ラプソディ・イン・ブルー」が入っており、家族イベントとしては最適です。実際、夜にしてはずいぶん子供が来ていました。あとは中国系の人が多く、普段とは聴衆の様相がちょっと異なる感じでした。

1曲目は「ローマの噴水」。レスピーギのローマ3部作は全て、打楽器奏者の端くれとしては何歳になっても心が躍る、最高に好きな曲なのですが、なかなか実演で聴く機会に恵まれないのが残念でした。「噴水」は、もしかしたら実演は初めてじゃないかしらん。オケはブラジルのバーイア・ユース管弦楽団。ベネズエラのエル・システマ(貧困層の子供に無料で楽器と音楽教育を与え健全な成長を図る社会政策)に触発されて2007年に結成されたそうで、年齢層は12〜25歳とたいへん若いです。指揮者のリーバスも弱冠18歳のベネズエラ人で(この人はエル・システマ出身ではないそうですが)、言ってみれば子供が指揮する子供のオーケストラという図式です。プログラムの解説によると、リーバスは未成年とは言えすでにアトランタ響、シュトゥットガルト放送響、グラインドボーンやルツェルンの音楽祭でプロデビューを果たした新進気鋭ですし、オケもセミプロみたいなものでしょうが、やっぱりアマチュアの域を出てないかなと感じざるを得ない線の細さでした。技術やパワーが追いつかないというより、勢いがないのが一番問題に思えました。若いんだからppでもpppでも全部fでぶつける、くらいの勢いが多少はあったほうが音楽が生きると思いますが、まるで破綻しないことを第一に教えられているかのようでした。まあ、この難曲を破綻しないでやり通せるというのは、それはそれでたいしたものですが。

次のショパンでラン・ラン登場。28歳だからまだまだ若いですが、このメンバーに入るとキャリアでも知名度でもダントツですから自分が牽引せねばならず、普段ウィーンフィルやベルリンフィルと共演するのとはだいぶ勝手が違うでしょう。ラン・ランはやんちゃな若造という風貌はあまり変わっていませんが、期待していた顔芸がずいぶんと減って、やけにすました顔で風格たっぷりに弾いていました。前聴いたときはまるで演奏を補完するかのように音楽に入り切った表情を見ているだけで楽しかったのですが、時おり恍惚の表情を浮かべながらも、客席を見渡しながらクールな顔で大見得を切ったりして、「ええカッコしい」度がさらに増したなあという印象です。マネージメントが狙っている市場は普通のクラシックピアニストの枠を超えたところにあるでしょうし、本人もそれに乗ってスーパースターを演じるのが楽しい様子です。で、肝心の演奏のほうは、ショパンは正直、普段聴くことが最も少ない作曲家の一人ですので細かいところはわかりませんが、掛け値なしにめちゃめちゃ上手いピアノであったことは間違いありません。今日の演奏会は自分がリードするという自覚の現れでしょうか、木管や第2ヴァイオリンに向けて弾き振りみたいな動作までしていたのには驚きました。パンチに欠けてオケと指揮者の影が薄い分、ラン・ランの独演会のような様相を呈していました。何となく予感はありましたが、案の定、楽章が終るたびに盛大な拍手が起こり、ラストも思いっきりなフライング拍手&ブラヴォー。やはり、あまり普段演奏会に足を運ばない客層のようでした。

休憩を挟んで「火の鳥」。あらためてオケをじっくり聴くと、弦楽器はなかなか繊細な音が出せるし、管楽器も個々のプレイヤーはそれなりに技量を持っていることがわかります。それが全体となるとパワー不足、勢い不足に感じられてしまうのはアンサンブルが弱いせいですね。「ふわっと花が開くような」とか「突然目の前に現れるように」などの表情付けをきっちり表現できるというのは、普段プロの演奏に慣れているとあたり前のことのように思ってしまいますが、楽譜通り音を出せばそうなるものではもちろんないんですね。それでも1曲目とは違ってこれはバレエですから、「火の鳥の踊り」や「魔王カスチェイの踊り」ではみんな一斉に大きく身体を揺らしながら演奏して、ようやく本来のノリが出てきたようでした。それにしても、若者らしからぬたいへん品の良い「火の鳥」でした。

最後は再びラン・ラン登場。「ラプソディ・イン・ブルー」は得意曲と見えて、オケが一番リラックスして演奏していました。ラン・ランのピアノもやりたい放題に弾きまくっていましたが、ジャジーな雰囲気はあまり感じられず、いろいろやってもこの人の本質はガチガチのクラシックピアニストなのだなと思いました。ガンガン叩きつけるように弾いたかと思うと、第2主題の後半で4拍子と3拍子が重なりあってリズミカルになる箇所ではわざとしっとりと弾いてみたり、ちょっと変わったことをやりたいお年頃ですかね。さすがにこの曲では途中で拍手はありませんでしたが、最後はやっぱり音にかぶさるように沸き起こる拍手と聴衆総立ちの喝采が待っていました。

アンコールはオケにラン・ランも加わってのサンバのポピュラー曲(すいません、タイトルが出てきません)。メンバーが途中で立ったり座ったり、踊り出したり、何かやらかす雰囲気になってきたら、突如ホルン(♂)とクラリネット(♀)の奏者が楽器を置いてステージ前方に踊り出て、巧みなステップでサンバダンス。演奏がグダグダだったのは、まあご愛嬌ですが、南米のオケって最近はみんなこんなノリなんでしょうか?最後は、ブラスと打楽器が叩き出すサンバのリズムに乗りながら、メンバーが順次踊りつつ退場して行きました。聴衆は大ウケで、皆笑顔で帰路についていました。こういう理屈抜きに楽しい演奏会もたまには良いものですね。

今日は後席に座っていた女性にいきなり声をかけられ、写真を後でメールで送って欲しいと頼まれました。自分もカメラを持っているのに、私のほうがカメラが良さそうで写真がシャープに見えたから、だそうです。別にこだわりのカメラではなく、キャノンの普通のコンパクトデジカメなんですけどね。写真については本当にずぶの素人ですのでクオリティは保証できません。


終演後のリーバスとラン・ラン。リーバスは18歳にしては老け顔ですね。


ユースオケは若いおねえちゃんがたくさん見れるので、オジサン的には目の保養になって良いですね。私的にはセカンドヴァイオリンの色白美人がイチオシでした。


お、チェロにもクールなかわい子ちゃんが。


ファーストヴァイオリンにはセクシーなラテン美女が二人も。


最後はノリノリのサンバに乗ってメンバーが退場して行きました。左のホルンのにいちゃんは華麗なステップも見せておりました。

コメント

_ Wulf ― 2011/05/25 08:35

ドゥダメルがよく振ってるユースオケにもベッピンさんが沢山いてますよね~

_ Miklos ― 2011/05/26 03:28

Wulfさんこんにちは。シモン・ボリバルもノリの良さそうな若いおねえちゃんがたくさんいますね。ただ、単なる私の好みの話ですが、南方系の顔ってちょっと苦手なんですよ。その意味で私のイチオシは白人のべっぴんさんが多いNational Youth Orchestra of Great Britainです!(我ながら、音楽の話が全くない…)

_ Wulf ― 2011/05/26 12:45

見ましたよ!
エエですねえ~、白人のべっぴんさん!!

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